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あれ……俺、どうしてこんな暗い所に居るんだ?
確かスタジオに向かってて……そこでリョウを見かけて……そうだ、俺はリョウを庇って──!?
「リョウ──!」
そこは、見知った部屋だった。
「あ、れ……?もう撮影、始まってたっけ?」
そこは、俺が演じる高校生の「慎」の部屋だった。
今寝ているこのベッドも、部屋にある家具も小物も……あの壁に掛けてある制服だって、慎の物だ。
「そう言えば……背中、痛くない?」
壊れた大道具が背中に直撃したはずなのに……俺はこうしてピンピンしている。
ふとベッドの脇にあるスマホを手に取れば、それは妙な日付と時刻を示していた。
「何で四月十一日?しかも朝の五時に起きる様になってるし……。これって……ドラマの第一話そのものだな。新学期が始まって、慎は亮の為に日課のお弁当を用意する為に早起きして……それで近くに住む亮を起こして学校に行く──。」
ベッドから降り部屋のドアを開ければ、そこには思った通り階段があって……一階へ降りれば、母親役の女優さんが居て──。
「おはよう慎、今日からいよいよ新学期ね!高校生活もあと一年だから、頑張るのよ?」
「お、おはようございます!」
確か、こんなセリフがあったけど……でも、周りにカメラさんも照明さんも誰も居ないし……どうなってるんだ?
俺がキョロキョロしていると、母親役の女優さんが訝し気にこう言って来た。
「いやあね、何よ敬語で挨拶なんかして……もしかして寝ぼけてる?早くお弁当作って、亮君起こしに行ってあげなさいよ。」
こ、このセリフはなかった!?
それにこんな言い方……これじゃあまるで、本物のお母さんじゃないか──!
※※※
俺は狼狽えながらも、キッチンに立った。
お弁当って言ったって……ドラマの中じゃ、もう出来上がったおかずが用意されてて詰めるだけとかだったし……そもそも俺は、簡単な料理くらいしか作れない──。
そう頭で思ったのだが……何故か俺の身体は、ごく当たり前の事の様にスイスイ動き、あっという間にだし巻き卵を完成させた。
しかも、冷蔵庫から下味を付けてある鶏肉を出し、唐揚げまで揚げてしまう始末だ。
何だろう……亮が食べたい物や好きな物が、手に取る様に分かる。
何をどうして作ってあげれば彼が喜んでくれるっていうのが、身に染み付いてる。
ドラマの中では、慎と亮は幼馴染の恋人同士だった。
だから分かるのだろうか……。
そしたら、やはりここはドラマの中の世界で……今の俺はアイドルのシンじゃなく、高校生の「慎」なんだ。
じゃあ……現実世界のシンは?
もしかして、あの背中を打った衝撃で死んだんじゃないだろうか。
今の俺は、ドラマの中の慎に生まれ変わった?転生した?取り憑いた?
何が何だか分からないけど……ずっと好きだった彼に失恋した上に嫌われ、その後死んだ俺が行き着いたのは……彼に愛される世界だった──。
確かスタジオに向かってて……そこでリョウを見かけて……そうだ、俺はリョウを庇って──!?
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「そう言えば……背中、痛くない?」
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「何で四月十一日?しかも朝の五時に起きる様になってるし……。これって……ドラマの第一話そのものだな。新学期が始まって、慎は亮の為に日課のお弁当を用意する為に早起きして……それで近くに住む亮を起こして学校に行く──。」
ベッドから降り部屋のドアを開ければ、そこには思った通り階段があって……一階へ降りれば、母親役の女優さんが居て──。
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そう頭で思ったのだが……何故か俺の身体は、ごく当たり前の事の様にスイスイ動き、あっという間にだし巻き卵を完成させた。
しかも、冷蔵庫から下味を付けてある鶏肉を出し、唐揚げまで揚げてしまう始末だ。
何だろう……亮が食べたい物や好きな物が、手に取る様に分かる。
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だから分かるのだろうか……。
そしたら、やはりここはドラマの中の世界で……今の俺はアイドルのシンじゃなく、高校生の「慎」なんだ。
じゃあ……現実世界のシンは?
もしかして、あの背中を打った衝撃で死んだんじゃないだろうか。
今の俺は、ドラマの中の慎に生まれ変わった?転生した?取り憑いた?
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