ウチのメイドがお嫁に出るので、没落貴族の俺が死にかけ奴隷を購入したら記憶喪失でなんだか様子がおかしくて…?

蔓巍ゆんた

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遠き過ぎ去りし在りし日の日々

ジェフリー3

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「ロイ、コレ姉さんから」
「……アーシェから」

 ロイは眉間に皺を寄せ険しい顔をした。ジェフリーはロイが何故そんな急に不機嫌になったのかわからなかったが、よくよく見るとその耳が真っ赤に染まっていて照れているだけだとわかった。

「…………また、暇な時に来いって言っとけ」

 ボソボソそう言いロイは渡されたハンカチを握り、足速に男子の共同部屋に戻って行った。

「あ!ロイ!おーい…!……行っちゃった…」
「ねねね!今何渡したの!ロイとアーシェ!いい感じなの!?」

 どこに隠れていたのかサラが興奮した様子でジェフリーに問いかける。小柄で三つ編みを右横からの垂らしている彼女がぴょんぴょん飛ぶと、髪も楽しそうに跳ね回った。

「こないだの2人は怪しいって思ってたんだよね!案の定!案の定よ!!」
「興奮しすぎだってー。サラー」

 間延びした声はベンだ。おっとりとした彼は垂れた眉をさらに緩めてのんびりと喋った。

「今日は薬草取りのー、しごとがーあるからーのんびりしてられないよー。はやく山に行かないとー、帰りに日が暮れちゃうー。明日は、街に行く日だからーその準備もしなくちゃなんだよぉー?」

 実はゆったりとした彼が1番しっかり者だったりする。
 案外バランスの取れた3人は8~10歳程でジェフリーとも歳が近い。小さい頃から共に過ごす幼馴染だった。

「みんなは今日山に行くんだ。じゃあ俺も薬草取り手伝おうかな」
「ジェフリーはー、家の仕事は大丈夫ー?」
「全部終わらせてきたから平気!じゃあ俺山用の格好してくるな!」
「そっか。ジェフが来てくれるなら早く終わるわ!うれしー!じゃあ山の入り口に集合ね」
「わかったよ。サラ」

 嬉しそうな彼女を見ていると心が和んだ。…が、すぐにそのサラの表情がわざとらしくキリッと引き締まりあまり意味が無いのにコソコソと喋り出した。

「……そう言えば知ってる?今山の中で影男が出るって話…」
「影男?何それ」

 ジェフリーはそう言う噂話に疎かった。
 その事を予想していたのだろう。初めて聞く相手に話せる事が嬉しいのかサラはその話を興奮して話した。

「真っ黒な男よ!全身真っ黒で顔もないんだって!そして突然現れては魔物を倒すらしいわよ!!バッサバッサと!……そして人には興味がないみたいで人間が近くに居るとわかるとスッ…と消えるんだって…!!不思議じゃない?!?!」

 フンフンと鼻息も荒くジェフリーに詰め寄る。
 ベンが呆れた顔をしている。その態度にサラは不満そうだ。

「どうせー、どっかの浮浪者がー山に住んでるだけだよー。だから危ないからー、今日はそんなに奥までは行かないんだー」
「そっか」
「ベンもロイも現実的でつまんない!ジェフリーはお化け説信じてくれる?」
「…俺も不審者の方だと思う」
「もー」

 膨れたサラをなだめつつ、ベンに聞いた。

ふもと近くだとそんなに取れなさそうだね」
「そうなんだけどー、仕方ないねー」

 そんな会話をした後、ジェフリーは一度家に戻ったのだった。

 家の扉を開けると中にはジェフリーと同じ茶髪を跳ねさせた無口無表情の父が何かを削っていた。

「父さん!ただいま!ちょっとロイ達と山に行ってくる!」

 父はチラリと慌てて着替えるジェフリーを見ると、手にしていたそれを投げてきた。

 パシリ…と反射的に受け取る。

「……!!木刀だ!!」
「………それは硬い木だ。すぐには折れないだろう」
「…!?…父さん!ありがとう!!」

 ジェフリーが削って作る棒は練習中にすぐに折れてしまう事が多かった。
 それを父は見ていたのだろう。
 普段気に掛けている様子を見せない父だったがその不器用な優しさにジェフリーの心はほっこりと暖かくなった。
 父の作成した木刀はキチンと剣の形をしていた。
 黒に近い程色が濃く中身が詰まっているのかズッシリと重たかった。
 コレで素振りをすればより本物の剣に近いので鍛錬が捗るだろう。

 あまりに嬉しかったジェフリーはみんなに自慢したくなり、山にそれを持っていったのだった。

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