ただ1枚の盾に。

小隈 圭

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1章

経典

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 町の南側に職人通りと呼ばれる場所がある、トリーアに来た時に歩いた道だ、道具屋や鍛治屋などが数多くあり自分の店の品物を売り込む為に冒険者に声をかけている。

 武器や防具にはそれぞれ製作者の名前が刻まれており、腕のたつ人の装備には誰しも自然と引かれそれを造りだした職人も自然と有名になる。

 初心者の冒険者に声をかけているのは早いうちから抱え込んでおこうということらしい。

 通りを歩き声をかけられるては断りながらおっちゃんの店を目指していく。

 しばらく歩くと店の前で腕を組み仁王立ちしているおっちゃんを見つた、なにやら少し暗い雰囲気を漂わせている所を見ると客を捕まえる事ができなかったんだろう。

 また来ると言ったし武器を買わないとならないしとにかく声かけてみる。

 「おっちゃん、戻って来ましたよ!剣見せてもらってもいいですか?」

 俺の声を聞き俺を見ると先ほどの暗い雰囲気から笑顔に変わり上機嫌で対応してくれた。

「 来てくれたかコウ!待ってたぜ!あれから結構声かけたんだが全然ダメでな・・・お前さんが来てくれて嬉しいぜ!ようこそわが店カマウリ鍛治店へ!さぁ入ってくれ!」

 「店のカマウリって名前の由来はなんですか?」

 珍しい名前だなと思い興味本意で聞くと俺の名前だ!と言われた。ペットの名前ですか?とか聞かなくてよかった・・・。

 おっちゃん改めカマウリさんに店の中に通され目にしたのは数々の剣や防具でなかには装飾を施された立派なフルプレートメイルや人に持てるのか?と思うほどの大剣、魔法の効果が付与されているのか淡く光る楯などが目立つがそれ以外の物も素人でも解るほどの凄い物だらけだ。

 品物に見とれていると店の隅を指差されどうやら探し物はそこだぜ!と教えてくれているようだ。

 そこには木箱でできた物の中に何本も剣が入れられていて安いものと言った俺の言葉を覚えてくれていたのが解る、さっそく移動し中の剣を見てみると本当にこれが安物なのか?と思う程の物のばかりでおもわず俺の後で様子を見ていたカマウリさんの顔を見ると。

 「そこにあるのは試作段階で作った物ばかりだから安くしとくぜ!」との事だった。

 試しに手に取ろうと手を出した時一本の剣が倒れだし、偶然だろうが手のひらに収まる用な形になった、何となくこれでいいかと握り締め抜いて見ると刀身と呼ばれる部分にびっしりとなにやら読めない文字が刻まれている少し不気味な一品だった。

 「お、またすげーの選んだなコウ。」

 後で仁王立ちしながら俺が選んだ物を見てカマウリさんはそう呟いた、文字だけ見れば不気味ではあるが何故かそう悪いような物でもない気がするしなにより偶然であっただろうが手に馴染むような、しっくりくる感じがして興味が湧いた。

 「この文字は?読めないのですがなにか意味があるんですか?」

「 もっと砕けた感じでいいぞ、そんなに気を使って話してたら疲れるだろ、それがなぁ、文字の意味は俺にも解らん、読めねぇしな。その剣はなうちの店によく来てくれる奴等が中級ラビリンスで手に入れたもんでな。」

 「ちょっと待って、ラビリンスってなに?」

 「おう、その話し方の方がこっちも気楽でいいわ!」

 「あ、そう? ならこれでいくよ、んで?ラビリンスってなに?」

 「なんだ、まだ知らなかったのか、まぁ詳しいことはギルドで聞いてくれ、簡単に言うとダンジョンだ。それでな、ラビリンスで見たこともない読めもしない経典を見つけたんだがどうやら魔法の効果があったみたいなんだが内容もわからないしで使えないってんで売って貰ったんだ、んで剣を作る時に使ってみたんだが・・・・出来上がったとたんに刀身に文字が勝手に刻まれて出来上がりってわけだ。見て解るとおり不気味なんで買い手が付かなくてな、それなりに金は掛かってるんだが売れない物をおいててもしかたねぇし、そいつも銀貨2枚でいいぜ!」

 ラビリンスの事はとりあえずギルドに聞くとしてこの剣を買うかどうかだな、どんな効果かもわからない以上使うにはある程度の覚悟はしておいた方がいいかもな、ある程度金も掛かっていると言っていたし剣を造る時の素材もいい物を使っているかもしれない。

 「どうする? そこにある物なら同じく銀貨2枚でいいし、他のも見てもいいぜ?」

 「いや、これにするよ、偶然とはいえ剣の方から手に来たんだ、不気味ではあるけどこいつを連れていくよ。」

 「そうかい、ならちょっと貸しな! 磨いでから渡してやるよ!」

 「ありがとう、遠慮せずに頼むことにする」

 礼をいい剣を手渡した時に疑問が浮かびどうせならと聞いてみることにした。

 「カマウリさん、経典ってのにも金掛かったんだろ?いいの?買うと言っておいてあれなんだけどこの剣一本じゃかなりの赤字になるんじゃないの?」

 「ん? 確かに経典にも金は掛かったが造ったのが剣一本とは言ってねぇぞ?」

 「え? 他にもあるの?」

 「今はもうねぇな、コウと同じ初心者冒険者に売ったよ、造ったのは全部で3つだ、一つはこの剣、もう一つは弓、最後の一個はダガーだ、二人組が買って行ったんだが向こうも初心者だ、そのうち会えるかもな!」


 そう言いながら剣を研ぎにいってくれた。

 どんな人なんだろ?などと考え混む俺をよそにカマウリさんの手によって磨がれている剣は赤い火花を出しながらその時を待っているようだった。
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