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第五部:勉強と試験
ある伯爵令嬢の驚き
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ブノワ・ジラルデ・アズナヴール伯爵の次女、リュシエンヌと申します。私には他人には言えない秘密がございます。口にしてしまっても問題はないのかもしれませんが、あまり人前で口にする必要はないでしょう。それは私が生まれ変わる前の記憶や知識を持っているということです。
私は日本という国で生まれました。明治という時代に生まれ、そこから大正、そして昭和の頭まで、三つの時代を経験したようです。なぜようですなのかと申しますと、実はあまりはっきりと覚えていないからでございます。
どのような時代だったのかは何となく覚えております。ですがどのようなことをした、どのような生涯を送ったのかなどにつきましては、実はほとんど覚えておりません。特に人の顔は親兄弟の顔ですら分かりません。知識はあっても記憶がないということでしょうか。
昔の記憶がうっすらと戻ったのは三歳の頃でした。見た覚えのない場所が、時々頭の中に浮かんできたものでした。父にそのような場所を知らないかと聞いたところ、知らないという答えが返ってきました。母も同じです。そうこうしてるうちに、どうもこれは今のことではないと思うようになりました。そうなると生まれる前、つまり前世ということになるでしょう。
この世界には異世界から勇者様を始め、色々な方が召喚魔法によってお越しになるそうです。それでも人数としては数十年に一度程度だそうですが。その方々から、そっくりそのまま別の世界からやって来る転移や、前世の記憶を持ったまま生まれ変わる転生というものがあると伝わっています。おそらく私のこれは転生によるものでしょう。
八歳になった頃、私は社交を始めました。父はあまり社交好きではないので、母も出かけることは多くありません。最低限ということでしょうか。私はどうでしょう? 話に聞いたことを頭に思い浮かべますと、好きでも嫌いでもなさそうです。
未婚の子女は舞踏会に参加いたします。女性はさらにお茶会がございます。舞踏会はそれほど面白く思えませんでしたので、私はお茶会の方に積極的に参加することになりました。
お茶会というものは、本来は厳密な身分の上下がございます。実家の爵位が下の者から上の者に声をかけてはいけないというのが基本になります。つまり早いうちに誰がどの家の娘なのかを覚えなければなりません。そうしなければうっかり話しかけた相手が公爵令嬢などという失態を犯すことになります。
貴族としては公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の順になりますのでちょうど真ん中ではありますが、家の数を考えれば上位二割に入ります。つまり上位が圧倒的に少ないため、公爵家と侯爵家のご婦人さえ覚えれば問題ないわけです。
ですがこのお茶会を主催しているレアンドル侯爵夫人は、身分の上下に関係なく話ができる機会を提供したいという考えをお持ちで、毎回爵位に縛られないお茶会が開かれています。そのおかげで気兼ねなく話ができますし、娘のタイスさんとも仲良くなれました。
それから数年が経ちました。レアンドル侯爵夫人のおかげで、爵位の上下に関係のないお茶会が最近では増えました。そのおかげで随分と話しやすくなりました。そんなあるお茶会での出来事です。私の耳に謎の言葉が飛び込むようになりました。
「ところで聞きました? ※※※※伯爵令嬢の※※※※さん。念願叶って※※※※子爵次男の※※※※さんとなさったそうですね」
「あら、ようやくですの?」
「※※※※さんもそろそろですか?」
「私は※※※※伯爵の三男の※※※※さんと先月すでに済ませておりますわ」
「あら、※※※※さん、もうお済ませでしたの?」
私の近くでよく分からない話が行われています。「なさる」とか「済ませる」とか、何の話でしょうか?
「ちなみにどのような姿勢でしたの?」
「私は激しくされるのが好きなようでして、後ろからが一番燃えましたわ」
「あら、私は上になるのが一番好きですわ。自分のペースで動けますし、殿方を支配しているという得も言われぬ感覚がありますね」
上? 殿方を支配?
「ですが、うっかりすると突き上げられませんか? それで先日は大変なことになってしまいました」
「そうですね。でも上を向いてばっかりでは飽きますからね。※※※※さんと立ったままするのもなかなか刺激的でした」
「あら、それはよさそうですね。私も次はそうしてみましょうか」
ひょっとしてこれは、男女の交合のことでしょうか。そう考えればなさる、済ませる、後ろから、上になる、突き上げる、立ったままというのは理解できます。前世で読んだ艶本にそのような記述がございました。ですがあれは大人向けだったはずです。
たしかに今のこの国では社交に出れば成人と見なされるのは間違いありません。私も一応成人になります。結婚してもいい年頃ではありますが、みなさん少々お早いのでは?
それから私は全身を耳にして情報を拾い集めましたが、おそらくここにいる全員がすでに殿方となさっているようでございます。ひょっとすると未経験なのは私だけでしょうか。ひょっとして私だけ取り残されています?
私は幼い頃より天才だの秀才だのと呼ばれておりました。それは要するに前世の記憶があるからでございます。当然ですが、かつての世界と今の世界では全くと言っていいほど様子が違います。ですが読み書き算盤が生きていく上で最も重要だということは同じでしょう。言葉は違っても数字は同じわけですので。
私は幼い頃から勉強し、そしていつの間にか才女と呼ばれるようになりました。なりましたが、さすがに男女の営みまでは詳しくはございません。ですがここで下手に口を開いてしまうと私がまだ済ませていないことを周りの方々に知られてしまいます。とりあえず今日のところは大人しく帰って対策を練りましょう。
私は日本という国で生まれました。明治という時代に生まれ、そこから大正、そして昭和の頭まで、三つの時代を経験したようです。なぜようですなのかと申しますと、実はあまりはっきりと覚えていないからでございます。
どのような時代だったのかは何となく覚えております。ですがどのようなことをした、どのような生涯を送ったのかなどにつきましては、実はほとんど覚えておりません。特に人の顔は親兄弟の顔ですら分かりません。知識はあっても記憶がないということでしょうか。
昔の記憶がうっすらと戻ったのは三歳の頃でした。見た覚えのない場所が、時々頭の中に浮かんできたものでした。父にそのような場所を知らないかと聞いたところ、知らないという答えが返ってきました。母も同じです。そうこうしてるうちに、どうもこれは今のことではないと思うようになりました。そうなると生まれる前、つまり前世ということになるでしょう。
この世界には異世界から勇者様を始め、色々な方が召喚魔法によってお越しになるそうです。それでも人数としては数十年に一度程度だそうですが。その方々から、そっくりそのまま別の世界からやって来る転移や、前世の記憶を持ったまま生まれ変わる転生というものがあると伝わっています。おそらく私のこれは転生によるものでしょう。
八歳になった頃、私は社交を始めました。父はあまり社交好きではないので、母も出かけることは多くありません。最低限ということでしょうか。私はどうでしょう? 話に聞いたことを頭に思い浮かべますと、好きでも嫌いでもなさそうです。
未婚の子女は舞踏会に参加いたします。女性はさらにお茶会がございます。舞踏会はそれほど面白く思えませんでしたので、私はお茶会の方に積極的に参加することになりました。
お茶会というものは、本来は厳密な身分の上下がございます。実家の爵位が下の者から上の者に声をかけてはいけないというのが基本になります。つまり早いうちに誰がどの家の娘なのかを覚えなければなりません。そうしなければうっかり話しかけた相手が公爵令嬢などという失態を犯すことになります。
貴族としては公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の順になりますのでちょうど真ん中ではありますが、家の数を考えれば上位二割に入ります。つまり上位が圧倒的に少ないため、公爵家と侯爵家のご婦人さえ覚えれば問題ないわけです。
ですがこのお茶会を主催しているレアンドル侯爵夫人は、身分の上下に関係なく話ができる機会を提供したいという考えをお持ちで、毎回爵位に縛られないお茶会が開かれています。そのおかげで気兼ねなく話ができますし、娘のタイスさんとも仲良くなれました。
それから数年が経ちました。レアンドル侯爵夫人のおかげで、爵位の上下に関係のないお茶会が最近では増えました。そのおかげで随分と話しやすくなりました。そんなあるお茶会での出来事です。私の耳に謎の言葉が飛び込むようになりました。
「ところで聞きました? ※※※※伯爵令嬢の※※※※さん。念願叶って※※※※子爵次男の※※※※さんとなさったそうですね」
「あら、ようやくですの?」
「※※※※さんもそろそろですか?」
「私は※※※※伯爵の三男の※※※※さんと先月すでに済ませておりますわ」
「あら、※※※※さん、もうお済ませでしたの?」
私の近くでよく分からない話が行われています。「なさる」とか「済ませる」とか、何の話でしょうか?
「ちなみにどのような姿勢でしたの?」
「私は激しくされるのが好きなようでして、後ろからが一番燃えましたわ」
「あら、私は上になるのが一番好きですわ。自分のペースで動けますし、殿方を支配しているという得も言われぬ感覚がありますね」
上? 殿方を支配?
「ですが、うっかりすると突き上げられませんか? それで先日は大変なことになってしまいました」
「そうですね。でも上を向いてばっかりでは飽きますからね。※※※※さんと立ったままするのもなかなか刺激的でした」
「あら、それはよさそうですね。私も次はそうしてみましょうか」
ひょっとしてこれは、男女の交合のことでしょうか。そう考えればなさる、済ませる、後ろから、上になる、突き上げる、立ったままというのは理解できます。前世で読んだ艶本にそのような記述がございました。ですがあれは大人向けだったはずです。
たしかに今のこの国では社交に出れば成人と見なされるのは間違いありません。私も一応成人になります。結婚してもいい年頃ではありますが、みなさん少々お早いのでは?
それから私は全身を耳にして情報を拾い集めましたが、おそらくここにいる全員がすでに殿方となさっているようでございます。ひょっとすると未経験なのは私だけでしょうか。ひょっとして私だけ取り残されています?
私は幼い頃より天才だの秀才だのと呼ばれておりました。それは要するに前世の記憶があるからでございます。当然ですが、かつての世界と今の世界では全くと言っていいほど様子が違います。ですが読み書き算盤が生きていく上で最も重要だということは同じでしょう。言葉は違っても数字は同じわけですので。
私は幼い頃から勉強し、そしていつの間にか才女と呼ばれるようになりました。なりましたが、さすがに男女の営みまでは詳しくはございません。ですがここで下手に口を開いてしまうと私がまだ済ませていないことを周りの方々に知られてしまいます。とりあえず今日のところは大人しく帰って対策を練りましょう。
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