8 / 20
【第3世・もうひとりの自分】
個性的な役員たち
しおりを挟む
会議室に着くと、すでに席についている4人の男たちがいた。
皆、それぞれ紫や金、黒やピンクなど、一人として同じ髪色をしていないうえに、髪型も服装もこれまた個性的な奴ばかりで、外見からしても社会的に論外な奴らばかりが座っていた。
一人目はヘラヘラと笑いながら立て肘をついてこちらを見ている、薄紫色の髪を左半分だけかき上げてヘアピンで止めたチャラチャラした髪型で、キラキラしたアクセサリーを首や手首につけている見た目も中身もチャラそうな糸目の男。
二人目は不気味にニコニコと笑顔を貼り付けて、バーテンダーのような格好をした金髪マッシュヘアーの礼儀正しく座る男。
三人目はボサボサの黒髪の天然パーマにダラダラと着崩したジャージ。机に上げた両足には便所サンダルが履かせられていて、その風貌からイマイチ清潔感が見られない男。
四人目は薄い桃色の髪をセンター分けにして、毛先を後ろから前へと斜めに真っ直ぐ切り揃えられた、全身黒のレザー衣装に首周りにはファーを巻きつけている…ファッションもメイクもどこかヴィジュアル系を想像させる格好の男。
どいつもこいつも『社会人』には程遠い格好ばかり。
そういう私自身も改めて自分を見直すと、袖の伸びきったダルダルのTシャツには継ぎ接ぎ模様があしらわれており、下は黒のチノパンにブーツと、人の事をとやかく言う権利はどこにも見当たらない。
この中で唯一『社会人』に近い格好をしてるのは、この傍らに立つスーツ姿で眼鏡の鈴木ぐらいかもしれないと思うと、一体なんなんだこの会社はと心底不安に駆られた。
「やっぱり社長がビリやなぁ~。なあ?ボクの言うたとおりやろ~?」と自慢気な糸目の男。
「やはり僕は賭け事に弱いですね…」とそれでもニコニコと笑顔を貼り付ける男。
「オレは鈴木さんが一緒にいるからビリはありえねぇだろうとか思ってけど甘かったか~」と気の抜けるような呑気な口調のジャージの男。
「ボクはキミが最後に来ると思ってたけどねえ…神一郎?」と糸目の男を見てクスクスと笑うビジュアル系の男。
そして、ビジュアル系の男にそう言われた糸目の男はむっと顔をしかめ、言い返すように言葉を紡ぐ。
「照光さぁ、…まず居候って会議に参加する必要ないやろ。去ねや」
「むきになるなんて可愛いねぇ。キミのそういうところ、好きだねぇ。クックック…」
「白目で笑うな。気持ち悪いわ」
次々に飛び交う漫談のような会話に私がどう話に折り目をつければいいかわからなくなっているのを察したのか、傍らに立っていた鈴木さんが神一郎と呼ばれた男に近づいていった。
鶴の一声でもでるのかと期待しながら私は鈴木の後ろ姿を見ていたが、鈴木は神一郎の目の前に立つと自分の長い脚を大きく振り上げた。
私はその手で支えなくても高々と天に伸びる柔軟な脚に感心していたが、その脚が次にどうなるかまでは予想していなかった。
重力に逆らって高々と上げられた脚は、今度はその重力に従うように真っ逆さまに振りおろされ、その速度は重力の力を借りてさらに速度と威力を上げながら落ちた。
神一郎の、頭の上に。
それは殺人級の踵落としと言っても過言ではないだろう。
鈴木の踵と神一郎の頭蓋が接触した部分からベキベキと鈍い音が鳴り、接触して静止するかと思っていたその恐ろしい踵落としは、さらにベキベキと蹴り進んでいってついに神一郎の額を机に叩きつけた。
これで終わりだろうと安堵したのも束の間。蹴り進んだ踵はさらにそのまま机を蹴破ってしまったのだった。
真っ二つに裂けた机だった物の瓦礫に埋もれてしまった神一郎は全く動かない。その前にあの垂直に下ろされた踵落としを食らって意識があるどころか、生きているのかさえも怪しい。
死んだな…、と悟った瞬間。瓦礫の中から「何すんねーーーーん!!!」と飄々とした声でツッコミを入れる叫声が会議室に響き渡った。
その声が響き渡ると同時に盛大に瓦礫から起き上がる神一郎に驚くあまり私は反応が出なくなっていた。
それは「生きていた」という驚きよりも、問題はそこではなく「机が叩き割れる威力の踵落とし」を食らいながら、神一郎は「傷ひとつない」ということだった。
まるで手品のようなその光景に私はふたりの間からタネ探しをするも、その光景に驚いているのはどうやら私だけのようでこの行動が少し恥ずかしかった。
他の三人は興味なさそうにスマホをいじったり、爪の手入れをしたり、外を見つめたり、あまりの関心の無さにそこにも驚きだ。
「お兄ちゃんに向かって脚を上げるとは何事やねん!!」
「黙らねえとそろそろ本気で黙らせるぞ、兄貴」
私と話す時とはまるで別人と化した鈴木の変化。
もうさっきから色々と驚いてばかりで私の心臓がついていかない。あと数時間もすれば衝撃に耐えられなくなってこの心臓はいつか停まる、と私は己の余命を悟った気がした。
一体なんなんだこの社員たちは…。
皆、それぞれ紫や金、黒やピンクなど、一人として同じ髪色をしていないうえに、髪型も服装もこれまた個性的な奴ばかりで、外見からしても社会的に論外な奴らばかりが座っていた。
一人目はヘラヘラと笑いながら立て肘をついてこちらを見ている、薄紫色の髪を左半分だけかき上げてヘアピンで止めたチャラチャラした髪型で、キラキラしたアクセサリーを首や手首につけている見た目も中身もチャラそうな糸目の男。
二人目は不気味にニコニコと笑顔を貼り付けて、バーテンダーのような格好をした金髪マッシュヘアーの礼儀正しく座る男。
三人目はボサボサの黒髪の天然パーマにダラダラと着崩したジャージ。机に上げた両足には便所サンダルが履かせられていて、その風貌からイマイチ清潔感が見られない男。
四人目は薄い桃色の髪をセンター分けにして、毛先を後ろから前へと斜めに真っ直ぐ切り揃えられた、全身黒のレザー衣装に首周りにはファーを巻きつけている…ファッションもメイクもどこかヴィジュアル系を想像させる格好の男。
どいつもこいつも『社会人』には程遠い格好ばかり。
そういう私自身も改めて自分を見直すと、袖の伸びきったダルダルのTシャツには継ぎ接ぎ模様があしらわれており、下は黒のチノパンにブーツと、人の事をとやかく言う権利はどこにも見当たらない。
この中で唯一『社会人』に近い格好をしてるのは、この傍らに立つスーツ姿で眼鏡の鈴木ぐらいかもしれないと思うと、一体なんなんだこの会社はと心底不安に駆られた。
「やっぱり社長がビリやなぁ~。なあ?ボクの言うたとおりやろ~?」と自慢気な糸目の男。
「やはり僕は賭け事に弱いですね…」とそれでもニコニコと笑顔を貼り付ける男。
「オレは鈴木さんが一緒にいるからビリはありえねぇだろうとか思ってけど甘かったか~」と気の抜けるような呑気な口調のジャージの男。
「ボクはキミが最後に来ると思ってたけどねえ…神一郎?」と糸目の男を見てクスクスと笑うビジュアル系の男。
そして、ビジュアル系の男にそう言われた糸目の男はむっと顔をしかめ、言い返すように言葉を紡ぐ。
「照光さぁ、…まず居候って会議に参加する必要ないやろ。去ねや」
「むきになるなんて可愛いねぇ。キミのそういうところ、好きだねぇ。クックック…」
「白目で笑うな。気持ち悪いわ」
次々に飛び交う漫談のような会話に私がどう話に折り目をつければいいかわからなくなっているのを察したのか、傍らに立っていた鈴木さんが神一郎と呼ばれた男に近づいていった。
鶴の一声でもでるのかと期待しながら私は鈴木の後ろ姿を見ていたが、鈴木は神一郎の目の前に立つと自分の長い脚を大きく振り上げた。
私はその手で支えなくても高々と天に伸びる柔軟な脚に感心していたが、その脚が次にどうなるかまでは予想していなかった。
重力に逆らって高々と上げられた脚は、今度はその重力に従うように真っ逆さまに振りおろされ、その速度は重力の力を借りてさらに速度と威力を上げながら落ちた。
神一郎の、頭の上に。
それは殺人級の踵落としと言っても過言ではないだろう。
鈴木の踵と神一郎の頭蓋が接触した部分からベキベキと鈍い音が鳴り、接触して静止するかと思っていたその恐ろしい踵落としは、さらにベキベキと蹴り進んでいってついに神一郎の額を机に叩きつけた。
これで終わりだろうと安堵したのも束の間。蹴り進んだ踵はさらにそのまま机を蹴破ってしまったのだった。
真っ二つに裂けた机だった物の瓦礫に埋もれてしまった神一郎は全く動かない。その前にあの垂直に下ろされた踵落としを食らって意識があるどころか、生きているのかさえも怪しい。
死んだな…、と悟った瞬間。瓦礫の中から「何すんねーーーーん!!!」と飄々とした声でツッコミを入れる叫声が会議室に響き渡った。
その声が響き渡ると同時に盛大に瓦礫から起き上がる神一郎に驚くあまり私は反応が出なくなっていた。
それは「生きていた」という驚きよりも、問題はそこではなく「机が叩き割れる威力の踵落とし」を食らいながら、神一郎は「傷ひとつない」ということだった。
まるで手品のようなその光景に私はふたりの間からタネ探しをするも、その光景に驚いているのはどうやら私だけのようでこの行動が少し恥ずかしかった。
他の三人は興味なさそうにスマホをいじったり、爪の手入れをしたり、外を見つめたり、あまりの関心の無さにそこにも驚きだ。
「お兄ちゃんに向かって脚を上げるとは何事やねん!!」
「黙らねえとそろそろ本気で黙らせるぞ、兄貴」
私と話す時とはまるで別人と化した鈴木の変化。
もうさっきから色々と驚いてばかりで私の心臓がついていかない。あと数時間もすれば衝撃に耐えられなくなってこの心臓はいつか停まる、と私は己の余命を悟った気がした。
一体なんなんだこの社員たちは…。
0
あなたにおすすめの小説
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
「やはり鍛えることは、大切だな」
イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」
その日、一つのお見合いがあった。
ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。
クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。
そして互いに挨拶を交わすその場にて。
ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。
けれども……――。
「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる