元ロクデナシで今勇者

椎井瑛弥

文字の大きさ
91 / 273
第八部:なすべきこと

道中の変化

しおりを挟む
「旦那様、お鎮めいたします」
 ジゼルが俺を起こしながら俺のパンツを下ろした。朝日を浴びた俺のアレは朝から絶好調だ。まあこの年齢で元気じゃなければそっちの方が問題か。
「男は朝はこうなる。それよりもパンツを戻せ」
「ですが行き帰りずっと出さないのは健康に悪いのではありませんか?」
「そんな心配はしなくていい」
 こういう話題ができるってことは、かなり元気が出てきたな。
「ところで旦那様は出すとすれば前と後ろと口と手と胸のどこがお好みですか?」
「前、胸、口、後ろ、手の順だ。顔に出すのはそんなに好きじゃない。拭くのが大変だそうだからな」
「しっかり覚えておきます」
 適当に言ったら信じたか? でも概ねそんな順番だろう。

 ここまでジゼルと同じ部屋だった。その間に少しずつ硬さが取れてきた。まだまだ若い。メイドの中で最年少だ。実家の借金のこともあって気負いすぎだったけど、ようやく年相応の表情になったようだ。

 ◆◆◆

 王都シャンメリエを出てから六日目、ここまでの五日は問題なかった。六日目の午前中も問題なし。昼の休憩時にマルクが地図を見ながら報告してくれた。
「旦那様、間違いなく今日の夕方には到着できます」
「そうか、よく急いでくれた」
「馬たちのおかげですね。よく頑張って走ってくれました」
 この馬たちは俺が王宮から屋敷に移る際に馬車を引いた馬たちで、立派な体格をしている。いわゆる軍馬という種類らしい。それでもさすがに一日走りっぱなしというのは無理なので二時間おきに休憩を取らせたけど、その際にリンゴやニンジンを食べさせたり砂糖や塩を舐めさせたりした。非常に頭がいい馬たちで、俺が近づくと頭を下げる。
 今は昼食時だから馬車から外している。ハミも外して蹄鉄を打った蹄のチェックも行う。食事時は好きに歩かせてるけど、勝手にどこかに行ったりはしない頭のいい子たちだ。
「旦那様、ここにも撫でる頭があります」
 俺が馬たちの頭を撫でるのを見てジゼルも近づいてきた。
「いいけど、馬と同じでいいのか?」
「かまいません」
 ジゼルの頭を撫で始めると、うち馬たちもジゼルを撫でようとしたのか、彼女を取り囲んで髪をわしゃわしゃと噛み始めた。
「わわわっ⁉」
 馬に囲まれて慌てるジゼル。それを見て笑う俺たち三人。頬を膨らませるジゼル。馬たちも楽しそうにブルブルと鼻を鳴らす。
「よーし、そろそろ温まったな。各自好きなだけ食べてくれ。ジゼルは馬たちにこれを持っていってくれ」
「分かりました」
 髪の毛がクシャクシャになったジゼルが桶を四つ運んでいく。中にはニンジンとリンゴが切って入れてある。
 馬の蹄が病気にならないためにはベータカロテンが必要だ。放牧で好き勝手食べてる馬なら問題ないそうだけど、牧場でエサの栄養が偏ったりすると蹄に悪いらしい。ミネラルも摂った方がいいと聞くから、岩塩の塊を用意している。毎回じゃないけど舐めてるみたいだな。人間も馬も健康が一番だな。

 ◆◆◆

 ベックまではもう少し。これで狭い馬車ともお別れ……じゃないな、とりあえず一時的なお別れだ。帰りはまた乗らないとなあ。
「どう考えても贅沢な空間でした」
「俺は何も感じないけどな」
 ここまで馬車ではずっとジゼルと一緒だった。ふとすると思い詰めた顔をするから、その度に頭を撫でたり抱きしめたり、わりとスキンシップが多めだった。そして今は膝枕をしている。俺がジゼルにだ。
 馬車の客車はけっして広くない。箱馬車の中では大きい方だけど、それでも座席は狭い。膝枕ができるのはジゼルが小柄だからだ。
 狭い座席の上で仰向けで寝転んで俺の太ももに頭を乗せる。その頭を俺は撫ででいた。それなりに揺れるけどあまり気にしていないようだ。
「旦那様が私にデレたのが一番大きな変化でした」
「落とされたいのか?」
「あわわ」
 腰を浮かしかけるとジゼルは落ちそうになった。勘違いされたら困るけど、あのまま放っておいたら思い詰めて飛び出しそうだったから慰めただけだ。頭は撫でたし抱きしめたりもした。でも俺の男の部分が女としてのジゼルを求めたわけじゃない。一緒のベッドに入っても常に冷静だった、アレが。
 ジゼルがいつも以上に饒舌なのは実家が気になるというのもあるんだろう。落ち着くにも落ち着けず、口を動かしてるだけのようだ。
「ここまで来て焦っても仕方がない。今日の午後には着く。昼食の準備は昼食が近づいてからでいい」
「ですが旦那様、小腹が空けばおやつは必要でしょう」
「腹が減ったのか?」
「ここに立派なソーセージが」
 上を向いていたジゼルが俺の腹の方に顔を向けてそんなことを言いながらズボンのボタンに手をかける。ファスナーはないからボタンだ。
「おっと、それはお前向けじゃない」
「契約上、私にはこれを頬張る権利があると思いますが」
「最終的に許可を与えるのは俺だ」
 揉め事の原因にならないように、使用人とは性行為不可の条件で契約することが多い。ジゼルの場合はそうなってもクビにならないないというだけで、彼女を抱くというのは契約にはない。
「そもそもそのソーセージが全く反応しないからな。女としての魅力を感じさせるには時間がかかるってことだ」
「ぶう」
 ジゼルは頬を膨らませるけど俺のアレは膨らまない。しかし、この表情を見るとジゼルもだいぶ柔らかくなった。以前なら男を誘う笑みを作ろうとして失敗していた。それから比べると年齢相応の自然な顔だ。
 俺はドラマやCMに出る子役があまりにも子供っぽくなさすぎると違和感を感じて見ていられなかった。テレビの中だから仕方ないかもしれないけど、子供は子供っぽいのが一番。背伸びしすぎるのは可哀想に思えた。それに近い。
「今の顔は可愛いぞ」
「可愛いですか?」
「ああ」
 そのまま頭を撫でる。サラサラの髪が気持ちいい。美容液のおかげだな。ジゼルは猫のように目を細めた。

 ◆◆◆

「旦那様、向こうに村が見えてきました」
 マルクから知らせがあったのは午後四時すぎ。少し肌寒く感じるようになった時間だった。
「これなら暗くなる前に到着できるな」
 丘の上から目を凝らして見てみると、ここから三〇分くらいだろうか。あまり遅い時間に到着しても向こうもこっちも困るからな。
「ジゼル、漁村なら寝るのが早いかもしれないけど、夕食にはまだ早いよな?」
「時計はありませんでしたが、夕食は薄暗くなってからでした。朝も早かったですが、そこまで早くはないと思います」
「よし、マルク、このまま村に入ってくれ。入ったらとりあえずジゼルの家に直行だ」
「はい」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

処理中です...