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第六章:領主三年目、さらに遠くへ
王都散策と報告
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シエスカ王国の王太子マルツェル殿下とアルマン王国の第一王女ビアンカ殿下の結婚式は王族の結婚式らしく厳かに、かつ盛大に行われた。両国には遠い血の繋がりはあるが、実は王族同士の結婚というのはここしばらくは少なかった。だからこそだろう、ビアンカ殿下が大歓迎されているのは。
バーレン辺境伯の妻ミロスラヴァ殿は現在のシエスカ王国国王の……従妹だったか。両国の友好関係を深めるために嫁いだらしい。ただ王女が隣国の貴族に嫁ぐというのは継承権の関係で問題になることがあるので、当時の国王の娘ではなくミロスラヴァ殿が選ばれたらしい。それでも夫婦仲は良好だそうだ。
ただその話を聞いた時、ふと疑問に思った。俺はレティシアを妻にしたが、ゴール王国の方でそれは問題にならなかったのかと。前ゴール王国国王で現コルム大公のディオン殿は問題ないと言っていたが、少々心配になった。俺はゴール王国にどうこうしようという考えはないが、レティシアに継承権があるのなら余計なことを考える者も現れそうだと。
そのような心配事もあることはあったが、式が終わると俺とマリーナは王城で一泊することになった。
「ふかふか」
「そうだな。ドラゴネットの城も負けていないとは思うが」
マリーナはベッドの上で転がっていた。
「私も今度からお城」
「そうだな。部屋はある。好きなところを使ったらいい」
「そうする」
彼女たちはブルーノたちの家の近くで暮らしている。俺としてはローサの知り合いなので城でもいいと思っていたが、そこは上下関係をはっきりさせた方がいいと長女のマリエッタが言ったのでそうなった。その時はどこに上下関係があるのかと思った。要するに血筋の問題だ。
血筋を辿ると、ローサとカサンドラは祖父が同じだ。ローサの祖母という竜がその周辺では一番の実力者ということらしい。それに対してマリエッタたちはローサの従兄の孫だった。そんなに竜があちこちにいるとは思えないが、ローサとマリエッテは血が繋がっていない。親戚の親戚ということらしい。だからローサが上、マリエッテたちが下ということだそうだ。
マリエッテたちが来た時はそのような状況だったが、それから俺がローサの夫になってしまった。マリエッテたちからすると自分たちよりも上の立場にある人の夫ということで、俺はマリエッテたちの上になるそうだ。だからマリーナも俺が言えば基本的にはそれに従ってくれる。
「姉さんも妻にすればいい」
「これ以上増やしてどうするんだ?」
俺が単なる遊び人で、種を蒔き散らかしてそれでいいと思っているなら何人抱いても問題ないだろうが、これでも領主だ。子供が産まれればそれなりの立場にしたいと思うし、そのためには領地を大きくしなければならない。できれば俺の代でそれなりに広げたい。うちの領地は面積的には国内で最も広いはずだが、使える場所が限られている。だから少しずつ広げて町を増やしている。そうしてその町の代官を子供たちに任せるつもりでいる。
「姉さんはエルマーが好き。間違いない」
「……そんな気配は全くなかったぞ」
マリエッテは淡々と仕事をこなしていた。俺に対して特別な感情を持っているとは思えないが。
「女は自分を偽るのが得意。男は下手すぎ」
「お前が一般論を口にしても説得力がないけどな」
実際にマリエッテがどうかは分からないが、とりあえずマリーナが言ったことは気にしないことにした。
◆ ◆ ◆
「マリーナ、おめでとう」
「姉さん、おめでと」
「姉上、おめでとうございます」
「みんな、ありがとう」
仕事が終わってマリーナたちの家を訪れている。子供ができた報告するためだ。珍しくマリーナが照れている。
「マリーナが先になりましたか」
「こうなるつもりはなかったのだが」
「この子は普段は周囲の出来事に興味を持たないですが、一度興味が出ると徹底的に知りたがりますので。こういう機会でもなければ相手は見つけられないと思います」
だから暇そうだったので仕事を頼んでこうなってしまった。なってしまったからにはきちんとするけどな。
マリエッテと話をしているとマリーナが俺の袖を引いた。
「それで、どんな力?」
「ああ、確認するか」
マリーナを抱いた直後に[魔力譲渡]を使ってもらった。これでマリーナの持つ竜の力が俺に移ったかもしれない。ただしどんな力かは分からない。
「空を飛ぶのは?」
「……無理だ」
一つひとつ確認していくが、できることはなかった。力を得ることもあるわけだから、得られないこともあるだろう。火魔法が使えるようになったわけでもなく、何が変わったのか自分では分からない。
「竜の息吹」
竜の息吹とは口から吐く火のことだ。
「さすがにそれは無理じゃないか?」
竜は人の姿でも火を吐くことができる。それがどのような理屈なのかは分からない。一度カレンが火を吐いているところを横から見せてもらったが、息を吸って吐く動作をしたあと、唇の先五センチくらいのところから火が出ていた。口の中からではなかった。本人にとっては熱くないらしいが、炎なので眩しいそうだ。それで竜の目は眩しさを抑えるようにできている。
俺の目も竜の目らしいが、これが生まれつきなのかそうでないのか、今となっては分からない。両親は俺の目を見ていたかもしれないが、俺は自分お顔をまじまじと見る趣味はない。カサンドラに言われて初めて気づいたくらいだ。
試しに息を吸って吐く。そこで火が出ることをイメージする。
ボッ!
「……出たな」
「出た。これでエルマーも立派な竜」
「人なのに火が吐けるとは興味深いですね」
火魔法は苦手だったのに、こんな形で火が扱えるようになるとは思わなかった。
バーレン辺境伯の妻ミロスラヴァ殿は現在のシエスカ王国国王の……従妹だったか。両国の友好関係を深めるために嫁いだらしい。ただ王女が隣国の貴族に嫁ぐというのは継承権の関係で問題になることがあるので、当時の国王の娘ではなくミロスラヴァ殿が選ばれたらしい。それでも夫婦仲は良好だそうだ。
ただその話を聞いた時、ふと疑問に思った。俺はレティシアを妻にしたが、ゴール王国の方でそれは問題にならなかったのかと。前ゴール王国国王で現コルム大公のディオン殿は問題ないと言っていたが、少々心配になった。俺はゴール王国にどうこうしようという考えはないが、レティシアに継承権があるのなら余計なことを考える者も現れそうだと。
そのような心配事もあることはあったが、式が終わると俺とマリーナは王城で一泊することになった。
「ふかふか」
「そうだな。ドラゴネットの城も負けていないとは思うが」
マリーナはベッドの上で転がっていた。
「私も今度からお城」
「そうだな。部屋はある。好きなところを使ったらいい」
「そうする」
彼女たちはブルーノたちの家の近くで暮らしている。俺としてはローサの知り合いなので城でもいいと思っていたが、そこは上下関係をはっきりさせた方がいいと長女のマリエッタが言ったのでそうなった。その時はどこに上下関係があるのかと思った。要するに血筋の問題だ。
血筋を辿ると、ローサとカサンドラは祖父が同じだ。ローサの祖母という竜がその周辺では一番の実力者ということらしい。それに対してマリエッタたちはローサの従兄の孫だった。そんなに竜があちこちにいるとは思えないが、ローサとマリエッテは血が繋がっていない。親戚の親戚ということらしい。だからローサが上、マリエッテたちが下ということだそうだ。
マリエッテたちが来た時はそのような状況だったが、それから俺がローサの夫になってしまった。マリエッテたちからすると自分たちよりも上の立場にある人の夫ということで、俺はマリエッテたちの上になるそうだ。だからマリーナも俺が言えば基本的にはそれに従ってくれる。
「姉さんも妻にすればいい」
「これ以上増やしてどうするんだ?」
俺が単なる遊び人で、種を蒔き散らかしてそれでいいと思っているなら何人抱いても問題ないだろうが、これでも領主だ。子供が産まれればそれなりの立場にしたいと思うし、そのためには領地を大きくしなければならない。できれば俺の代でそれなりに広げたい。うちの領地は面積的には国内で最も広いはずだが、使える場所が限られている。だから少しずつ広げて町を増やしている。そうしてその町の代官を子供たちに任せるつもりでいる。
「姉さんはエルマーが好き。間違いない」
「……そんな気配は全くなかったぞ」
マリエッテは淡々と仕事をこなしていた。俺に対して特別な感情を持っているとは思えないが。
「女は自分を偽るのが得意。男は下手すぎ」
「お前が一般論を口にしても説得力がないけどな」
実際にマリエッテがどうかは分からないが、とりあえずマリーナが言ったことは気にしないことにした。
◆ ◆ ◆
「マリーナ、おめでとう」
「姉さん、おめでと」
「姉上、おめでとうございます」
「みんな、ありがとう」
仕事が終わってマリーナたちの家を訪れている。子供ができた報告するためだ。珍しくマリーナが照れている。
「マリーナが先になりましたか」
「こうなるつもりはなかったのだが」
「この子は普段は周囲の出来事に興味を持たないですが、一度興味が出ると徹底的に知りたがりますので。こういう機会でもなければ相手は見つけられないと思います」
だから暇そうだったので仕事を頼んでこうなってしまった。なってしまったからにはきちんとするけどな。
マリエッテと話をしているとマリーナが俺の袖を引いた。
「それで、どんな力?」
「ああ、確認するか」
マリーナを抱いた直後に[魔力譲渡]を使ってもらった。これでマリーナの持つ竜の力が俺に移ったかもしれない。ただしどんな力かは分からない。
「空を飛ぶのは?」
「……無理だ」
一つひとつ確認していくが、できることはなかった。力を得ることもあるわけだから、得られないこともあるだろう。火魔法が使えるようになったわけでもなく、何が変わったのか自分では分からない。
「竜の息吹」
竜の息吹とは口から吐く火のことだ。
「さすがにそれは無理じゃないか?」
竜は人の姿でも火を吐くことができる。それがどのような理屈なのかは分からない。一度カレンが火を吐いているところを横から見せてもらったが、息を吸って吐く動作をしたあと、唇の先五センチくらいのところから火が出ていた。口の中からではなかった。本人にとっては熱くないらしいが、炎なので眩しいそうだ。それで竜の目は眩しさを抑えるようにできている。
俺の目も竜の目らしいが、これが生まれつきなのかそうでないのか、今となっては分からない。両親は俺の目を見ていたかもしれないが、俺は自分お顔をまじまじと見る趣味はない。カサンドラに言われて初めて気づいたくらいだ。
試しに息を吸って吐く。そこで火が出ることをイメージする。
ボッ!
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