元ロクデナシで今勇者

椎井瑛弥

文字の大きさ
167 / 273
第十二部:勇者とダンジョンと魔物(一)

スキュラたちの名前

しおりを挟む
 商会から戻ると、次はスキュラたちの名前を付ける順番になった。
「それじゃ五人に名前を付けよう」
「「「お願いします!」」」
 屋敷の庭に戻った俺の目の前に五人のスキュラたちが並んだ。高校生くらいの女の子の上半身と、大型犬の子供六匹を下半身に持つ不思議な魔物だ。魔物たちでも高位の魔物は人の言葉を理解する。もし協力を得られるなら力強い味方になると言われている。
「どんな名前にするべきか。希望とかあるか?」
「「「お任せします」」」
 この子たちは友達同士らしいけど、おそらく元が同じだからか、短い返事は声がピッタリと揃う。
「みんなも全く違う名前になれば間違ったりするかもしれないよな?」
「そうですね」
「これまでAとかCとか呼んでましたから」
 元々固有の名前を持たない存在だった。なのになぜかボスみたいな扱いでダンジョンに呼ばれたみたいだけど。
「よし、頭文字をABCDEのままにする」
 手抜きじゃないぞ。ややこしくすると俺自身もこの子たちも間違いそうだし、誰も喜ばないからだ。
「スキュラAはアルベルティーヌ、スキュラBはブランディーヌ、スキュラCはクレマンティーヌ、スキュラDはデルフィーヌ、スキュラEはエグランティーヌ。今後はそう呼び合うように」
 俺がそう呼ぶと、彼女たちのステータス表記も変わった。

====================

【名前:アルベルティーヌ】
【種族:スキュラ】
【年齢:一七】

 美しい女性の上半身と六匹の犬の上半身でできた下半身を持つキメラの一種。ただしこの個体はまだ成体になる少し手前である。一般的なスキュラは妖艶な女性の上半身と獰猛な犬の下半身を持つが、今のところは幼体のため、少女と幼犬の組み合わせとなっている。
 下半身はアラスカンマラミュートで、寒さには強いが暑さには弱い。大人しそうな見た目と違ってパワフルな犬種のため、運動不足になると強いストレスを感じる。そのため普段からしっかり散歩をさせ、体力維持に努めたい。好物は肉と骨。歯ごたえがあるものを好む。

※注記
【愛の男神シュウジの従魔】

====================

 他の四人も同じだった。
 さて、名前が決まれば次は住む場所だ。
「それともう一つ、どういう場所で暮らしたい? 建物の中か外かという話だ」
 ただ彼女たちの下半身は幅がある。どうしても建物の中では生活しづらいだろう。
「先ほど少し見せていただいたのですが、裏に大きな木がありましたので、あの下あたりをお借りしたいと思います」
「敷地の端あたりか。それはいいけど、まさか屋外か?」
 トゥーリアは建物に入れないだけだぞ。
「木や石を用意していただければ自分たちで小屋は建てられます」
「それでいいなら用意させようか。手が必要なら言ってくれ」

 ◆◆◆

 スキュラたちの名前が決まると、次は彼女たちとトゥーリアをみんなに紹介することになった。
「こっちの五人はサン=フォアのダンジョンで俺の従魔になった。順にアルベルティーヌ、ブランディーヌ、クレマンティーヌ、デルフィーヌ、エグランティーヌと名前を付けたばかりだ」
「よろしくお願いします」
 スキュラたちが揃って頭を下げる。
「後ろのドラゴンはトゥーリア。最下層のさらに下にいた。ここまで乗せてきてくれたのは彼女だ」
《ダンジョンから出られなくなっていたところをシュウジに助けてもろうた。しばらく世話になる》
 トゥーリアが喋ると使用人の多くは目を見開いた。
「可愛いですねぇ」
 ワンコがデルフィーヌの足元にしゃがみ込んで犬の頭を撫でる。こいつは動物が好きだったからな。犬耳が犬を撫でるというあまりないシチュエーションだ。
 この世界にも動物はいる。犬だって猫だって鳥だっているけど、ペットを飼うという習慣はあまりない。あるとしても貴族くらいだろう。手間もかかるしエサ代もかかるからだ。そもそもペットショップなんてない。欲しければ捕まえてくるしかない。珍しい動物や鳥なら高値で取り引きされるらしいな。
 一通りの紹介が終わると、スキュラたちの存在についてミレーヌに確認することにした。これまでダンジョン内で存在が確認されなかったボスのようにダンジョンに現れたことだ。
「いないはずのボスですか」
「ああ。代官のポール殿に聞いてみたけど、そんな話は聞いたことがないって言われたんだ」
 スキュラたちはダンジョンの中にあったボス部屋のようなところにいた。でもそんなことは今までになかった。少なくともサン=フォアのダンジョンでは。さらにあのダンジョンは地下五〇階まであることが知られていた。でもトゥーリアがいたのは五一階。俺は床を踏み抜いて五一階に落ちたけど、逆走して五〇階に戻り、五〇階と五一階の間に階段があることも確認した。
「もしかして暴走スタンピードだったからではないですか?」
「やっぱり考えられるとすればそれくらいか」
「はい。私も個々の世界の個々のダンジョンの仕様までは分かりませんけど、あるとすればそれくらいです」
 スキュラたちは暴走スタンピードが始まる少し前にあの場所に呼ばれた。それまでは別の場所にいた。必然か偶然か、仲良し五人組があのダンジョンのボス部屋に転移させられた。当時の名前はスキュラA、スキュラB、スキュラC、スキュラD、スキュラEという、いかにもザコ的な付け方だった。どこの誰が命名したのか分からないけど、いかにもゲームっぽい名前だった。
「ダンジョンというのは不思議な存在です。色々なタイプがあって、石壁のダンジョンもあれば土壁のダンジョンもあります。中には階ごとにジャングル、砂漠、海など、全く環境が違うところもあります」
「勝手に直ることもあるそうなんだけど、どういう理屈なんだ?」
 トゥーリアは扉ごとその周囲をブレスで焼き払ったことがあった。扉は燃え、その周囲の壁は溶けた。しばらくすると壁は直ったけど扉は戻らなかった。トゥーリアにもよく分からないらしい。
「ダンジョンはある意味では生き物です。様々な種類があって、何万種類あるのかも分かっていません」
「神にでもか?」
「はい。バクテリアみたいなものです。成長しますし増えますし、別の場所に移動することもありますし」
 役に立つこともあれば害になることもある。言い得て妙だな。
「なるほど。個々のダンジョンについて考えるのは意味がないと」
「ないですね。できてみないとどんな種類なのか分からないものです。同じものは二つとないと言われています」
 それぞれ別物と考えるしかないか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...