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【第4世・五等爵とは】
何の為に武器を構える?
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兄貴は余興半分でコロシアム風な大会を催した。『この男を殺せば即伯爵』なんて甘い蜜を塗りたくって。
そこに参加した幾百の参加者たち。それぞれがそれぞれの能力を活かして、男ひとりを殺しにかかる。そして、男はただひとり、幾百を相手に勝ち目なんてない戦いをすることになった。
幾百の武器をひとりで喰らうそのおぞましいほどの未来予想図に、俺は背筋に寒気さえ感じた。
「どうなるんやろうなぁ~」
結果が容易に予想できるのにニヤニヤと口角を吊り上げて笑う、この高見の見物をするお偉い公爵様は一体何を考えているのか。
欲しいとか言いつつ、これも兄貴の中でただの暇つぶしにすぎないのか。そう思うとこの大会の中心的男に同情さえ芽生える。
「新参者のおにいさん。あたいらがずっと狙っていた席を横から奪おうなんて生意気だね!」
「……」
「でも、アンタには感謝しないとね!アンタのおかげでアンタさえ殺せばすぐ伯爵になれるんだから」
「……」
組織の中でもそこそこ成績のいい女が長い槍を男に向けた。それを鼓舞するように周りの参加者たちもそれぞれ武器を構えて、雄たけびを上げた。
「噂ではアンタ、あの切り裂きジャックだって言うじゃないか。でも、世間の人気者だからって、所詮は人間!ここじゃアンタもあたいたちと同じただの犯罪者なんだ!手加減なんてしてやらないよ!」
その言葉を引き金に周りの参加者たちも様々な罵倒の言葉を男に吐き捨てた。鋭い刃物や鈍器など多種多彩な武器の矛先が男へと向けられて、輪の中の中心にいるその男の陣地は次第に狭められていった。
「…おまえたちは何の為に武器を構える?」
男はユラリと気だるそうに辺りを見回した後、再び一番うるさい女へと視線を戻した。
「は?なんだいそりゃ。アンタを殺す為に決まってるだろ!」
「殺す為……………。…そんな気持ちで…」
ハアとあからさまに溜息をついた男は、両腕の袖口からシャリンと鈴の音のような綺麗な金属音を鳴らしながら長い刀を伸ばした。
両袖から伸びる研ぎ澄まされた手入れの行き届いた綺麗な刀には、男の横顔が映り込むほど。
しかし、俺はその刀を見た瞬間、背筋に冷たいものを感じ、吐き気をもようした。
「俺は……愛されたい為に武器を構える」
その瞬間、二刀から吹き出る物凄い『感情』。
会場全体がその何とも例えがたい重圧に押しつぶされそうになり、目眩や頭痛、吐き気さえ起きた。参加者の中にはその重圧に耐え切れず気を失って倒れる者もいた。
「な…、なんなんだい…アンタはーー!」
焦った女はその重圧を止めようと、長い槍を一突き…男に向けて突いた。しかし、槍は男の服を裂き、肌に触れるとバツンと鈍い音を立てて弾かれてしまったのだ。
弾かれた矛先は綺麗に折れていた。
「そんな軽い気持ちで構えた武器で俺を殺すことなんて…ましてや傷一つ付けることはできないよ」
槍で突かれたはずのその身体は、物理的に服は裂けてもそこから覗く皮膚には本当に傷ひとつついていなかった。
その異常たる光景に俺も周りの参加者や観戦者もどよめきを隠せなかった。
ただひとりを除いて。
「まさか…アビマーか………?」
男の異様な重圧を放つその武器と、槍を通さない皮膚を見つめながら、兄貴だけが…、ただひとり兄貴だけがニヤリと不気味に笑った。
その横顔を俺は気味が悪いと思った。
そこに参加した幾百の参加者たち。それぞれがそれぞれの能力を活かして、男ひとりを殺しにかかる。そして、男はただひとり、幾百を相手に勝ち目なんてない戦いをすることになった。
幾百の武器をひとりで喰らうそのおぞましいほどの未来予想図に、俺は背筋に寒気さえ感じた。
「どうなるんやろうなぁ~」
結果が容易に予想できるのにニヤニヤと口角を吊り上げて笑う、この高見の見物をするお偉い公爵様は一体何を考えているのか。
欲しいとか言いつつ、これも兄貴の中でただの暇つぶしにすぎないのか。そう思うとこの大会の中心的男に同情さえ芽生える。
「新参者のおにいさん。あたいらがずっと狙っていた席を横から奪おうなんて生意気だね!」
「……」
「でも、アンタには感謝しないとね!アンタのおかげでアンタさえ殺せばすぐ伯爵になれるんだから」
「……」
組織の中でもそこそこ成績のいい女が長い槍を男に向けた。それを鼓舞するように周りの参加者たちもそれぞれ武器を構えて、雄たけびを上げた。
「噂ではアンタ、あの切り裂きジャックだって言うじゃないか。でも、世間の人気者だからって、所詮は人間!ここじゃアンタもあたいたちと同じただの犯罪者なんだ!手加減なんてしてやらないよ!」
その言葉を引き金に周りの参加者たちも様々な罵倒の言葉を男に吐き捨てた。鋭い刃物や鈍器など多種多彩な武器の矛先が男へと向けられて、輪の中の中心にいるその男の陣地は次第に狭められていった。
「…おまえたちは何の為に武器を構える?」
男はユラリと気だるそうに辺りを見回した後、再び一番うるさい女へと視線を戻した。
「は?なんだいそりゃ。アンタを殺す為に決まってるだろ!」
「殺す為……………。…そんな気持ちで…」
ハアとあからさまに溜息をついた男は、両腕の袖口からシャリンと鈴の音のような綺麗な金属音を鳴らしながら長い刀を伸ばした。
両袖から伸びる研ぎ澄まされた手入れの行き届いた綺麗な刀には、男の横顔が映り込むほど。
しかし、俺はその刀を見た瞬間、背筋に冷たいものを感じ、吐き気をもようした。
「俺は……愛されたい為に武器を構える」
その瞬間、二刀から吹き出る物凄い『感情』。
会場全体がその何とも例えがたい重圧に押しつぶされそうになり、目眩や頭痛、吐き気さえ起きた。参加者の中にはその重圧に耐え切れず気を失って倒れる者もいた。
「な…、なんなんだい…アンタはーー!」
焦った女はその重圧を止めようと、長い槍を一突き…男に向けて突いた。しかし、槍は男の服を裂き、肌に触れるとバツンと鈍い音を立てて弾かれてしまったのだ。
弾かれた矛先は綺麗に折れていた。
「そんな軽い気持ちで構えた武器で俺を殺すことなんて…ましてや傷一つ付けることはできないよ」
槍で突かれたはずのその身体は、物理的に服は裂けてもそこから覗く皮膚には本当に傷ひとつついていなかった。
その異常たる光景に俺も周りの参加者や観戦者もどよめきを隠せなかった。
ただひとりを除いて。
「まさか…アビマーか………?」
男の異様な重圧を放つその武器と、槍を通さない皮膚を見つめながら、兄貴だけが…、ただひとり兄貴だけがニヤリと不気味に笑った。
その横顔を俺は気味が悪いと思った。
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