捨てられた悪しき令息は、花嫁となり邪神様にその身を捧ぐ。

櫻坂 真紀

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『ああ、ミゲル。可哀かわいそうに……。』

『お父様、顔が痛い……!』

『ミゲルの可愛らしい顔にあざが……!これは、何かの伝染病か?』

 可哀そうなミゲル……。
 でも、きっと治るからね?

 その為に、俺が星に祈ってあげる。
 毎晩、祈ってあげるから──。

※※※

 ……夢を見た。

 ミゲルの原因不明の病気。
 あれが、全ての始まりだった。

 だから俺は、毎晩星に祈った。
 弟の病気が治るようにと。
 
 そう……俺は弟が大事だから、ああして祈りを捧げたのに。
 なのにそれを、あんな形で裏切られる事になるなんて──。
 
 コン、コン。

「シエル、入るよ?朝食の時間だけど……食べられるかい?」

「はい、イグニス様。ごめんなさい、お待たせして。今行きます。」

 しまった。
 また寝過ごしてしまった。

 こうしてフカフカのベットで眠るのは久しぶりで、ついつい寝過ごしてしまう。

『この家に慣れるまで、のんびり過ごせばいいんだよ。』

 イグニス様は、そうおしゃってくれるけど……いつまでも甘えるのも駄目だよね。

 だって俺は、あの方に花嫁に貰われた身だ。
 本来なら、俺がイグニス様に色々と尽くして差し上げなければならないのに──。

 そう、俺はイグニス様の花嫁。
 邪神様の供物……などではなかった。

 俺はここに来るまでは、ずっと自分の事をただの供物に過ぎないと思っていた。
 だから、ぞんざいな扱いを受けるのは当たり前、そうされても仕方のない事だと思ってたのに──。

 実際は、全然違った。

 イグニス様は、俺にとても優しくして下さる。
 ずっと地下牢に居たせいで弱くなってしまった俺の身体を気遣い、いつも労わって下さるのだ。

 何より……毎日俺に、愛の言葉をささやいて下さる。

『シエル……俺は君を愛しているよ。いつまでも一緒に居よう。』

 でも……俺はその言葉に、ちゃんと返事を返せないでいる。

 イグニス様は、どこまで俺の事を知っているの?
 俺に起きた出来事の一部始終を知っていたら、俺に対してそんな事言えないはず……。

 知らないのならば……俺の事、隠してないでちゃんとお話ししないといけない。

 でもそれを話して、逆にイグニス様に嫌われるのも……それもまたつらい事だ。

 そう思える程に、俺はここの暮らしを好きになっていた。
 
 いや……イグニス様の事を、好きになっていたのだ──。

※※※

 俺がこの家に来て三ヶ月程経った頃……イグニス様がお一人で、何かを考え込む様になられた。

 イグニス様……また深刻そうな顔で、手紙を読んでいらっしゃる──。
 一体、あれには何が書かれているのだろう?

「あの、イグニス様……何か、ありましたか?」

「シエルか、いや……うん。」

「あの……どうぞ俺におっしゃって下さい。俺はイグニス様の、その、妻……ですから。」

「シエル……!」

 俺の言葉に、イグニス様は俺をそっと抱き締めた。
 こうして……妻って自分から言葉にしたの、初めてだ──。

「言うべきかどうか迷っていたたんだが……実は少し前から、君の家から手紙が届いていてね。」

 その言葉に、俺の身体はビクリと震えた。

「そう、ですか。手紙には……何と?」

「弟君の体調が、良くならないとあった。」
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