ウチのメイドがお嫁に出るので、没落貴族の俺が死にかけ奴隷を購入したら記憶喪失でなんだか様子がおかしくて…?

蔓巍ゆんた

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それが始まりだった

ポール3

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「御使様!」
「ああ!御使様!」
「ふふ、さぁ救いの道はこれからですよ。辛く、苦しいでしょう。しかし我らは神を求め進むのです」
「はい!御使様」
「御使様ぁ!!」

「父さん…母さん…どうしちゃったんだよ…」


 それはまさに奇跡だった。

 破滅しか残されていなかったポールの商家は嘘のように復興した。どんよりと澱んだ空気は一掃されかつてのように活気で賑わっていた。

 しかし、それは事だった。

 だって、みんなーーー………

「よぉ!坊ちゃん!どおしたよぉ、腑抜けた顔してぇ。またなんか失敗したのかぁ?まーた俺が尻拭いか!ははっ」
「…ケイン」
「……あまり気に病むな。……若いうちは失敗しとくものだ…」
「ゲール!あんまり甘やかすなよぉ!これじゃあウチの将来が心配になっちまうぜ!」
「……ゲール…」

「酒はどこだ!」「お前また馬鹿やらかしたらしいな」「これ見ろよ!」「次の仕事はでかいぜぇ!」「この酒うめぇな」「俺たち最強だぜ!」「親父ぃ!今度は南の方が景気が良いらしいぜ…!」「今年は寒波だから毛皮の輸入を…」「北の鉱山の採掘が…」「……!」「…」「…」「…」



「み、みんな……だって……死んだって……!」



「ポール様」
「!?」


 いつの間にかポールの真後ろに立っていた御使と呼ばれる男が耳元で囁いた。ヌルリ…と伸びた御使の長い両腕が恐怖に固まるポールの身体に巻き付いた。

「お、お前はなんなんだ!どおして!なんで!みんなが!!…こ、こんなのありえない!!」

「おやおや…なんでしょう?ポール様の理性はとてもお強いのですね?…ふふ、貴方の頭から何か感じますよ?これはなんでしょうか?不思議です。不思議ですねぇ。……いやぁ!いい拾い物ですね。貴方ならとても素晴らしい物になれるかもしれませんねぇ!!素晴らしい!!素晴らしい事です!!!ああ!神よ!貴方様はここに居られるのですか!!!神よ!神よぉ!!!」

 ギチギチと骨が軋むほど御使がポールを締め上げる。細い腕の何処からそんな力が出るのか不気味だった。狂気に染まったその瞳に見つめられ、ポールはようやく恐怖を自覚しがむしゃらに暴れた。

「は、離せ!離せぇ!!」
「ふふ!ふははああはあはははっ!…ッ!?」

 ごちんッとポールの頭が御使にぶつかった。
 その瞬間弾けるように彼の身体が後方に倒れた。
 ポールは迷わずこの場から逃げようと駆け出した。
 しかし……

「坊ちゃん。ダメだろぉ…御使様から逃げちゃぁ」
「……逃げるのは、…恥だ」
「坊ちゃん」「坊ちゃん」「坊ちゃん」「坊ちゃん」「坊ちゃん」「坊ちゃん」「ぼっちゃん」「ぼっちゃん」「ぼっ…ちやぁ…ん」

「みん…な…」

 かつての家族達がどんよりと濁った目でポールを見つめ、冷たい手が暴れるポールを押さえつけた。

「さぁポール。御使様がお呼びだ。我が家の復興を!繁栄を!願うのだ!」
「あぁ!ポール!あなたも願いなさい!永劫に続く安寧を!」

「父さぁん!母さんっ!お願いだ!正気に戻って!!」

 しかしポールの願いは叶う事なくただ2人は瞳孔の開いた目で自信達の欲望を叫ぶだけだった。





 
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