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第四章:勝者も敗者も、恋を知る――月下の武闘会は乙女を育てる
第79話:武闘会エクストラ:恋と肉と、毛玉の夜
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武闘会は終わった。だが、祭りはまだまだ続く。
観客や選手たちはリングの残骸と、空から落ちた船の破片を燃やして、即席の焚き火を囲み、盛大な焼き肉パーティーを始めた。
元帝国人たちは自慢の民族楽器を奏で、王国人はそのリズムに合わせて踊り出す。今や国の違いなど、誰も気にしていなかった。
「今日のごちそうは俺の農場から持ってきた特選牛だぜ!」
キャノンは豪快に笑いながら、一頭まるごとの牛を焚き火のそばに運び込む。
「焼き肉といえば、王国一の焼肉奉行――このリッパー・テンペストにお任せあれ」
リッパーは骨の刃で素早く肉を切り分け、それを自らの骨に突き刺して、ゆっくりと焼き上げていく。焼き加減は絶妙で、立ちのぼる香ばしい香りに、あたりは食欲の嵐。
「ささ、勇者様。どうぞ召し上がれ。あなた様こそ、最も美味しい肉にふさわしいお方」
「バカ、味付けもなしで食わせるな。これをかけな!」
ベノムが取り出したのは怪しげな瓶。彼の一族秘伝の調味料らしい。
セリナが恐る恐る口に運ぶと――
「おいしい……でもちょっと舌がビリビリします」
「それこそが我が一族秘伝の“山椒粉”よ。辛味と痺れの共演。かのカズキ王も絶賛した味だ」
全身黒装束の彼が語る実家自慢は、どこか微笑ましいギャップを生んでいた。
その傍らでは、司会の女性二人も酒を片手に語り合っていた。
「私、彼氏が欲しいのよ! 来年で三十よ!? どうしていい男が現れないのよ!? 司会までやってるのに、最強戦士は女ばっかり! もうやってられないわ! ユウキ様、私をもらって!」
「無茶言わないで。身の丈に合った恋をしなさいって、前から言ってるでしょ」
「はぁ!? あんただって独身じゃない!」
「いえ、私は彼氏いますよ。駆け出し冒険者で年下。先月プロポーズされたの。ほら指輪♡」
「ちくしょー! 勝ち組が! 寝取ってやる!」
「できるものならどうぞ。なんならこれから武闘会エクストラで勝負?」
酒のせいか、いつの間にかじゃれ合いに発展していた。仲は――多分、良くなっている。
その隣では。
「ほ~れ、マサコになったある! ははは!」
「チ●コ返せ! このあるある女ーッ!!」
酒に酔った小梅が、遊び半分でマサキをマサコに戻したらしい。
「小梅に勝ったら返してやるある! できないなら、レン様みたいに自分で“気”をマスターしな!」
「できるかあああああッ!!!」
再び失った相棒。その再会は彼女の努力次第だ。
「やっぱ胸でかいあるね。小梅よりデカいあるよ。女のまま生きたら素敵な彼氏ができるある♡」
「酔っ払いめ! 触るなバカ! なんで俺がサービスキャラなんだよ、普通こっちが触る側だろ!」
「減るものでもないね。女同士ある♡」
……ああ、哀れなマサコよ。屈辱の数々は、きっと明日の強さに変わる。たぶん。
その輪から少し離れた場所で――
「ふふふ」
「なに、一人でニヤニヤしてるの?」
ルーとモリアは宝探し用の船を選ぶために港へ向かっており、話し相手がいない魔王は、焚き火の向こうで静かに笑っていた。
「セリナが、もう“普通の少女”ではなくなったな。皆の中心に立ち、最強の勇者として認められてる。計画は順調……ふふ」
孤独な支配者の微笑みは、ほんの少しだけ、あたたかかった。
そこに、準優勝の少女が姿を現す。
「すごくなったね、セリナ。昨日まで剣すらまともに握れなかったのに、今じゃみんなのヒロインだ」
「まるでお父さんみたいな目線だね」
「じゃあ君がお母さんか?」
「……」
銀髪のメイドは真っ赤になって口をつぐむ。
「セリナとキスしたらしいじゃない、しかも二回も、あの娘が自慢げに俺に言ったよ“あれ? レン君はまだキスしてないんですか?”って。どうして、あんたからは何もしてくれないのよ」
「だって、君がしてほしいって言わなかったから」
「……してほしいよ。あんたはなんでいつも鋭いのに、こんな時だけ鈍いの。俺も好きだよ、どうしようもなく、あんたのことが好きだよ……」
焚き火の灯りに照らされながら、少女は愛しい毛玉をそっと抱きしめ――そして、口づけを交わした。
観客や選手たちはリングの残骸と、空から落ちた船の破片を燃やして、即席の焚き火を囲み、盛大な焼き肉パーティーを始めた。
元帝国人たちは自慢の民族楽器を奏で、王国人はそのリズムに合わせて踊り出す。今や国の違いなど、誰も気にしていなかった。
「今日のごちそうは俺の農場から持ってきた特選牛だぜ!」
キャノンは豪快に笑いながら、一頭まるごとの牛を焚き火のそばに運び込む。
「焼き肉といえば、王国一の焼肉奉行――このリッパー・テンペストにお任せあれ」
リッパーは骨の刃で素早く肉を切り分け、それを自らの骨に突き刺して、ゆっくりと焼き上げていく。焼き加減は絶妙で、立ちのぼる香ばしい香りに、あたりは食欲の嵐。
「ささ、勇者様。どうぞ召し上がれ。あなた様こそ、最も美味しい肉にふさわしいお方」
「バカ、味付けもなしで食わせるな。これをかけな!」
ベノムが取り出したのは怪しげな瓶。彼の一族秘伝の調味料らしい。
セリナが恐る恐る口に運ぶと――
「おいしい……でもちょっと舌がビリビリします」
「それこそが我が一族秘伝の“山椒粉”よ。辛味と痺れの共演。かのカズキ王も絶賛した味だ」
全身黒装束の彼が語る実家自慢は、どこか微笑ましいギャップを生んでいた。
その傍らでは、司会の女性二人も酒を片手に語り合っていた。
「私、彼氏が欲しいのよ! 来年で三十よ!? どうしていい男が現れないのよ!? 司会までやってるのに、最強戦士は女ばっかり! もうやってられないわ! ユウキ様、私をもらって!」
「無茶言わないで。身の丈に合った恋をしなさいって、前から言ってるでしょ」
「はぁ!? あんただって独身じゃない!」
「いえ、私は彼氏いますよ。駆け出し冒険者で年下。先月プロポーズされたの。ほら指輪♡」
「ちくしょー! 勝ち組が! 寝取ってやる!」
「できるものならどうぞ。なんならこれから武闘会エクストラで勝負?」
酒のせいか、いつの間にかじゃれ合いに発展していた。仲は――多分、良くなっている。
その隣では。
「ほ~れ、マサコになったある! ははは!」
「チ●コ返せ! このあるある女ーッ!!」
酒に酔った小梅が、遊び半分でマサキをマサコに戻したらしい。
「小梅に勝ったら返してやるある! できないなら、レン様みたいに自分で“気”をマスターしな!」
「できるかあああああッ!!!」
再び失った相棒。その再会は彼女の努力次第だ。
「やっぱ胸でかいあるね。小梅よりデカいあるよ。女のまま生きたら素敵な彼氏ができるある♡」
「酔っ払いめ! 触るなバカ! なんで俺がサービスキャラなんだよ、普通こっちが触る側だろ!」
「減るものでもないね。女同士ある♡」
……ああ、哀れなマサコよ。屈辱の数々は、きっと明日の強さに変わる。たぶん。
その輪から少し離れた場所で――
「ふふふ」
「なに、一人でニヤニヤしてるの?」
ルーとモリアは宝探し用の船を選ぶために港へ向かっており、話し相手がいない魔王は、焚き火の向こうで静かに笑っていた。
「セリナが、もう“普通の少女”ではなくなったな。皆の中心に立ち、最強の勇者として認められてる。計画は順調……ふふ」
孤独な支配者の微笑みは、ほんの少しだけ、あたたかかった。
そこに、準優勝の少女が姿を現す。
「すごくなったね、セリナ。昨日まで剣すらまともに握れなかったのに、今じゃみんなのヒロインだ」
「まるでお父さんみたいな目線だね」
「じゃあ君がお母さんか?」
「……」
銀髪のメイドは真っ赤になって口をつぐむ。
「セリナとキスしたらしいじゃない、しかも二回も、あの娘が自慢げに俺に言ったよ“あれ? レン君はまだキスしてないんですか?”って。どうして、あんたからは何もしてくれないのよ」
「だって、君がしてほしいって言わなかったから」
「……してほしいよ。あんたはなんでいつも鋭いのに、こんな時だけ鈍いの。俺も好きだよ、どうしようもなく、あんたのことが好きだよ……」
焚き火の灯りに照らされながら、少女は愛しい毛玉をそっと抱きしめ――そして、口づけを交わした。
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