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第9話 鬼戸、イジメの現場を生配信される
まるで理解が追いつかなかった。
ここの制服を着ているのを見るに、この学校の生徒だったのか……。
それなら噂になってそうなもんだが。
そんな話、入学してから一切聞いたことはない。
「ミ、ミクルンだ!?」
「何でこんなとこに……!?」
「すげぇ、ホンモノ初めて見た」
思いがけない人物の登場に、クラスメイトがどよめく。
その中でも、特に……。
「――ミ、ミミミミミミミクルン!? マ、マジか、あのミクルンかよ!?」
鬼戸のリアクションが1番大きかった。
振り上げた拳をそっと下ろし、手のひらをズボンでゴシゴシぬぐう。
「や、やあミクルン、こうして会えて光栄だぜ! オレ、鬼戸アラタって言うんだ! チャンネル登録者数30万人のBランク探索者だ、有名探索者同士仲良くしようぜ!!」
鬼戸は下心が丸見えな顔で右手を差し出す。
だが、
「動かないで」
「へ?」
ぴたり、と鬼戸の歩みが止まる。
猫山ミクルはとある物を指差していた。
その方向には、配信用のドローンが浮かんでいた。
「わざわざ自己紹介どうも。鬼戸アラタさん、貴方の暴行の現場は、今、私のチャンネルを通して生配信されてます」
「な、生、配信……?」
「ええ、そうです。貴方の悪行は全国的に知れ渡ることになりますね」
猫山ミクルはキッと睨みつけながら言った。
事の重大さを理解したのか、鬼戸の顔がみるみるうちに青ざめていく。
有名ダンジョン配信者、猫山ミクルの配信による影響力は絶大だ。
猫山ミクルのピンチを救った俺のことがあっという間に拡散されたように、このイジメの事実も瞬く間に拡散されることだろう。
それはつまり……今まで積み上げてきた物全てを失うということ。
「そ、そんな、そんなの嘘だ、なぁ嘘って言ってくれよ!」
「事実ですよ、貴方が低俗なイジメをしているのもですけど」
「ま、待ってくれよ、ミクルンはコイツに騙されてんだ……! オレはそれに気付いて正義の鉄槌を与えてたとこなんだよ!」
「騙された?」
「そ、そうだ、クズ職の『盾役』如きがSランクモンスターなんて倒せるわけないんだよ、きっと何かタネがあるんだ……そうだ、あのエンペラーオーガは偽物で、実はよく似た弱いモンスターだったんだ!」
「……バカなんですか?」
「のぇ!?」
ド直球のフレーズに、鬼戸は仰け反る。
「私だって探索者の端くれ、モンスターの区別くらいは付きます。あれは間違いなくエンペラーオーガでした。それを倒して私を助けてくれたのは……ここにいる奥寺タクミ君です。この目ではっきりと見ました」
「いや、だからそれが……!」
「私は実際に彼の勇姿を見ているんです。それ以上もそれ以下もありません。あの場にいなかった部外者が口を挟まないでください」
「ぶ、ぶがが、部外者……!?」
「そうです、これからも、この先も、貴方は私の部外者です」
「だはあああああああああん!?!?」
鬼戸は口から蟹のように泡を吹き出した。
考えてみれば、自分の最推しから明確に拒絶されたんだ。
そのショックは計り知れないだろう。
「これ以上、私の命の恩人を侮辱するのは許しません」
猫山ミクルはまっすぐに鬼戸を睨む。
それは配信時に見せていた顔とは違う、真剣な表情だった。
「ま、待ってくれ、待ってくれよぉミクルン……!」
壊れた鬼戸を尻目に、猫山ミクルは壁を背にして座り込んだ俺のそばに寄る。
「大丈夫ですか?」
「ああ……何とか」
俺は猫山ミクルに支えてもらうことで立ち上がる。
まるで昨日と立場が逆だな。
というか、思い切り胸が当たってるんだが……。
それを見ていた鬼戸の顔が、わなわなと赤くなっていく。
よく見ると、目にうっすらと涙が溜まっていた。
「Fランク探索者風情の奥寺が、オ、オレのミクルンと、密着……!」
俺と猫山ミクル、両方の顔を何度も見比べると……。
「――ち、ち、チクショオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
大声で叫びながら、鬼戸は飛び出すように教室を後にした。
あまりにも珍しい光景に、野次馬を含めたク全員が鬼戸の後ろ姿を見送る。
その最中、猫山ミクルは耳元で囁いた。
「――今日の放課後、校門前で待ってます」
「え?」
「それじゃ、また……!」
猫山ミクルはそれだけ言うと、そそくさと教室を去っていくのだった。
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