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第五章:領主二年目第四部
竜とペガサスとグリフォン
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「カイさん、どうでしたか?」
「素直っすね。ビックリするくらいに」
マリエッテがカイとペガサスの間に契約を行った。この四頭のペガサスはカイの命令を聞くようになったそうだ。そしてカイが飛行練習をして戻ったところだ。それなら他の人を襲わないのかということだが、カイが命令しない限りは襲うことはないらしい。
これまで馬丁をしていたカイを商会所属にし、商会が所有することになったペガサス便の御者になってもらった。カイはペガサス便の話を聞いた時、「カッコいいじゃないっすか!」と最初は喜んでいたが、実際に飛ぶ段階になると顔を青くしていた。空を飛ぶのだからそうなるだろう。俺も初めて空を飛んだ時は怖かったぞ。
御者といってもペガサスに手綱を付けるわけではない。四頭のペガサスの体には鞍のようなものが付けられ、そこから伸びたロープが荷馬車の四隅に括り付けられている。そうして四頭で馬車を吊り下げて運ぶ。
かつてカレンに懐いたペガサスがいた。だがペガサスに馬車を引かせたらどうかと考えたが、ペガサスは飛んでも馬車は飛ばない。引きずられるだけだ。そういうことでその案はお蔵入りになった。四頭で吊り下げるという考えはなかった。
ペガサスは頭がいいので、「一五度右」「少し高度を上げろ」「前にある広場に降りろ」などと御者席から行き先を伝えるだけでいいそうだ。今はカイが試しに空を飛んでみて、どうすればより扱いやすくなるかをマリエッテたちと検討している。
「御者席の場所は変えてほしいっす。前に何もないから下がる時にずり落ちそうでマジ怖いっすよ」
「それなら御者席は中にしましょう。新しく作り直した方がいいかもしれませんね」
カイが乗っていた馬車は既存の馬車に少し手を加えただけだったから御者席が前に出ていた。足元を覗けば遙か下の地面が見えて怖いだろう。声が聞こえる範囲なら問題ないようだから、馬車の中から声をかけるようだ。
今回の飛行が上手く行ったので、今後はペガサス便の御者を増やすらしい。そのあたりはマリエッテたちに任せている。俺にはペガサスは扱えないからな。
そしてペガサス便だけではなくグリフォン便も使う。主にノルト男爵領の中でだ。領内の調査に向かう職人たちや狩人たち乗り物を想定しているらしい。
「エルマー君、グリフォンですよ、グリフォン。空の覇者じゃないですか」
そう言って喜んだのはエラだ。少し前に契約したグリフォンに跨がってどこかに飛んでいった。おもちゃを与えられた子供のような喜び方だったな。見た目が子供のようだからそのまんまだった。
グリフォンは魔物の中ではかなり強い。だからグリフォンに乗って移動できれば魔獣に襲われる危険はかなり減る。しかも四頭いれば巨大な魔獣を何頭も吊り下げて運べるくらいの力がある。今後は魔獣の輸送でも大助かりだ。
「それで、マリエッテたちはこれからどうするんだ? いや、今後もここにいてくれたら大助かりだが」
「このままここにいさせてもらいます。私たちは特に急ぎのものを運ぼうかと考えています」
「たしかにペガサスよりも竜の方が速いな」
ペガサスはあえて言えば優雅に飛ぶ。もちろん地上を走る馬車よりも圧倒的に速いが、竜には敵わないだろう。
「ところで領主様、話は変わりますが、カレン様が奥様ですよね?」
マリエッテがいきなり話を変えた。
「ああ、正妻ということにしている」
「あの方はクラース様とパウラ様の娘様ということで間違いないですよね?」
「ああ、何か気になることがあるのか?」
マリエッテたちはローサの親戚だ。今回ローサが俺と妻となったこともあって、マリエッテたちとは遠い親戚になった。彼女たちはローサの従兄の孫で、クラース、パウラ、カレンとは血の繋がりはない。これまで縁のなかった同種族ということなら気にもなるだろう。
「失礼な言い方に聞こえるかもしれませんが、カレン様の魔力量はおかしくないですか?」
「ローサもそんなこと言っていたな。今は自分の方が多いが、そのうち自分を軽く超えると」
転移の指輪の話をした時だったか。ゴール王国に行く前のことだ。
「カレン様の配偶者である領主様もその影響か、我々に近い魔力があるように思えます」
「ああ、カレンが[魔力譲渡]のつもりで[魔力引き上げ]を使って、うっかり思いっきり増やしてしまったらしい。危うく俺は死にかけた」
「ああ、それでですか」
それだけで分かってもらえた。
「あくまで私が思っただけですが、カレン様は先祖返りを起こしているのかもしれません」
「先祖返り?」
マリエッテに聞くと、竜の血筋にはたまに当たりがあり、そうすると本来持つ以上の魔力を持って生まれてくるらしい。それが親の二倍なのか一〇倍なのかは竜それぞれらしいが、そういうことが稀にあるんだそうだ。クラースもパウラも普通より少し魔力が多いくらいだそうだから、この年齢で両親に近い魔力を持つカレンは先祖返りの可能性があると。
「それで何か害があるのか?」
「いえ、それ自体は特には。ですが先祖返りというだけあって、最終的には普通の竜とは比べものにならない魔力を持つそうです。ですので、よほど魔力操作が上達しないと……」
「ああ、うっかりやらかすということか」
「そうなります」
カレンは魔力操作があまり上手じゃない。種族的には水竜らしいので水に関しては上手に扱えるけど、土や石は力の入れ具合を間違えて破裂させることがある。
長い年月をかければ魔力操作も上達するはずだが、魔力量の増加がそれを上回るとなかなか大変だそうだ。とりあえず日々訓練だと。
「子供も生まれたから体を動かし始めたところだ。そうしたら外で魔法を使うこともあるだろう。もしよければカレンにアドバイスをしてやってほしい」
「私たちでよければいつでも」
カレンは少しずつ上達している。だが教師役がいなかったので手探り状態で練習していた。主に俺が自分がやっていた練習方法を教えていた。
俺にも教えてくれる人がいなかったのでほぼ我流だった。一応魔法についての本は父が用意してくれたが、そこには使い方が書かれていただけで、どうすればより上手に効率よくできるかは書かれていなかった。
今でこそそれなりに上達したが、子供の頃には掘りすぎて穴に落ちたりしたからな。そういう注意点なども交えながらカレンに教えていた。今後はマリエッテの手も借りればもう少し効果的な練習ができるだろう。
「素直っすね。ビックリするくらいに」
マリエッテがカイとペガサスの間に契約を行った。この四頭のペガサスはカイの命令を聞くようになったそうだ。そしてカイが飛行練習をして戻ったところだ。それなら他の人を襲わないのかということだが、カイが命令しない限りは襲うことはないらしい。
これまで馬丁をしていたカイを商会所属にし、商会が所有することになったペガサス便の御者になってもらった。カイはペガサス便の話を聞いた時、「カッコいいじゃないっすか!」と最初は喜んでいたが、実際に飛ぶ段階になると顔を青くしていた。空を飛ぶのだからそうなるだろう。俺も初めて空を飛んだ時は怖かったぞ。
御者といってもペガサスに手綱を付けるわけではない。四頭のペガサスの体には鞍のようなものが付けられ、そこから伸びたロープが荷馬車の四隅に括り付けられている。そうして四頭で馬車を吊り下げて運ぶ。
かつてカレンに懐いたペガサスがいた。だがペガサスに馬車を引かせたらどうかと考えたが、ペガサスは飛んでも馬車は飛ばない。引きずられるだけだ。そういうことでその案はお蔵入りになった。四頭で吊り下げるという考えはなかった。
ペガサスは頭がいいので、「一五度右」「少し高度を上げろ」「前にある広場に降りろ」などと御者席から行き先を伝えるだけでいいそうだ。今はカイが試しに空を飛んでみて、どうすればより扱いやすくなるかをマリエッテたちと検討している。
「御者席の場所は変えてほしいっす。前に何もないから下がる時にずり落ちそうでマジ怖いっすよ」
「それなら御者席は中にしましょう。新しく作り直した方がいいかもしれませんね」
カイが乗っていた馬車は既存の馬車に少し手を加えただけだったから御者席が前に出ていた。足元を覗けば遙か下の地面が見えて怖いだろう。声が聞こえる範囲なら問題ないようだから、馬車の中から声をかけるようだ。
今回の飛行が上手く行ったので、今後はペガサス便の御者を増やすらしい。そのあたりはマリエッテたちに任せている。俺にはペガサスは扱えないからな。
そしてペガサス便だけではなくグリフォン便も使う。主にノルト男爵領の中でだ。領内の調査に向かう職人たちや狩人たち乗り物を想定しているらしい。
「エルマー君、グリフォンですよ、グリフォン。空の覇者じゃないですか」
そう言って喜んだのはエラだ。少し前に契約したグリフォンに跨がってどこかに飛んでいった。おもちゃを与えられた子供のような喜び方だったな。見た目が子供のようだからそのまんまだった。
グリフォンは魔物の中ではかなり強い。だからグリフォンに乗って移動できれば魔獣に襲われる危険はかなり減る。しかも四頭いれば巨大な魔獣を何頭も吊り下げて運べるくらいの力がある。今後は魔獣の輸送でも大助かりだ。
「それで、マリエッテたちはこれからどうするんだ? いや、今後もここにいてくれたら大助かりだが」
「このままここにいさせてもらいます。私たちは特に急ぎのものを運ぼうかと考えています」
「たしかにペガサスよりも竜の方が速いな」
ペガサスはあえて言えば優雅に飛ぶ。もちろん地上を走る馬車よりも圧倒的に速いが、竜には敵わないだろう。
「ところで領主様、話は変わりますが、カレン様が奥様ですよね?」
マリエッテがいきなり話を変えた。
「ああ、正妻ということにしている」
「あの方はクラース様とパウラ様の娘様ということで間違いないですよね?」
「ああ、何か気になることがあるのか?」
マリエッテたちはローサの親戚だ。今回ローサが俺と妻となったこともあって、マリエッテたちとは遠い親戚になった。彼女たちはローサの従兄の孫で、クラース、パウラ、カレンとは血の繋がりはない。これまで縁のなかった同種族ということなら気にもなるだろう。
「失礼な言い方に聞こえるかもしれませんが、カレン様の魔力量はおかしくないですか?」
「ローサもそんなこと言っていたな。今は自分の方が多いが、そのうち自分を軽く超えると」
転移の指輪の話をした時だったか。ゴール王国に行く前のことだ。
「カレン様の配偶者である領主様もその影響か、我々に近い魔力があるように思えます」
「ああ、カレンが[魔力譲渡]のつもりで[魔力引き上げ]を使って、うっかり思いっきり増やしてしまったらしい。危うく俺は死にかけた」
「ああ、それでですか」
それだけで分かってもらえた。
「あくまで私が思っただけですが、カレン様は先祖返りを起こしているのかもしれません」
「先祖返り?」
マリエッテに聞くと、竜の血筋にはたまに当たりがあり、そうすると本来持つ以上の魔力を持って生まれてくるらしい。それが親の二倍なのか一〇倍なのかは竜それぞれらしいが、そういうことが稀にあるんだそうだ。クラースもパウラも普通より少し魔力が多いくらいだそうだから、この年齢で両親に近い魔力を持つカレンは先祖返りの可能性があると。
「それで何か害があるのか?」
「いえ、それ自体は特には。ですが先祖返りというだけあって、最終的には普通の竜とは比べものにならない魔力を持つそうです。ですので、よほど魔力操作が上達しないと……」
「ああ、うっかりやらかすということか」
「そうなります」
カレンは魔力操作があまり上手じゃない。種族的には水竜らしいので水に関しては上手に扱えるけど、土や石は力の入れ具合を間違えて破裂させることがある。
長い年月をかければ魔力操作も上達するはずだが、魔力量の増加がそれを上回るとなかなか大変だそうだ。とりあえず日々訓練だと。
「子供も生まれたから体を動かし始めたところだ。そうしたら外で魔法を使うこともあるだろう。もしよければカレンにアドバイスをしてやってほしい」
「私たちでよければいつでも」
カレンは少しずつ上達している。だが教師役がいなかったので手探り状態で練習していた。主に俺が自分がやっていた練習方法を教えていた。
俺にも教えてくれる人がいなかったのでほぼ我流だった。一応魔法についての本は父が用意してくれたが、そこには使い方が書かれていただけで、どうすればより上手に効率よくできるかは書かれていなかった。
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