ただ1枚の盾に。

小隈 圭

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2章 成長

賢者タイム?。

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 巻き起こった惨劇、いや喜劇だろうか? 地面に首まで埋まり、お尻で顔を挟まれるなんて普通の人間なら経験することは絶対にないと言い切れる出来事だろう、そんな喜劇は刑の執行という名の元に終わりを告げた。

 地面に埋まっていた俺達は筋肉達の力により穴から出され、解放されることとなったがその心の傷は深く、地面に膝をつく男、座り込み、膝を抱えながら泣きじゃくっている女性、顔に感触が残っていてそれを必死に消そうと自分の顔を服で擦っている俺、そんな三人から少し距離を離し、顔を引きつらせながら見下ろしている唯一無傷で済むことが出来た中身が女性な人が鍛錬所に残されていた。

 「私はこの後用事があるのでな、貴様らも落ち着いたら帰れよ」

 「ク、クコもラグと会う約束があるから……プッ……また……今度ね……プッ」

 俺達をこんな目に合わせた元凶の片方はスタスタと振り返る事もなく歩き、そしてもう片方は必死に笑いをこらえながらここにいては不味いと思ったのかサイモンさんと同じ様に鍛錬所からどこかへと行ってしまった。

 「だ、大丈夫……?」

 「大丈夫に見えるか……? 挟まれたんだぞ? こんな屈辱は初めてだ、顔に押し付けて来るだけならまだ耐えれたさ、でもあの筋肉、キュって締め付けてくるんだぜ……? 小刻みに何度も器用にキュッキュッキュって、そのたびに顔が左右から潰されるんだ、逃げられないんだ」

 俺達の状態を心配してかハミィが声をかけるが地面に膝を付け、うなだれる様に全身から力が抜けているマジェの口から出た言葉は聞くだけでも鳥肌が立つ内容だ、しかしその内容はその通りのもので、挟まれた者にしかわかりえない屈辱があった。

 「私もうお嫁に行けない……男の人にあんな事されちゃったよ……将来の旦那さん許してくれないよ~……」

 地面に座り込み、膝を抱え込んでうつむくカッチェは誰に言っているのかわからない内容を口にするが、今回の内容を話してもおそらく笑い話にされてしまうだけではないだろうか?

 カッチェに向けていた視線をマジェの方に移すと横眼でチラチラとカッチェの事を見ているのがわかったがそこは突っ込まない方がいいだろう、そのままにしておこう。

 しかしいつまでもここでこうしていても仕方がない、とんでもないトラウマを抱え込むことにはなったが得た物もあるはずだ、そう信じたい。

 「とりあえず出ようか、ここにいると思い出しそうだしな」

 「なんかあれだな、コウは意外と平気そうだな」

 「平気なわけがないだろ!」

 二人はわかっていないんだ! 前方からだけというのがどれほどの救いだったのか! 前後から挟まれ、キュっとされる事の苦しみを! あの息苦しさを! あの蒸し暑さを!

 「二人の気持ちはわかるよ、俺も同じ目にあってるからな、でも忘れてるだろ……俺の場合前後から挟まれたんだぞ? 言ってしまえば二人の倍の苦しみを味わってるんだ、いや、倍ではきかない! あの湿気、臭い、苦しさを考えると三倍ぐらいだと思うぞ、平気なわけがないだろう?」

 「お、おう……悪かった………」

 「そ、そうだね、私達よりひどい目にあってたもんね、うん! 出よう! ここを出て何か気分転換をしに行こう!」

 どうやら自分達よりも更に上がいた事であまり触れない様にした方がいいと判断したようだ。

 「そ、そうだな! 傷の舐めあいは終わりにしてどっか行こうぜ! 暴れれる所がいいんじゃないか? クエストにでも行くか?」

 確かに憂さ晴らしはしたい、何かに八つ当たりをして気分を晴らしたいとは思う。

 「そ、それなら四人でラビリンスに行ってみない? あそこなら他に人も来ないし、好きなだけ暴れることが出来ると思うし」

 「あ~行ってみたい! マジェといつか行けたらいいねって話してたし、このまま行ってみようよ~」

 「そうだな、今日も二人で町歩いてた時に気になってたんだよな~、ここらで行っとくか!」

 ラビリンス、確かに興味はあるけど実際問題どうなんだろう? 中の構造や敵の情報、そう言ったものが一切ない状態で入っても行けるのだろうか?

 「マジェとカッチェはその言い方からして入った事はないだろうし、もちろん俺もない、ハミィは入った事あるの?」

 「私は三年前に入った事あるよ、それから全く行ってないけど、出口がどうなってるかとかぐらいならわかるかな」

 三年前って事は以前のメンバーでって事か、ダンジョンで仲間を亡くしてしまっているからアルスタの洞窟で平気なのか聞いてはみたがラビリンスは大丈夫なのだろうか? 余り無理はさせたくはない。

 「いいのか?」

 短い一言ではあるがその一言にはいろんな意味を込めた、その意味が彼女に伝わるかはわからないが彼女の傷に触れてしまう事を考えると、それ以上の事を口に出してしまうのは躊躇してしまう。

 「大丈夫だよ! ダンジョンもあの場所以外なら多分平気だし、ラビリンスに行くのも問題ないよ!」

 あの場所、名前は出なかったがおそらくその場所がかつての仲間が死んだ場所なのだろう、今度ラミアスさんにでも聞いて名前ぐらいは知っておいた方がいいかもしれない、出来ればその場所に行く事は無いようにしてあげたいしな。

 「わかった、それじゃぁ皆で行ってみようか! というか誰か星石持ってる?」

 行くと決めたのはいいが自分は持ってはいない、ハミィと出会う前に二人が手に入れたという物も俺が技を覚える為に売り払ってしまっているのだ。

 「あるよ~! 一個だけだけどマジェとクエストこなしてる時に手にいれてたの!」

 「おうよ! これ使って行こうぜ!」

 二人がそう言ってくれるなら今は甘えておこう、次に入る時があれば自分で出す様にしないとな。

 「わかった、それじゃぁ行ったん解散して各自装備と道具がいる人は確保して集合しよう、場所は……どこがいいかな?」

 全員町に散らばる事になりそうだし、わかりやすく、それでいて集まりやすい場所がいいだろうか?

 「それならラビリンスの入り口の祭壇前でいいと思うよ? コウも一緒に行ったからわかるよね?」

 鍛錬所に来る前にハミィと町を周り、マジェとカッチェを探している時に行った場所、あの場所なら大丈夫だろう。

 「大丈夫、わかるよ! 二人もそれでいいかな?」

 「うん、大丈夫だよ~! それじゃぁ準備してから向かうね!」

 「それじゃ後でな!」

 先ほどまでのどうしようもない雰囲気から解放された二人は雑談を交わしながら鍛錬所を出る為に入り口へと移動を始めた。

 「俺達も行こうか!」

 「そうだね! なるべく早く行くからまっててね!」

 そう言葉を交わし、二人の後を追う様に俺達は鍛錬所の入り口へと歩き出していく。
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