ゆめみるくらい

再井田 楠

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場所は高校。生徒は中学の時の皆。
私達は教室で先生を待っていた。
時間は午前9時前。黒板の傷、曲がったカレンダー、誰もいない机。いつもと変わらない風景。
が、クラスの1人がふと包丁を2丁取り出し、片方を私に渡してきた。
「え、なに。急に、」
相手は私を殺そうと首めがけて包丁を振り下ろしてきた。急な展開で貴方は首を傾げているかもしれないが、こちとらそんな暇などない。
私は包丁を相手の首めがけて振り上げ、切断して殺した。包丁ってこんなにすっと切れるんだね。
ふと周りを見ると、発狂しながら人を殺してる生徒が沢山いた。その中私に襲いかかる子もいたが、皆、首を切断して殺した。
そういえば殺された死体は消えていた気がする。
生徒が10人くらいになると先生2人が入ってきた。「今から私達は喧嘩をする。あなたたちを襲うつもりは無いけど、教室から出てもいい」
私は怖くなって廊下に出た。
先生らの喧嘩は想像以上にレベルが高く、お互いにものすごい高速なパンチをしていた。まるでどこかの海賊船長のようにね(笑)
その様子に周りの生徒は悲鳴をあげた。風圧で、頭が飛ぶ子や、拳ににあたって死ぬ子が次々に出たから、廊下に出て正解だったと思う。
でもそう簡単に話が上手くいく訳がなく、急に2人はパンチをしながら廊下側に移動してきた。もはやコントのように見えて笑えた。
とりあえず死ぬのは勘弁なので、急いで下の階に逃げることにした。走り逃げる中それぞれの教室を覗くと、同じく殺し合いがあった様子。あんなにごみごみとしていたクラスも、1クラス5人ほどしか生徒はいなかった。

下の階へ無事移動し、保健室へ逃げ込んだ。中は気の弱い子ばかりが集まっていた。ほけんしつあるあるだ。
保健の先生は、私を見るに驚き半分、心配そうにしていた。
「今上で先生たちが殺し合いをしています!もしかしたら私を狙って下に降りてくるかもしれません!」
「じゃあ、悪いけどその時はこの部屋を出てってくれる?」
無慈悲な言葉だが、今の状況じゃあしょうが無い。
「もちろんです」とだけ答えると、私は扉から廊下を覗いた。
今は誰も来ていない。
安堵し、少し一息つこうと思ったその時だった。
鼻歌と乾いた足音が聞こえた。まさかと思い見てみると案の定、歩いてくるのは血まみれの先生だった。これはまずい。ここにいる生徒、先生達を傷つけまいと、丸でどこかのアニメヒーローのように意を決して廊下へ出た。
するとニコニコしながら声をかけられる。すかさず、「○○先生はどうなったんですか?」とこちらも笑顔で返す。まるで狂った殺人者のように。
「あー!○○先生ね、俺が体を切断したから負けちゃったよ~?もしかして推してたのぉ??ま、死体は俺が持ってるから、良かったら職員室にあるから見に来なよ!」
そう言って職員室に戻って行った。
聞きがたい殺人内容に驚いた。でも私は見た。
開いた職員室の扉の向こうに腹部で真っ二つに切られた〇〇先生を。それもビニール袋を被され突っ立っていた。さらにその他にもう1人。隣のクラスの××先生が無惨にもバラバラにされていた。
気が動転しそうだ。どういうことだよ。なんであいつ生きてんだよ。
ガラガラガラ───

勢い良く戸が開いた。立っていたのは殺されたはずの○○先生…。
「おぉ!どうしたの!そんな怖い顔して。」
「いや…、別に普通ですよ…?」
「あ本当?? そういえばさ、文化祭でシチュー作ろうと思うんだけど、何の肉がいいかな?」
嫌な予感がした。
「ベーコンがいいです!」
すかさずそう言った。人肉を入れられたらたまったもんじゃない。だが、何も考えてない生徒がいた。というか、この子誰。
「私はなんでもいいですね~」
正直、馬鹿だと思った。
嫌な笑顔を浮かべた○○先生はその生徒を職員室へと入れ、勢い良く戸を閉めた。
チャンスだ!私は急いで外へ向かうと、さっきの生徒であろう断末魔が聞こえた。
やっぱり馬鹿だった。

外へ出るとみんなが集まっていた。
中腰で何かを見ている様子。どうやら携帯テレビで情報収集をしてる模様。
見てみると、この殺人パンデミックはここだけではなく世界各地で起きているようだ。地球上の半分の国々が黒く塗りつぶされ、そこに住んでいた人は絶滅したという情報が入った。残りの国も赤く塗りつぶされ、絶滅の危機と警告が出ていた。他の映像でも、他国へ移動する車を狂人と化した者が、乗っていた車で追突したり、軍事ヘリで狙い車両ごと爆発させるなど、放送されるのは殺戮映像ばかりだった。
いくら今が安全でも、時間が経てばここにいるテレビを見ている奴らも、狂って人を殺すだろう。
せっかく生き残っていたのに、つくづく可哀想だ。ただ、分かったことは、狂った者は皆ちゃんと自我があり、話が出来ること(それがまともな話なのかは知らないが)。さらに、狂人者になってしまった者は、正常者を優先的に殺すことが分かった。また、自分が正常か、あるいは狂人かが分からないとみた。そりゃあ、病気と一緒で当事者は気づけないだろう。
でも、そんな奴らに殺されるのは怖い。
それなら狂った奴の振りをすれば生きられるのではないか。あ、でも

そういえば最初に首を掻っ切って人殺してるわ。
まー、。でもあれは自己防衛だから。


#026:安達 すみれ
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