元ロクデナシで今勇者

椎井瑛弥

文字の大きさ
95 / 273
第八部:なすべきこと

村での相談

しおりを挟む
 ベックで一泊した翌朝、両親が目を覚ましたとジゼルから連絡があった。その連絡を持ってきてのは村長だった。
 役職にが付けば上でふんぞり返るのが仕事のよくに思えるけど、村長は勤勉だ。誰よりもよく働くという言葉を村人の誰かから聞いた。奥さんのルイーズさんも走り回ってるそうだ。

 ジゼルの家に入ると、両親はベッドに寝たままだったが目を覚ましていた。
「ゆ、勇者さま、こ、このような姿で申し訳ありません」
「いや、無理しなくていい。そのままで」
 二人揃って体を起こそうとしたから、そこは寝たままにさせた。二人ともまだベッドからは出られない。一月以上寝込んでたわけだから、明らかに体力が落ちている。ただ完全な寝たきりではなかったようで、強張って動けないほどではないようだ。寝込んで筋肉が落ちたのは魔法では治らない。しばらくリハビリが必要だろう。
 死ぬ前の俺も寝たきりとまではいかなかったけど起き上がることすら大変で、足もかなり細くなった。二人は漁師だから腕力や脚力が必要だ。戻すには時間がかかるだろう。
「大変ご迷惑をおかけしました。まさかこんなところにまで来ていただけるとは」
「いやなに、二人の大切な娘に働いてもらっている。礼ならジゼルに言ってやってほしい。おかげで病気の流行が防げた。褒めるならジゼルを誉めてやってほしい」
 俺の言葉にジゼルが恥ずかしそうな顔をした。俺はこれまであまり褒めなかったからな。
「ジゼル、このあたりの食材を使っていい。二人に食べやすい料理を作ってやってくれ」
「分かりました」

 この村では結核が蔓延していた。目の前の二人のように起き上がれない者もいた。それでどうやって生き延びたかといえば、あのスーパーフード、黒パンだった。
 黒パンを煮込んだパン粥を作って寝ている者の口に入れる。具材に薬草を入れれば病気にもいいと考えられている。
 ライ麦そのものを煮込んでも効き目は小さいらしく、黒パンにしてから煮込むことでより栄養価が高まるそうだ。黒パンがなければジゼルの両親も危なかったかもしれない。もっと黒パンに感謝しないとな。
 ジゼルの家はこれでいい。問題は村の方だ。そこは俺が関わることじゃないかもしれないけど、少しくらいお節介をしてもいいんじゃないだろうか。今後のことも考えて。だから俺は村長の家に行って今後のことを話すことにした。

「マケール殿、こうやって知り合ったのも何かの縁だ。この村にはここしばらく漁に出られなかった家もあったと聞く。ジゼルの実家もあることだし、多少の食糧援助などをしたい」
 俺はそう話を切り出した。
「正直に言いますと、備蓄もかなり減りました。助かるのは間違いありませんが、我々としましては返せるものがありません。ここは何もない漁村ですので」
 村長は申し訳なさそうに頭を下げた。そこまで人口は少なくないけど細々と漁をする村だ。ライ麦や芋も育ててるようだけど、収入としては魚介類が中心なんだろう。干物が多いのか。
「ちなみにこの村はどの貴族の領地なんだ?」
「クノー子爵様の領地になります。その中でも一番端でございますが」
「クノー子爵……クノー子爵……。ああ、ナタン殿の実家か」
 騎士隊長のナタン殿の実家がクノー子爵だったはずだ。伝手といえば伝手だな。
「実は海産物が欲しい。定期的に手に入れば嬉しいんだが」
「公爵様の食卓に上るほど質が高いわけではありませんが」
「いや、こういう言い方は失礼だろうが、魚そのものが必要で、必ずしも食材としてではない。もちろん食べられるものは遠慮なく食べるが」
「?」
 村長は怪訝な顔をするけど、俺が欲しいのは魚の身じゃなくて骨や皮や鱗だ。他の動物でもいいんだけど、この村には魚がある。それを精製して何ができるかというとゼラチン。その成分はコラーゲンだ。
 迎賓館で出された料理にはアスピック、つまり煮凝りはあった。でも他ではほとんど見かけない。ゼラチンのことは知ってても、他で活用する考えはないんだろう。そのままだと臭みがあるからな。
 そしてテングサがあるんじゃないかとも思った。あれがあるなら寒天ができる。ヘルシーな食材として活用できるだろう。
 海藻って食べる国もあれば全然食べない国もある。例えば海苔を消化できるのは日本人だけって聞いた。でも寒天なら大丈夫だろう。
 それにコンブがあれば和食ができる……けど、この国には米はない。南のクロド王国にはあるそうだけど、タイ米みたいなんだよな。細長いって聞いた。それならそれでカレーでも作るか。ビリヤニでもいいな。
「もちろん海でいくらでも採れます。採れますが、肉に比べれば商品としての価値が低くて足も速いので、あまり商品にならないのが現状です」
「それならそれを買い付けたい。マジックバッグはある。いずれここに商会の支店を出したい」
「勇者様がよろしいのでしたら我々にお断りする理由はございません。喜んで購入していただくことにします」
「ああ、そうしてくれ」
 それで話は決まった。
 俺は商会で買い付けたいというか俺個人が欲しいというか、とりあえず気になる海産物を村長たちに伝え、それを今後は定期的に販売してもらおうと思った。だからもしクノー子爵がここで採れるものを重視していれば話を通した方がいいなと。勝手に持っていったと言われたら困る。
「勇者様の思っているものと全く同じかどうかは分かりませんが、近いものは海にあります。明日にでも集めさせましょう」
「それは嬉しい。違ってもいいから種類を多く集めてほしい」
 これで食生活が豊かになる上に、美容液の素材も集められる。ベックの村は収入を得られる。これが共存共栄の第一歩だと思いたい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

処理中です...