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第六章:領主三年目、さらに遠くへ
国王対面
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「大使殿、遠路はるばるご苦労だった」
初めて会ったエヴシェン王は堂々とした体格をした壮年の男だった。
「マルツェルとビアンカ王女の結婚の件ではアルマン王国の役人たちにも世話になっている。それで今日はその件でということだが?」
「はい。両殿下の結婚式について、我が国のカミル陛下と面と向かって話をされてはいかがかと思いまして」
「まあそれが一番いいのだろうが、お互いに暇ではないだろう。訪問するにも時間がかかりすぎる」
それはそうだろう。ただそれを何とかするために俺はここに来ている。それを伝えるのが最初の仕事だ。
「お言葉ですが、もし我がアルマン王国の王都ヴァーデンの王城にすぐに移動できるとしたらいかがなさいますか?」
異国は遠い。それは当然だ。だがそれが近くなれば話は変わる。
「すぐにな。それならぜひ行ってみたいが……。もしかしてそのような手段が?」
「はい。実はビアンカ殿下がこちらに向かわれる際、危険な目に遭われないようにと考えてのことです。国境のアルマン王国側で盗賊団が動き始めたとの話もありますので」
それ以外にもカミル陛下からの伝言も預かっている。王太子のマルツェル王子とビアンカ殿下を一度会わせてみるのもいいのではないかということだ。同じ国の貴族や王族なら社交で顔を合わせることがある。だが隣国となるとなかなかそういう機会はない。
ビアンカ殿下とマルツェル王子は双方の父親、つまり両国王と婚姻政策に積極的だった役人たちの間で話がまとまって結婚ということになった。お互いに肖像画などでどのような容姿かは確認しているが、まだ実際に顔を合わせたことはない。異国に嫁ぐ王族というのはそういうものらしいが。
「それができるのならぜひ乗らせてもらおう。余もカミル殿と会うのも久しぶりなのでな。誰か、マルツェルをここへ」
「はっ」
側に控えていた役人の一人が広間からいなくなり。俺はその場でエヴシェン陛下に転移ドアについて簡単に話をすることにした。
「他の大陸からの魔道具か」
エヴィシェン王は太い腕を組んで考え込んだ。
「その魔道具を使って国王同士が集まって話し合うわけだな。それはたしかに魅力的だ。だがそんなものを無償で提供すると?」
「平和に勝るものはないのではありませんか?」
「それはそうだな」
どれほど立派な暮らしをしていても、一度の戦争で全てを失うことになる。それを考えれば魔道具を売って手に入る金などそれほど高いものではないだろう。五万個も一〇万個も売れるなら話は変わってくるだろうが。
◆ ◆ ◆
「父上、何か大切な話があるとのことですが」
しばらくするとマルツェル王子らしき人物が役人に付き添われて現れた。人のよさそうな方で、おそらく年齢的には俺と変わらないだろう。違っても一つか二つくらいだろうか。
「うむ。アルマン王国から大使として来たノルト辺境伯が、結婚前にビアンカ王女と顔を合わせてみないかと言っておる。どうだ?」
「それはもちろんそうしたいところですが……まさかそんなことが?」
王子がこちらを向いたので、俺は頷いてそれが可能だと伝える。
「では辺境伯、さっそくやってもらえるか?」
「はっ。ですが双方のために目立たない場所を用意していただければと」
「なるほど。おかしな者が入り込まないようにか」
「はい」
王城と王城を繋ぐ。一見便利だが、万が一にも暗殺者にでも利用されればたまったものではない。この王城も結界に包まれているだろうが、転移ドアにはその結界は効き目がなかった。魔法ではなく魔道具だからだろう。
俺は謁見の間の控室の一つに案内された。ここなら広すぎず狭すぎず、護衛が待機するにもちょうどいいだろう。
「ではここに出します」
俺は収納から転移ドアを取り出した。
「ほほう、これが」
立派な足の付いた扉だ。極端な話、玉座の隣に置いても恥ずかしくはない。これはアレクも協力した、いや、させられたからだ。この片割れはヴァーデンの王城の一室に置かれている。
「はい。私が入ってみます。それからどなたか役人の方が入り、安全を確認であることが確認できればエヴシェン陛下とマルツェル殿下に入っていただければと思います」
「そうだな。では頼む」
「はい」
俺は転移ドアを開けて中を覗き込んだ。控室で待っている間に一度通り、これから謁見があることを伝えていた。話がまとまれば一、二時間でまた顔を出すと。
「あ、ノルト辺境伯。準備は整っております」
「分かった。これからシエスカ王国のエヴシェン王とマルツェル王子を連れする。レオナルト殿下とビアンカ殿下にも伝えてほしい。役人も会わせると二〇人ほどになるから受け入れの準備を頼む」
「はっ」
俺は顔を引っ込めるとシエスカ王国の王城に戻った。
「陛下、ヴァーデン城の役人にはこれからエヴシェン陛下とマルツェル殿下、それと役人が向かうことを伝えました。準備が整えば私の後を追ってお入りください。
「承知した。マルツェル、どうだ?」
「はい。覚悟は決めております」
マルツェル王子は真面目な性格のようだ。レオナルト殿下と合うのではないかと俺は思う。
「それでは通ります」
俺は転移ドアをくぐってヴァーデンの王城に移動した。
初めて会ったエヴシェン王は堂々とした体格をした壮年の男だった。
「マルツェルとビアンカ王女の結婚の件ではアルマン王国の役人たちにも世話になっている。それで今日はその件でということだが?」
「はい。両殿下の結婚式について、我が国のカミル陛下と面と向かって話をされてはいかがかと思いまして」
「まあそれが一番いいのだろうが、お互いに暇ではないだろう。訪問するにも時間がかかりすぎる」
それはそうだろう。ただそれを何とかするために俺はここに来ている。それを伝えるのが最初の仕事だ。
「お言葉ですが、もし我がアルマン王国の王都ヴァーデンの王城にすぐに移動できるとしたらいかがなさいますか?」
異国は遠い。それは当然だ。だがそれが近くなれば話は変わる。
「すぐにな。それならぜひ行ってみたいが……。もしかしてそのような手段が?」
「はい。実はビアンカ殿下がこちらに向かわれる際、危険な目に遭われないようにと考えてのことです。国境のアルマン王国側で盗賊団が動き始めたとの話もありますので」
それ以外にもカミル陛下からの伝言も預かっている。王太子のマルツェル王子とビアンカ殿下を一度会わせてみるのもいいのではないかということだ。同じ国の貴族や王族なら社交で顔を合わせることがある。だが隣国となるとなかなかそういう機会はない。
ビアンカ殿下とマルツェル王子は双方の父親、つまり両国王と婚姻政策に積極的だった役人たちの間で話がまとまって結婚ということになった。お互いに肖像画などでどのような容姿かは確認しているが、まだ実際に顔を合わせたことはない。異国に嫁ぐ王族というのはそういうものらしいが。
「それができるのならぜひ乗らせてもらおう。余もカミル殿と会うのも久しぶりなのでな。誰か、マルツェルをここへ」
「はっ」
側に控えていた役人の一人が広間からいなくなり。俺はその場でエヴシェン陛下に転移ドアについて簡単に話をすることにした。
「他の大陸からの魔道具か」
エヴィシェン王は太い腕を組んで考え込んだ。
「その魔道具を使って国王同士が集まって話し合うわけだな。それはたしかに魅力的だ。だがそんなものを無償で提供すると?」
「平和に勝るものはないのではありませんか?」
「それはそうだな」
どれほど立派な暮らしをしていても、一度の戦争で全てを失うことになる。それを考えれば魔道具を売って手に入る金などそれほど高いものではないだろう。五万個も一〇万個も売れるなら話は変わってくるだろうが。
◆ ◆ ◆
「父上、何か大切な話があるとのことですが」
しばらくするとマルツェル王子らしき人物が役人に付き添われて現れた。人のよさそうな方で、おそらく年齢的には俺と変わらないだろう。違っても一つか二つくらいだろうか。
「うむ。アルマン王国から大使として来たノルト辺境伯が、結婚前にビアンカ王女と顔を合わせてみないかと言っておる。どうだ?」
「それはもちろんそうしたいところですが……まさかそんなことが?」
王子がこちらを向いたので、俺は頷いてそれが可能だと伝える。
「では辺境伯、さっそくやってもらえるか?」
「はっ。ですが双方のために目立たない場所を用意していただければと」
「なるほど。おかしな者が入り込まないようにか」
「はい」
王城と王城を繋ぐ。一見便利だが、万が一にも暗殺者にでも利用されればたまったものではない。この王城も結界に包まれているだろうが、転移ドアにはその結界は効き目がなかった。魔法ではなく魔道具だからだろう。
俺は謁見の間の控室の一つに案内された。ここなら広すぎず狭すぎず、護衛が待機するにもちょうどいいだろう。
「ではここに出します」
俺は収納から転移ドアを取り出した。
「ほほう、これが」
立派な足の付いた扉だ。極端な話、玉座の隣に置いても恥ずかしくはない。これはアレクも協力した、いや、させられたからだ。この片割れはヴァーデンの王城の一室に置かれている。
「はい。私が入ってみます。それからどなたか役人の方が入り、安全を確認であることが確認できればエヴシェン陛下とマルツェル殿下に入っていただければと思います」
「そうだな。では頼む」
「はい」
俺は転移ドアを開けて中を覗き込んだ。控室で待っている間に一度通り、これから謁見があることを伝えていた。話がまとまれば一、二時間でまた顔を出すと。
「あ、ノルト辺境伯。準備は整っております」
「分かった。これからシエスカ王国のエヴシェン王とマルツェル王子を連れする。レオナルト殿下とビアンカ殿下にも伝えてほしい。役人も会わせると二〇人ほどになるから受け入れの準備を頼む」
「はっ」
俺は顔を引っ込めるとシエスカ王国の王城に戻った。
「陛下、ヴァーデン城の役人にはこれからエヴシェン陛下とマルツェル殿下、それと役人が向かうことを伝えました。準備が整えば私の後を追ってお入りください。
「承知した。マルツェル、どうだ?」
「はい。覚悟は決めております」
マルツェル王子は真面目な性格のようだ。レオナルト殿下と合うのではないかと俺は思う。
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俺は転移ドアをくぐってヴァーデンの王城に移動した。
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