元ロクデナシで今勇者

椎井瑛弥

文字の大きさ
217 / 273
第十五部:勇者の活躍

特技

しおりを挟む
「「「外だ~~~~~っ‼ 眩しっ‼」」」
「二度目だぞ。懲りろよ」
 スキュラたちが全力で外に走り出て両手で顔を覆った。この子たちの目は暗いところでもよく見える。アラクネたちも同じらしい。今の俺も【暗視】がレベル五になったから普通に蛍光灯のある廊下くらいの感じでダンジョンの中を歩ける。
 一番最初は暗視カメラみたいに緑色だったけど徐々に色が薄くなっていった。レベル五でこれならもっと上がればどうなるかが気になる。
「とりあえず町に戻る。ここに入ってくれ」
 俺は異空間を開けると従魔たちを中に入れて最後に俺も入った。するとすぐに出入り口ができ、複体が頭を突っ込んで話しかけてきた。
「ここは西門からすぐのところだ」
「そうか。助かった」
「それじゃまたな」
 複体はそう言い残すと姿を消した。もう少し近くを見回るそうだ。
 俺はスキュラたちとアラクネたちを連れてセレンの町に戻った。

 ◆◆◆

「とりあえず一番下まで潜った。これで大丈夫なはずだ」
「ご無事で何よりです。この代官邸の隣にある離れを使えるようにしてあります。ゆっくり体を休めてください」
「ああ、そうさせてもらおう。あ、そうだ、ダンジョンの中で得た素材を帰る前に渡そうと思う。もうしばらくこの町に滞在するから、その間に解体できる人材を集めてくれ」
 サン=フォアでは手の空いた冒険者たちを雇ってひたすら解体させていた。何千体もあるからそう簡単に終わらないだろう。【ストレージ】に解体機能があるけど、俺がするよりも冒険者たちにさせた方が金が回る。
「ありがとうございます。それでしたら明後日以降にお願いします」
「分かった。また場所を指定してくれ」
 俺はディディエと別れると代官邸を出た。

 出たところでスキュラたちとアラクネたちが待っていた。全員を連れて中に入ると少々手狭だからな。そのまま一〇人を引き連れて少し離れた場所にある離れに入る。さすがにそのままの格好で暮らせるほど広くはないので全員に人の姿になってもらった。
 アラクネたちはそのままでは下半身丸出しになるので、下着とスカートを穿かせた。とりあえず手持ちのものを渡したけど、アラクネたちならいずれは自分で作るだろう。
「とりあえずアラクネの五人も王都の屋敷に来るのでいいよな?」
「「「はい、お世話になります」」」
 慎ましいというかお淑やかというか……やっぱり旅館の若女将だ。よし、帰ったら着物を着せよう。
「マスターのお屋敷に着きましたら、私たちも何かお役に立てることがあればいいのですが」
「役に立つか……」
 スキュラたちは犬たちの散歩も必要だから屋敷の庭を走り回ることが多い。他にはトゥーリアの穴掘りに付き合うのがほとんどで、たまに庭で草抜きをしているのを見ることもある。町を作るのに土起こしをしてもらったことはあるか。アラクネの仕事かなら糸だろうな。
「糸を出すだけじゃなくて布も織れるんだったな?」
「はい。自分で出した糸で織ることができます。仕立てもできます。編み物も得意です」
 家庭的ってステータスにあったからな。
「アラクネの糸ってどれだけの長さで出せるんだ?」
 あの糸玉を考えればかなり長いだろう。ミシンで使うくらいの細さで直径一メートルくらいの玉だからな。
「自分の出した糸なら途中から繋ぐこともできます。途中から色を変えることもできます」
「自由自在か」
 一人で製糸から縫製まで可能。糸の長さには際限がない。しかもストックしておけるからな。
「それならすでに紡いである糸を使って織るのはできるか?」
「できますが、おそらく遅くなります」
「そうなのか?」
「はい。自分たちで必要な糸を出す方が早いですので」
 彼女たちは人間と同じような二本の手と、細かな毛の生えた八本の足のうちの何本かを使って織る。その際に足を道具のように使う。自分だけでもササッと織れるけど、何種類もの糸が必要なら最初にそれだけの種類の糸を用意しておくか、糸の数だけ集まって織るそうだ。
「例えば縦方向に伸びるとか、逆に横方向に伸びるとか、あるいは全方向に伸びるとか、縦糸横糸の種類を変えることで様々な布が織れます。糸を繋ぐことで簡単な構造なら切ったり縫ったりせず、最初から仕立てることもできます。この服もそうですね」
 アリエーナが着ている服は上からスポッと頭を通すチュニックで、これは糸を出しながらそのまま仕立てたそうだ。なるほど、糸を繋ぐだけじゃなくて接着することもできるのか。それは凄いな。
「ちなみにこういうものは織れるか?」
「この形ですか。これは足を通すものですか?」
「そうだ。女性向けのタイツやストッキングだ」
 五人は俺が簡単に書いたデザイン画を見て少し考えた。手が動いているのを見ると、どうやって編もうかと考えているんだろう。
「はい、大丈夫です。試しに作ってみます。色などで何か希望はございますか?」
「そうだな……薄くてツヤがあって伸縮性があるのが一番いい。倍くらいに伸ばして穿く感じにしてほしい。色は黒がいいな」
「はい、分かりました」
 そう言うと五人は揃ってどこかから編み棒のようなものを取り出すと無言で編み始めた。速っ! あっという間につま先から膝、腰、それからまた膝、つま先へと編み上げられた。できたのは黒いストッキング。カブトムシが張り付いても破れなさそうだ。
「それじゃ人の姿になってまずこれを穿いた上から今のタイツを穿いてみてくれ」
「これは下着ですか?」
「そうだ。下着の上にこれを穿いてくれ。穿いたら足を組んで座ってくれるか?」
「「「こうですか?」」」
 五人は揃って長い足を組んだ。美脚とはこういう足を指すのだろう。
「いかがですか?」
「うむ。素晴らしい」
「ありがとうございます」
 やや短めのスカートから覗く黒い艶やかなストッキングが、大人の雰囲気を出しているアラクネたちに似合う。パーフェクトだ。着物もいいけど秘書スタイルも似合うだろう。悩むところだ。
「マスターはこのような服装がお好みですか?」
「好みだな。ただ誰でもそれを身に付ければいいわけじゃない。似合うかどうかが問題……だけど……」
 向こうからスキュラたちの視線が俺に突き刺さっていた。
「一度試してみるか?」
「「「もちろんです!」」」
 スキュラたちは大人っぽくなりたいようだけど、黒いストッキングよりも白いタイツの方が似合うだろう。ニーハイでもいいけどな。
「スキュラたち用にもう一度編んでくれるか?」
「同じものでよろしいですか?」
「いや、スキュラたちには白くてもっと厚いものにしてくれ」
「厚くなりますと伸びにくくなりますので、もう少し大きめに作りますね」
 アラクネたちはまた下半身をクモに戻すと、次は白い糸を出してタイツを編み始めた。完成したスキュラたちはショーツを取り出すとそれを穿いてからタイツに足を通した。そしてスカートを穿く。
「「「マスター、どうですか?」」」
「ああ、可愛いぞ」
 サムズアップで応える。
「「「キャー!」」」
 相変わらず女子だ。スキュラたちは見た目よりも幼い。無理して大人っぽくならなくてもいいと思うけどな。
「アラクネたちも今後は裸を見られないように、上に着る服をもう少し長めにしてくれ。スキュラたちのようにスリットを入れれば姿を元に戻しても問題ないだろう。下着やスカートなどはマジックボックスのロッカーにまとめて入れたらいい。自分たちの収納でもいいけど」
「「「そのようにいたします」」」
 さすがに人前で下半身丸出しはマズいから、せめて太ももくらいまで隠せるくらいの服を着せたい。スキュラたちの服はすでに対策済みだ。サイドスリットの入った膝丈ロングシャツだから、太ももは見えるけど大事な部分は見えない。そのまま下半身を犬に戻しても破れたりしない。アラクネたちは着物や秘書スタイルも似合うと思ったけど、深いスリットを入れるならチャイナドレスもいいかもしれないな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...