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 その日は亮が日直で担任に呼ばれ、教室を留守にしていた。

 するとその間に、幸に話があると俺は外へ連れ出された。

「亮君と慎君って、幼馴染なんだよね?それで、付き合ってもいるんだよね?」

「そう、だけど……それが何?」

「それって……ただの勘違いじゃないの?」

 俺は、驚いて幸を見た。

「幼馴染って距離が近いでしょう?そうすると、ただの親愛の好きを愛してるの好きだと勘違いする事もあるんじゃないかなって。刷り込みみたいな……そんな感じ?」

「ち、違う!少なくとも俺は、亮の事が特別な意味で好きで──」

「じゃあ、亮君は分からないって事?それなら俺が好きになっても、チャンスはあるかもしれないんだよね?」

『俺が好きになっても、チャンスはあるかもしれないんだよね?』

 これ……ドラマの中で、幸が俺じゃなく亮に言ったセリフだ。

 そのセリフを言われ、初めて亮は、幸が自分を特別な意味で好きなんだと自覚する。
 そして、そんな幸に惹かれ始めている自分に気付き……俺との仲がギクシャクして行くのだ。

 慎はそんな亮の気持ちに気付き、身を引く方向で居たけど……その後はまだ未定で、俺もどうなるか分からぬまま死んでしまった──。

 ドラマとは色々細かい所が違うから安心してたけど……でも、結局は同じなんだろうか──?

「ねぇ、何とか言ってよ。俺が聞いてるんだけど?」

 でも……これで大人しく引き下がるのは嫌だ。
 だって、亮は俺をあんなにも好きだと……とても大事にしてくれている。

 ここであっさり身を引けば、そんな亮を裏切る事になるんじゃないだろうか──。

「幸君が亮を好きになる気持ちは自由だけど、チャンスがあるかは知らない。こんな所でコソコソ俺に聞くんじゃなく、本人に聞いたらどうかな?」

 俺の言葉に幸は真っ赤な顔になり、もういいと言って教室に戻って行った──。

※※※

 き、緊張した……!
 あんなキツイ事言ったの、久しぶりだ。

 特にユキには、下手な事は言わないように気を使ってたからな……。

 ユキがグループに加入してすぐ、遅刻が続いた時があって、俺はリーダーとして注意したんだけど……思えば、あれが原因でユキのファンに嫌われる事になったんだよな。
 ユキがファンの子に言われた俺の不正って、その時俺を嫌いになった子たちの仕業だったのか……?

 思い返せば……現実世界の俺は、ずっとリーダーやってたせいもあってか、思った事はハッキリ言う性格だった。
 いや、リョウへの気持ちは言えなかったけど、それ以外は割と……。

 でも、この世界の慎は違ったっけ。
 どっちかって言ったら、控えめで大人しく、何か言われても言い返したりしない。

 しまった……俺、失敗したかも!

 今回の件を幸が話し亮が知ったら、俺の事を幻滅したり……嫌いになったりしないだろうか……。

 どうしよう、教室に戻るのが……亮の顔を見るのが怖い──!
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