ドラゴネット興隆記

椎井瑛弥

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第二章:領主二年目第一部

商会の取り扱い商品

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「商会の場所は確保できた。人手も頼んだ。そこで何を扱うかだな」

 ブルーノとライナーの役人二人と、今後この領地が販売する物について話をしている。領地で販売する物と王都の商会で販売する物の両方についてだ。

 商会については従僕のアントンに会長を任せることにし、すでに王都に送っている。商会の場所はヨーゼフとブリギッタが魔道具の店をしていた建物だ。ゲルトの親父さん経由で建物の改装と人材の募集をしている。

「保存庫が広くなったからまだ容量に余裕はあるが、これ以上穀物倉庫を増やすことはできないから、とりあえず穀物は売る。それは決まりだ。それ以外となると、魔道具、木材、石材、家具、琥珀、織物、食器、刃物、酒、薬草あたりだが……」

 石材は俺が空き時間にいくらでも作れる。これまでもゲルトの親父さんの店に何回か売ったからな。材料はどこにでもある。

「魔獣の素材もいけるんじゃないの?」
「たしかに毛皮も十分売れると思いますよ。でも木材と琥珀はマーロー男爵領にとっても主力商品ですので、あまり販売数を増やすと刺激してしまうことになりそうです。それよりは石材の方がいいでしょう」
「そうだな。お隣とは揉めたくないな」

 デニス殿とは上手くやっている。トンネルが通ったおかげで、エクセンからこちらにも商人が来てくれることになった。だがそれでもエクセンまで来た商人が全員というわけではない。日数や予算に余裕があり、しかも新しくできた領地なら早いうちに顔繋ぎをしておこうという商人たちだ。

 もちろんうちはそのような者たちを歓迎する。歓迎するからにはそれなりの扱いをすることになる。もし店を出してくれるなら、今のうちならいい場所がいくらでも空いていると伝えている。

 領地に存在する商店はニクラスの店だけで、今のところは日用品が中心になっている。それ以外にも魔獣の骨や牙や魔石を販売しているが、やって来る商人の人数が人数だからそれほど売れてはいない。

 魔獣の骨を何に使うかだが、軽いわりに硬いので、革の鎧の補強に使ったりする。なめした革を貼り合わせる際に間に薄く切った骨を入れることで強度が増す。また鋼と違って錆びないので、外側に鱗のように貼り付けることもできる。

 肉は主に町の中で消費されるし、毛皮は防寒具や敷物として使われている。外套にすると暖かいから人気だ。余剰分は使わずに溜めている。

「でも正直なところ、毛皮の扱いがものすごく適当じゃない? 王都ならもっと高いよ?」
「熊や鹿の毛皮は防寒具としていいだろう。外に売るよりもまずは領民の生活だ。領民に行き渡れば、次からはもっと高くする」
「それはそうなんだろうけどさあ」
「僕は寒がりなので重宝していますけどね。ですが、あれを王都で売れば相当な値段になると思うと、財政担当としては微妙ですね」

 去年の冬まで、この領地は他の領地と繋がっていなかった。だから外との取引は一切なかった。だから俺がすべて面倒を見るという形にして、食料品を含めて必要なものは俺が用意していた。その代わりにみんなで麦を育て、魔獣を狩り、それを一度すべて俺のものとしてからあらためて配ることにしていた。

 ドラゴネットで暮らしているのは、昨年までは六割が旧領地の住民、残り四割が王都などから来た移民と職人と使用人だった。先日ヴァイスドルフ男爵領からまとめてやって来たのは例外としても、今後は外からやって来る者も一定数はいるだろう。

 ニクラスのようにドラゴネットで店を開きたいという者が他にも出てくるかもしれないが、これまでの住民とあまり差を付けられない。だから領内できっちりと金を使うことを覚えてもらわないといけない。

 前からいた者たちには物を渡し、新しい者たちには買えと言うのはおかしい。だから去年の終わりごろ、魔獣の毛皮でできた防寒具をまだ持っていない領民には配り、今後は購入してもらうことになった。

「毛皮そのものを売るかどうかは分からないが、加工品については王都で売ろうと思う。難しいかもしれないが、できればここまで来てほしいから、目玉商品は用意してもいいだろう」
「それが毛皮ですか?」
「毛皮や魔石がそうだろうな」

 とりあえずパン屋、アンゲリカの酒場、赤髪亭、風呂屋、ニクラスの店では金を使う。あまり金を使ったことのない者は、去年の終わりごろから無駄遣いをしない範囲で金の使い方を思い出してもらっている。

 今さら一から金の使い方を教えるほどではないが、ここしばらくまともに使っていなかった者が多い。子供はほとんど使ったことがなかったので、ちょっとしたものを商店で買うことで金の使い方を教えている親も多い。

 ハイデでもよく似たものだった。父や俺が王都などに出かけた際に必要そうなものをまとめて買ってきて、必要な者に分け与える感じだった。もちろん金も使うが、商人が来たときくらいで、住民同士で金を使うことはまずなかった。

「とりあえず一度休憩するか」



◆ ◆ ◆



「そう言えば、ヴルストソーセージなどはどうなっていますか? あれも商品になりそうですが」
「熟成庫のお陰で量産が可能になったそうだ。完成したら保存庫に入れている」

 ブリギッタには熟成庫だけではなく保存庫もいくつか作ってもらった。保存庫は完全に時間が止まるわけではないそうだが、可能な限り遅くなるそうだ。さらに内部の空間が広くなっている。

 小麦などを入れておく倉庫や肉などを入れておく食料庫は、建物そのものが順番に保存庫として改装され、その他にも城、集会所、アンゲリカの酒場、赤髪亭には食材が傷まないようにするための保存庫がいくつも設置された。やはり設置の際にはライムントが使いっ走りをさせられていた。

 あちこちに保存庫が設置されたため、俺がその都度呼び出されて補充に行く必要がなくなった。手間というほどではないが、出かけるなら仕事の手を止めないといけないから、かなり助かっている。

「とりあえず魔獣の肉や保存食については領内での販売を基本にして、それ以外の骨、角、牙、魔石などは王都でも販売するということですね。毛皮については、王都では加工品を販売、毛皮そのものは王都では未定ということでいいですね」
ヴルストソーセージを王都で売ったとして、売れすぎてこちらで食べられないとかになったら困るからね」
「『まだ産まれていない卵を気にしてはいけない』と言うだろう」
「でもなくなったらそれでお終いだよ」
「ブルーノが失敗するのはそのあたりですね」
「そうだろうな」
「え? 何で?」
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