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序章:すべての旅は、茶番から始まる――剣も魔法もまだいらない
第15話:剣を奪われた白雪姫
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昔々、ある王国に一人のお姫様が生まれました。
その姫は大変愛らしく、髪も肌も雪のように白く、
小さかったことから「白雪姫」と呼ばれることもありました。
末っ子だったため、王様と妃様はもちろん、
五つ年上の姫や四つ年上の兄からもとてもかわいがられていました。
けれど、この姫には、少し変わったところがありました。
「ほら、姫様。かわいいドレスですわ。お気に召しましたか?」
「いりません」
「姫様、今日はダンスの授業などいかがですか?」
「興味ないです」
「姫様、あんな高い所へ登らないでください!もし何かあれば、私たちが叱られます!」
姉は舞踏会で評判の美女となり、帝国の王子とも婚約をかわしました。
けれどレンはまるで姫らしくありませんでした。
どころか、その趣味は一般的な男の子よりも男の子らしいものでした。
きらびやかなドレスよりズボンを、ぬいぐるみより剣を、ダンスより鍛錬を好む。
姉のツバキ姫とは似ても似つかない、おてんばな娘でした。
王様は気にしていませんでしたが、妃様は心を悩ませていました。
そしてある日、ついに姫はこう願い出ます。
「剣を、習いたい」
もちろん、周囲は猛反対でした。
剣を振るう姫など、聞いたことがありません。
姫たる者、おしとやかであらねばならない。
剣術など学べば、諸国の笑いもの、貴族たちの嘲笑の的になる――と。
それでも、王はその願いを認めました。
貴族たちや妃の反対を押し切って、彼女を兄・マサキと共に剣聖のもとへ送り出したのです。
すると、姫はたちまち才能を開花させました。
誰よりも早く進歩し、そして――
「参りました」
四歳年上の兄・マサキに、完勝しました。
そのとき、彼女はまだ七歳にも満たなかったのです。
そして、平衡が崩れました。
姫が王子以上の素質を見せたことで、
将来の王位継承、ひいては勇者の座が揺らぎ始めたのです。
姫を推す重臣が現れる気配すらありました。
それを阻止しようと、王子派の貴族たちや妃は、王に圧力をかけました。
無様に妹に敗れた王子・マサキの心も穏やかではありませんでした。
その後も何度か挑戦しましたが、結果は変わらず――
屈辱。嫉妬。絶望。
それらが渦巻き、ついには憎しみへと変わりました。
もはや、妹はかわいい存在ではありませんでした。
「自分の道を阻む、ただのライバル」。それが、兄にとってのレンの姿でした。
兄は妃に進言しました。
「このままでは、レンは王国の恥になります。
とても、諸侯に嫁げるような娘ではありません」
妃もまた、同じ考えでした。
そして何より、彼女は息子・マサキを偏愛していた。
娘の味方には、なれませんでした。
それからも、姫は修行を続けました。
そして、とうとう――
「参りました」
剣聖までもが、彼女に敗北を認めたのです。
その年、彼女はまだ十歳の誕生日すら迎えていませんでした。
――もはや、彼女の剣術を支えていたのは王ただ一人。
その王の意志だけでは、この流れを止めることはできませんでした。
こうして、姫は愛する剣を手放すことになりました。
そして、妃の手で、辺境にある別邸へと送られ、
「姫としての心得」を一から教え込まれることになったのです。
剣を捨てよ、という声に、涙は出なかった。
けれど、胸の奥がひどく、静かに痛んだ。
――それは、誰にも言えぬ、静かな別れだった。
その日から、彼女は――
「レン!その髪は何なのです」
長く美しかった銀髪を自ら切り落とし、
一人称を「私」から「俺」へと変えました。
その姫は大変愛らしく、髪も肌も雪のように白く、
小さかったことから「白雪姫」と呼ばれることもありました。
末っ子だったため、王様と妃様はもちろん、
五つ年上の姫や四つ年上の兄からもとてもかわいがられていました。
けれど、この姫には、少し変わったところがありました。
「ほら、姫様。かわいいドレスですわ。お気に召しましたか?」
「いりません」
「姫様、今日はダンスの授業などいかがですか?」
「興味ないです」
「姫様、あんな高い所へ登らないでください!もし何かあれば、私たちが叱られます!」
姉は舞踏会で評判の美女となり、帝国の王子とも婚約をかわしました。
けれどレンはまるで姫らしくありませんでした。
どころか、その趣味は一般的な男の子よりも男の子らしいものでした。
きらびやかなドレスよりズボンを、ぬいぐるみより剣を、ダンスより鍛錬を好む。
姉のツバキ姫とは似ても似つかない、おてんばな娘でした。
王様は気にしていませんでしたが、妃様は心を悩ませていました。
そしてある日、ついに姫はこう願い出ます。
「剣を、習いたい」
もちろん、周囲は猛反対でした。
剣を振るう姫など、聞いたことがありません。
姫たる者、おしとやかであらねばならない。
剣術など学べば、諸国の笑いもの、貴族たちの嘲笑の的になる――と。
それでも、王はその願いを認めました。
貴族たちや妃の反対を押し切って、彼女を兄・マサキと共に剣聖のもとへ送り出したのです。
すると、姫はたちまち才能を開花させました。
誰よりも早く進歩し、そして――
「参りました」
四歳年上の兄・マサキに、完勝しました。
そのとき、彼女はまだ七歳にも満たなかったのです。
そして、平衡が崩れました。
姫が王子以上の素質を見せたことで、
将来の王位継承、ひいては勇者の座が揺らぎ始めたのです。
姫を推す重臣が現れる気配すらありました。
それを阻止しようと、王子派の貴族たちや妃は、王に圧力をかけました。
無様に妹に敗れた王子・マサキの心も穏やかではありませんでした。
その後も何度か挑戦しましたが、結果は変わらず――
屈辱。嫉妬。絶望。
それらが渦巻き、ついには憎しみへと変わりました。
もはや、妹はかわいい存在ではありませんでした。
「自分の道を阻む、ただのライバル」。それが、兄にとってのレンの姿でした。
兄は妃に進言しました。
「このままでは、レンは王国の恥になります。
とても、諸侯に嫁げるような娘ではありません」
妃もまた、同じ考えでした。
そして何より、彼女は息子・マサキを偏愛していた。
娘の味方には、なれませんでした。
それからも、姫は修行を続けました。
そして、とうとう――
「参りました」
剣聖までもが、彼女に敗北を認めたのです。
その年、彼女はまだ十歳の誕生日すら迎えていませんでした。
――もはや、彼女の剣術を支えていたのは王ただ一人。
その王の意志だけでは、この流れを止めることはできませんでした。
こうして、姫は愛する剣を手放すことになりました。
そして、妃の手で、辺境にある別邸へと送られ、
「姫としての心得」を一から教え込まれることになったのです。
剣を捨てよ、という声に、涙は出なかった。
けれど、胸の奥がひどく、静かに痛んだ。
――それは、誰にも言えぬ、静かな別れだった。
その日から、彼女は――
「レン!その髪は何なのです」
長く美しかった銀髪を自ら切り落とし、
一人称を「私」から「俺」へと変えました。
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