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遠き過ぎ去りし在りし日の日々
ジェフリー4
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「走れ!走れ!止まるな!!」
ロイのこんなに大きな声をジェフリーは初めて聞いた。
掴んだサラの腕が離れないように力を込める。
「きゃあッ!」
「サラ!!」
しかしサラは木の根に足を取られて転んでしまった。
咄嗟にジェフリーはサラに覆い被さる。
「サラ!ジェフ!……ッ…!!」
その2人を庇うようにベンが両手を大きく広げて立ち塞がった。だが勢いよく振り回された尻尾に弾き飛ばされてベンは木にぶつかりグッタリと動かなくなる。その頭からは血が滴った。
「ベンッ!……ッ…!」
「ベン…!……ジェフ…!だめ…!!」
サラはすぐに動けそうも無く、ベンは倒れたままだ。
ジェフリーは覚悟を決めて腰に結びつけていた木刀を構えた。
目の前の無機質な瞳がジェフリーの姿を捉える。ジェフリー達より一回り大きな身体は濃い緑の鱗に守られている。睨みつけるジェフリーを威嚇するようにそれは大きな口を開き、鋭い牙を見せつけた。
「キシャアァァァァ」
「……ッ!こいッ!!」
こんな魔物は見た事がない。
恐ろしい爬虫類型の魔物は興奮して見境がなかった。
ジェフリー達は当初の予定通り山に薬草を取りに来ていた。それは日常的に行なっている事であり、危険な場所もジェフリー達はよく知っていた。
影男の噂もあるので本当に浅い部分でわいわいとみなで採取をしていたのだった。
魔物に出くわす事もあるが大抵はジェフリー達が身体に塗り込んだ魔物避けの香りを嫌がり遠ざかっていく。そこそこ大きな魔物は山の中腹以降でないと出てこない。
なのに。
突然とそれは現れたのだった。
1番初めに気が付いたのはジェフリーだ。
「…?…なんかすごい勢いで走ってくる…」
「?」
「?ジェフ…何も聞こえないわ?」
「んー?」
みんなは何も聴こえないようだったが、ジェフリーの耳には確かに草をかき分けて走る何かの気配を感じていた。
それは人間ほどの大きさであり…人間の足音では…ない。
「…危ないかもしれない。村に戻ろう」
「…そうね。ちょっと少ないけど今日はもうやめとこう」
「うんー」
しかしその判断も行動も遅かった。
集団で動く上での意思確認は重要だったがこの場合気配を感じた瞬間に走らなければ間に合わなかったのだ。
気配が加速する。
サラ達の耳にもハッキリと音が聴こえるようになるのはあっという間だった。
「…ロイ!!避けろ!!!」
「…!!」
ジェフリーが叫ぶとロイは確認する間もなく横に飛んだ。ほんの少し遅れた腕に魔物の爪が掠る。
肌を浅くさき、ジワジワと血が滲んだが気にする余裕などなかった。
「走れ!!」
死に物狂いで走った。四つ脚で走る魔物はどうやら脚の一本に怪我をしている様子だったが、弱い人間の子供になら簡単に追いついた。
そうして、今、ジェフリーは魔物と向かい合っている。
ジェフリーは精一杯出せる限りの殺気を放つ。大きく息を吐きながらその眼差しを逸らす事はない。
瞬きすらせず握り込んだ木刀を軋らせるほど強く力を込めた。
その鬼気迫る様子のジェフリーに魔物は一瞬怯んだが、その事にも怒りを覚えたのか引く様子はない。
しかし油断ないジェフリーに直ぐには襲いかかってこず、ひたすら隙を窺っている。
一瞬、気を逸らした方が、負ける。
そんな緊張感が漂う中。
ゴツッと魔物の片目に石が当たった。
「キシャアァァァァ」
「こっちだ!!」
それはロイが投げた石だった。魔物は痛みから注意をロイに向けた。
ジェフリーはその隙を見逃さなかった。
振り上げた木刀を力の限り振り下ろす。
何度も、何度も、何度も、繰り返した行為だ。
狙った通りの場所に吸い込まれるように木刀が振り下ろされる。
それは魔物の頭に食い込み、めり込み、硬い鱗を弾けさせ、骨を砕き、……脳を潰したーー…
断末魔を上げる間もなく魔物はその身体を地面へと横たえた。
「………すげぇ」
「ベン!ベン!大丈夫か?」
ジェフリーはめり込んだままの木刀を手放し倒れたままのベンに駆け寄る。その様子をそっと見ると頭部に怪我があるが呼吸は穏やかだった。命に別状は無いようだ。
ジェフリーはホッと息をついた。
「…!?だめ!!ジェフリー!!まだ死んでない!!」
サラの悲鳴に振り返る。
頭部を潰された魔物は最後の力を振り絞り自身を死に追いやろうとした人間を道連れにしようと口を開いた。
完全に殺したと思い込み油断していたジェフリーはそれを避ける事が出来ない。
勢いよく飛んでくる牙に死を覚悟した。
瞬間ーー…
スパン。
とあっけなく首が胴体から離れてコロコロと転がった。
一瞬遅れて血が吹き出し、ばったり倒れた魔物は身体を数度蠢かせたが、やがて動く事は無くなった。
「よぉ…ガキ共。よく頑張ったじゃねぇか…」
低くしゃがれた声だった。
全身黒い衣服に身を包んだ男は魔物の首を切り離した剣を払い、ゆっくりと鞘に戻す。
影男……顔が無いというのは嘘だったようだ。
しかしボサボサの髪と口元を覆う髭で確かに一目では顔がわからない。
その隙間からうかがえる瞳はどんよりと濁っていてどこか気鬱を感じさせた。
「レッサードラゴンだとぉ…?こんな所に出る魔物じゃねーなぁー…魔物が、どんどん降りてきてやがる……俺はもう働きたくないっていうのに………にしてもただの棒っ切れで竜の鱗も頭蓋骨も砕くたぁ…テメェは何だぁ?チビガキぃ…」
ジロリとこちらを見つめる。
その。
あまりの格好良さに。
ジェフリーは目を輝かせた。
「師匠って呼ばせてください!!!」
「……うわっ…。めんどくせっ…」
ロイのこんなに大きな声をジェフリーは初めて聞いた。
掴んだサラの腕が離れないように力を込める。
「きゃあッ!」
「サラ!!」
しかしサラは木の根に足を取られて転んでしまった。
咄嗟にジェフリーはサラに覆い被さる。
「サラ!ジェフ!……ッ…!!」
その2人を庇うようにベンが両手を大きく広げて立ち塞がった。だが勢いよく振り回された尻尾に弾き飛ばされてベンは木にぶつかりグッタリと動かなくなる。その頭からは血が滴った。
「ベンッ!……ッ…!」
「ベン…!……ジェフ…!だめ…!!」
サラはすぐに動けそうも無く、ベンは倒れたままだ。
ジェフリーは覚悟を決めて腰に結びつけていた木刀を構えた。
目の前の無機質な瞳がジェフリーの姿を捉える。ジェフリー達より一回り大きな身体は濃い緑の鱗に守られている。睨みつけるジェフリーを威嚇するようにそれは大きな口を開き、鋭い牙を見せつけた。
「キシャアァァァァ」
「……ッ!こいッ!!」
こんな魔物は見た事がない。
恐ろしい爬虫類型の魔物は興奮して見境がなかった。
ジェフリー達は当初の予定通り山に薬草を取りに来ていた。それは日常的に行なっている事であり、危険な場所もジェフリー達はよく知っていた。
影男の噂もあるので本当に浅い部分でわいわいとみなで採取をしていたのだった。
魔物に出くわす事もあるが大抵はジェフリー達が身体に塗り込んだ魔物避けの香りを嫌がり遠ざかっていく。そこそこ大きな魔物は山の中腹以降でないと出てこない。
なのに。
突然とそれは現れたのだった。
1番初めに気が付いたのはジェフリーだ。
「…?…なんかすごい勢いで走ってくる…」
「?」
「?ジェフ…何も聞こえないわ?」
「んー?」
みんなは何も聴こえないようだったが、ジェフリーの耳には確かに草をかき分けて走る何かの気配を感じていた。
それは人間ほどの大きさであり…人間の足音では…ない。
「…危ないかもしれない。村に戻ろう」
「…そうね。ちょっと少ないけど今日はもうやめとこう」
「うんー」
しかしその判断も行動も遅かった。
集団で動く上での意思確認は重要だったがこの場合気配を感じた瞬間に走らなければ間に合わなかったのだ。
気配が加速する。
サラ達の耳にもハッキリと音が聴こえるようになるのはあっという間だった。
「…ロイ!!避けろ!!!」
「…!!」
ジェフリーが叫ぶとロイは確認する間もなく横に飛んだ。ほんの少し遅れた腕に魔物の爪が掠る。
肌を浅くさき、ジワジワと血が滲んだが気にする余裕などなかった。
「走れ!!」
死に物狂いで走った。四つ脚で走る魔物はどうやら脚の一本に怪我をしている様子だったが、弱い人間の子供になら簡単に追いついた。
そうして、今、ジェフリーは魔物と向かい合っている。
ジェフリーは精一杯出せる限りの殺気を放つ。大きく息を吐きながらその眼差しを逸らす事はない。
瞬きすらせず握り込んだ木刀を軋らせるほど強く力を込めた。
その鬼気迫る様子のジェフリーに魔物は一瞬怯んだが、その事にも怒りを覚えたのか引く様子はない。
しかし油断ないジェフリーに直ぐには襲いかかってこず、ひたすら隙を窺っている。
一瞬、気を逸らした方が、負ける。
そんな緊張感が漂う中。
ゴツッと魔物の片目に石が当たった。
「キシャアァァァァ」
「こっちだ!!」
それはロイが投げた石だった。魔物は痛みから注意をロイに向けた。
ジェフリーはその隙を見逃さなかった。
振り上げた木刀を力の限り振り下ろす。
何度も、何度も、何度も、繰り返した行為だ。
狙った通りの場所に吸い込まれるように木刀が振り下ろされる。
それは魔物の頭に食い込み、めり込み、硬い鱗を弾けさせ、骨を砕き、……脳を潰したーー…
断末魔を上げる間もなく魔物はその身体を地面へと横たえた。
「………すげぇ」
「ベン!ベン!大丈夫か?」
ジェフリーはめり込んだままの木刀を手放し倒れたままのベンに駆け寄る。その様子をそっと見ると頭部に怪我があるが呼吸は穏やかだった。命に別状は無いようだ。
ジェフリーはホッと息をついた。
「…!?だめ!!ジェフリー!!まだ死んでない!!」
サラの悲鳴に振り返る。
頭部を潰された魔物は最後の力を振り絞り自身を死に追いやろうとした人間を道連れにしようと口を開いた。
完全に殺したと思い込み油断していたジェフリーはそれを避ける事が出来ない。
勢いよく飛んでくる牙に死を覚悟した。
瞬間ーー…
スパン。
とあっけなく首が胴体から離れてコロコロと転がった。
一瞬遅れて血が吹き出し、ばったり倒れた魔物は身体を数度蠢かせたが、やがて動く事は無くなった。
「よぉ…ガキ共。よく頑張ったじゃねぇか…」
低くしゃがれた声だった。
全身黒い衣服に身を包んだ男は魔物の首を切り離した剣を払い、ゆっくりと鞘に戻す。
影男……顔が無いというのは嘘だったようだ。
しかしボサボサの髪と口元を覆う髭で確かに一目では顔がわからない。
その隙間からうかがえる瞳はどんよりと濁っていてどこか気鬱を感じさせた。
「レッサードラゴンだとぉ…?こんな所に出る魔物じゃねーなぁー…魔物が、どんどん降りてきてやがる……俺はもう働きたくないっていうのに………にしてもただの棒っ切れで竜の鱗も頭蓋骨も砕くたぁ…テメェは何だぁ?チビガキぃ…」
ジロリとこちらを見つめる。
その。
あまりの格好良さに。
ジェフリーは目を輝かせた。
「師匠って呼ばせてください!!!」
「……うわっ…。めんどくせっ…」
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