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第八部:なすべきこと
郷土料理
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手が空いたからとジゼルが昼食を作ってくれることになった。食材は渡してあるから、何ができるか楽しみではある。でもジゼルの料理を料理をするのは見たことがない。ハウスメイドだからな。
使用人たちの間ではみんなで作ったりということはあるだろう。うちの屋敷は最初が少人数すぎたから、みんなで何でもしたと聞いた。
「旦那様、食事の用意ができました」
「それじゃ頂こう」
屋敷では俺とミレーヌ、エミリア、リュシエンヌだけがまず食事をし、使用人たちは俺たちの食事が終わってからということになる。ここは屋敷じゃないからみんなで一緒に食べる。そっちの方が美味く感じると俺は思うけど、主人と使用人が同じテーブルに着くことにダヴィドはいい顔をしない。まあ『郷に入っては郷に従え』だろうか。
さて、目の前には潮汁や野菜の煮物などがある。米がないからジャガイモやパンと一緒に出されるのは少し違和感がある。ぜひ米食を勧めたいけど、このあたりには米がないからな。それにここは北国になるから作りにくいかもな。漁もあるから忙しいだろう。
まずは潮汁っぽい汁物を……ん? 美味い? かなり美味い? 意外と言ったら悪いけど、美味い。味付けのせいか食材のせいか。
「お口に合いましたか?」
「ああ、合った合った。マルクとアルバンはどうだ?」
つい二人にも聞いてしまった。
「美味しいですね。出汁でしょうか」
「塩っ気がちょうどかと」
ジゼルが嬉しそうにしている。
「ジゼル、魚介の臭みを取るのに酒を使ったか?」
「はい。ジャガイモやライ麦から作ったお酒です。香りはあまりありません。このあたりではエールと並んでよく飲まれます」
ジャガイモやライ麦から作る酒って、多分蒸留酒だよな? ウオッカかアクアビットか。そのへんだろう。焼酎もあるか。興味があるから買えるようなら買ってみるか。
ジャガイモと潮汁は合わなくはない。黒パンと潮汁はそれなりに合う。意外に潮汁はいけるな。そうじゃなきゃ名物にならないか。名物というか郷土料理か。
「潮汁は最初に教わる料理です。毎日のように作りますので、家庭ごとに違いがあります」
「なるほど。味噌汁みたいなものか」
「味噌汁とは?」
味噌はなかったか? そういえば口にしてないな。あることはあるけど屋敷では使われてない。醤油はあった。
「醤油は知ってるか?」
「はい。大豆から作るソースですよね?」
「醤油と同じように大豆を発酵させて作る味噌という調味料がある。ちなみにこういうものだ」
俺は小さな木の樽に入った味噌を見せた。これは大豆だけで作った赤味噌だ。麦のもあるけど俺は持ってない。
「出汁の取り方は色々ある。イリコ、コンブ、カツオブシなどで出汁を取り、そこに具を入れ、最後に味噌を溶き入れる。この味噌なら最初から入れてもいいな」
赤味噌は煮込みにもいいと聞いた。他の味噌は煮込みすぎると風味が飛ぶそうだ。
ジゼルは木ベラで味噌を少し掬うと口に入れた。
「しょっぱっ!」
ビックリしたように目を丸くする。
「しょっぱいぞ」
赤味噌だろうが白味噌だろうが味噌は塩辛い。そのまま口に入れたことはないな。味噌田楽だって酒と味醂と砂糖を使う。
「味噌汁は潮汁に似てるけど出汁が違うな」
味噌汁は具によって出汁を変えるけど、イリコ、コンブ、カツオブシのどれかだろう。魚のアラで出汁を取ることはあまりないはずだ。俺の知ってる範囲だけどな。
「味噌汁にも家庭の味があると言われる。だから昔は『毎日お前の作った味噌汁が飲みたい』という言葉はプロポーズとして使われたそうだ」
「!」
ホントにみんなが言ったかどうかは知らないけど、話の中ではよく聞くよな。お前の味噌汁が飲みたいって。
でも残念ながらメイドは仕事が決まってるから、ジゼルが料理をすることはない。さっき俺が口にした瞬間、帰ったら味噌汁を作って俺に飲ませようと考えたかもしれないけど難しいだろう。でもこれだけの潮汁が作れるなら味噌汁も美味いだろう。作らせてみたい気はする。
「ジゼル、プロポーズ云々という話は横に置いて、一度作って——」
「作ります!」
「……そうか? 一度作ってみてくれ。シンプルな味噌汁という料理がどれだけ奥深いものかが分かるだろう」
俺にはそうとしか言えなかった。マルクがこっちを見てニヤニヤしていたのは気にしない。
◆◆◆
楽しそうに片付けをするジゼルを眺める。鼻歌が聞こえるくらい機嫌が良さそうだ。
それにしてもジゼルが思った以上に家庭的だった。屋敷に関しては掃除はできる。王都に出る前は家族の分を作ってたらしい。それなら慣れてるだろう。
洗い物をするジゼルの後ろ姿を見てると、こう新妻感があるというか、こういうのもいいなって思うよな。
ミレーヌとエミリアとリュシエンヌは料理はしない。いや、屋敷ではさせてもらえない。イネスは料理というか実験だ。目の前で料理を作るのを見たことがあるのはオーブリーとジスランという男二人。
俺は母の記憶はあることはあるけど、忙しそうにしてたことしか思えていない。それに小学校に入ったあたりから自炊してたから、母の料理は食べた記憶がほとんどない。
母はいつも「ごめんね」と言ってた気がする。それは料理のことなのか、それとも生活時間が違ったからなのか、そこまでは分からない。でも母が俺に対してある程度の愛情を注いでくれてたことは子供の俺にでも分かった、母には余裕がなかったんだろう。
まあそういうこともあってジゼルの後ろ姿が妙に俺にとって刺さるというか男心をくすぐるというか。若いから腰回りの肉付きはあまり良くないけど、鼻歌に合わせて揺れる腰が艶かしく感じる。ドレスの裾を捲ったらあの尻を両手で掴んで、俺の性剣をガツンと奥まで……。
……。
…………。
………………。
ん?
俺は何を考えた?
ここしばらく女を抱いてないから溜まってるのか? いや、一週間やそこらでどうこうなるわけないと思うけど、こっちに来てからは毎日やりたい放題だったからな。
しかしジゼルを見ると、何というか、あの包容力のある胸が俺に訴えてるというか何というか……。
んん?
使用人たちの間ではみんなで作ったりということはあるだろう。うちの屋敷は最初が少人数すぎたから、みんなで何でもしたと聞いた。
「旦那様、食事の用意ができました」
「それじゃ頂こう」
屋敷では俺とミレーヌ、エミリア、リュシエンヌだけがまず食事をし、使用人たちは俺たちの食事が終わってからということになる。ここは屋敷じゃないからみんなで一緒に食べる。そっちの方が美味く感じると俺は思うけど、主人と使用人が同じテーブルに着くことにダヴィドはいい顔をしない。まあ『郷に入っては郷に従え』だろうか。
さて、目の前には潮汁や野菜の煮物などがある。米がないからジャガイモやパンと一緒に出されるのは少し違和感がある。ぜひ米食を勧めたいけど、このあたりには米がないからな。それにここは北国になるから作りにくいかもな。漁もあるから忙しいだろう。
まずは潮汁っぽい汁物を……ん? 美味い? かなり美味い? 意外と言ったら悪いけど、美味い。味付けのせいか食材のせいか。
「お口に合いましたか?」
「ああ、合った合った。マルクとアルバンはどうだ?」
つい二人にも聞いてしまった。
「美味しいですね。出汁でしょうか」
「塩っ気がちょうどかと」
ジゼルが嬉しそうにしている。
「ジゼル、魚介の臭みを取るのに酒を使ったか?」
「はい。ジャガイモやライ麦から作ったお酒です。香りはあまりありません。このあたりではエールと並んでよく飲まれます」
ジャガイモやライ麦から作る酒って、多分蒸留酒だよな? ウオッカかアクアビットか。そのへんだろう。焼酎もあるか。興味があるから買えるようなら買ってみるか。
ジャガイモと潮汁は合わなくはない。黒パンと潮汁はそれなりに合う。意外に潮汁はいけるな。そうじゃなきゃ名物にならないか。名物というか郷土料理か。
「潮汁は最初に教わる料理です。毎日のように作りますので、家庭ごとに違いがあります」
「なるほど。味噌汁みたいなものか」
「味噌汁とは?」
味噌はなかったか? そういえば口にしてないな。あることはあるけど屋敷では使われてない。醤油はあった。
「醤油は知ってるか?」
「はい。大豆から作るソースですよね?」
「醤油と同じように大豆を発酵させて作る味噌という調味料がある。ちなみにこういうものだ」
俺は小さな木の樽に入った味噌を見せた。これは大豆だけで作った赤味噌だ。麦のもあるけど俺は持ってない。
「出汁の取り方は色々ある。イリコ、コンブ、カツオブシなどで出汁を取り、そこに具を入れ、最後に味噌を溶き入れる。この味噌なら最初から入れてもいいな」
赤味噌は煮込みにもいいと聞いた。他の味噌は煮込みすぎると風味が飛ぶそうだ。
ジゼルは木ベラで味噌を少し掬うと口に入れた。
「しょっぱっ!」
ビックリしたように目を丸くする。
「しょっぱいぞ」
赤味噌だろうが白味噌だろうが味噌は塩辛い。そのまま口に入れたことはないな。味噌田楽だって酒と味醂と砂糖を使う。
「味噌汁は潮汁に似てるけど出汁が違うな」
味噌汁は具によって出汁を変えるけど、イリコ、コンブ、カツオブシのどれかだろう。魚のアラで出汁を取ることはあまりないはずだ。俺の知ってる範囲だけどな。
「味噌汁にも家庭の味があると言われる。だから昔は『毎日お前の作った味噌汁が飲みたい』という言葉はプロポーズとして使われたそうだ」
「!」
ホントにみんなが言ったかどうかは知らないけど、話の中ではよく聞くよな。お前の味噌汁が飲みたいって。
でも残念ながらメイドは仕事が決まってるから、ジゼルが料理をすることはない。さっき俺が口にした瞬間、帰ったら味噌汁を作って俺に飲ませようと考えたかもしれないけど難しいだろう。でもこれだけの潮汁が作れるなら味噌汁も美味いだろう。作らせてみたい気はする。
「ジゼル、プロポーズ云々という話は横に置いて、一度作って——」
「作ります!」
「……そうか? 一度作ってみてくれ。シンプルな味噌汁という料理がどれだけ奥深いものかが分かるだろう」
俺にはそうとしか言えなかった。マルクがこっちを見てニヤニヤしていたのは気にしない。
◆◆◆
楽しそうに片付けをするジゼルを眺める。鼻歌が聞こえるくらい機嫌が良さそうだ。
それにしてもジゼルが思った以上に家庭的だった。屋敷に関しては掃除はできる。王都に出る前は家族の分を作ってたらしい。それなら慣れてるだろう。
洗い物をするジゼルの後ろ姿を見てると、こう新妻感があるというか、こういうのもいいなって思うよな。
ミレーヌとエミリアとリュシエンヌは料理はしない。いや、屋敷ではさせてもらえない。イネスは料理というか実験だ。目の前で料理を作るのを見たことがあるのはオーブリーとジスランという男二人。
俺は母の記憶はあることはあるけど、忙しそうにしてたことしか思えていない。それに小学校に入ったあたりから自炊してたから、母の料理は食べた記憶がほとんどない。
母はいつも「ごめんね」と言ってた気がする。それは料理のことなのか、それとも生活時間が違ったからなのか、そこまでは分からない。でも母が俺に対してある程度の愛情を注いでくれてたことは子供の俺にでも分かった、母には余裕がなかったんだろう。
まあそういうこともあってジゼルの後ろ姿が妙に俺にとって刺さるというか男心をくすぐるというか。若いから腰回りの肉付きはあまり良くないけど、鼻歌に合わせて揺れる腰が艶かしく感じる。ドレスの裾を捲ったらあの尻を両手で掴んで、俺の性剣をガツンと奥まで……。
……。
…………。
………………。
ん?
俺は何を考えた?
ここしばらく女を抱いてないから溜まってるのか? いや、一週間やそこらでどうこうなるわけないと思うけど、こっちに来てからは毎日やりたい放題だったからな。
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んん?
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