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行ったり来たりのウラガ
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ウラガとの面会日。
ウラガは、部屋のドアを少し開けたまま、爽やかな笑顔で私の前に座った。
「こんにちはモフコさん」
ただの挨拶ではあるのだけれど。
なんだろうこの感じは。まるでアイドルの握手会に来たような。よそよそしいのは初対面だからしかたないにしても、この、昔と違って人当たりが良すぎるのに、昔よりも一線引いてる感じ。
って駄目だ駄目だ。ヘイツのことがあったから警戒心がマックスすぎる。
「モフコさん?」
「あっはいこんにちはっ! 良いお天気ですね!」
やはり声が似ているからか、ウラガの表情が一瞬強張ったが、またすぐに爽やかスマイルに戻った。
「はい。そうですね」
自分で言っておいてなんだけれど、外はかなりの曇り空だった。
あれかな。良いお天気っていうのは人それぞれ解釈が違いますよっていう。雨が好きな人にとっては雨の日は良いお天気……違うよね。
ヘイツをへた私にはわかる。
ウラガもこの部屋に居たいだけなのだと。そして私は邪魔なのだと。
「あの。ウラガ様は、他のご令嬢とも面会してらっしゃるんですよね」
もう面倒だから本題に持って行こう。
私は、情報をフル回転させた。
婚約を断られ飛び降りたという銀髪の霊爵令嬢は快方に向かっていると聞いた。
結婚話を持ち出すまではよく面会してたようだし、照れ隠しでつい断っちゃった説がないこともないかもしれない。
「いえ……ああ……えっとあなたとしか面会しておりませんよ」
なんかさらっと嘘つかれた。
「あら。でも噂では……」
思わせぶりな態度で誘ってみたが、ウラガのスマイルは崩せなかった。
「噂など嘘ばかりです。私は誰とも面会する気はありません。あ。あなた以外とは……ですけれど」
少し照れたフリをするウラガのあざとさに、まんまとひっかかりそうな自分がいる。
なぜかって顔が良いからに違いない。
がしかし。
私は知っている。
これもヘイツと同じなのだと。私の乙女心を落とし、自由に出入りできるようにってヤツに違いないのだと。
この部屋を手に入れたい一心なのだ……と。
あれ。なんか私の思考おかしいな。
二人はものすごくこの部屋に執着してる。それなのに他の霊爵令嬢に気があるのではないかと聞き出そうとしている。
知ってるのに知らないふり。相当意味のない質問をしているのではないだろうか。
うん。してる。してるぞ。
二人が想ってるのが誰かわかっててあえて聞いていくスタイル。
「どうかされましたか?」
ウラガが心配そうな顔……を作っている。
直接的なヘイツと違って、ウラガのこの人を舐めた作戦もなかなかに腹が立つ。女子全員俺の顔好きだろ的な。
昔はどちらかというと、ヘイツの方が裏があって、ウラガはまっすぐ向かってくるタイプだったはずなのに。
何がどうなってこうなったのか。
……私のせいか。自意識過剰であってほしいけど。私のせいなのか?
私は、ハムスターなしで自問自答しながら、目の前のやさしげなウラガを見据えた。
「一応言っておきますが。私。あなたのことは全く好みではありません。面会のことを聞いたのも、嫉妬からではありません」
「………」
ウラガの顔が、何とも言えない状態で固まった。
「ウラガ様が、器の大きい令嬢と婚姻しなければならないのはわかっておりますが。私はあまり乗り気ではありません。ウラガ様には別の方と一緒に……出来ればお慕いしている方と添い遂げて幸せになってほしいなと思いま」
「あなたはここに何をしに来たのですか? 妖精一族と結婚して幸せになるためでは?」
間髪入れず真剣な目で問われた。
その様子が……いや、その表情……昔と同じまっすぐな瞳に見つめられた途端。
ふと既視感に襲われたような気がした。
「幸せ……」
わかっているのに、わからない。
行ったり来たりを繰り返し過ぎた弊害。
ここがどの時代なのか。自分が何をしてこうなったのか。戻った後なのか先なのか。
考えなければわからなくなる。
ここは……ここは未来だ。過去じゃない。違う現在……。だからここには……ない。
でも私の幸せはここにあった。確かにここに……でも今はもう。
「私の幸せはもうどこにもありません」
不幸なわけじゃない。楽にのんびりやっていたから幸せと言ってもいいくらいだ。今現在のこの状況だって、不幸ではない。どうすればいいかわからないってだけだ。
それなのに、言葉にするとまるで……。
「どこにも……じゃなくてここには……でしょうか……あれ」
言い訳もなんだかおかしい。
私は、不自然な間で椅子から立ち上がり、窓の外を見ようとした。
カーテン閉まってる。
開けよう。窓も開けよう。
一歩踏み出した瞬間。
ぐんっと体をひかれた。
「この部屋で。その声でそんなこと言わないでくだっああっ!?」
「ええ!?」
突然の大声に驚き、自分が何をしようとしていたのかわからなくなった。
なぜに今立ち上がっているのだろう。そしてなぜに今手首を掴まれているのだろうか。
「触れる……」
「え?」
ガッチリ両腕をつかまれた。
「やっぱり触れる!」
ウラガはさっきと違う子供のような笑顔で私の腕をぶんぶん振って、急に私の体を持ち上げ、更にはぐるぐる回しだした。
映画のラストシーンでよく見る。ようやく出会えた男女がやるアレだ。
今。何か嬉しいことありましたか?
何が何だかわからない。
スピード早い。
目が回る。
助けて。
「ほらなっ言った通りだ! 俺は大丈夫なんだよリリっ! 俺はちゃんと君の望み通り生きてるっ!」
笑いながら私をぐるぐる回し続けるウラガは、どこか狂気的だ。
べたべた張り付いてきたヘイツと同じぐらいヤバイ。
私はそのまま何の抵抗も出来ず、地面に降ろされ。
へたり込みそうになったら、今度は抱き上げられた。
向かう先はどうやら……ベッド。
助けてーー!
と叫ばなくて良かった。
ウラガは、私をベッドの上に降ろしてくれただけで、特に何もしてこなかった。
「すみませんモフコさん。少しはしゃいでしまって」
「い……いえ。いいんですのよ」
「調子が悪そうですので、私はこれで失礼致します」
「は?」
ツッコみどころ多。
「ではまた」
ウラガは、嬉しそうに会釈すると、純白のマントを翻し、半開きのドアから出て行ってしまった。
「何……な……な?」
と思ったら、数秒で戻って来た。
青ざめた顔で。
「なぜだ……」
首を傾げながら、当たり前のように私の手を握るウラガ。
気分の悪さから抵抗出来ない私。
謎の状況再び。
なにこれ。ハムスターわかる? これ。
ハムスターはダンスを踊っている。
「あなただけがなんてことはあり得ないはず……この部屋のせい……それとも声か?」
ぶつぶつ呟きながら、私の手をさするウラガを見ていると、ボディブローのようにじわじわと心にくるものが……。
もうだめだ。情緒不安定だ。普通じゃない。変だ。舞い踊ってるのを見たときは大人になったんだなって思ったけど。全然そんなんじゃなかった。
私は、自らの意志でそうしたけれど、二人は違うのだ。
二人は急に失った。共に過ごした日々を。
思い出すのも辛くなるほど急に、亡くした。
二人が私に抱いていた愛情は、痛みによって歪み、こんな風に。
本当は家族愛のようなものだったはずなのに。たぶん絶対そうだったのに。
いや、なんだか思い返せばよくわからなくもあるけれど、二人は子供だったし。絶対家族愛だった。
でないと私鈍すぎる説が……そんな少女漫画のヒロインみたいなこと……乙女ゲームのヒロインみたいなことあるはずない。
なぜなら私は悪役令嬢。
ハムスターはダンスを踊っている。
そりゃ。一緒に居た人が死んだら。どんな理由があっても辛いよ。それで記憶なくして、最近思い出したってなったら、消化しきれないままになっちゃうよ。
生きてることが一番って思ってたけど。私の想像力が乏しかった。
戻れればいいのに……でも。
もう戻れない。
モフモフマリモすごく小さくなっちゃってる。消したくない。
「ウラガ様」
私は体を起こし、ウラガに握られた手をブンブン振った。
ウラガは、こっちを見はしたが、手を離そうとはしない。
「はい。あ……申し訳ございません」
謝ってくれたが、まだ手は離さない。全然まったく離そうとしない。接着剤でもついてるのかってくらい。呪われてるのかってくらいに、離さない。
ので、仕方なく握り返してみた。
すると、いともあっさり、いや、ちょっと嫌そうに離してくれた。これはこれで心外だが、まあいい。
「何かきっかけがあるはずだ」
「はい?」
問いかけたら睨まれた。今のタイミングで睨まれる筋合いないのに。
私は、昔のようにその視線を受け止め……られず、そーっと逸らして、窓の外を……カーテン畜生。
頑張れ。頑張るのだ私。現状から目を背けてもしかたない。
私はなんとか己を叱咤して、ウラガを見た。
ウラガは、もう睨んではいなかったが、ものすごく訝し気な表情をしていた。
「本当は今日、この部屋から出て頂くようお願いするつもりで来ました」
急な本音。
「ですが。別のお願いが出来ましたので、暫しこの件は保留にします」
「……は」
何かものすごく勝手なことを言われているような。
「お願いって……なんでしょうか」
「それは後日。大したことではありませんので」
ウラガはそう言って、もろもろのことを謝罪した後、頭を下げ、今度こそ部屋を去った。
ああ。余韻を残さず部屋を去る人物はこの世界にいないのでしょうか。
私は、盛大なため息をつき。
それから深く息を吸い込んで。
やがて部屋の中をうろうろもだもだして。
気付いたらダンスを踊っていた。
ウラガは、部屋のドアを少し開けたまま、爽やかな笑顔で私の前に座った。
「こんにちはモフコさん」
ただの挨拶ではあるのだけれど。
なんだろうこの感じは。まるでアイドルの握手会に来たような。よそよそしいのは初対面だからしかたないにしても、この、昔と違って人当たりが良すぎるのに、昔よりも一線引いてる感じ。
って駄目だ駄目だ。ヘイツのことがあったから警戒心がマックスすぎる。
「モフコさん?」
「あっはいこんにちはっ! 良いお天気ですね!」
やはり声が似ているからか、ウラガの表情が一瞬強張ったが、またすぐに爽やかスマイルに戻った。
「はい。そうですね」
自分で言っておいてなんだけれど、外はかなりの曇り空だった。
あれかな。良いお天気っていうのは人それぞれ解釈が違いますよっていう。雨が好きな人にとっては雨の日は良いお天気……違うよね。
ヘイツをへた私にはわかる。
ウラガもこの部屋に居たいだけなのだと。そして私は邪魔なのだと。
「あの。ウラガ様は、他のご令嬢とも面会してらっしゃるんですよね」
もう面倒だから本題に持って行こう。
私は、情報をフル回転させた。
婚約を断られ飛び降りたという銀髪の霊爵令嬢は快方に向かっていると聞いた。
結婚話を持ち出すまではよく面会してたようだし、照れ隠しでつい断っちゃった説がないこともないかもしれない。
「いえ……ああ……えっとあなたとしか面会しておりませんよ」
なんかさらっと嘘つかれた。
「あら。でも噂では……」
思わせぶりな態度で誘ってみたが、ウラガのスマイルは崩せなかった。
「噂など嘘ばかりです。私は誰とも面会する気はありません。あ。あなた以外とは……ですけれど」
少し照れたフリをするウラガのあざとさに、まんまとひっかかりそうな自分がいる。
なぜかって顔が良いからに違いない。
がしかし。
私は知っている。
これもヘイツと同じなのだと。私の乙女心を落とし、自由に出入りできるようにってヤツに違いないのだと。
この部屋を手に入れたい一心なのだ……と。
あれ。なんか私の思考おかしいな。
二人はものすごくこの部屋に執着してる。それなのに他の霊爵令嬢に気があるのではないかと聞き出そうとしている。
知ってるのに知らないふり。相当意味のない質問をしているのではないだろうか。
うん。してる。してるぞ。
二人が想ってるのが誰かわかっててあえて聞いていくスタイル。
「どうかされましたか?」
ウラガが心配そうな顔……を作っている。
直接的なヘイツと違って、ウラガのこの人を舐めた作戦もなかなかに腹が立つ。女子全員俺の顔好きだろ的な。
昔はどちらかというと、ヘイツの方が裏があって、ウラガはまっすぐ向かってくるタイプだったはずなのに。
何がどうなってこうなったのか。
……私のせいか。自意識過剰であってほしいけど。私のせいなのか?
私は、ハムスターなしで自問自答しながら、目の前のやさしげなウラガを見据えた。
「一応言っておきますが。私。あなたのことは全く好みではありません。面会のことを聞いたのも、嫉妬からではありません」
「………」
ウラガの顔が、何とも言えない状態で固まった。
「ウラガ様が、器の大きい令嬢と婚姻しなければならないのはわかっておりますが。私はあまり乗り気ではありません。ウラガ様には別の方と一緒に……出来ればお慕いしている方と添い遂げて幸せになってほしいなと思いま」
「あなたはここに何をしに来たのですか? 妖精一族と結婚して幸せになるためでは?」
間髪入れず真剣な目で問われた。
その様子が……いや、その表情……昔と同じまっすぐな瞳に見つめられた途端。
ふと既視感に襲われたような気がした。
「幸せ……」
わかっているのに、わからない。
行ったり来たりを繰り返し過ぎた弊害。
ここがどの時代なのか。自分が何をしてこうなったのか。戻った後なのか先なのか。
考えなければわからなくなる。
ここは……ここは未来だ。過去じゃない。違う現在……。だからここには……ない。
でも私の幸せはここにあった。確かにここに……でも今はもう。
「私の幸せはもうどこにもありません」
不幸なわけじゃない。楽にのんびりやっていたから幸せと言ってもいいくらいだ。今現在のこの状況だって、不幸ではない。どうすればいいかわからないってだけだ。
それなのに、言葉にするとまるで……。
「どこにも……じゃなくてここには……でしょうか……あれ」
言い訳もなんだかおかしい。
私は、不自然な間で椅子から立ち上がり、窓の外を見ようとした。
カーテン閉まってる。
開けよう。窓も開けよう。
一歩踏み出した瞬間。
ぐんっと体をひかれた。
「この部屋で。その声でそんなこと言わないでくだっああっ!?」
「ええ!?」
突然の大声に驚き、自分が何をしようとしていたのかわからなくなった。
なぜに今立ち上がっているのだろう。そしてなぜに今手首を掴まれているのだろうか。
「触れる……」
「え?」
ガッチリ両腕をつかまれた。
「やっぱり触れる!」
ウラガはさっきと違う子供のような笑顔で私の腕をぶんぶん振って、急に私の体を持ち上げ、更にはぐるぐる回しだした。
映画のラストシーンでよく見る。ようやく出会えた男女がやるアレだ。
今。何か嬉しいことありましたか?
何が何だかわからない。
スピード早い。
目が回る。
助けて。
「ほらなっ言った通りだ! 俺は大丈夫なんだよリリっ! 俺はちゃんと君の望み通り生きてるっ!」
笑いながら私をぐるぐる回し続けるウラガは、どこか狂気的だ。
べたべた張り付いてきたヘイツと同じぐらいヤバイ。
私はそのまま何の抵抗も出来ず、地面に降ろされ。
へたり込みそうになったら、今度は抱き上げられた。
向かう先はどうやら……ベッド。
助けてーー!
と叫ばなくて良かった。
ウラガは、私をベッドの上に降ろしてくれただけで、特に何もしてこなかった。
「すみませんモフコさん。少しはしゃいでしまって」
「い……いえ。いいんですのよ」
「調子が悪そうですので、私はこれで失礼致します」
「は?」
ツッコみどころ多。
「ではまた」
ウラガは、嬉しそうに会釈すると、純白のマントを翻し、半開きのドアから出て行ってしまった。
「何……な……な?」
と思ったら、数秒で戻って来た。
青ざめた顔で。
「なぜだ……」
首を傾げながら、当たり前のように私の手を握るウラガ。
気分の悪さから抵抗出来ない私。
謎の状況再び。
なにこれ。ハムスターわかる? これ。
ハムスターはダンスを踊っている。
「あなただけがなんてことはあり得ないはず……この部屋のせい……それとも声か?」
ぶつぶつ呟きながら、私の手をさするウラガを見ていると、ボディブローのようにじわじわと心にくるものが……。
もうだめだ。情緒不安定だ。普通じゃない。変だ。舞い踊ってるのを見たときは大人になったんだなって思ったけど。全然そんなんじゃなかった。
私は、自らの意志でそうしたけれど、二人は違うのだ。
二人は急に失った。共に過ごした日々を。
思い出すのも辛くなるほど急に、亡くした。
二人が私に抱いていた愛情は、痛みによって歪み、こんな風に。
本当は家族愛のようなものだったはずなのに。たぶん絶対そうだったのに。
いや、なんだか思い返せばよくわからなくもあるけれど、二人は子供だったし。絶対家族愛だった。
でないと私鈍すぎる説が……そんな少女漫画のヒロインみたいなこと……乙女ゲームのヒロインみたいなことあるはずない。
なぜなら私は悪役令嬢。
ハムスターはダンスを踊っている。
そりゃ。一緒に居た人が死んだら。どんな理由があっても辛いよ。それで記憶なくして、最近思い出したってなったら、消化しきれないままになっちゃうよ。
生きてることが一番って思ってたけど。私の想像力が乏しかった。
戻れればいいのに……でも。
もう戻れない。
モフモフマリモすごく小さくなっちゃってる。消したくない。
「ウラガ様」
私は体を起こし、ウラガに握られた手をブンブン振った。
ウラガは、こっちを見はしたが、手を離そうとはしない。
「はい。あ……申し訳ございません」
謝ってくれたが、まだ手は離さない。全然まったく離そうとしない。接着剤でもついてるのかってくらい。呪われてるのかってくらいに、離さない。
ので、仕方なく握り返してみた。
すると、いともあっさり、いや、ちょっと嫌そうに離してくれた。これはこれで心外だが、まあいい。
「何かきっかけがあるはずだ」
「はい?」
問いかけたら睨まれた。今のタイミングで睨まれる筋合いないのに。
私は、昔のようにその視線を受け止め……られず、そーっと逸らして、窓の外を……カーテン畜生。
頑張れ。頑張るのだ私。現状から目を背けてもしかたない。
私はなんとか己を叱咤して、ウラガを見た。
ウラガは、もう睨んではいなかったが、ものすごく訝し気な表情をしていた。
「本当は今日、この部屋から出て頂くようお願いするつもりで来ました」
急な本音。
「ですが。別のお願いが出来ましたので、暫しこの件は保留にします」
「……は」
何かものすごく勝手なことを言われているような。
「お願いって……なんでしょうか」
「それは後日。大したことではありませんので」
ウラガはそう言って、もろもろのことを謝罪した後、頭を下げ、今度こそ部屋を去った。
ああ。余韻を残さず部屋を去る人物はこの世界にいないのでしょうか。
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