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第八部:なすべきこと
援助
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ベックの村には食糧の援助をすることにした。俺の領地じゃないから手を貸していいのかどうか分からないけど、事情を知ってしまったからには援助くらいはする。
その食糧について、この村にはジャガイモやライ麦はあったけど、ここしばらくで備蓄が減ったと聞いた。特にライ麦があればスーパーフードの黒パンも作れる。それさえあれば死にはしない、ある意味では俺以上に恐ろしい存在だ。
この村で小麦を作っていないのは、ライ麦の方が育てやすいからだ。小麦の方が税として納める量が少なくて済むそうだけど、ライ麦は麦蒔きをしたら刈り入れまで放りっぱなしでいい。だからその時期だけ総出で作業をすればよく、漁の邪魔にならないというのが二番目の理由だそうだ。一番目の理由はもちろんライ麦で作った黒パンの栄養価で、仮に不漁でも困らないようにということだった。
ここは沿岸漁業というのか、朝に出かけて昼には戻ることがほとんどだそうだ。普段は定置網や地引き網を使って漁をすることが多いけど、今回はそれが一部で難しくなった。家族全員が寝込めば、家族以外で看病する者が必要だ。魚はいるのに漁に出られない。水揚げがなければ料理に使えないし干物を作ったりもできない。結果としてジャガイモや黒パンの消費が増える。そういう状態だったそうだ。
「勇者様の国と同じかどうかは分かりません。船を使って魚群を定置網の方に追い込みます。入ったところで底に沈めておいた網を引き上げます。網に入った魚を運搬用の船に移して港で捌くというのが流れです」
「俺は釣り竿で釣ったことくらいしかない。詳しくは知らないが、似たようなものだと思う。そうそう違う漁の仕方なんて生まれないだろう」
逃げられないようになる罠の中に追い込み、集めるのを簡単にするために底から一気に引き上げるそうだ。一応定置網だろうな。写真とかでしか見たことはないけど。
とりあえずジャガイモとライ麦を倉庫に入れた。これは万が一に備えて購入しておいた分で、量はそこそこあるけどそれほど高くはない。そしてさらに何かないかとストレージを見てた時にサツマイモが目に入った。サツマイモといえば石焼き芋だ。
石焼き芋ってのは基本は簡単だ。石焼き芋用の石の上にサツマイモを乗せて、弱火でじっくり焼くだけだ。でもそのための準備は必要になる。
海岸で石焼き芋に使えそうな黒い石を拾ってきてよく洗ったら乾燥させる。俺には理屈は分からないけど、黒い石がいいということだけは知っている。石を敷いた鍋の中にサツマイモを入れてフタをする。ある程度蒸気は逃しさないとホクホクにならないので、フタは少しだけ開ける。
ここからは根気が必要だ。弱火でじっくり、遠赤外線で火を通すそうだ。早く食べたいからって火力を上げるのは悪手だ。水分だけなくなってカラカラに干からびたり、最悪は焦げることもある。『急いては事を仕損ずる』ってことだな。
俺はバイト先のレストランでダッチオーブンを使って作ったことがある。今回はそれを真似た。石も鍋も違うけど、時間をかけることでネットリと甘くできた。このサツマイモは安納芋っぽいな。
「よーし、焼き芋ができたぞ。誰か我こそはという者はいないか?」
石焼き芋って、その存在を知らなければ水分が抜けてシワシワになったサツマイモだ。匂いはいいんだけどな。だから最初の反応は微妙だった。すぐに取り合いになったけど。
「芋なのに芋じゃない!」
「アマヅルよりも甘い!」
最初に思った以上に評判がいい。これで評判が悪ければショックを受けてたところだ。
どうもアマヅルというのはこのあたりの森にある蔓状の植物で、蔓を噛むと甘みを感じるらしい。アマチャヅルとかいう植物があったな。それのことか?
「勇者様、このサツマイモをこの村で育てることはできますか?」
俺に聞いたのは村長の妻のルイーズ。石焼き芋の魅力に取り憑かれたようだ。両手で持たなくてもいっぱいあるぞ? そんなに簡単にはなくならないぞ? 次から次へと焼いてるからな。
「一応できると思う。普通は苗から育てるけど、種芋から育てることもできる。ただ少し寒い地域だから、どれだけ育つかは分からないな」
ハッキリと育てられるとは言えない。だからどうしても言い方が微妙になる。
「このあたりはあまり土が肥えていないのですが、そこはどうですか?」
「土は痩せていても問題ない。むしろ肥えた土だとツルだけが伸びてしまうそうだ。俺は育てたことはないけど、知っている限りのことは書いておこう」
「ありがとうございます」
俺は植物の専門家でもない。サツマイモと石焼き芋のことをちょっと知ってたのはレストランのオーナーのおかげだ。あの人はこだわる人だったな。
それにしても……いやあ、男に比べると女ってサツマイモが好きだよな。いや、美味しいとは思うけど一本で十分。俺はそこまで夢中にはなれない。
さて、真面目にサツマイモを育てることを考える。
ここは僻地だ。東の方へ海岸沿いに進めば他にも村はあるそうだけど、ここがこのあたりでは一番北西の端になる。情報が伝わりにくいのもあるだろうし、新しい作物を育てようという考えもなかったのかもしれない。とりあえずサツマイモはなかった。
さらに税も関係がある。この国では小麦と大麦とライ麦を育てる畑は税の対象になる。広げれば広げるほど税が増える。だからジャガイモが育てられていた。ジャガイモは税に影響しないからだ。
ライ麦を使った黒パンが一番庶民の生活には役立つ。それだけで餓死者が減るからな。でも黒パンよりもジャガイモの方が腹が膨れる。野菜もあったけど種類はそれほど多くないな。
ああ、それに関しては日本のスーパーに慣れすぎてるからそう思うんだろう。そもそも時期が違う野菜は手に入らない。それがこの世界の普通だ。夏には夏の野菜、冬には冬の野菜。春の味覚、夏の味覚、秋の味覚、冬の味覚。
春はタケノコとフキノトウか。夏はスイカとトウモロコシだな。ウナギもいいけどな。秋の味覚はクリとサンマ。冬の味覚はブリだろう。それと鍋。それぞれの時期に試してみるか。その前に土鍋を作らせないとな。
その食糧について、この村にはジャガイモやライ麦はあったけど、ここしばらくで備蓄が減ったと聞いた。特にライ麦があればスーパーフードの黒パンも作れる。それさえあれば死にはしない、ある意味では俺以上に恐ろしい存在だ。
この村で小麦を作っていないのは、ライ麦の方が育てやすいからだ。小麦の方が税として納める量が少なくて済むそうだけど、ライ麦は麦蒔きをしたら刈り入れまで放りっぱなしでいい。だからその時期だけ総出で作業をすればよく、漁の邪魔にならないというのが二番目の理由だそうだ。一番目の理由はもちろんライ麦で作った黒パンの栄養価で、仮に不漁でも困らないようにということだった。
ここは沿岸漁業というのか、朝に出かけて昼には戻ることがほとんどだそうだ。普段は定置網や地引き網を使って漁をすることが多いけど、今回はそれが一部で難しくなった。家族全員が寝込めば、家族以外で看病する者が必要だ。魚はいるのに漁に出られない。水揚げがなければ料理に使えないし干物を作ったりもできない。結果としてジャガイモや黒パンの消費が増える。そういう状態だったそうだ。
「勇者様の国と同じかどうかは分かりません。船を使って魚群を定置網の方に追い込みます。入ったところで底に沈めておいた網を引き上げます。網に入った魚を運搬用の船に移して港で捌くというのが流れです」
「俺は釣り竿で釣ったことくらいしかない。詳しくは知らないが、似たようなものだと思う。そうそう違う漁の仕方なんて生まれないだろう」
逃げられないようになる罠の中に追い込み、集めるのを簡単にするために底から一気に引き上げるそうだ。一応定置網だろうな。写真とかでしか見たことはないけど。
とりあえずジャガイモとライ麦を倉庫に入れた。これは万が一に備えて購入しておいた分で、量はそこそこあるけどそれほど高くはない。そしてさらに何かないかとストレージを見てた時にサツマイモが目に入った。サツマイモといえば石焼き芋だ。
石焼き芋ってのは基本は簡単だ。石焼き芋用の石の上にサツマイモを乗せて、弱火でじっくり焼くだけだ。でもそのための準備は必要になる。
海岸で石焼き芋に使えそうな黒い石を拾ってきてよく洗ったら乾燥させる。俺には理屈は分からないけど、黒い石がいいということだけは知っている。石を敷いた鍋の中にサツマイモを入れてフタをする。ある程度蒸気は逃しさないとホクホクにならないので、フタは少しだけ開ける。
ここからは根気が必要だ。弱火でじっくり、遠赤外線で火を通すそうだ。早く食べたいからって火力を上げるのは悪手だ。水分だけなくなってカラカラに干からびたり、最悪は焦げることもある。『急いては事を仕損ずる』ってことだな。
俺はバイト先のレストランでダッチオーブンを使って作ったことがある。今回はそれを真似た。石も鍋も違うけど、時間をかけることでネットリと甘くできた。このサツマイモは安納芋っぽいな。
「よーし、焼き芋ができたぞ。誰か我こそはという者はいないか?」
石焼き芋って、その存在を知らなければ水分が抜けてシワシワになったサツマイモだ。匂いはいいんだけどな。だから最初の反応は微妙だった。すぐに取り合いになったけど。
「芋なのに芋じゃない!」
「アマヅルよりも甘い!」
最初に思った以上に評判がいい。これで評判が悪ければショックを受けてたところだ。
どうもアマヅルというのはこのあたりの森にある蔓状の植物で、蔓を噛むと甘みを感じるらしい。アマチャヅルとかいう植物があったな。それのことか?
「勇者様、このサツマイモをこの村で育てることはできますか?」
俺に聞いたのは村長の妻のルイーズ。石焼き芋の魅力に取り憑かれたようだ。両手で持たなくてもいっぱいあるぞ? そんなに簡単にはなくならないぞ? 次から次へと焼いてるからな。
「一応できると思う。普通は苗から育てるけど、種芋から育てることもできる。ただ少し寒い地域だから、どれだけ育つかは分からないな」
ハッキリと育てられるとは言えない。だからどうしても言い方が微妙になる。
「このあたりはあまり土が肥えていないのですが、そこはどうですか?」
「土は痩せていても問題ない。むしろ肥えた土だとツルだけが伸びてしまうそうだ。俺は育てたことはないけど、知っている限りのことは書いておこう」
「ありがとうございます」
俺は植物の専門家でもない。サツマイモと石焼き芋のことをちょっと知ってたのはレストランのオーナーのおかげだ。あの人はこだわる人だったな。
それにしても……いやあ、男に比べると女ってサツマイモが好きだよな。いや、美味しいとは思うけど一本で十分。俺はそこまで夢中にはなれない。
さて、真面目にサツマイモを育てることを考える。
ここは僻地だ。東の方へ海岸沿いに進めば他にも村はあるそうだけど、ここがこのあたりでは一番北西の端になる。情報が伝わりにくいのもあるだろうし、新しい作物を育てようという考えもなかったのかもしれない。とりあえずサツマイモはなかった。
さらに税も関係がある。この国では小麦と大麦とライ麦を育てる畑は税の対象になる。広げれば広げるほど税が増える。だからジャガイモが育てられていた。ジャガイモは税に影響しないからだ。
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