ウチのメイドがお嫁に出るので、没落貴族の俺が死にかけ奴隷を購入したら記憶喪失でなんだか様子がおかしくて…?

蔓巍ゆんた

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それが始まりだった

ポール4

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 血だ。大量の、血液。

 ケイン達はポールを椅子に縛りつけたあと、溶けるように崩れ落ちた。
 グズグズと腐り落ち、腐臭を放って赤い血溜まりを広げた。

「あ…あ…ケイン!ゲール!みんなぁ…!!!」

 彼らの、2度目の死だった。

 ポールは例え不気味な彼等だろうと帰ってきてくれた事に心の奥底では喜んでいたのだと初めてそこで自覚した。
 
「父さん!母さん!みんなが!みんながぁ!」

「「栄光を!繁栄を!安寧を!」」

 ポールの両親は狂ったようにただ乞い願うだけだった。



「さぁ!はじめましょう…!ああ、神よ!我らの願いを叶えたまえ」


 御使が跪き不快な言語を唱える。グジュグジュと血溜まりが蠢き、ポールを囲うように理解し難い文様を描いていく。
 御使がポールの父親の背後に立った。その手にはぬらりと光るナイフが握られている。

「栄光を!繁栄を!安寧を!」
「父さん!逃げて!お願いだ!」

 しかしポールの願いが届く事は無かった。

 スッとほんの一瞬で、とても簡単に、1人の命が終わりを迎えた。

 吹き出す鮮血はあざやかに、腐りかけ濁った血溜まりに混じった。

「ああぁぁ!!嫌だ!そんなっ…父さん!とおさん…!っ…母さん!かあさん!逃げて!逃げてくれっ!」

「栄光を!繁栄を!安、寧…を…」

 母は笑っていた。とても幸せそうに。
 血飛沫が上がる。

「どおして、どうして!どうして!どうしてぇ!!」

「はやる気持ちが抑えきれず、すぐに殺めてしまいました。これでは苦痛が足りませんかねぇ…?しかしポール様は不思議な加護をお持ちだ。…今回はこのままやってみましょうか?」

 にこにこと御使は美しく笑っている。子供のように無垢なその表情はこの後に起こることを只々楽しみにしているようだった。
 
 御使が箱を取り出す。ポールにとってそれはとても馴染み深いものだった。ポールの商会の木箱だ。
 繊細で頑丈なそれは特別に高価な商品を運ぶ時に使用する物だった。
 そしてそこには更に王家の紋章が刻まれていた。

 そうしてポールは理解した。

「お、まえが…ッ!!お前が!すべて!!おまえがぁぁぁぁあ!!!!」

「ふふふふ!憎しみも十分ですね!楽しみです!王家が欲した触媒と、苦痛を与えた贄!不思議なポール様で、どうなるのでしょうか~?」

 御使が恍惚とした表情で箱を開いた。そこには黒くねじくれた何が納められていた。それを無造作につまみポイッとポールに投げつけた。



 最後の瞬間。ポールが思い出したのは銀髪の可憐な少女だった。

 
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