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第十二部:勇者とダンジョンと魔物(一)
スキュラたちの名前
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商会から戻ると、次はスキュラたちの名前を付ける順番になった。
「それじゃ五人に名前を付けよう」
「「「お願いします!」」」
屋敷の庭に戻った俺の目の前に五人のスキュラたちが並んだ。高校生くらいの女の子の上半身と、大型犬の子供六匹を下半身に持つ不思議な魔物だ。魔物たちでも高位の魔物は人の言葉を理解する。もし協力を得られるなら力強い味方になると言われている。
「どんな名前にするべきか。希望とかあるか?」
「「「お任せします」」」
この子たちは友達同士らしいけど、おそらく元が同じだからか、短い返事は声がピッタリと揃う。
「みんなも全く違う名前になれば間違ったりするかもしれないよな?」
「そうですね」
「これまでAとかCとか呼んでましたから」
元々固有の名前を持たない存在だった。なのになぜかボスみたいな扱いでダンジョンに呼ばれたみたいだけど。
「よし、頭文字をABCDEのままにする」
手抜きじゃないぞ。ややこしくすると俺自身もこの子たちも間違いそうだし、誰も喜ばないからだ。
「スキュラAはアルベルティーヌ、スキュラBはブランディーヌ、スキュラCはクレマンティーヌ、スキュラDはデルフィーヌ、スキュラEはエグランティーヌ。今後はそう呼び合うように」
俺がそう呼ぶと、彼女たちのステータス表記も変わった。
====================
【名前:アルベルティーヌ】
【種族:スキュラ】
【年齢:一七】
美しい女性の上半身と六匹の犬の上半身でできた下半身を持つキメラの一種。ただしこの個体はまだ成体になる少し手前である。一般的なスキュラは妖艶な女性の上半身と獰猛な犬の下半身を持つが、今のところは幼体のため、少女と幼犬の組み合わせとなっている。
下半身はアラスカンマラミュートで、寒さには強いが暑さには弱い。大人しそうな見た目と違ってパワフルな犬種のため、運動不足になると強いストレスを感じる。そのため普段からしっかり散歩をさせ、体力維持に努めたい。好物は肉と骨。歯ごたえがあるものを好む。
※注記
【愛の男神シュウジの従魔】
====================
他の四人も同じだった。
さて、名前が決まれば次は住む場所だ。
「それともう一つ、どういう場所で暮らしたい? 建物の中か外かという話だ」
ただ彼女たちの下半身は幅がある。どうしても建物の中では生活しづらいだろう。
「先ほど少し見せていただいたのですが、裏に大きな木がありましたので、あの下あたりをお借りしたいと思います」
「敷地の端あたりか。それはいいけど、まさか屋外か?」
トゥーリアは建物に入れないだけだぞ。
「木や石を用意していただければ自分たちで小屋は建てられます」
「それでいいなら用意させようか。手が必要なら言ってくれ」
◆◆◆
スキュラたちの名前が決まると、次は彼女たちとトゥーリアをみんなに紹介することになった。
「こっちの五人はサン=フォアのダンジョンで俺の従魔になった。順にアルベルティーヌ、ブランディーヌ、クレマンティーヌ、デルフィーヌ、エグランティーヌと名前を付けたばかりだ」
「よろしくお願いします」
スキュラたちが揃って頭を下げる。
「後ろのドラゴンはトゥーリア。最下層のさらに下にいた。ここまで乗せてきてくれたのは彼女だ」
《ダンジョンから出られなくなっていたところをシュウジに助けてもろうた。しばらく世話になる》
トゥーリアが喋ると使用人の多くは目を見開いた。
「可愛いですねぇ」
ワンコがデルフィーヌの足元にしゃがみ込んで犬の頭を撫でる。こいつは動物が好きだったからな。犬耳が犬を撫でるというあまりないシチュエーションだ。
この世界にも動物はいる。犬だって猫だって鳥だっているけど、ペットを飼うという習慣はあまりない。あるとしても貴族くらいだろう。手間もかかるしエサ代もかかるからだ。そもそもペットショップなんてない。欲しければ捕まえてくるしかない。珍しい動物や鳥なら高値で取り引きされるらしいな。
一通りの紹介が終わると、スキュラたちの存在についてミレーヌに確認することにした。これまでダンジョン内で存在が確認されなかったボスのようにダンジョンに現れたことだ。
「いないはずのボスですか」
「ああ。代官のポール殿に聞いてみたけど、そんな話は聞いたことがないって言われたんだ」
スキュラたちはダンジョンの中にあったボス部屋のようなところにいた。でもそんなことは今までになかった。少なくともサン=フォアのダンジョンでは。さらにあのダンジョンは地下五〇階まであることが知られていた。でもトゥーリアがいたのは五一階。俺は床を踏み抜いて五一階に落ちたけど、逆走して五〇階に戻り、五〇階と五一階の間に階段があることも確認した。
「もしかして暴走だったからではないですか?」
「やっぱり考えられるとすればそれくらいか」
「はい。私も個々の世界の個々のダンジョンの仕様までは分かりませんけど、あるとすればそれくらいです」
スキュラたちは暴走が始まる少し前にあの場所に呼ばれた。それまでは別の場所にいた。必然か偶然か、仲良し五人組があのダンジョンのボス部屋に転移させられた。当時の名前はスキュラA、スキュラB、スキュラC、スキュラD、スキュラEという、いかにもザコ的な付け方だった。どこの誰が命名したのか分からないけど、いかにもゲームっぽい名前だった。
「ダンジョンというのは不思議な存在です。色々なタイプがあって、石壁のダンジョンもあれば土壁のダンジョンもあります。中には階ごとにジャングル、砂漠、海など、全く環境が違うところもあります」
「勝手に直ることもあるそうなんだけど、どういう理屈なんだ?」
トゥーリアは扉ごとその周囲をブレスで焼き払ったことがあった。扉は燃え、その周囲の壁は溶けた。しばらくすると壁は直ったけど扉は戻らなかった。トゥーリアにもよく分からないらしい。
「ダンジョンはある意味では生き物です。様々な種類があって、何万種類あるのかも分かっていません」
「神にでもか?」
「はい。バクテリアみたいなものです。成長しますし増えますし、別の場所に移動することもありますし」
役に立つこともあれば害になることもある。言い得て妙だな。
「なるほど。個々のダンジョンについて考えるのは意味がないと」
「ないですね。できてみないとどんな種類なのか分からないものです。同じものは二つとないと言われています」
それぞれ別物と考えるしかないか。
「それじゃ五人に名前を付けよう」
「「「お願いします!」」」
屋敷の庭に戻った俺の目の前に五人のスキュラたちが並んだ。高校生くらいの女の子の上半身と、大型犬の子供六匹を下半身に持つ不思議な魔物だ。魔物たちでも高位の魔物は人の言葉を理解する。もし協力を得られるなら力強い味方になると言われている。
「どんな名前にするべきか。希望とかあるか?」
「「「お任せします」」」
この子たちは友達同士らしいけど、おそらく元が同じだからか、短い返事は声がピッタリと揃う。
「みんなも全く違う名前になれば間違ったりするかもしれないよな?」
「そうですね」
「これまでAとかCとか呼んでましたから」
元々固有の名前を持たない存在だった。なのになぜかボスみたいな扱いでダンジョンに呼ばれたみたいだけど。
「よし、頭文字をABCDEのままにする」
手抜きじゃないぞ。ややこしくすると俺自身もこの子たちも間違いそうだし、誰も喜ばないからだ。
「スキュラAはアルベルティーヌ、スキュラBはブランディーヌ、スキュラCはクレマンティーヌ、スキュラDはデルフィーヌ、スキュラEはエグランティーヌ。今後はそう呼び合うように」
俺がそう呼ぶと、彼女たちのステータス表記も変わった。
====================
【名前:アルベルティーヌ】
【種族:スキュラ】
【年齢:一七】
美しい女性の上半身と六匹の犬の上半身でできた下半身を持つキメラの一種。ただしこの個体はまだ成体になる少し手前である。一般的なスキュラは妖艶な女性の上半身と獰猛な犬の下半身を持つが、今のところは幼体のため、少女と幼犬の組み合わせとなっている。
下半身はアラスカンマラミュートで、寒さには強いが暑さには弱い。大人しそうな見た目と違ってパワフルな犬種のため、運動不足になると強いストレスを感じる。そのため普段からしっかり散歩をさせ、体力維持に努めたい。好物は肉と骨。歯ごたえがあるものを好む。
※注記
【愛の男神シュウジの従魔】
====================
他の四人も同じだった。
さて、名前が決まれば次は住む場所だ。
「それともう一つ、どういう場所で暮らしたい? 建物の中か外かという話だ」
ただ彼女たちの下半身は幅がある。どうしても建物の中では生活しづらいだろう。
「先ほど少し見せていただいたのですが、裏に大きな木がありましたので、あの下あたりをお借りしたいと思います」
「敷地の端あたりか。それはいいけど、まさか屋外か?」
トゥーリアは建物に入れないだけだぞ。
「木や石を用意していただければ自分たちで小屋は建てられます」
「それでいいなら用意させようか。手が必要なら言ってくれ」
◆◆◆
スキュラたちの名前が決まると、次は彼女たちとトゥーリアをみんなに紹介することになった。
「こっちの五人はサン=フォアのダンジョンで俺の従魔になった。順にアルベルティーヌ、ブランディーヌ、クレマンティーヌ、デルフィーヌ、エグランティーヌと名前を付けたばかりだ」
「よろしくお願いします」
スキュラたちが揃って頭を下げる。
「後ろのドラゴンはトゥーリア。最下層のさらに下にいた。ここまで乗せてきてくれたのは彼女だ」
《ダンジョンから出られなくなっていたところをシュウジに助けてもろうた。しばらく世話になる》
トゥーリアが喋ると使用人の多くは目を見開いた。
「可愛いですねぇ」
ワンコがデルフィーヌの足元にしゃがみ込んで犬の頭を撫でる。こいつは動物が好きだったからな。犬耳が犬を撫でるというあまりないシチュエーションだ。
この世界にも動物はいる。犬だって猫だって鳥だっているけど、ペットを飼うという習慣はあまりない。あるとしても貴族くらいだろう。手間もかかるしエサ代もかかるからだ。そもそもペットショップなんてない。欲しければ捕まえてくるしかない。珍しい動物や鳥なら高値で取り引きされるらしいな。
一通りの紹介が終わると、スキュラたちの存在についてミレーヌに確認することにした。これまでダンジョン内で存在が確認されなかったボスのようにダンジョンに現れたことだ。
「いないはずのボスですか」
「ああ。代官のポール殿に聞いてみたけど、そんな話は聞いたことがないって言われたんだ」
スキュラたちはダンジョンの中にあったボス部屋のようなところにいた。でもそんなことは今までになかった。少なくともサン=フォアのダンジョンでは。さらにあのダンジョンは地下五〇階まであることが知られていた。でもトゥーリアがいたのは五一階。俺は床を踏み抜いて五一階に落ちたけど、逆走して五〇階に戻り、五〇階と五一階の間に階段があることも確認した。
「もしかして暴走だったからではないですか?」
「やっぱり考えられるとすればそれくらいか」
「はい。私も個々の世界の個々のダンジョンの仕様までは分かりませんけど、あるとすればそれくらいです」
スキュラたちは暴走が始まる少し前にあの場所に呼ばれた。それまでは別の場所にいた。必然か偶然か、仲良し五人組があのダンジョンのボス部屋に転移させられた。当時の名前はスキュラA、スキュラB、スキュラC、スキュラD、スキュラEという、いかにもザコ的な付け方だった。どこの誰が命名したのか分からないけど、いかにもゲームっぽい名前だった。
「ダンジョンというのは不思議な存在です。色々なタイプがあって、石壁のダンジョンもあれば土壁のダンジョンもあります。中には階ごとにジャングル、砂漠、海など、全く環境が違うところもあります」
「勝手に直ることもあるそうなんだけど、どういう理屈なんだ?」
トゥーリアは扉ごとその周囲をブレスで焼き払ったことがあった。扉は燃え、その周囲の壁は溶けた。しばらくすると壁は直ったけど扉は戻らなかった。トゥーリアにもよく分からないらしい。
「ダンジョンはある意味では生き物です。様々な種類があって、何万種類あるのかも分かっていません」
「神にでもか?」
「はい。バクテリアみたいなものです。成長しますし増えますし、別の場所に移動することもありますし」
役に立つこともあれば害になることもある。言い得て妙だな。
「なるほど。個々のダンジョンについて考えるのは意味がないと」
「ないですね。できてみないとどんな種類なのか分からないものです。同じものは二つとないと言われています」
それぞれ別物と考えるしかないか。
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