さかなのみるゆめ

ruki

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どれも揚げ物なので、お口をさっぱりさせるために大根サラダにした。きゅうりとわかめの酢の物と迷ったけど、唐揚げにおろしポン酢を添えたいので残りの大根を活用することにしたのだ。

僕は木佐さんの帰宅時間を見計らって調理を進めていく。その間にお風呂も支度して、ちょうどそれが沸いた頃、玄関のドアが開く音がした。

「おかえりなさい」

僕が玄関まで出迎えに行くと、木佐さんはすごく驚いた顔をした。

「どうしました?」

驚いたように玄関で固まる木佐さんからの荷物を受け取ると、木佐さんはその驚き顔のまま僕を見る。

「廊下にいい匂いが漂っていると思ったらうちだったことにびっくりしている。しかもこんな風に出迎えてくれるなんて・・・」

そう言えば今まで気持ち悪くてそれどころではなかった。

お世話になるだけなっていて何もしてなかったことに、今さらながらに恥ずかしくなる。

「すみません。出迎えもしなくて・・・」

「いや、具合が悪いからうちに来てもらってたんだから、そんなこと気にしなくていいよ」

そう言って笑ってくれる木佐さんはやっぱり優しい。

「ありがとうございます。あ、先にお風呂に入ってください。その間に料理の仕上げをするので」

着替えるために寝室に入った木佐さんにそう声をかけて、僕はキッチンに戻った。

お風呂に入ってもらってる間に、唐揚げを揚げよう。だって揚げたてが一番美味しいものね。

そう思いながら、揚げ油の鍋に火をつけた。

それからいいタイミングでお風呂から出てきてくれた木佐さんと一緒にごはんを食べると、木佐さんが少し残念そうに口を開いた。

「やっぱり帰ってしまうんだね」

僕の作ったごはんをキレイに食べてくれてうれしい。

僕は空になった食器をシンクに運びながら、頬を綻ばせた。

「もうすっかり元気いっぱいですからね。一人でももう大丈夫です。心配はいりません」

そう言ってとりあえず食器をシンクに入れると、僕はデザートに作っておいたフルーツゼリーを木佐さんに出した。
いつもデザートを用意しているわけじゃないけど、今日はお礼も兼ねてるので作ってみた。本当はプリンにしようかと思ったんだけど、木佐さんが甘いものを食べてるところを見たことないのでやめた。

僕も同じものを持って、またテーブルにつく。

「確かに掃除と洗濯とこれだけの料理の腕があれば心配はないけど、僕としてはまだいて欲しかったよ」

掃除と洗濯したのバレてた。
あえて言わなかったんだけど。

「親元を離れて長いので、これでも家事スキルは高いんですよ」

主婦も10年やってたら立派に特技だよね。

「今日帰ってきて、出迎えてもらって、お風呂とごはんが出来てるのを知って、結婚したら毎日こうなんだろうな、て思ったよ」

うれしそうに笑った木佐さんの次の言葉が分かってしまって、僕の心がちくりと痛む。

「これからもずっと君に出迎えてもらいたかった」

予想通りのその言葉に、僕は思わず下を向いてしまった。

「ごめんなさい」

そんな僕の頭を、木佐さんは手を伸ばして優しく撫でてくれる。

「まだ決まってないよ。君の心はこれから変わるかもしれないからね。もう少し僕に君を構わせて」

確かに、結論を出すには早すぎる。
僕の今年の目標は『智明を忘れる事』に決めたじゃないか。

だけど、甘えてもいいのかな・・・?

ちらりと見た視線の先で木佐さんと目が合った。

「僕にチャンスと時間を、もう少しちょうだい」

茶目っ気たっぷりにそう言われて、僕も思わず笑ってしまった。

「・・・よろしくお願いします」

僕も木佐さんに応えられるように頑張ります。

木佐さんを好きになれたら、きっと幸せなんだろう。

そうは思っても、人の心は単純じゃない。誰かを好きになるのも、それを忘れるのも、自分の意思ではどうにもできない。

時間が解決してくれるのかな?

だとしたらせめて、この子が産まれるまでに心が決まってくれるとありがたいんだけど・・・。

そう思いながら僕はお腹をそっと撫でた。

そんな僕を見て、木佐さんはこの話はこれで終わりと言わんばかりに僕の作ったゼリーもキレイに食べてくれた。

「さて、明日から在宅とはいえ仕事に復帰する水森くんに新しい仕事があるんだけど、これは断ってくれてもいいからね」 

そう前置きしてされた仕事の内容に、僕はびっくりして聞き返してしまった。

「絵本の挿絵ですか?!」

僕が?
本の挿絵ならまだも絵本の挿絵じゃ、絵の方が主役じゃないですか?!

「僕の学生時代からの友人に絵本作家がいてね、君にどうしても絵を描いてもらいたいって言うんだ」

木佐さんの友人に絵本作家さんがいるのもびっくりだけど、その名前を聞いてさらに驚いた。
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