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第四部:貴族になること
男性使用人たちとの面接
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さて、ラヴァル公爵邸には現在二四人の使用人がいる。二四人と聞くと大変な人数だと思えるだろ? でもこの屋敷を持っていた以前のラヴァル公爵は使用人のために別館すら建てていた。その別館は今はスッカスカだ。つまり以前はそれくらい雇っていた。
当時は領地持ちの公爵だったから、領地にいる使用人も相当な人数だったらしい。領地へ行ったり王都へ戻ったり、使用人を引き連れて移動すれば、それだけで大仕事らしい。かつて領地にあった屋敷はとんでもない大きさだったそうだ。
それを俺が継いで名誉爵位のように復活したけど、名誉爵位だとしても公爵は公爵だ。それなりの生活レベルが求められることになった。でもいきなり使用人を一〇〇人も二〇〇人も揃えることはできないので、とりあえず今いる二四人でしばらくは頑張ってもらうことになる。
「旦那様もすでにお聞きだとは思いますが、屋敷を引っ越したり新しく建てたりしますと、屋敷を披露するパーティーを行うのがマナーでございます。パーティーは引っ越しが終わってから二週間後から一か月後を目処に行いますので、早めになさるのなら数日のうちには案内状を出すことになります」
「でもこの人数でパーティーを仕切るのは大変だろう」
今はまだ引っ越したばかりだからいいとして、近いうちにパーティーを主催する必要もある。そうなると全然人手が足りない。でも適当に集めるわけにもいかないので、身元がしっかりした者のみを雇うことになる。俺の場合は領地がないので、そちらの方でパーティーだの狩猟だのをする必要はなく、まだ少なくて済むそうだ。
「ルブラン侯爵が追加の使用人を集めてくれるそうだ。だが集めるのには時間がかかるようだから、もうしばらく待ってほしいと言われている。パーティーはできる限り遅らせて、追加が来てからにしたい」
「畏まりました」
金があればどうとでもなると思ったのに、全然そうじゃないな。ネットですぐに人が集められる環境があるわけでもなく、しかも身元調査をしてからでないと雇えないとか。
そりゃまあ貴族の中でも一番上だから、来客もそれ相応になる。どこぞの大企業の重役の妻が誘われて来店したのに履歴書なしでやって来た新人に任せることはできないのと同じだ。何かあったら大事だ。
その前の生活レベルの話もそうだけど、しばらく慣れるまで大変そうだ。
ダヴィドの説明が終わると、手の空いている使用人と順番に面接をすることになった。先ほどは揃って頭を下げられただけだから、話をしてみなければどんな性格かまでは分からない。
俺の社会経験なんてそこまで長くはなかったけど、それなりに多種多様な人と会って話をしたと思う。おそらく普通に大学に進学して会社に入っていれば、まあ縁がなさそうな人が多かった。そういう意味では、顔を見ながら一言二言話をするだけで、意外とどんな人柄かが分かるもんだ。
男性使用人は、執事のダヴィド・プレヴァン、料理長のオーブリー、料理人のジスラン、厨房係のレイモン、従僕のエド、庭師のユーグ、御者のマルク、荷運びのブリス、馬番のトビ。そして門衛が六人、アルバン、ガストン、アンリ、ジャコブ、モイーズ、カンタン。門衛はアルバンが隊長になるそうだ。門衛たちは仕事があるので、隊長のアルバンにだけ来てもらった。他はいずれ門のところで会うだろう。
「料理長のオーブリーでございます」
「料理人のジスランでございます」
「厨房係のレイモンでございます」
「従僕のエドでございます」
「御者のマルクです」
まずは厨房に関係する三人と従僕と御者がやって来た。
「レイモン、本当に基本的なことかもしれないが、厨房係の仕事とは何だ?」
執事とか御者とか言われれば仕事内容が想像できるけど、厨房係の仕事がよく分からない。掃除か?
「はい。オーブリー殿とジスラン殿から必要な食材などを聞き、それを調達するのが仕事でございます。購入代金の管理はダヴィド殿になります」
「なるほど、発注係か」
「はい。注文だけではなく値段交渉も行います。場合によっては相場よりもかなり高めの代金を要求してくることもありますので」
発注担当ならうちの店にもいたからな。酒だって食材だって注文しなければスッカラカンになる。頼んだら配達してもらえる。
「エド、従僕は執事の部下で間違ってないか?」
「はい、普段はダヴィド殿の部下として、屋敷の中の細々とした仕事を担当いたします。旦那様が馬車で移動される際には、街中であれば私が少し前を走ります」
「そうか、体力的には大変だが頑張ってくれ」
「お気遣い頂き、ありがとうございます」
馬車の前を走るって安全確認のためなんだろうけど、必要か? でも必要だからその仕事があるんだろうな。
「マルクの出番は今後の付き合い次第になるが、屋敷のお披露目以降だろうな」
「はい、お任せください」
俺には領地はないから、基本的には王都にずっといる。多くの貴族は冬から春にかけて、王都で社交を行うそうだ。出かけることもあればこの屋敷に呼ぶこともあるだろう。
「オーブリーとジスランの二人は、それぞれが美味いと思ったものを作ってほしい。俺は料理の選り好みはしない。ミレーヌとエミリアはどうだ?」
「何でも美味しくいただきますよ」
「私も好き嫌いはありません。そもそも好き嫌いを言える立場ではありませんでしたので」
三人とも好き嫌いはなしか。
「はい、畏まりました」
「お任せください」
「それと、屋敷の披露パーティーの時にはかなり忙しくなるはずだ。だから料理は前もって用意してほしい」
何百人来るか分からないからな。
「旦那様、料理の保存用の魔道具はございますが、あまり早すぎては意味がございません」
「冷めるだけならまだしも、傷みでもすれば大変なことになります」
「そう言うだろうとは思った。俺には奥の手がある」
俺の持つ【ストレージ】だ。あれは生き物は入らないけど、中の時間が止まるらしい。料理は熱々だ。保存用の魔道具は迎賓館で料理が運ばれる際に使われていたものと同じだろう。
「そのようなスキルが存在するのですか……」
「それがあればかなり楽ができます」
「そのあたりを後ほど話し合おう」
「「よろしくお願いします」」
四〇〇人も五〇〇人も来るなら料理が大変なことになる。前もって作ってもらい、俺がストレージに入れておけばいい。パーティーの最中に出す必要はあるけど、それくらいは大丈夫だろう。
この五人は全然問題なさそうだ。
「庭師のユーグでございます」
「荷運びのブリスです」
「馬番のトビです」
「門衛の隊長のアルバンでございます」
この四人の仕事は屋敷の外になる。屋敷の中では顔を合わせることはそれほど多くないだろう。
「ユーグ、ここの庭は広いから大変だと思う。増やせるようなら増やしてもらう。とりあえずは見える部分だけでも整えてくれ」
「はい。一度大まかに片付けてもらいましたので、しばらくは今の状態を維持できればと思っています。手が必要ならブリスに手伝ってもらいますので」
野球場が入るくらいだからな。さすがに一人では無理だ。
「そうだな。ブリスはしばらくはユーグの手伝いをしてくれ」
「分かりました」
「そしてトビ、馬小屋で寝泊まりすることが多いと思うが、この屋敷の馬小屋に問題はなさそうか?」
「へえ、馬小屋も立派で、隙間風もありやしません。馬はみんなツヤツヤしています」
「そうか。馬の世話は大変だと思うが、どうしても必要な仕事だ。頼むぞ」
「へい、精一杯務めます。荷運びなんかもやりますんで、何でも申し付けください」
「ああ、その時は遠慮なく頼むことにする」
王宮から乗ってきた馬車だけじゃなくて、もう一台がこの屋敷に用意されていた。だから馬は全部で八頭。四頭立ての馬車二台分だ。
「アルバンたちは交代制らしいが、門衛が全部で六人というのは正直どうだ? 中にいる者たちの安全を確保するという点でだ」
「正直に申し上げますと、旦那様がお屋敷にいる時に手を出す者はいないと思われます」
「そうだな。俺より強い者はそう多くはいないはずだ」
「はい。むしろ旦那様がお出かけの間に屋敷が狙われる方が可能性としては高いかと」
ミレーヌは問題ないとして、エミリアの方だな。ミレーヌに一緒にいてもらうのがいいけど、いつもいるわけじゃないからどうするか。これは要検討だ。
当時は領地持ちの公爵だったから、領地にいる使用人も相当な人数だったらしい。領地へ行ったり王都へ戻ったり、使用人を引き連れて移動すれば、それだけで大仕事らしい。かつて領地にあった屋敷はとんでもない大きさだったそうだ。
それを俺が継いで名誉爵位のように復活したけど、名誉爵位だとしても公爵は公爵だ。それなりの生活レベルが求められることになった。でもいきなり使用人を一〇〇人も二〇〇人も揃えることはできないので、とりあえず今いる二四人でしばらくは頑張ってもらうことになる。
「旦那様もすでにお聞きだとは思いますが、屋敷を引っ越したり新しく建てたりしますと、屋敷を披露するパーティーを行うのがマナーでございます。パーティーは引っ越しが終わってから二週間後から一か月後を目処に行いますので、早めになさるのなら数日のうちには案内状を出すことになります」
「でもこの人数でパーティーを仕切るのは大変だろう」
今はまだ引っ越したばかりだからいいとして、近いうちにパーティーを主催する必要もある。そうなると全然人手が足りない。でも適当に集めるわけにもいかないので、身元がしっかりした者のみを雇うことになる。俺の場合は領地がないので、そちらの方でパーティーだの狩猟だのをする必要はなく、まだ少なくて済むそうだ。
「ルブラン侯爵が追加の使用人を集めてくれるそうだ。だが集めるのには時間がかかるようだから、もうしばらく待ってほしいと言われている。パーティーはできる限り遅らせて、追加が来てからにしたい」
「畏まりました」
金があればどうとでもなると思ったのに、全然そうじゃないな。ネットですぐに人が集められる環境があるわけでもなく、しかも身元調査をしてからでないと雇えないとか。
そりゃまあ貴族の中でも一番上だから、来客もそれ相応になる。どこぞの大企業の重役の妻が誘われて来店したのに履歴書なしでやって来た新人に任せることはできないのと同じだ。何かあったら大事だ。
その前の生活レベルの話もそうだけど、しばらく慣れるまで大変そうだ。
ダヴィドの説明が終わると、手の空いている使用人と順番に面接をすることになった。先ほどは揃って頭を下げられただけだから、話をしてみなければどんな性格かまでは分からない。
俺の社会経験なんてそこまで長くはなかったけど、それなりに多種多様な人と会って話をしたと思う。おそらく普通に大学に進学して会社に入っていれば、まあ縁がなさそうな人が多かった。そういう意味では、顔を見ながら一言二言話をするだけで、意外とどんな人柄かが分かるもんだ。
男性使用人は、執事のダヴィド・プレヴァン、料理長のオーブリー、料理人のジスラン、厨房係のレイモン、従僕のエド、庭師のユーグ、御者のマルク、荷運びのブリス、馬番のトビ。そして門衛が六人、アルバン、ガストン、アンリ、ジャコブ、モイーズ、カンタン。門衛はアルバンが隊長になるそうだ。門衛たちは仕事があるので、隊長のアルバンにだけ来てもらった。他はいずれ門のところで会うだろう。
「料理長のオーブリーでございます」
「料理人のジスランでございます」
「厨房係のレイモンでございます」
「従僕のエドでございます」
「御者のマルクです」
まずは厨房に関係する三人と従僕と御者がやって来た。
「レイモン、本当に基本的なことかもしれないが、厨房係の仕事とは何だ?」
執事とか御者とか言われれば仕事内容が想像できるけど、厨房係の仕事がよく分からない。掃除か?
「はい。オーブリー殿とジスラン殿から必要な食材などを聞き、それを調達するのが仕事でございます。購入代金の管理はダヴィド殿になります」
「なるほど、発注係か」
「はい。注文だけではなく値段交渉も行います。場合によっては相場よりもかなり高めの代金を要求してくることもありますので」
発注担当ならうちの店にもいたからな。酒だって食材だって注文しなければスッカラカンになる。頼んだら配達してもらえる。
「エド、従僕は執事の部下で間違ってないか?」
「はい、普段はダヴィド殿の部下として、屋敷の中の細々とした仕事を担当いたします。旦那様が馬車で移動される際には、街中であれば私が少し前を走ります」
「そうか、体力的には大変だが頑張ってくれ」
「お気遣い頂き、ありがとうございます」
馬車の前を走るって安全確認のためなんだろうけど、必要か? でも必要だからその仕事があるんだろうな。
「マルクの出番は今後の付き合い次第になるが、屋敷のお披露目以降だろうな」
「はい、お任せください」
俺には領地はないから、基本的には王都にずっといる。多くの貴族は冬から春にかけて、王都で社交を行うそうだ。出かけることもあればこの屋敷に呼ぶこともあるだろう。
「オーブリーとジスランの二人は、それぞれが美味いと思ったものを作ってほしい。俺は料理の選り好みはしない。ミレーヌとエミリアはどうだ?」
「何でも美味しくいただきますよ」
「私も好き嫌いはありません。そもそも好き嫌いを言える立場ではありませんでしたので」
三人とも好き嫌いはなしか。
「はい、畏まりました」
「お任せください」
「それと、屋敷の披露パーティーの時にはかなり忙しくなるはずだ。だから料理は前もって用意してほしい」
何百人来るか分からないからな。
「旦那様、料理の保存用の魔道具はございますが、あまり早すぎては意味がございません」
「冷めるだけならまだしも、傷みでもすれば大変なことになります」
「そう言うだろうとは思った。俺には奥の手がある」
俺の持つ【ストレージ】だ。あれは生き物は入らないけど、中の時間が止まるらしい。料理は熱々だ。保存用の魔道具は迎賓館で料理が運ばれる際に使われていたものと同じだろう。
「そのようなスキルが存在するのですか……」
「それがあればかなり楽ができます」
「そのあたりを後ほど話し合おう」
「「よろしくお願いします」」
四〇〇人も五〇〇人も来るなら料理が大変なことになる。前もって作ってもらい、俺がストレージに入れておけばいい。パーティーの最中に出す必要はあるけど、それくらいは大丈夫だろう。
この五人は全然問題なさそうだ。
「庭師のユーグでございます」
「荷運びのブリスです」
「馬番のトビです」
「門衛の隊長のアルバンでございます」
この四人の仕事は屋敷の外になる。屋敷の中では顔を合わせることはそれほど多くないだろう。
「ユーグ、ここの庭は広いから大変だと思う。増やせるようなら増やしてもらう。とりあえずは見える部分だけでも整えてくれ」
「はい。一度大まかに片付けてもらいましたので、しばらくは今の状態を維持できればと思っています。手が必要ならブリスに手伝ってもらいますので」
野球場が入るくらいだからな。さすがに一人では無理だ。
「そうだな。ブリスはしばらくはユーグの手伝いをしてくれ」
「分かりました」
「そしてトビ、馬小屋で寝泊まりすることが多いと思うが、この屋敷の馬小屋に問題はなさそうか?」
「へえ、馬小屋も立派で、隙間風もありやしません。馬はみんなツヤツヤしています」
「そうか。馬の世話は大変だと思うが、どうしても必要な仕事だ。頼むぞ」
「へい、精一杯務めます。荷運びなんかもやりますんで、何でも申し付けください」
「ああ、その時は遠慮なく頼むことにする」
王宮から乗ってきた馬車だけじゃなくて、もう一台がこの屋敷に用意されていた。だから馬は全部で八頭。四頭立ての馬車二台分だ。
「アルバンたちは交代制らしいが、門衛が全部で六人というのは正直どうだ? 中にいる者たちの安全を確保するという点でだ」
「正直に申し上げますと、旦那様がお屋敷にいる時に手を出す者はいないと思われます」
「そうだな。俺より強い者はそう多くはいないはずだ」
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