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未来編⑦
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「これで良し。常連さんの家には休業のお知らせを入れさせて貰ったし……お客さんがオーナーやってるコンビニにも、ポスター貼らせて貰えたし……。モーニング食べに来ていきなりお休みじゃあ、いくらなんでもなぁ。」
「キャン。」
「ポメ吉、付き合ってくれてありがとう。ごめんな……?看板犬なのに、本当に番犬みたいな事させちゃって。」
「キャン!」
ポメ吉は、いいよ~と言う様に、尻尾を振って見せた。
「後は、お店に貼って終わりだからね──。」
善は急げとばかりに……俺はまだ夜も明けきらぬ内に、休業連絡のお知らせを作成し、近所に配っていたのだ。
それにこの人気が少ない明け方の時間なら……お店の開店前なら、あの貼り紙をした犯人に会えるかもと思ったのだ。
お店の外に隠れて、様子を伺うか……。
それでもし犯人らしき人がドアに近づき何かしたら、声をかけさせて貰おう──。
今後の事を考えたら、出来るなら、警察沙汰にはしたくないし……。
それに、どうしてあんな文を書いたのか……その人が何を思ってあんな事をしたのか、俺は知りたいんだ──。
そして、十分ほど経った頃……店に誰かが近付くのが見えた。
その手には、白い紙らしき物を持っている。
するとその人物は……店のドアへと、ゆっくり近づいた。
「待って下さい!これ以上、おかしな物を貼るのは──た、巽、さん……?」
そこに居たのは、スーツを着た巽さんだった。
な、何で、巽さんが……?
すると巽さんは、悲しそうな顔をして手にした紙を見せて来た。
「仕事から帰ったら、ポストにこれが入ってましたので……。居ても立っても居られず、店を見に来てしまいました。もしかしたら……マスターに会えるかもと思いまして。」
巽さんが差し出したのは、俺が先程ポストに入れた、休業連絡のあの紙だった。
それを見た俺は、思わず足から力が抜け、その場に崩れ落ちた──。
※※※
「ごめんなさい、巽さん。俺、とんだ勘違いを……。」
「いえ。突然、駆け付けた俺が悪かったんです。」
俺は店を開け巽さんを中に招くと、お詫びにコーヒーをご馳走した。
「でも……残念ですね、一旦休業とは。」
「特に何かあった訳でもないのに、お休みするのは大袈裟かなとは思いますけど……。でも、これ以上大切な人を巻き込みたくはないし……。彼あっての俺、だから──。」
「そうですか……。でも、丁度いい機会かもしれませんね。」
そう言って巽さんはテーブル席から立ち上がり、カウンターに座る俺の元へ近づいて来た。
「いい機会って……巽さん、あなた……?」
「俺、もうすぐ転勤になるんです。だから、この店に来れなくなってしまうんですよ。」
「そ、そうなんですか……。それは、残念です。」
「俺はね、マスター……いいえ、シンさん。あなたと二度も別れるのは、とても耐えられないんです。」
「に、二度も……?っていうか、俺……あなたに名前、教えましたっけ?」
巽さんは、俺の頬にそっと触れると、スルリと撫でた。
「……ッ!あ、の……俺、お店の休業準備をしないと……。だから──!」
「あなたのそういう所……前と全く変わってませんね。アイドルの癖に……本当は、他人に触れられるのが苦手な所──。」
「ア、アイドルって、何でそれ……!」
「俺はね……あなたを追いかけ……いや、あなたを迎えにこの世界に来たんですよ。今度こそ、正しい運命にしたくて。俺は……あなたと同じ事務所で後輩だった、アイドルのTATSUMIです。」
「巽さん……たつみ……?……あっ!?」
後輩だったTATSUMIは、髪を金に染めピアスだっていっぱい付けてて、もっと派手な男で……それに、こんな口調じゃなかったけど……でも俺を見つめる、眼鏡の下にあるこの目は……確かに、彼の──。
「ハハ、やっと思い出してくれたんですね──。」
「キャン。」
「ポメ吉、付き合ってくれてありがとう。ごめんな……?看板犬なのに、本当に番犬みたいな事させちゃって。」
「キャン!」
ポメ吉は、いいよ~と言う様に、尻尾を振って見せた。
「後は、お店に貼って終わりだからね──。」
善は急げとばかりに……俺はまだ夜も明けきらぬ内に、休業連絡のお知らせを作成し、近所に配っていたのだ。
それにこの人気が少ない明け方の時間なら……お店の開店前なら、あの貼り紙をした犯人に会えるかもと思ったのだ。
お店の外に隠れて、様子を伺うか……。
それでもし犯人らしき人がドアに近づき何かしたら、声をかけさせて貰おう──。
今後の事を考えたら、出来るなら、警察沙汰にはしたくないし……。
それに、どうしてあんな文を書いたのか……その人が何を思ってあんな事をしたのか、俺は知りたいんだ──。
そして、十分ほど経った頃……店に誰かが近付くのが見えた。
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「待って下さい!これ以上、おかしな物を貼るのは──た、巽、さん……?」
そこに居たのは、スーツを着た巽さんだった。
な、何で、巽さんが……?
すると巽さんは、悲しそうな顔をして手にした紙を見せて来た。
「仕事から帰ったら、ポストにこれが入ってましたので……。居ても立っても居られず、店を見に来てしまいました。もしかしたら……マスターに会えるかもと思いまして。」
巽さんが差し出したのは、俺が先程ポストに入れた、休業連絡のあの紙だった。
それを見た俺は、思わず足から力が抜け、その場に崩れ落ちた──。
※※※
「ごめんなさい、巽さん。俺、とんだ勘違いを……。」
「いえ。突然、駆け付けた俺が悪かったんです。」
俺は店を開け巽さんを中に招くと、お詫びにコーヒーをご馳走した。
「でも……残念ですね、一旦休業とは。」
「特に何かあった訳でもないのに、お休みするのは大袈裟かなとは思いますけど……。でも、これ以上大切な人を巻き込みたくはないし……。彼あっての俺、だから──。」
「そうですか……。でも、丁度いい機会かもしれませんね。」
そう言って巽さんはテーブル席から立ち上がり、カウンターに座る俺の元へ近づいて来た。
「いい機会って……巽さん、あなた……?」
「俺、もうすぐ転勤になるんです。だから、この店に来れなくなってしまうんですよ。」
「そ、そうなんですか……。それは、残念です。」
「俺はね、マスター……いいえ、シンさん。あなたと二度も別れるのは、とても耐えられないんです。」
「に、二度も……?っていうか、俺……あなたに名前、教えましたっけ?」
巽さんは、俺の頬にそっと触れると、スルリと撫でた。
「……ッ!あ、の……俺、お店の休業準備をしないと……。だから──!」
「あなたのそういう所……前と全く変わってませんね。アイドルの癖に……本当は、他人に触れられるのが苦手な所──。」
「ア、アイドルって、何でそれ……!」
「俺はね……あなたを追いかけ……いや、あなたを迎えにこの世界に来たんですよ。今度こそ、正しい運命にしたくて。俺は……あなたと同じ事務所で後輩だった、アイドルのTATSUMIです。」
「巽さん……たつみ……?……あっ!?」
後輩だったTATSUMIは、髪を金に染めピアスだっていっぱい付けてて、もっと派手な男で……それに、こんな口調じゃなかったけど……でも俺を見つめる、眼鏡の下にあるこの目は……確かに、彼の──。
「ハハ、やっと思い出してくれたんですね──。」
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