25 / 40
25
しおりを挟む
どれも揚げ物なので、お口をさっぱりさせるために大根サラダにした。きゅうりとわかめの酢の物と迷ったけど、唐揚げにおろしポン酢を添えたいので残りの大根を活用することにしたのだ。
僕は木佐さんの帰宅時間を見計らって調理を進めていく。その間にお風呂も支度して、ちょうどそれが沸いた頃、玄関のドアが開く音がした。
「おかえりなさい」
僕が玄関まで出迎えに行くと、木佐さんはすごく驚いた顔をした。
「どうしました?」
驚いたように玄関で固まる木佐さんからの荷物を受け取ると、木佐さんはその驚き顔のまま僕を見る。
「廊下にいい匂いが漂っていると思ったらうちだったことにびっくりしている。しかもこんな風に出迎えてくれるなんて・・・」
そう言えば今まで気持ち悪くてそれどころではなかった。
お世話になるだけなっていて何もしてなかったことに、今さらながらに恥ずかしくなる。
「すみません。出迎えもしなくて・・・」
「いや、具合が悪いからうちに来てもらってたんだから、そんなこと気にしなくていいよ」
そう言って笑ってくれる木佐さんはやっぱり優しい。
「ありがとうございます。あ、先にお風呂に入ってください。その間に料理の仕上げをするので」
着替えるために寝室に入った木佐さんにそう声をかけて、僕はキッチンに戻った。
お風呂に入ってもらってる間に、唐揚げを揚げよう。だって揚げたてが一番美味しいものね。
そう思いながら、揚げ油の鍋に火をつけた。
それからいいタイミングでお風呂から出てきてくれた木佐さんと一緒にごはんを食べると、木佐さんが少し残念そうに口を開いた。
「やっぱり帰ってしまうんだね」
僕の作ったごはんをキレイに食べてくれてうれしい。
僕は空になった食器をシンクに運びながら、頬を綻ばせた。
「もうすっかり元気いっぱいですからね。一人でももう大丈夫です。心配はいりません」
そう言ってとりあえず食器をシンクに入れると、僕はデザートに作っておいたフルーツゼリーを木佐さんに出した。
いつもデザートを用意しているわけじゃないけど、今日はお礼も兼ねてるので作ってみた。本当はプリンにしようかと思ったんだけど、木佐さんが甘いものを食べてるところを見たことないのでやめた。
僕も同じものを持って、またテーブルにつく。
「確かに掃除と洗濯とこれだけの料理の腕があれば心配はないけど、僕としてはまだいて欲しかったよ」
掃除と洗濯したのバレてた。
あえて言わなかったんだけど。
「親元を離れて長いので、これでも家事スキルは高いんですよ」
主婦も10年やってたら立派に特技だよね。
「今日帰ってきて、出迎えてもらって、お風呂とごはんが出来てるのを知って、結婚したら毎日こうなんだろうな、て思ったよ」
うれしそうに笑った木佐さんの次の言葉が分かってしまって、僕の心がちくりと痛む。
「これからもずっと君に出迎えてもらいたかった」
予想通りのその言葉に、僕は思わず下を向いてしまった。
「ごめんなさい」
そんな僕の頭を、木佐さんは手を伸ばして優しく撫でてくれる。
「まだ決まってないよ。君の心はこれから変わるかもしれないからね。もう少し僕に君を構わせて」
確かに、結論を出すには早すぎる。
僕の今年の目標は『智明を忘れる事』に決めたじゃないか。
だけど、甘えてもいいのかな・・・?
ちらりと見た視線の先で木佐さんと目が合った。
「僕にチャンスと時間を、もう少しちょうだい」
茶目っ気たっぷりにそう言われて、僕も思わず笑ってしまった。
「・・・よろしくお願いします」
僕も木佐さんに応えられるように頑張ります。
木佐さんを好きになれたら、きっと幸せなんだろう。
そうは思っても、人の心は単純じゃない。誰かを好きになるのも、それを忘れるのも、自分の意思ではどうにもできない。
時間が解決してくれるのかな?
だとしたらせめて、この子が産まれるまでに心が決まってくれるとありがたいんだけど・・・。
そう思いながら僕はお腹をそっと撫でた。
そんな僕を見て、木佐さんはこの話はこれで終わりと言わんばかりに僕の作ったゼリーもキレイに食べてくれた。
「さて、明日から在宅とはいえ仕事に復帰する水森くんに新しい仕事があるんだけど、これは断ってくれてもいいからね」
そう前置きしてされた仕事の内容に、僕はびっくりして聞き返してしまった。
「絵本の挿絵ですか?!」
僕が?
本の挿絵ならまだも絵本の挿絵じゃ、絵の方が主役じゃないですか?!
「僕の学生時代からの友人に絵本作家がいてね、君にどうしても絵を描いてもらいたいって言うんだ」
木佐さんの友人に絵本作家さんがいるのもびっくりだけど、その名前を聞いてさらに驚いた。
僕は木佐さんの帰宅時間を見計らって調理を進めていく。その間にお風呂も支度して、ちょうどそれが沸いた頃、玄関のドアが開く音がした。
「おかえりなさい」
僕が玄関まで出迎えに行くと、木佐さんはすごく驚いた顔をした。
「どうしました?」
驚いたように玄関で固まる木佐さんからの荷物を受け取ると、木佐さんはその驚き顔のまま僕を見る。
「廊下にいい匂いが漂っていると思ったらうちだったことにびっくりしている。しかもこんな風に出迎えてくれるなんて・・・」
そう言えば今まで気持ち悪くてそれどころではなかった。
お世話になるだけなっていて何もしてなかったことに、今さらながらに恥ずかしくなる。
「すみません。出迎えもしなくて・・・」
「いや、具合が悪いからうちに来てもらってたんだから、そんなこと気にしなくていいよ」
そう言って笑ってくれる木佐さんはやっぱり優しい。
「ありがとうございます。あ、先にお風呂に入ってください。その間に料理の仕上げをするので」
着替えるために寝室に入った木佐さんにそう声をかけて、僕はキッチンに戻った。
お風呂に入ってもらってる間に、唐揚げを揚げよう。だって揚げたてが一番美味しいものね。
そう思いながら、揚げ油の鍋に火をつけた。
それからいいタイミングでお風呂から出てきてくれた木佐さんと一緒にごはんを食べると、木佐さんが少し残念そうに口を開いた。
「やっぱり帰ってしまうんだね」
僕の作ったごはんをキレイに食べてくれてうれしい。
僕は空になった食器をシンクに運びながら、頬を綻ばせた。
「もうすっかり元気いっぱいですからね。一人でももう大丈夫です。心配はいりません」
そう言ってとりあえず食器をシンクに入れると、僕はデザートに作っておいたフルーツゼリーを木佐さんに出した。
いつもデザートを用意しているわけじゃないけど、今日はお礼も兼ねてるので作ってみた。本当はプリンにしようかと思ったんだけど、木佐さんが甘いものを食べてるところを見たことないのでやめた。
僕も同じものを持って、またテーブルにつく。
「確かに掃除と洗濯とこれだけの料理の腕があれば心配はないけど、僕としてはまだいて欲しかったよ」
掃除と洗濯したのバレてた。
あえて言わなかったんだけど。
「親元を離れて長いので、これでも家事スキルは高いんですよ」
主婦も10年やってたら立派に特技だよね。
「今日帰ってきて、出迎えてもらって、お風呂とごはんが出来てるのを知って、結婚したら毎日こうなんだろうな、て思ったよ」
うれしそうに笑った木佐さんの次の言葉が分かってしまって、僕の心がちくりと痛む。
「これからもずっと君に出迎えてもらいたかった」
予想通りのその言葉に、僕は思わず下を向いてしまった。
「ごめんなさい」
そんな僕の頭を、木佐さんは手を伸ばして優しく撫でてくれる。
「まだ決まってないよ。君の心はこれから変わるかもしれないからね。もう少し僕に君を構わせて」
確かに、結論を出すには早すぎる。
僕の今年の目標は『智明を忘れる事』に決めたじゃないか。
だけど、甘えてもいいのかな・・・?
ちらりと見た視線の先で木佐さんと目が合った。
「僕にチャンスと時間を、もう少しちょうだい」
茶目っ気たっぷりにそう言われて、僕も思わず笑ってしまった。
「・・・よろしくお願いします」
僕も木佐さんに応えられるように頑張ります。
木佐さんを好きになれたら、きっと幸せなんだろう。
そうは思っても、人の心は単純じゃない。誰かを好きになるのも、それを忘れるのも、自分の意思ではどうにもできない。
時間が解決してくれるのかな?
だとしたらせめて、この子が産まれるまでに心が決まってくれるとありがたいんだけど・・・。
そう思いながら僕はお腹をそっと撫でた。
そんな僕を見て、木佐さんはこの話はこれで終わりと言わんばかりに僕の作ったゼリーもキレイに食べてくれた。
「さて、明日から在宅とはいえ仕事に復帰する水森くんに新しい仕事があるんだけど、これは断ってくれてもいいからね」
そう前置きしてされた仕事の内容に、僕はびっくりして聞き返してしまった。
「絵本の挿絵ですか?!」
僕が?
本の挿絵ならまだも絵本の挿絵じゃ、絵の方が主役じゃないですか?!
「僕の学生時代からの友人に絵本作家がいてね、君にどうしても絵を描いてもらいたいって言うんだ」
木佐さんの友人に絵本作家さんがいるのもびっくりだけど、その名前を聞いてさらに驚いた。
59
あなたにおすすめの小説
【完結】運命じゃない香りの、恋
麻田夏与/Kayo Asada
BL
オメガ性のリュカ・レバノンは、王国の第一王子ダイセルが見初めた、彼の運命の番だ。だが、ダイセル王子に無体な真似を働かれ、リュカは婚約の王命を断ろうとする。当然、王宮からの追っ手が来たところで──「そなた、何やら素晴らしい香りをしているな」。その声は、国一番の魔術師兼調香師のマシレ・グラースのものだった。調香師アルファ×不幸めオメガのラブストーリー。
望まぬ運命に、元βは白いフリージアを捧げる。
こうらい ゆあ
BL
βの由良には、大学から愛し合うαの恋人がいた。
そんな恋人の辰彦の前に、運命の番である陽翔が現れ、由良の心は揺れる。
αの番になれるのは、Ωである陽翔の方だ。
由良は、辰彦と別れることを決断するも、辰彦の愛が由良を縛り付ける。
嫉妬と愛の狭間で喘ぐ由良の身体に、異変が起こり、運命が歪んでいく…。
ノエルの結婚
仁茂田もに
BL
オメガのノエルは顔も知らないアルファと結婚することになった。
お相手のヴィンセントは旦那さまの部下で、階級は中尉。東方司令部に勤めているらしい。
生まれ育った帝都を離れ、ノエルはヴィンセントとふたり東部の街で新婚生活を送ることになる。
無表情だが穏やかで優しい帝国軍人(アルファ)×明るいがトラウマ持ちのオメガ
過去につらい経験をしたオメガのノエルが、ヴィンセントと結婚して幸せになる話です。
J.GARDEN58にて本編+書き下ろしで頒布する予定です。
詳しくは後日、活動報告またはXにてご告知します。
琥珀の檻
万里
BL
砂漠の王国の離宮「琥珀の間」で、王・ジャファルは、異母弟であるアザルを強引に抱き、自らの所有物であることを誇示していた。踊り子の息子として蔑まれ、日陰の存在として生きてきたアザルにとって、兄は憎悪と恐怖の対象でしかなかった。 しかし、その密事を見つめる影があった。ジャファルの息子であり、次期王位継承者のサリムである。サリムは叔父であるアザルに対し、憧憬を超えた歪な独占欲を抱いていた。 父から子へ。親子二人の狂おしい執着の視線に晒されたアザルは、砂漠の夜よりも深い愛憎の檻に囚われていく。
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
ほたるのうんめい
ruki
BL
長年の『発情期の相手』と言う役目を終えた誠也は、結婚に向けて再び婚活をすることにした。そして新たに入った婚活サイトで出会ったのは、訳がありそうな黒髪美人のオメガだった。
『ほたるのゆめ』の誠也さんのお話です。『ほたるのゆめ』を読んでいなくても楽しめるとは思いますが、そちらも読んでいただけると幸いです。
ちなみに読んでくださるなら
『さかなのみるゆめ』→『ほたるのゆめ』→『ほたるのうんめい』
が分かりやすいかと思います。
ほたるのゆめ
ruki
BL
恋をすると世界が輝く。でもその輝きは身体を重ねるといつも消えてしまった。そんな蛍が好きになったのはオメガ嫌いのアルファ優人だった。発情したオメガとその香りを嫌悪する彼に嫌われないように、ひたすらオメガである事を匂わさないようにしてきた蛍は、告げることの出来ない思いに悩んでいた。
『さかなのみるゆめ』の蛍と(木佐)優人のお話です。時間軸的には『さかな・・・』のお話の直後ですが、本編主人公達はほとんど出てこないので、このお話だけでも楽しめるかと思います。けれど『さかな・・・』の方も読んで頂けると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる