まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

文字の大きさ
90 / 190
第五章:沈みゆく天使と黒真珠の誓い――海賊王の財宝に眠る、最後の願い

第81話:ドーンピースとメイド商会

しおりを挟む
テンペスト・タイラント、かつて海賊王まで上り詰めた男。 その悪名は、ただその海賊旗を見るだけで白旗を上げる商船も多々あるほどだった。 海を股にかける覇者、多くの財宝を所有していたはずなのに、その死後は一向に見つからなかった。 だからこそ、海賊王は財宝を隠したという伝説が今も残っている。

この『ドーンピース』という本を見て、私は思った。 人間の欲が深いな、と。死んでもなお財を手放したくないとは。 あの世に持っていけないし、持っていけたとしても使えない。くだらない。 まあ、ルーは財宝より“海賊ごっこ”がしたいだけだし、最近あまり構ってあげていないから、たまには付き合ってやるか。

モリアから名刺を受け取り、私たちはそこに記された住所へ向かった。 レンはすごく嫌そうな顔をしていたが……まあ、前に何かあったんだろう。 店は見た目はまともそうだが、とりあえず中へ入ろう。

「いらっしゃいませ、ご主人様! マリ商会へようこそ――あれ?」 メイド服を着た女性が私たちを迎え入れた。 ご主人様? いやいや、うちのメイドは一人だけだが……

「マリさん!」

「セリナじゃない」 どうやらセリナの知り合いらしい。



「ねね、マスター、この箱開けると音楽が出るよ。魔法かな?」

「人の店の商品を勝手に触っちゃダメだぞ。後で買ってから。ちょっと我慢しなさい」

「はーい、マスター大好き」

なかなかよくできている店だ。 王国では見たことのない商品がずらりと並んでいる。 これは帝国の製品だ。 帝国は機械技術の発展が著しく、さまざまな機械を作れる。 しかも、魔力を使わなくても動くものが多く、便利なので私も時々利用している。

「帝国の香水の製造技術は王国より高くて、おかげで香りのバリエーションが増えましたの。 乙女的にはありがたいことですわ」 あのモリアですら、買い物を楽しんでいるようだった。

「マリさんは農場をするで、前は言いませんでしたか?」 「いや、それがね。仲間の農民たちの農産物を近隣の町で売ってみたら、 私に商才があるって気づいちゃってさ。なにより、このメイド服で接客したらが大好評なのよ、これ見当てに買い物来る客もいるくらいに。 だから王国中に支店を出して、今回は帝国の商品も扱うことになったの。 見てなさいよ、シエノ。すぐに私が迎えに行くから、首を洗って待ってなさいっての!」

「メイド服ね……セリナが勇者として活躍してるから、その影響かも。 本来は使用人の服なのに、今じゃ人気とはね。不思議だ」 そう言ったレンは、呆れているようでいて、どこか楽しそうだった。

「えー、この人が前にセリナが言ってた“マオウさん”? 若っ! 前に話を聞いた時は年上の落ち着いた人かと思ったのに、かっこいい! ダメよ、マリ。あなたにはシエノがいるんだから、友達の彼氏を変な目で見ちゃだめ!」

「いいえ、彼女はレン君です。マオウさんじゃありません」

「女の子!? いいじゃない、ね? メイド服着てみない? お姉さんが着替え手伝ってあげるから♡」

「絶対に着ない! 俺はあれから二度とメイド服を着ないと誓った!」 ……なるほど、武闘会決勝戦のトラウマはまだ尾を引いているらしい。

「マオウさんなら、あちらにいますよ」 セリナが私の方を指差す。

「……あれ? あれは荷物持ちのオジサンじゃないの!?」 パーティーの一員とすら思っていなかったのか。



「黒真珠? あるわよ」 マリは小さな箱を開けた。 中には、闇を凝縮したような深みのある光沢を放つ黒真珠が納められていた。 表面には微かな虹色の輝きが潜んでおり、夜の海に月光が差したような印象を与える。 触れればひんやりとしており、重厚な存在感を放っていた。

「非売品だけど……ちょっと商船の護衛を手伝ってもらえたら、売ってあげる」

「きっと密輸だ。その商船、何を積んでるんだ。武器か? 黄金か? ……まさか白粉じゃないだろうな」

「失礼ね、おっさん! これは“同人誌”よ!」

なにそれ? 本のようだがやけに薄い。一本手に取ると――

男同士が睦み合う絵が描かれていた。 なにこれ?

「本ですか? セリナも見てみたいです」 「いや、セリナ君にはまだ早い!」 好奇心旺盛な娘だが、これは……さすがに見せたくない。 なんか腐りそうな気がする。

「帝国は技術は発展しているけど、娯楽は乏しいの。 だからこういう物が飛ぶように売れるのよ。 今まで海賊たちも興味を示さなかったのに、最近は海賊が酷くてみんな船を出さないじゃん?だからそういうの関係なく襲ってくるかもしれない。心配だわ」

ホモ本を狙う海賊か…… 堕ちているというか、腐っている。

「分かりました、引き受けます」 セリナは心よく応じた。だよな、この娘なら条件なしで受けると思った。

「やだね、僕は宝探しがしたい」 ルーは不機嫌そうだった。前回我慢した分、今回も待たされるのが嫌らしい。

「わかった、途中まで同行して、マリたちが公海に出て帝国海域に入ったら、私がルーと宝探しに行く。 結果はともかく、マリたちがラム・ランデブーへ戻るときに合流する、いいな?」

「うん! 久しぶりにマスターと二人きりだ」

モリアまで連れて行くと喧嘩になりそうなので逆効果だ。 仮に財宝の在処を知っていても、ルーのために教えるはずもないだろ。

「セリナも一緒に行きたいです」

「セリナ君が受けた依頼だろ、責任もって最後まで付き添ってあげなさい。友達だろ?」

「はい……おっしゃる通りです」 心底残念そうだった。仕方ない娘だ。

「帰ったら二人で出かけよう」

「はい。セリナ、いい本屋知っています!」

「じゃあ、これで話はついたな――って、いつまでそれ読んでる!? 君はホモになりたいのか!!」 さっきからホモ本を真剣に読みふけっているレンの本を取り上げ、 私たちは港へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!

神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。 そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。 これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。  

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

処理中です...