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第四章:勝者も敗者も、恋を知る――月下の武闘会は乙女を育てる
番外編⑨:魔王城、血のティータイム
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武闘会が盛り上がっていたその裏側――
モリアの姿は、どこにもなかった。
さて、彼女はどこにいたのか?
答えは――魔王城。
この世界には選ばれし勇者だけでなく、
魔王を倒して名を上げようとする冒険者ももちろんいる。
そして今日もまた、招かれざる客たちが、門を叩いた。
魔王の間に現れたのは、いかにも「勇者パーティー」を模した四人組。
戦士・魔法使い・僧侶・盗賊――バランスだけは良かった。
だが――その玉座に座っていたのは、真なる魔王ではなく、
全知の悪魔――パイモリアだった。
「お前が魔王か? なんだ、魔王っていうからてっきり、足が何本もある恐ろしい化け物だと思ったのに……こんなちっちゃい女の子とはな。こりゃ楽勝だぜ」
先に口を開いたのは、筋骨隆々の戦士だった。
オリハルコンランクにまで登り詰めた彼らにとって、
紅茶を飲みながら優雅に微笑むモリアは、まるで貴族のお嬢様のようにしか見えなかった。威圧感も、危機感もない。ただそこに「いるだけ」の存在。
「ええ、お探しの“魔王”なら、ここにはいらっしゃいませんわ。
代わりに魔王城への地図を差し上げますので、そちらへどうぞ」
モリアは丁寧に紅茶を口にしながら、静かに地図を差し出した。
「ふざけるな! こんな不気味な城が、魔王と無関係なはずがないだろう!」
僧侶が叫ぶ。確かにこの城はおかしかった。
人も魔物もいない森の奥深く。
城に入ってもモンスターはいない、罠もない。
その“整いすぎた無防備”が逆に異様だった。
「親切は素直に受けるものですのに……まあ、聞き入れないことは知っていますけれど」
そう言った次の瞬間――
時間が、止まった。
「話の最中に攻撃とは、無粋ですわ。
魔王の話は最後まで聞くもの。人間にそれを期待するのは、少々酷いかしら」
背後からモリアを襲おうとしていた盗賊――
その動きは完全に見切られ、そして。
「お仕置きですわ」
モリアが軽く指で空間をなぞると、時間が動き出し、
盗賊の首と胴が――綺麗に分かれた。
噴き出す血が服に飛ばないように、彼女はいつの間にか傘を差していた。
「……な、なにが起きた!?」
戦士たちが振り返ったときには、仲間の身体は床に崩れていた。
「よくも仲間を……このっ! メガフレア!!」
魔法使いが憤怒の声とともに、最大級の魔法を放つ。だが――
その魔法はモリアに届くことなく、
空間に吸い込まれ、反転し――
「きゃっ――!?」
魔法使いの背後から直撃。自分の魔法に焼かれる形になった。
「まあ、ひどいですわ。あんな危ないものを投げつけるなんて……お気に入りのドレスが焦げちゃったらどうしてくださるのかしら。ふふふ」
「治療を……! 早く……!」
「……ダメだ。もう焼け焦げて……」
僧侶は虚空に十字を切った。もう、手遅れだった。
開戦からほんの一瞬で、パーティは半壊。
「俺が時間を稼ぐ! あなたは急いでここを……!」
戦士の言葉が終わる前に。
「逃げるタイミングは、もう逃しましたわ。
だから最初に言ったでしょう? 素直に帰っていればよかったのに。残念です」
その言葉とともに、僧侶の首がありえない方向に折れ、地面に崩れた。
「ふふ……やっぱり、首をねじる方が床を汚さなくて済みますわね。エーコでいいですわ」
残ったのは、戦士ただ一人――そして、目の前にはモリアがいた。
*
(……なんだ、こいつは……!?)
勇者の物語なら知っている。魔王と戦い、勝利する話も聞いたことがある。
そんな規格外は出たことない。こんな存在は人間の勇者が倒せるわけがない。次元が違いすぎる。
「……と、考えておられましたかしら?」
「っ……!」
「安心して。私は読心の能力はありません。ただ――あなたの考えは、全部知っているだけ。あら、こっちの方がもっと怖いのかしら。」
モリアが、にっこりと微笑んだ。
「ここまで辿り着いたあなたへのご褒美に、ひとつ教えて差し上げますわ。
あなたたちが今まで倒してきた“魔王”は、魔族の王――スライムやドラゴンたち魔物の王にすぎません。
でも、“悪魔”はそこに入っておりませんわ」
悪魔は、魔族ではない。
悪魔の多くは、地獄に住まう――かつて堕天した元天使たち。
王クラス:9名
公爵クラス:36名
侯爵クラス:22名
伯爵クラス:3名
君主クラス:2名
それら全てを統べる、七十二柱の支配者。
「その頂点に君臨する者こそ、我が王――あの毛玉の正体、ですわ」
モリアは、紅茶を口にしながら、くすりと笑った。
「ややこしいですよね。“魔族の王”も“悪魔の王”も、全部まとめて“魔王”と略す人間の本も悪いですが、
ずっと規格外の相手と戦いた彼は慎重すぎます。まあ、私がそう誘導したのもありますが。――ふふ。だって、かわいらしいもの」
話しながら、彼女は目の前の戦士が、すでに壊れていることに気づいた。
「……あらあら。もう壊れちゃいましたか。お気の毒に」
戦士は恐怖で失禁し、そのまま静かに息を引き取っていた。
「死んでもお部屋を汚すなんて……礼儀がなってませんわ。ふふふ――」
モリアの姿は、どこにもなかった。
さて、彼女はどこにいたのか?
答えは――魔王城。
この世界には選ばれし勇者だけでなく、
魔王を倒して名を上げようとする冒険者ももちろんいる。
そして今日もまた、招かれざる客たちが、門を叩いた。
魔王の間に現れたのは、いかにも「勇者パーティー」を模した四人組。
戦士・魔法使い・僧侶・盗賊――バランスだけは良かった。
だが――その玉座に座っていたのは、真なる魔王ではなく、
全知の悪魔――パイモリアだった。
「お前が魔王か? なんだ、魔王っていうからてっきり、足が何本もある恐ろしい化け物だと思ったのに……こんなちっちゃい女の子とはな。こりゃ楽勝だぜ」
先に口を開いたのは、筋骨隆々の戦士だった。
オリハルコンランクにまで登り詰めた彼らにとって、
紅茶を飲みながら優雅に微笑むモリアは、まるで貴族のお嬢様のようにしか見えなかった。威圧感も、危機感もない。ただそこに「いるだけ」の存在。
「ええ、お探しの“魔王”なら、ここにはいらっしゃいませんわ。
代わりに魔王城への地図を差し上げますので、そちらへどうぞ」
モリアは丁寧に紅茶を口にしながら、静かに地図を差し出した。
「ふざけるな! こんな不気味な城が、魔王と無関係なはずがないだろう!」
僧侶が叫ぶ。確かにこの城はおかしかった。
人も魔物もいない森の奥深く。
城に入ってもモンスターはいない、罠もない。
その“整いすぎた無防備”が逆に異様だった。
「親切は素直に受けるものですのに……まあ、聞き入れないことは知っていますけれど」
そう言った次の瞬間――
時間が、止まった。
「話の最中に攻撃とは、無粋ですわ。
魔王の話は最後まで聞くもの。人間にそれを期待するのは、少々酷いかしら」
背後からモリアを襲おうとしていた盗賊――
その動きは完全に見切られ、そして。
「お仕置きですわ」
モリアが軽く指で空間をなぞると、時間が動き出し、
盗賊の首と胴が――綺麗に分かれた。
噴き出す血が服に飛ばないように、彼女はいつの間にか傘を差していた。
「……な、なにが起きた!?」
戦士たちが振り返ったときには、仲間の身体は床に崩れていた。
「よくも仲間を……このっ! メガフレア!!」
魔法使いが憤怒の声とともに、最大級の魔法を放つ。だが――
その魔法はモリアに届くことなく、
空間に吸い込まれ、反転し――
「きゃっ――!?」
魔法使いの背後から直撃。自分の魔法に焼かれる形になった。
「まあ、ひどいですわ。あんな危ないものを投げつけるなんて……お気に入りのドレスが焦げちゃったらどうしてくださるのかしら。ふふふ」
「治療を……! 早く……!」
「……ダメだ。もう焼け焦げて……」
僧侶は虚空に十字を切った。もう、手遅れだった。
開戦からほんの一瞬で、パーティは半壊。
「俺が時間を稼ぐ! あなたは急いでここを……!」
戦士の言葉が終わる前に。
「逃げるタイミングは、もう逃しましたわ。
だから最初に言ったでしょう? 素直に帰っていればよかったのに。残念です」
その言葉とともに、僧侶の首がありえない方向に折れ、地面に崩れた。
「ふふ……やっぱり、首をねじる方が床を汚さなくて済みますわね。エーコでいいですわ」
残ったのは、戦士ただ一人――そして、目の前にはモリアがいた。
*
(……なんだ、こいつは……!?)
勇者の物語なら知っている。魔王と戦い、勝利する話も聞いたことがある。
そんな規格外は出たことない。こんな存在は人間の勇者が倒せるわけがない。次元が違いすぎる。
「……と、考えておられましたかしら?」
「っ……!」
「安心して。私は読心の能力はありません。ただ――あなたの考えは、全部知っているだけ。あら、こっちの方がもっと怖いのかしら。」
モリアが、にっこりと微笑んだ。
「ここまで辿り着いたあなたへのご褒美に、ひとつ教えて差し上げますわ。
あなたたちが今まで倒してきた“魔王”は、魔族の王――スライムやドラゴンたち魔物の王にすぎません。
でも、“悪魔”はそこに入っておりませんわ」
悪魔は、魔族ではない。
悪魔の多くは、地獄に住まう――かつて堕天した元天使たち。
王クラス:9名
公爵クラス:36名
侯爵クラス:22名
伯爵クラス:3名
君主クラス:2名
それら全てを統べる、七十二柱の支配者。
「その頂点に君臨する者こそ、我が王――あの毛玉の正体、ですわ」
モリアは、紅茶を口にしながら、くすりと笑った。
「ややこしいですよね。“魔族の王”も“悪魔の王”も、全部まとめて“魔王”と略す人間の本も悪いですが、
ずっと規格外の相手と戦いた彼は慎重すぎます。まあ、私がそう誘導したのもありますが。――ふふ。だって、かわいらしいもの」
話しながら、彼女は目の前の戦士が、すでに壊れていることに気づいた。
「……あらあら。もう壊れちゃいましたか。お気の毒に」
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