4 / 11
4
しおりを挟む
ミゲル……まだ、身体が治らないんだ。
俺が居なくなっても、何も変わらないじゃないか。
お父様もナイルも、これで気づいたでしょう……?
ミゲルの病気は、俺のせいじゃないって──!
「シエル、大丈夫かい?」
「……はい。あの、書かれていたのは、それだけですか?」
「それと……その弟君の治療費を、俺に援助して欲しい、とも書かれていた。」
「な、何て事を……!イグニス様、そんなもの払わないで下さい。どうか、そんな事は……!」
「シエル、落ち着いて!」
あ……。
俺……今、何て事を──!
きっと、酷い兄だと思われた。
思いやりのない人でなし、お金に卑しく心の狭い奴だと……。
イグニス様も皆と同じ様に、俺の事を悪人だと思ったに違いない──!
俺はいたたまれなくなって、思わず部屋を飛び出した。
俺の名を呼び、引き留めようとするイグニス様の手を振り払って──。
※※※
ハァ、ハァ……。
俺は庭まで走ってくると、そこにしゃがみこんだ。
『シエル!ミゲルの病気は、お前の仕業だろう!ミゲルが言ったんだ、お前が毎日、怪しい祈りを星に捧げていると。』
『ナイル、違うよ!俺はこの子が早く良くなるようにと、そう祈って──』
『嘘を言うな!お前はミゲルとは逆に、闇魔法の使い手だ。だからミゲルの病気だって、元はお前が闇魔法で呪いをかけたんじゃないのか?これを見ろ!ミゲルの言葉通り、お前の部屋から呪術に関する本が出て来たぞ?』
『そ、そんな物、知らない!お父様、お父様は……俺を信じて下さいますよね?』
『ミゲル……お前が隠れて弟に酷い事をしていると言うのは、やはり事実か。お前の悪事は、ミゲルにずいぶん前から相談されていたが……こんな事になるなら、もっと早くこの子の言う事を信じてやれば良かった!シエル、お前は何と恐ろしい奴だ。』
『弟をこんな目に遭わせて…お前は最低だ!』
『違うよお父様、ナイル……俺は、ミゲルに何もしていない──!』
※※※
「違う、違う……!俺を信じてよ。お願い……誰か……俺の事、信じて──!」
「信じるよ。俺は、君を信じる。」
震える俺の身体を、温かくて大きなものがフワリと包んだ。
「イ、イグニス様……!俺、さっきはあんな事……。お、お願いです……俺の事、捨てないで?どうか、俺を嫌いにならないで──!」
「ならないよ……俺が君を捨てたり嫌いになる事など、絶対にない。俺はね、シエル。君の弟君の病気に、一銭も払う気は無いよ。……君にこんな顔をさせてしまうなら、もっと早く話せばよかった。弟君の病気の事、そして……俺の事を。」
そう言うと、イグニス様は座り込んだ俺を抱き上げ、庭にあるベンチにそっと下ろし……自身もその隣に腰掛けた。
「シエル、君の弟君の病気は天罰だよ。あの子はね……今よりずっと昔に、この土地の神の使いを虐めたのさ。」
「天、罰……?」
「そう。あの子は幼い頃、道端に居た蛇を虐めた。見た目が気持ち悪いという、つまらない理由でね。蛇が何も抵抗できないのをいい事に、自分の魔力でいたぶったのさ──。」
俺が居なくなっても、何も変わらないじゃないか。
お父様もナイルも、これで気づいたでしょう……?
ミゲルの病気は、俺のせいじゃないって──!
「シエル、大丈夫かい?」
「……はい。あの、書かれていたのは、それだけですか?」
「それと……その弟君の治療費を、俺に援助して欲しい、とも書かれていた。」
「な、何て事を……!イグニス様、そんなもの払わないで下さい。どうか、そんな事は……!」
「シエル、落ち着いて!」
あ……。
俺……今、何て事を──!
きっと、酷い兄だと思われた。
思いやりのない人でなし、お金に卑しく心の狭い奴だと……。
イグニス様も皆と同じ様に、俺の事を悪人だと思ったに違いない──!
俺はいたたまれなくなって、思わず部屋を飛び出した。
俺の名を呼び、引き留めようとするイグニス様の手を振り払って──。
※※※
ハァ、ハァ……。
俺は庭まで走ってくると、そこにしゃがみこんだ。
『シエル!ミゲルの病気は、お前の仕業だろう!ミゲルが言ったんだ、お前が毎日、怪しい祈りを星に捧げていると。』
『ナイル、違うよ!俺はこの子が早く良くなるようにと、そう祈って──』
『嘘を言うな!お前はミゲルとは逆に、闇魔法の使い手だ。だからミゲルの病気だって、元はお前が闇魔法で呪いをかけたんじゃないのか?これを見ろ!ミゲルの言葉通り、お前の部屋から呪術に関する本が出て来たぞ?』
『そ、そんな物、知らない!お父様、お父様は……俺を信じて下さいますよね?』
『ミゲル……お前が隠れて弟に酷い事をしていると言うのは、やはり事実か。お前の悪事は、ミゲルにずいぶん前から相談されていたが……こんな事になるなら、もっと早くこの子の言う事を信じてやれば良かった!シエル、お前は何と恐ろしい奴だ。』
『弟をこんな目に遭わせて…お前は最低だ!』
『違うよお父様、ナイル……俺は、ミゲルに何もしていない──!』
※※※
「違う、違う……!俺を信じてよ。お願い……誰か……俺の事、信じて──!」
「信じるよ。俺は、君を信じる。」
震える俺の身体を、温かくて大きなものがフワリと包んだ。
「イ、イグニス様……!俺、さっきはあんな事……。お、お願いです……俺の事、捨てないで?どうか、俺を嫌いにならないで──!」
「ならないよ……俺が君を捨てたり嫌いになる事など、絶対にない。俺はね、シエル。君の弟君の病気に、一銭も払う気は無いよ。……君にこんな顔をさせてしまうなら、もっと早く話せばよかった。弟君の病気の事、そして……俺の事を。」
そう言うと、イグニス様は座り込んだ俺を抱き上げ、庭にあるベンチにそっと下ろし……自身もその隣に腰掛けた。
「シエル、君の弟君の病気は天罰だよ。あの子はね……今よりずっと昔に、この土地の神の使いを虐めたのさ。」
「天、罰……?」
「そう。あの子は幼い頃、道端に居た蛇を虐めた。見た目が気持ち悪いという、つまらない理由でね。蛇が何も抵抗できないのをいい事に、自分の魔力でいたぶったのさ──。」
46
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
無能と呼ばれた婚約者は王を完成させる〜替え玉婚約者のはずが、強すぎる王太子に手放してもらえません〜
統子
BL
兄の身代わりとして王太子の婚約者になった伯爵家次男リュシー。
嘘の名を名乗ったはずが、冷静で誠実な王太子リオンは彼を「力の装置」としてではなく、対等な伴侶として扱おうとする。
本物になりたいと願う替え玉と、完成された王太子の静謐な王宮ロマンス。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる