失恋した上に嫌われ、死んでしまった俺は…目が覚めたら彼に愛される世界に居た。

櫻坂 真紀

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 それから数日が経ったものの、亮と幸はあまり話す事がないままだった。

 教科書を見せるのも、俺の教科書落書きだらけで汚いから、反対側の隣の奴に見せて貰ってと、亮は断っていた。
 
 確かに、落書きは沢山あるけども!
 ドラマの中ではその落書きで亮と幸が盛り上がり、恋人であるはずの俺は蚊帳の外状態だったんだけど……。

 何か、この亮ってどこまでも俺が好きだな。
 いや、慎になった俺じゃなく、慎が……か?

 ただ、そんな亮に対し、幸の気持ちは変わらない様だった。

 相変わらず、お昼を一緒に食べようと声をかけて来るし……。

 周りの目もあってか、亮もそう何度も断るのに困っている様子だ。
 
 だから俺は、亮にこう言った。

『今日のお昼は、幸も一緒に食べよう。ただ……裏庭のベンチは嫌だ。』
 
 だってあそこは、俺と亮の秘密の場所だから──。

 俺の気持ちを悟ったらしく、亮は分かったと言い俺の頭を優しく撫でた。

 ……この世界の亮は、俺の頭を良く撫でてくれる。

 前に、どうしてそうするのか聞いた事がある。

『何か……そうしないと、お前が消えちゃうそうだから。お前をちゃんと愛してる、大事だって気持ちを伝えないと、お前を失いそうだから。』

 亮は、そう話してくれた。

 俺は前の世界では、死んで消えちゃったけど……俺、今度は消えないよ?
 いや……もう消えたくないんだ。
 
 でも……万が一亮が幸を選んだら、また消えちゃいたいと思うのだろうか──。

※※※

 そして、お昼の時間がやって来た。

「亮君、お昼一緒に──」

「いいよ、椅子持って来て。」

 亮の言葉に、幸は一瞬驚き、そしてニッコリ微笑んだ。

 幸は、可愛らしいお弁当箱を取り出し机に広げた。

「これね、俺が作ったんだ!」

「蓮見、料理が得意なのか?」

「うん!亮君のお弁当は……男の子らしいお弁当だね。ていうか……二人共、おかずが一緒だね。」

「あぁ、この弁当は慎が作ってくれてるから。」

「そう……。慎君も、料理上手なんだね。」

「あ、ありがとう。」

「俺の弁当は、毎日慎が作ってくれててさ。俺は凄く感謝してる。」

「ふ~ん、そっか。でもさ……たまには市販のパンとか、他の人が作ったお弁当とか食べたくならない?」

 俺は、その言葉にドキッとした。

 これ、ドラマの中で……確かもうすぐある野外授業で言われるセリフだ。

 その時亮は、一瞬迷った顔をしながらもこう言った。

『まぁ、確かに、他の人が作った弁当には興味あるかな。』

『じゃあさ、明日のお弁当は俺が作って来てあげるよ!』

 それが、慎がお弁当を作るのを辞めたきっかけだったな──。

 俺はドキドキして、亮の答えを待った。

「……確かに、他の人が作った物がどんな味だろうか気になる事はある。でも……食べたいって気にはならないな。弁当も朝ごはんも……時々夜もだけど、慎の作る物を目の前にすると、他の料理は目に入らなくなるんだ。」

 そういって笑う亮に、俺の顔は赤く染まった。

 そしてそんな俺を、幸は面白くなさそうに見ていた──。
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