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第一章 第二部
エリーの故郷の話、そしてキヴィオ市に入る
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夕食後にお茶を飲みながら、エリーから生まれ故郷や割烹着のことを聞いていた。ミシェルはリゼッタとカロリッタと一緒にお絵描きをしている。三人とも上手いな。
「さすがにいつからあるのかは分かりませんが、私が生まれたヴァリガ市ではよくある服装です」
「よくあるということは、別にみんながそうとではないの?」
「はい、いくつか伝統的な衣装があるのですが、そのうちの一つです」
エリーが生まれたのはフェリン王国の最東端にあるカルラ辺境伯領。その中でも一番東にあるヴァリガ市。町の中に川が流れ、それが東にあるレトモ王国との国境になっている。川の西がヴァリガ市、東がヴァリサ市。名前も似ていてややこしい。住民は西町と東町と呼ぶのだとか。
元が国境のため、川を挟んで橋の西にフィリン王国の関所、橋の東にレトモ王国の関所があった。その関所を廃止し、その一帯をまるごと町にしてしまったのがヴァリガ市とヴァリサ市。元々は違う国と違う町ではあるけど往来は自由だと。
さらにその川は北にあるヴェリキ王国、南にあるクルディ王国とも繋がっているため、かなり国際色豊からしい。交通手段や通信手段がそこまで発達していないこの惑星では、当然現代の地球よりも地域ごとの独自性が強い。服装にせよ食べ物にせよ。
割烹着と着物は、もしかしたら日本人が転生なり転移してきて、この国境の町で広めたのかもしれない。あるいはどこか別のところからやってきて、いつの間にかこの国境の町に根付いていたのかもしれない。日本人じゃない可能性もあるけど。
「この国の他の地域にはなさそうなものとかあった?」
「やはり北のヴェリキ王国、南のクルディ王国は気候が違いますので、食事については寒い時期はヴェリキ風のシチューなど、暑い時期はクルディ風のお酢や野菜を使ったスープなどが多かったです」
「思った以上に発展してるように聞こえるね」
「町自体はかなり大きいですね。元々橋は一本しかなかったそうですが、町が大きくなるにつれて数が増えたそうです。今では梯子の段のように走っています」
王都へ行ったら東へ向かってヴァリガ市かな。話を聞いた限りではかなり特殊な町らしいし。どうせならいろんな種族の人たちが和装をしているのを見てみたい。
「他の伝統的な女性用の衣装に、裾から太ももあたり、場合によっては腰の近くまでスリットが入ったドレスもあります。長さも短いものから長いものまで様々ですね」
「割烹着とチャイナドレスが同居しているのか」
「ご存知でしたか。チャイナドレスという名前ですが、旗袍とも呼ばれます。男性用もあって、そちらは旗袍とだけ呼ばれています」
「そっちの名前もあるということは、出どころは意外と本格的なのかな」
「私のチャイナドレス姿でしたらいつでもお見せできますので、遠慮なくおっしゃってください」
「もう作ったの?」
「はい、型紙は無事でしたので」
「そのうちにね」
「はい、必ず近いうちに見ていただきますね」
そんな話をしていると、三人がこっちにやってきた。
「向こうにも聞こえていましたが、ケネスがいた世界の物が意外に多いんですね」
「みたいだね。でも本格的な物なのかどうかがよく分からなくてね。一度実物を見てみないことにはどうにも。どっちにしても名前を聞く限りでは、地球から来たのは間違いないんだろうけど」
「エリーさんに~見せてもら「分かりました、カロリッタ様。今すぐ着てまいります」
「あ、エリー、ちょっと!」
「?」
エリーが走って上へ向かった。ミシェルが不思議そうに首を傾げてる。
「そのうちにでも近いうちにでもなく、いきなり今になったよ」
「マスター、諦めが肝心ですよ~」
「いや、見たくないわけじゃないんだけどね」
しばらくするとエリーがチャイナドレスを着て降りてきた……これはやばい、似合う。割烹着もチャイナドレスも似合うとは。これがエルフのポテンシャルか……
「いかがですか?」
「あー、すごくよく似合うよ。それにかなり本格的な仕立てだなと思って。その扇子もね」
「はい、これはヴァリガ市では正式な外出着として着ることのできる物です」
「礼服としても使えるんだね」
「はい。これとは別に夜に男性「ミシェルが聞いてるから!」
「?」
さすがにミシェルには分からなかったらしい。
「エリーさん。私にも同じ物を作ってもらえませんか? 必要なものがあれば用意します」
「私にもお願いします~」
「はい、もちろんです。お二人の分も一通りご用意いたします」
「パパとわたしのも。みんないっしょ!」
「では旦那様の旗袍もお作りいたします。ミシェルのは旦那様とお揃いにしましょうね」
「うん!」
さすがに作るのは後日ということになったけど、完成したらみんなで揃って着るんだろうな。お揃いってなぜか気恥ずかしくない?
「他にも色々あるのかもしれませんが、私は旦那様の元の世界を知りませんので、比較はできませんね。このような物はあるか、と聞かれればお答えできますが」
エリー、それで足を組んで座るのはやめなさい。そしてわざわざ何度も足を大きく上げて組み替えない。目の毒です。
◆ ◆ ◆
街道に人が増えてきた。遠くに見えるのがキヴィオ市。遠目に見てもユーヴィ市とは規模が全然違うね。もっと近付いてからでいいけどエリーとミシェルには町に入る前に外へ出てもらう。後のことを考えれば、きちんと城門から入って仮証明書を発行してもらった方がいいだろうし。
二人を迎え入れたらみんなで固まって歩く。エルフ三人はそこそこ目立つだろうね。それで、ミシェルと手を繋ぐのはいいとして、エリー、なんで腕を組むの?
「はい、これなら仲のいい親子に見えませんか?」
「見えるだろうね、一〇〇パーセント」
「では問題ありませんね」
「どういう理屈?」
リゼッタとカロリッタが何も言ってこないので、そのままの流れで城門まで来てしまった。
城門にはそれなりに並んでいるので、どんな人がいるのか眺めながら待つ。しばらくしたらミシェルが並ぶのに飽きてきたようなので肩車をしてあげてた。そうしているうちに自分たちの順番になった。
「……肩車で来たヤツは初めてだな」
「あ、すみません。この子が退屈しないようにと思っただけで」
「いや、別に悪いわけじゃないから。全部で五人か。身分証は?」
僕とリゼッタとカロリッタは既にあるので、エリーとミシェルだけ仮証明書を書いてもらって中に入った。基本的にはどの町でも同じようだね。
「じゃあエリー、案内を頼めるかな? とりあえず宿屋で部屋を取ろうと思うんだけど」
「分かりました。少し高めでも食事がいいところですね? さすがに泊まったことはありませんが話に聞いたことはあります」
以前この町に住んでいたエリーの案内で宿屋へ向かう。ミシェルもこの町に住んではいたけど、さすがに一人で遠くまで行くことはできなかったので、あまり町の中を見たことはないらしい。僕の手を握りながらキョロキョロしている。
辿り着いたのは町の中心に近いところにある宿屋『金鶏亭』。見るからに高級そう。
「ここがこの町で一番だという評判の宿屋です。貴族も利用すると聞いています」
「見るからに高そうだからね。高くても美味しければいいよ」
「きれー」
ミシェルが見上げながら呟いた。やはり白くて綺麗な建物だね。ユーヴィ市の白い宿木亭もそうだったけど。前で立っていても仕方ないので入ろうか。
受付の対応も建物の外観から想像できるように、ものすごく丁寧だった。朝食付きで五泊、合計二〇〇〇フローリン支払って鍵を受け取った。鍵を受け取る時に手をぎゅっと握られたけど。
「やはり高級宿は対応も丁寧だね」
「マスターの見た目と口調も大きいと思いますよ~。受付の女性が~顔を赤くしてたじゃないですか~。鍵を渡すのに手を握ってましたし~」
分かってるけどしれっと流したの、それは。アイドルとファンってこんな感じなんだろうか。とりあえず部屋はここかな。
「さすがに高いだけあって広いね」
「貴族が泊まるだけのことありますね」
スイートルームのように部屋も複数ある。キッチンも付いているし、料理人を連れていることを前提にしてるんだろうか。毒殺防止?
リゼッタとはナルヴァ村、ユーヴィ市、そしてこのキヴィオ市と三つの宿屋を見てきたけど、値段が違えばこれだけ違うのかと驚く。人数も違うから仕方ないけど。
「今日のところはゆっくりして、明日から町を回ろうか。エリーの店があったあたりも、どうしよう、一応見ておこうか?」
「旦那様、そのことについてですが……」
「どうかした?」
エリーが少し言いにくそうに話してきた。
「私はこの町の北西部で店をしていましたので、そのあたりには知り合いがそれなりにいます。もっとも見た目が変わっていますので、おそらく気付かれないとは思いますが、エリーとミシェルという名前を使えば、あれっと思う人はいるかもしれません」
「じゃあ、そちらの方では名前を大きな声で呼ぶのはやめといた方がいいかな?」
「その街区だけで大丈夫です。特に見るものもないと思いますので、町を出る前に一目見ることができればそれで構いません」
「分かった。その時には気を付けるよ」
エリーとミシェルという名前はそこまで珍しい名前ではないし、気付かれないとは思うけどね……ただエリーとミシェルで母娘という組み合わせはそんなにはないかな。まあ避けられる問題は避けよう。
「ケネス、その区画に近付く時には親子になりきればいい思いますよ。寄り添って小声で話せば問題ないと思います」
「リゼッタ、いきなりどうしたの?」
「いえ、エリーさんの素晴らしさに気付いただけです」
「そうですよ~マスター。エリーさんほど~素晴らしい女性はいませんよ~」
「何があったの!? 少し前から様子がおかしいと思っていたけど」
「旦那様、そこまでお二人から信用されたとあってはこのエリー、その間は全力で旦那様の妻になり切ります、いえ、むしろ妻になります。ミシェルもわかったわね、旦那様を本当のパパだと思うのよ」
「パパはパパだよ、ずっと」
「そうね、パパはパパね、ずっと」
いつの間にか外堀を埋められるどころの話ではないよね。これはあれかな、カローラさんが何かやってない?
「エリーのその話も忘れたわけじゃないけど、とりあえずもう少し待ってね。このままだとこの国で家庭を作ってそれで旅が終わりって事になりかねないから」
「はい、いつまでもお待ちいたします。私は三号でも四号でも構いません。ただ旦那様に対する愛情については、リゼッタ様とカロリッタ様に引けを取らない自信はあります。そう全力でアピールさせていただきます」
「自分でそれを言うかな?」
「言いますとも。旦那様には『あ~れ~』もしていただかなければ困りますしね」
「いつの間にか知ってた?」
「はい、カロリッタ様から教えていただきました。専用の帯も用意しましたし、準備万端です」
「あーれーってなに?」
「ミシェル、大きくなったら旦那様にしてもらいましょうね」
「うん!」
「ちょっとエリー、何を教えてるの!」
「さすがにいつからあるのかは分かりませんが、私が生まれたヴァリガ市ではよくある服装です」
「よくあるということは、別にみんながそうとではないの?」
「はい、いくつか伝統的な衣装があるのですが、そのうちの一つです」
エリーが生まれたのはフェリン王国の最東端にあるカルラ辺境伯領。その中でも一番東にあるヴァリガ市。町の中に川が流れ、それが東にあるレトモ王国との国境になっている。川の西がヴァリガ市、東がヴァリサ市。名前も似ていてややこしい。住民は西町と東町と呼ぶのだとか。
元が国境のため、川を挟んで橋の西にフィリン王国の関所、橋の東にレトモ王国の関所があった。その関所を廃止し、その一帯をまるごと町にしてしまったのがヴァリガ市とヴァリサ市。元々は違う国と違う町ではあるけど往来は自由だと。
さらにその川は北にあるヴェリキ王国、南にあるクルディ王国とも繋がっているため、かなり国際色豊からしい。交通手段や通信手段がそこまで発達していないこの惑星では、当然現代の地球よりも地域ごとの独自性が強い。服装にせよ食べ物にせよ。
割烹着と着物は、もしかしたら日本人が転生なり転移してきて、この国境の町で広めたのかもしれない。あるいはどこか別のところからやってきて、いつの間にかこの国境の町に根付いていたのかもしれない。日本人じゃない可能性もあるけど。
「この国の他の地域にはなさそうなものとかあった?」
「やはり北のヴェリキ王国、南のクルディ王国は気候が違いますので、食事については寒い時期はヴェリキ風のシチューなど、暑い時期はクルディ風のお酢や野菜を使ったスープなどが多かったです」
「思った以上に発展してるように聞こえるね」
「町自体はかなり大きいですね。元々橋は一本しかなかったそうですが、町が大きくなるにつれて数が増えたそうです。今では梯子の段のように走っています」
王都へ行ったら東へ向かってヴァリガ市かな。話を聞いた限りではかなり特殊な町らしいし。どうせならいろんな種族の人たちが和装をしているのを見てみたい。
「他の伝統的な女性用の衣装に、裾から太ももあたり、場合によっては腰の近くまでスリットが入ったドレスもあります。長さも短いものから長いものまで様々ですね」
「割烹着とチャイナドレスが同居しているのか」
「ご存知でしたか。チャイナドレスという名前ですが、旗袍とも呼ばれます。男性用もあって、そちらは旗袍とだけ呼ばれています」
「そっちの名前もあるということは、出どころは意外と本格的なのかな」
「私のチャイナドレス姿でしたらいつでもお見せできますので、遠慮なくおっしゃってください」
「もう作ったの?」
「はい、型紙は無事でしたので」
「そのうちにね」
「はい、必ず近いうちに見ていただきますね」
そんな話をしていると、三人がこっちにやってきた。
「向こうにも聞こえていましたが、ケネスがいた世界の物が意外に多いんですね」
「みたいだね。でも本格的な物なのかどうかがよく分からなくてね。一度実物を見てみないことにはどうにも。どっちにしても名前を聞く限りでは、地球から来たのは間違いないんだろうけど」
「エリーさんに~見せてもら「分かりました、カロリッタ様。今すぐ着てまいります」
「あ、エリー、ちょっと!」
「?」
エリーが走って上へ向かった。ミシェルが不思議そうに首を傾げてる。
「そのうちにでも近いうちにでもなく、いきなり今になったよ」
「マスター、諦めが肝心ですよ~」
「いや、見たくないわけじゃないんだけどね」
しばらくするとエリーがチャイナドレスを着て降りてきた……これはやばい、似合う。割烹着もチャイナドレスも似合うとは。これがエルフのポテンシャルか……
「いかがですか?」
「あー、すごくよく似合うよ。それにかなり本格的な仕立てだなと思って。その扇子もね」
「はい、これはヴァリガ市では正式な外出着として着ることのできる物です」
「礼服としても使えるんだね」
「はい。これとは別に夜に男性「ミシェルが聞いてるから!」
「?」
さすがにミシェルには分からなかったらしい。
「エリーさん。私にも同じ物を作ってもらえませんか? 必要なものがあれば用意します」
「私にもお願いします~」
「はい、もちろんです。お二人の分も一通りご用意いたします」
「パパとわたしのも。みんないっしょ!」
「では旦那様の旗袍もお作りいたします。ミシェルのは旦那様とお揃いにしましょうね」
「うん!」
さすがに作るのは後日ということになったけど、完成したらみんなで揃って着るんだろうな。お揃いってなぜか気恥ずかしくない?
「他にも色々あるのかもしれませんが、私は旦那様の元の世界を知りませんので、比較はできませんね。このような物はあるか、と聞かれればお答えできますが」
エリー、それで足を組んで座るのはやめなさい。そしてわざわざ何度も足を大きく上げて組み替えない。目の毒です。
◆ ◆ ◆
街道に人が増えてきた。遠くに見えるのがキヴィオ市。遠目に見てもユーヴィ市とは規模が全然違うね。もっと近付いてからでいいけどエリーとミシェルには町に入る前に外へ出てもらう。後のことを考えれば、きちんと城門から入って仮証明書を発行してもらった方がいいだろうし。
二人を迎え入れたらみんなで固まって歩く。エルフ三人はそこそこ目立つだろうね。それで、ミシェルと手を繋ぐのはいいとして、エリー、なんで腕を組むの?
「はい、これなら仲のいい親子に見えませんか?」
「見えるだろうね、一〇〇パーセント」
「では問題ありませんね」
「どういう理屈?」
リゼッタとカロリッタが何も言ってこないので、そのままの流れで城門まで来てしまった。
城門にはそれなりに並んでいるので、どんな人がいるのか眺めながら待つ。しばらくしたらミシェルが並ぶのに飽きてきたようなので肩車をしてあげてた。そうしているうちに自分たちの順番になった。
「……肩車で来たヤツは初めてだな」
「あ、すみません。この子が退屈しないようにと思っただけで」
「いや、別に悪いわけじゃないから。全部で五人か。身分証は?」
僕とリゼッタとカロリッタは既にあるので、エリーとミシェルだけ仮証明書を書いてもらって中に入った。基本的にはどの町でも同じようだね。
「じゃあエリー、案内を頼めるかな? とりあえず宿屋で部屋を取ろうと思うんだけど」
「分かりました。少し高めでも食事がいいところですね? さすがに泊まったことはありませんが話に聞いたことはあります」
以前この町に住んでいたエリーの案内で宿屋へ向かう。ミシェルもこの町に住んではいたけど、さすがに一人で遠くまで行くことはできなかったので、あまり町の中を見たことはないらしい。僕の手を握りながらキョロキョロしている。
辿り着いたのは町の中心に近いところにある宿屋『金鶏亭』。見るからに高級そう。
「ここがこの町で一番だという評判の宿屋です。貴族も利用すると聞いています」
「見るからに高そうだからね。高くても美味しければいいよ」
「きれー」
ミシェルが見上げながら呟いた。やはり白くて綺麗な建物だね。ユーヴィ市の白い宿木亭もそうだったけど。前で立っていても仕方ないので入ろうか。
受付の対応も建物の外観から想像できるように、ものすごく丁寧だった。朝食付きで五泊、合計二〇〇〇フローリン支払って鍵を受け取った。鍵を受け取る時に手をぎゅっと握られたけど。
「やはり高級宿は対応も丁寧だね」
「マスターの見た目と口調も大きいと思いますよ~。受付の女性が~顔を赤くしてたじゃないですか~。鍵を渡すのに手を握ってましたし~」
分かってるけどしれっと流したの、それは。アイドルとファンってこんな感じなんだろうか。とりあえず部屋はここかな。
「さすがに高いだけあって広いね」
「貴族が泊まるだけのことありますね」
スイートルームのように部屋も複数ある。キッチンも付いているし、料理人を連れていることを前提にしてるんだろうか。毒殺防止?
リゼッタとはナルヴァ村、ユーヴィ市、そしてこのキヴィオ市と三つの宿屋を見てきたけど、値段が違えばこれだけ違うのかと驚く。人数も違うから仕方ないけど。
「今日のところはゆっくりして、明日から町を回ろうか。エリーの店があったあたりも、どうしよう、一応見ておこうか?」
「旦那様、そのことについてですが……」
「どうかした?」
エリーが少し言いにくそうに話してきた。
「私はこの町の北西部で店をしていましたので、そのあたりには知り合いがそれなりにいます。もっとも見た目が変わっていますので、おそらく気付かれないとは思いますが、エリーとミシェルという名前を使えば、あれっと思う人はいるかもしれません」
「じゃあ、そちらの方では名前を大きな声で呼ぶのはやめといた方がいいかな?」
「その街区だけで大丈夫です。特に見るものもないと思いますので、町を出る前に一目見ることができればそれで構いません」
「分かった。その時には気を付けるよ」
エリーとミシェルという名前はそこまで珍しい名前ではないし、気付かれないとは思うけどね……ただエリーとミシェルで母娘という組み合わせはそんなにはないかな。まあ避けられる問題は避けよう。
「ケネス、その区画に近付く時には親子になりきればいい思いますよ。寄り添って小声で話せば問題ないと思います」
「リゼッタ、いきなりどうしたの?」
「いえ、エリーさんの素晴らしさに気付いただけです」
「そうですよ~マスター。エリーさんほど~素晴らしい女性はいませんよ~」
「何があったの!? 少し前から様子がおかしいと思っていたけど」
「旦那様、そこまでお二人から信用されたとあってはこのエリー、その間は全力で旦那様の妻になり切ります、いえ、むしろ妻になります。ミシェルもわかったわね、旦那様を本当のパパだと思うのよ」
「パパはパパだよ、ずっと」
「そうね、パパはパパね、ずっと」
いつの間にか外堀を埋められるどころの話ではないよね。これはあれかな、カローラさんが何かやってない?
「エリーのその話も忘れたわけじゃないけど、とりあえずもう少し待ってね。このままだとこの国で家庭を作ってそれで旅が終わりって事になりかねないから」
「はい、いつまでもお待ちいたします。私は三号でも四号でも構いません。ただ旦那様に対する愛情については、リゼッタ様とカロリッタ様に引けを取らない自信はあります。そう全力でアピールさせていただきます」
「自分でそれを言うかな?」
「言いますとも。旦那様には『あ~れ~』もしていただかなければ困りますしね」
「いつの間にか知ってた?」
「はい、カロリッタ様から教えていただきました。専用の帯も用意しましたし、準備万端です」
「あーれーってなに?」
「ミシェル、大きくなったら旦那様にしてもらいましょうね」
「うん!」
「ちょっとエリー、何を教えてるの!」
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