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本編
35 願い
しおりを挟む「……?」
ふっと意識が戻るとアルヴィンは部屋の真ん中で一糸纏わず立ち尽くしていた。
「あ…れ…?」
直前の記憶はなく、何故裸なのかも思い出せない。
「お目覚めですか?ご主人様…」
そんなアルヴィンの耳に後ろから奴隷の声が入ってきた。
「…レド?」
「あは。…ご主人様は入浴中に寝てしまわれたのですよ?…覚えていませんか?」
そっと耳に注がれた声にそうだったと納得しそうになったが、それにしても裸で、ここに立っているのはおかしいと削り取られている理性が言う。
「いや…そんなの…おかしい…」
「おかしくないですよ?お風呂には入りましたから。…ちゃあんと隅々まで綺麗にしましたからね…」
レドの掌が後ろからアルヴィンの肩を掴み、ゆっくりと身体を辿っていった。
腕を通り過ぎ、アルヴィンの掌と重ねるとそれを持ち上げ、ちゅ…と愛おしそうに口付けた。
「すべて、清めて…準備は万端です…」
「……レド、お前は……俺を…、どうしたいんだ…?」
戸惑ったアルヴィンの質問にレドは名残惜しそうに手を離し、アルヴィンの前面に回った。
「ご主人様…。…俺は、貴方を……」
「……レド」
ギラギラと飢えた金眼が光る。
それは人の瞳では無かった、獣の、瞳だった。
「あなたを…食べてしまいたい」
強い瞳に当てられてアルヴィンは揺らぐ。
一目で気に入った目だ。
一目で……惚れてしまった目だった。
可愛い、愛しい、アルヴィンだけの奴隷。
その願いに……
「………レド…お前が望むのならば、俺は…、食べられても…」
いいぞ。と続けようとしたアルヴィンの口をレドの掌が覆った。
酔っ払ったように散漫だったアルヴィンの思考が戻る。
「ん?んー、んー」
「駄目ですよぉ。そんな事気軽に言っちゃあ…。言葉には力が宿るのです。…特に、隷属紋で繋がっている俺達の関係では危険です…」
涎をダラダラ垂らし、金眼をギラつかせながらレドは言う。
「食べたい…美味しそうですごく食べたいですが、食べたらなくなっちゃうので食べません」
「んんっ?」
レドは口を覆った掌をそのままに、顔を近づけ愛おしそうにアルヴィンの輪郭を舌で辿った。
「んっ…んん…」
「ずっと一緒にいましょう…。ずっとずっと永遠に。…ああ、ご主人様。契りを交わしましょう…」
発情して輝く金眼と見つめ合い、アルヴィンの体温も上がっていく。応えるように口を覆った手に触った。
「あは」
やっと手を離したレドはアルヴィンの唇を舐めた。
「レ、レド」
「俺達は1つになるんです…。死すら俺達を引き離せない…。同じになりましょう…」
「同じ…?」
「大丈夫です…。日常は変わらない。一足先に変わってしまったセレスも喜びますよ」
「…セレス?」
「あは。何でもありません。さぁ、気持ち良い事しましょ…。契りを交わしましょう?」
聞き慣れた名前に一瞬だけ引き戻されたアルヴィンだったが、すぐにそれも忘れてしまった。
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