元ロクデナシで今勇者

椎井瑛弥

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第十五部:勇者の活躍

帰宅の途につく

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「それでは明日王都に戻ることにする」
「はい、お世話になりました」
「いや、俺はダンジョンに潜っただけで、それ以外は全部やってくれただろう」
 ディディエは俺が見た限りでは非常に優秀だった。元が商家の息子だからか人当たりが良く、どうすれば住民が味方に付いてくれるかを理解しているようだ。
 最初の暴走スタンピードで得た素材を通常よりも安く市内に流通させた。それに食材になるオークの肉や魚介類を使って二日に一回の割合で無料で食事を振る舞っていた。兵士たちも参加できるように交代制にしていたようだ。迷惑な代官が更迭されて
「ですがシュウジ様が暴走スタンピードをあっという間に押さえ込んでくれたからこそ素材も食材も無駄にせずにすみました。それにいざという時の十分な保存食も作ることもできました」
 こういう男だ。このままここの代官をしたらいいんじゃないか?
「それと、これは先ほど届いた鳥による連絡ですが、シュウジ様が戻られる日を連絡してほしいということでした。明日と伝えてもよろしいですか?」
「ああ、明日の午前に出る。もし返事を出すなら昼前には王宮に顔を出すと伝えてほしい」
「分かりました。ではそのように」

 ◆◆◆

「トゥーリア、それじゃまた頼む」
《うむうむ。いつでも使つこうとくれ》
 両方の角にリボンを付けたトゥーリアに乗って帰ることになった。キンキラキンのリボンにしたからか、トゥーリアの機嫌がいい。やっぱりいくつになっても女の子だな。
 今回は従魔が増え過ぎたので、まとめて異空間の特別室に入ってもらった。テーブルもソファーもあるから寛いでいればあっという間だろう。とりあえず俺だけがトゥーリアの背に乗り、そのまま王都へと向かう。それでどうするか。まずは屋敷に従魔たちを降ろし、誰かに世話を任せたら王宮に報告に行く、という順番になるだろうか。

「トゥーリア、今回も助かった」
《いやいや、我はすでにシュウジの従魔じゃ》
 トゥーリアは俺を降ろすとノシノシと巣穴の方に戻っていった。トゥーリアは人の姿にはなれないし食事もしない。何か礼でもしたいけど、何をしていいかも分からない。やっぱりアクセサリーか? 光り物が好きみたいだからな。まあ帰ってきてからゆっくりと聞いてみるか。
「それじゃアラクネとセイレーンはとりあえずスキュラたちの家に入ってくれ。食事を持っていくように伝えておく」
「「「はい」」」
 従魔たちを異空間から出して説明しているとダヴィドがやって来た。
「旦那様、またお仲間が増えたようですね」
「ああ、新しくアラクネとセイレーンが五人ずつ加わった。それとマダコも五匹いる」
 アラクネとセイレーンたちが頭を下げる。マダコはセイレーンと相性がいいようで、普段はアクセサリーのように彼女たちの髪の毛にくっついている。水もあるからな。
「ダヴィドはこの屋敷の執事ブティエだ。俺が不在の間は代行を務めている。ダヴィド、とりあえず家をどうするかは後で考えるとして、手間がかかるけど食事を増やすように伝えてくれ。これには食材が入れてある。これをオーブリーとジスランに」
「畏まりました」
 俺は食材を詰めた小さなマジックバッグをダヴィドに渡した。容量的には縦横高さがそれぞれ二メートルくらいの箱で、俺がイネスに素材を渡す時などに使うものと同じだ。今は肉や魚介類が入れてある。
「慌ただしいけどこれから王宮に行ってくる」
「はい。それでは馬車の準備をさせます」

 ◆◆◆

 イーヴが御者を務める馬車で王宮に向かう。馬車回しで降りると、そこにはなぜかベラがいた。
「ベラ、こんなところでどうしたんだ?」
「閣下がお戻りになるということで、少し前からここで待っておりました」
 忠犬だな。ワンコよりも犬っぽい。尻尾があれば千切れそうなくらいブンブンと振り回しているに違いない。
「これからどうする? 俺は陛下と話がある。遅くなるかもしれないぞ」
「もしよろしければこの馬車でそのまま帰ることにします」
「ああ、それもいいな」
 どれだけ時間がかかるか分からないからイーヴは一度屋敷へ帰らせるつもりだった。帰りは王宮から馬車を出してもらえばいい。普段はそうやっている。普段のベラやオリエのように帰る時間が大まかにでも決まっているなら、その時間に合わせて待たせておくこともアリだ。
「あ、ちょっと待て」
「はい?」
 乗り込もうとしたベラを呼び止めて抱きしめた」
「あ、閣下」
 こちらを向いたところで抱きしめて軽くキスをする。
「帰ったら向こうであったことをみんなに報告する。屋敷で待っておいてくれ」
「はいっ! いつまでもお待ちしています!」
「いや、どこかに行くわけじゃない。
 ベラはちょっと気分が高揚するとその分だけ馬鹿っぽくなることがある。頭は悪くないはずなんだけどな。表情はあまり変わらないけど、よく見ると少しだけ目が大きくなって口角がわずかに上がる。
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