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プロローグ

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 そこへ行けば、とりあえず何でも請け負ってくれる上に満足度100%、という何でも屋があるという。
 ただし、時価。
 恐ろしい程の金額を要求されることもあれば、無料同然でやってくれることもあり、物資報酬の場合もあるらしいとかなんとか。
 初めて聞いた時は、胡散臭さに話半分だったから、どんな業者なのかきちんと確認もしなかった。いや、普通はそんな話、都市伝説程度にしか思わないでしょ。だから、誰から聞いたのか、どんな話の流れだったのかも思い出せない。
 自分がその業者を頼ることになるなんて、考えてもみなかった。
 いつだって、自分のことは自分で解決してきたし、誰かの手を煩わせることなんてなかった。これからもそのつもりで、強く生きていこうとしていたのだ。
 だけど…

「どうしたらいいのよ…」

 下宿先が隣家の火事から貰い火をして全焼。
 部屋はもちろん、家具家電衣服は全てチリと化し、残ったのは置き勉をしていた為に無事だった勉強道具と、持っていた財布とスマホ、化粧直しのミニポーチ、ショルダーバッグ。
 クレカはあるから当面は何とかなりそうなものの…実家は裕福でない為、仕送りは頼れないし、遠いから帰ることもできない。
 しかし、ここまではそれほど深刻じゃない。ショックだし辛かったし泣いたし、精神ゴリゴリ削られたけど、まだ耐えられた。
 問題はこの後だ。
 次の安い住居が見つかるまで、友人の家とネカフェで過ごしているのだが、それを知ったバイト先の先輩(男)が、執拗に誘ってくる。空き部屋があるから、自分の家に住めと。
 いや、絶対に下心でしょ。
 好きでも何でもない男の部屋になんか行くかよ、気持ち悪い。
 何度も丁重にお断りしているのだが、全く響かない。
 最近は、後をつけられたのかネカフェの場所まで特定されて、いつのまにか隣のブースにいることもある。お前は自分の家に帰れよ。
 果てしなく気持ちが悪い。
 早く住む場所を見つけろって思うでしょ?私もそう思ってる。
 だけど、時期が悪いのかビックリするほど見つからないのだ。誰かに妨害されてるかと疑うくらいに。
 だからと言って、事故物件に住む程の強靭な心も持っていない。普通の女子大生である。
 友人の家に長期間いさせてもらうのも、大変に心苦しい。
 バイト先はこの前辞めたけれど、あまり意味はなかった。
 夜道がこんなに怖いと思ったのは初めてだ。
 後ろをヒタヒタとつけられているんじゃないかと、毎夜不安になる。
 このところ、まともに寝てないし、食事もできていない。
 怖くて怖くて仕方ない。

 そして、ふと思い出したのだ。
 都市伝説のような業者の話を。

 
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