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本編(不定期更新中)
16.はじめてのデート♡
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喫茶店の中に入る。
年季を感じさせる店内は落ち着いていて心地よい音楽がひっそりと流れている。挽きたてのコーヒーの香りが大人っぽくてドキドキした。
初老の男性が静かに近づいてきて注文を聞いてきた。男はコーヒーとサンドイッチを、少年はオムライスを頼んだ。
「ここまでどうやって来たの?」
「…歩いて」
「自宅から?結構な距離があったでしょ。元気だねぇ…。足を痛めたのなら今日はもう無理しない方がいいから送ってってあげるよ。僕は車で来てるんだ」
「…先生、車乗れるんだ」
「そうだよ?運転は得意だから帰りのドライブは楽しんでね」
口調は穏やかだがいつの間にか男の車で送られる事になっていた。静かな強引さがあり、有無を言わせない。
「先生はなんか用事があってきたの?」
「ちょっと買い物しようと思ってね。宇多君は?」
「おれは散歩しつつ遊び来ただけ」
「そっか。もしも足が痛まないなら少し買い物に付き合って貰っても良いかな?無理はしなくていいからね」
「座って休憩したからもうそんなに痛まないよ。大丈夫」
「ふふ、よかった」
そんな話をしていると注文していた料理が運ばれてきた。
「うわぁ…!」
目の前に置かれたオムライスは自宅で作るものと全く違った。
喫茶店のメニューにはシンプルに文字だけで『オムライス』と書かれていただけなので、想像もしていなかった。
フワフワの半熟卵はトロリ…と溶けていて艶めいている。茶色く輝くデミグラスソースと相まってキラキラ輝くそれはテレビの中でしか見たことのない素晴らしく美味しそうな物だった。
「す、すごい」
「ふふふ。美味しそうだねぇ。よかったね…。それじゃ、頂きます」
「い、いただきます!」
スプーンをトロトロの卵に差し込む。掬いあげると赤く染められたチキンライスが顔を出す。デミグラスに絡めて3色のそれを口にそっと入れた。噛み締める。濃厚なソースとチキンライスの旨味、とろける卵が口の中で踊った。
「う、うまい!」
「あはは!そんなに美味しい?」
「うん!」
夢中でスプーンを動かす。こんなに美味しいオムライスは初めてだった。
目を輝かせながら口の端を汚している少年を男はうっとりと眺めている。
「可愛いぃ…」
小さく低く呟かれたそれは少年の耳には入らなかった。
男は少年を見つめながらサンドイッチを手に取る。ふといい事を思いついた。
「宇多君」
「…あに?」
「サンドイッチも味見してみる?」
「うん!」
「じゃあ、あーん。して」
そう言って差し出されたサンドイッチは表面がカリカリにトーストされ、肉厚のハムと新鮮な野菜がトロリと溶けたチーズを纏っている。
こんな高級感溢れるサンドイッチは見たことがない。どんな味がするのかとても少年は気になったが、どうしようと悩んだ。
サンドイッチは男が手に持ち少年の口元に差し出している。そうすると男に食べさせられている感じになる。
だからといってそれを奪い取って手に持つのもどうかと思った。
他人の口に入る物に素手で触れるのは抵抗感があったからだ。
ちぎって渡してくれればいいのに、とも思ったが、具沢山なそれを分けるのも大変だろう。
食べないという選択もあるが…
悩んだ末、食欲に負けて差し出された物に素直に齧り付いた。
「お、おいひぃ!」
カリカリに焼かれたパンはバターが塗られているのだろう。風味が良い。
噛み締めるたびに小麦の良い香りがする。ハムも油が乗っていて舌の上でとろけた。
シャキシャキの野菜とチーズ、なんだかわからないソースが混ざり最高なハーモニーを生んでいた。
幸せそうに目を閉じて味わっている少年を眺めながら、こちらを見てないのをいい事に男は少年が口をつけた所をじっくり舐めながら咀嚼した。
「本当だぁ…。たまらなく、おいしいよぉ…」
「………」
ねっとり嬉しそうに言われて、やっぱり齧り付いたことをちょっとだけ後悔した。
「僕にも味見させてくれる?」
「……いいよ」
「あーん」
嬉しそうに口を開ける男を無視して、新しいスプーンを取り出して食べている所の反対側を掬った。
そのスプーンをサンドイッチが乗っている皿の端に置いた。
「………」
「………」
「……美味しいね」
「うん」
残念そうな男を尻目にオムライスを平らげた。
「おいしかった!ごちそうさま!」
「ふふ、口の端についてるよ…」
そっと男が指を伸ばしてきた。少年がスッと逃げると深追いせず手を戻した。
自分で口の周りを拭くと大満足な食事が終わった。
「お金お金…」
「いいよ。もう払っちゃったから」
「え…」
(いつのまに)
あまりの早技にびっくりした。
「でも、悪いし…」
「気にしないで。年上に甘えるのも大事だよ?」
払おうとしても譲ってくれず、諦めて財布をしまった。何か別のものでお返ししよう。
お店を出ると男は服屋を見始めた。少年は付かず離れずついて行く。
「何か欲しいものはある?」
「んー、特に…」
「そう」
何着か購入するとまたどこかに歩き出した。
しばらく歩いて行くと大きめのゲームセンターにつく。
「ちょっと遊んでいく?」
「いく!」
ゲームセンターは大好きだ。でも1人でだと中々入る気にならない。友達とワイワイ騒ぎながら回るのが楽しいのだった。
中に入ると早速リズムゲームで遊んだ。男は誘ったくせにこういうので遊ぶのは初めてだったようだ。しかしズタボロだった点数は2回目になると軽々と少年の点数を上回った。悔しい。
次はクレーンゲームをやる。これは得意だ。
すぐにネコのキーホルダーが取れた。白と黒の2種類だ。黒色の方を男にさし出した。
「あげる」
「え…貰っていいの?」
「さっきのお礼…には届かないからまたなんか用意するけど」
「そんなのは大丈夫だよ!…でも、嬉しいなぁ!大事にするね!」
「…うん」
そこまで大袈裟に喜ばれると照れ臭い。白いネコのキーホルダーをしまいながら少年も嬉しくなった。
男の車はピカピカのなんだかわからないが高そうな車だった。座り心地も抜群だ。
運転が得意だと言っていただけあって始終快適なドライブだった。
歩いて来る時は1時間かかった道も車だと20分程で着いてしまった。
「すごい。地図見なくてもおれ家までつくんだ」
「…慣れた道だからね」
何事もなく車を降りる。
「今日はありがとうございました!」
「どういたしまして。楽しかったよ。次回までの課題忘れないようにね」
「………はい」
チクリッと刺すのも忘れずに男は帰っていった。
家の中に入る。ちょっとしたおでかけだったが楽しかった。
昼間沢山汗をかいたので先ずはお風呂に入ろうと脱衣所に向かった。
服を脱いで洗濯機に放り込む。ズボンのポケットからハンカチを出そうとして…
「あれ?」
入っていなかった。反対側にも。玄関に戻り荷物を漁るが入っていない。
どこかに落としてしまったのだろうーーーー
年季を感じさせる店内は落ち着いていて心地よい音楽がひっそりと流れている。挽きたてのコーヒーの香りが大人っぽくてドキドキした。
初老の男性が静かに近づいてきて注文を聞いてきた。男はコーヒーとサンドイッチを、少年はオムライスを頼んだ。
「ここまでどうやって来たの?」
「…歩いて」
「自宅から?結構な距離があったでしょ。元気だねぇ…。足を痛めたのなら今日はもう無理しない方がいいから送ってってあげるよ。僕は車で来てるんだ」
「…先生、車乗れるんだ」
「そうだよ?運転は得意だから帰りのドライブは楽しんでね」
口調は穏やかだがいつの間にか男の車で送られる事になっていた。静かな強引さがあり、有無を言わせない。
「先生はなんか用事があってきたの?」
「ちょっと買い物しようと思ってね。宇多君は?」
「おれは散歩しつつ遊び来ただけ」
「そっか。もしも足が痛まないなら少し買い物に付き合って貰っても良いかな?無理はしなくていいからね」
「座って休憩したからもうそんなに痛まないよ。大丈夫」
「ふふ、よかった」
そんな話をしていると注文していた料理が運ばれてきた。
「うわぁ…!」
目の前に置かれたオムライスは自宅で作るものと全く違った。
喫茶店のメニューにはシンプルに文字だけで『オムライス』と書かれていただけなので、想像もしていなかった。
フワフワの半熟卵はトロリ…と溶けていて艶めいている。茶色く輝くデミグラスソースと相まってキラキラ輝くそれはテレビの中でしか見たことのない素晴らしく美味しそうな物だった。
「す、すごい」
「ふふふ。美味しそうだねぇ。よかったね…。それじゃ、頂きます」
「い、いただきます!」
スプーンをトロトロの卵に差し込む。掬いあげると赤く染められたチキンライスが顔を出す。デミグラスに絡めて3色のそれを口にそっと入れた。噛み締める。濃厚なソースとチキンライスの旨味、とろける卵が口の中で踊った。
「う、うまい!」
「あはは!そんなに美味しい?」
「うん!」
夢中でスプーンを動かす。こんなに美味しいオムライスは初めてだった。
目を輝かせながら口の端を汚している少年を男はうっとりと眺めている。
「可愛いぃ…」
小さく低く呟かれたそれは少年の耳には入らなかった。
男は少年を見つめながらサンドイッチを手に取る。ふといい事を思いついた。
「宇多君」
「…あに?」
「サンドイッチも味見してみる?」
「うん!」
「じゃあ、あーん。して」
そう言って差し出されたサンドイッチは表面がカリカリにトーストされ、肉厚のハムと新鮮な野菜がトロリと溶けたチーズを纏っている。
こんな高級感溢れるサンドイッチは見たことがない。どんな味がするのかとても少年は気になったが、どうしようと悩んだ。
サンドイッチは男が手に持ち少年の口元に差し出している。そうすると男に食べさせられている感じになる。
だからといってそれを奪い取って手に持つのもどうかと思った。
他人の口に入る物に素手で触れるのは抵抗感があったからだ。
ちぎって渡してくれればいいのに、とも思ったが、具沢山なそれを分けるのも大変だろう。
食べないという選択もあるが…
悩んだ末、食欲に負けて差し出された物に素直に齧り付いた。
「お、おいひぃ!」
カリカリに焼かれたパンはバターが塗られているのだろう。風味が良い。
噛み締めるたびに小麦の良い香りがする。ハムも油が乗っていて舌の上でとろけた。
シャキシャキの野菜とチーズ、なんだかわからないソースが混ざり最高なハーモニーを生んでいた。
幸せそうに目を閉じて味わっている少年を眺めながら、こちらを見てないのをいい事に男は少年が口をつけた所をじっくり舐めながら咀嚼した。
「本当だぁ…。たまらなく、おいしいよぉ…」
「………」
ねっとり嬉しそうに言われて、やっぱり齧り付いたことをちょっとだけ後悔した。
「僕にも味見させてくれる?」
「……いいよ」
「あーん」
嬉しそうに口を開ける男を無視して、新しいスプーンを取り出して食べている所の反対側を掬った。
そのスプーンをサンドイッチが乗っている皿の端に置いた。
「………」
「………」
「……美味しいね」
「うん」
残念そうな男を尻目にオムライスを平らげた。
「おいしかった!ごちそうさま!」
「ふふ、口の端についてるよ…」
そっと男が指を伸ばしてきた。少年がスッと逃げると深追いせず手を戻した。
自分で口の周りを拭くと大満足な食事が終わった。
「お金お金…」
「いいよ。もう払っちゃったから」
「え…」
(いつのまに)
あまりの早技にびっくりした。
「でも、悪いし…」
「気にしないで。年上に甘えるのも大事だよ?」
払おうとしても譲ってくれず、諦めて財布をしまった。何か別のものでお返ししよう。
お店を出ると男は服屋を見始めた。少年は付かず離れずついて行く。
「何か欲しいものはある?」
「んー、特に…」
「そう」
何着か購入するとまたどこかに歩き出した。
しばらく歩いて行くと大きめのゲームセンターにつく。
「ちょっと遊んでいく?」
「いく!」
ゲームセンターは大好きだ。でも1人でだと中々入る気にならない。友達とワイワイ騒ぎながら回るのが楽しいのだった。
中に入ると早速リズムゲームで遊んだ。男は誘ったくせにこういうので遊ぶのは初めてだったようだ。しかしズタボロだった点数は2回目になると軽々と少年の点数を上回った。悔しい。
次はクレーンゲームをやる。これは得意だ。
すぐにネコのキーホルダーが取れた。白と黒の2種類だ。黒色の方を男にさし出した。
「あげる」
「え…貰っていいの?」
「さっきのお礼…には届かないからまたなんか用意するけど」
「そんなのは大丈夫だよ!…でも、嬉しいなぁ!大事にするね!」
「…うん」
そこまで大袈裟に喜ばれると照れ臭い。白いネコのキーホルダーをしまいながら少年も嬉しくなった。
男の車はピカピカのなんだかわからないが高そうな車だった。座り心地も抜群だ。
運転が得意だと言っていただけあって始終快適なドライブだった。
歩いて来る時は1時間かかった道も車だと20分程で着いてしまった。
「すごい。地図見なくてもおれ家までつくんだ」
「…慣れた道だからね」
何事もなく車を降りる。
「今日はありがとうございました!」
「どういたしまして。楽しかったよ。次回までの課題忘れないようにね」
「………はい」
チクリッと刺すのも忘れずに男は帰っていった。
家の中に入る。ちょっとしたおでかけだったが楽しかった。
昼間沢山汗をかいたので先ずはお風呂に入ろうと脱衣所に向かった。
服を脱いで洗濯機に放り込む。ズボンのポケットからハンカチを出そうとして…
「あれ?」
入っていなかった。反対側にも。玄関に戻り荷物を漁るが入っていない。
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