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第三章 第三部
山と墓石
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「お前様よ、少し前の家の方に行こうと思うのじゃが」
「何か用事でもできた?」
「まあ、あそこまで上がってくる者は滅多にいないとは思うのじゃが、一応見回りと、後はマリーへの挨拶じゃな。人の妻になったからのう。よければ一緒に来てはくれぬか?」
「いいよ。久しぶりに行こうか。あの時以来だね」
「うむ。頼む」
マリアンが以前住んでいた山はシムーナ子爵領の北にある山。三〇〇〇メートルを超えるこの山のかなり上の方に彼女の家がある。
以前は前まで行って、入り口の近くにあるマリーさんのお墓にお参りをして戻って来ただけだった。今日は初めてマリアンの家に入る。
「久しぶりじゃな」
「ここまで隠蔽されればさすがに分からないね」
「誰かが中に入っても何もないから問題にはならぬが、まあ気分の問題じゃな」
マリアンは古代竜という種類の竜で、人の姿はあくまで仮のもの。これまで竜の姿は見たことがなかった。
僕の[念話]が漏れていて、それにマリアンが気付いて会いに来たとか、マイカの少女漫画に衝撃を受けて引っ越したとか、これまでのことを話しながら奥の方へ向かった。
「お前様、頼みがあるのじゃが」
「いいよ。朝からそれが言いたかったんでしょ?」
「なんじゃ、お見通しじゃったか」
「いつもと感じが違ったからね」
「そうか……。実は、子をなす前に、お前様には本当の姿を見てほしいのじゃ」
「見せたくなかったんじゃないの?」
「まあ、お前様に惹かれるようになってからは、竜の姿を見せて嫌がられないかどうか気になってのう。今さらとも思うのじゃが……前もって知ってもらいたいと思ったのじゃ。後から見て嫌悪感でも抱かれれば、どうやって生きていけばいいか分からぬ。もし嫌がられれば諦めもつくし、お前様の前にはもう姿を見せぬつもりじゃ……」
自分で言いながら気落ちしてしまったのでやさしく抱き寄せる。僕はマリアンが竜だろうが何だろうがまったく気にしていないんだけど。
「マリアンが竜でも人でも関係ないよ。魔法の先生でもあり、みんなが言いにくいことを言ってくれる頼りになる人だからね」
「そ、そうか? なら、今から戻る。少しホコリが舞うかもしれぬ」
そう言って少し離れたところでこちらを向くと、マリアンの輪郭がぶれた。ぶれたというか滲んだ感じだろうか。すると黒曜石のような黒い鱗を持つ竜の姿があった。日本の龍ではなく、西洋のドラゴン。人の姿よりも圧倒的に強い魔力を感じる。
《ど、どうじゃ?》
「うん、綺麗な鱗だよ」
《そ、そうか? 本当か?》
「こんなこと、嘘を言っても仕方ないでしょ?」
《それならいいのじゃが………》
「綺麗だし、興味もあるし」
《興味? ワシ解体される?》
「いやいや、しないって。鱗の手触りの確認くらいだって」
《そ、そうか。よいぞ》
「では遠慮なく」
ほう……。竜の鱗ってもっと硬いのかと思ったら、少し押したら凹む。硬いゴムというか、ソフトキャンディくらいか。ほー。へえ。さすがに引っ張っても伸びないか。
《うひゃひゃっ! おおお、お前様っ、ちょっとくすぐったいぞ》
「あ、ごめん。こっちに来てからは触ったことのない手触りだったから」
我を忘れかけた。
「思ったよりも柔らかくて滑らかでビックリした。もっと硬いのかと思ったけど」
《剥がれた鱗は硬くなるのじゃが、生えている間はそんなものじゃ。第一硬ければジャラジャラとうるさいじゃろう》
「へえ、硬くなるんだ」
《その端のあたりに積んであるのがそうじゃ。わざわざ持っていくこともないと思うとったから、置いといたんじゃが、欲しいなら持って帰ればどうじゃ?》
「いいの? じゃあ貰っていくよ」
山積みされている鱗をマジックバッグに入れていく。プラスチックのような手触り。
《それでは人の姿に戻るかの》
そう言うとマリアンはいつもの姿に戻った。
「竜の姿もかっこよかったけど、こっちの方が見慣れている分、マリアンらしいかな」
「そうか。格好よかったか。まあこの山にいる間も人の姿が多かったからのう。竜の姿では何をするにも効率が悪すぎるのじゃ」
「それに竜のままだとドレスは着れそうにないしね」
「布の無駄じゃろうな。それに引っかかって破れそうじゃ」
どうでもいい話をしつつ外に向かい、マリーさんのお墓に向かう。花を供えて手を合わせる。
「あなたの親友のマリアンを妻にもらいました」
「とうとう人の妻になった。これからはこの人とともに生きる」
マリーさんが生きていたのは何百年も前のことらしいけど、もし生きていたらどういう顔をしたのかな。
「む?」
「どうかした?」
「あ、いや。生きているはずはないし、残留思念もないはずじゃが、マリーの声が聞こえた気がしての」
「何を言ってたの?」
「生涯独身だった私への当てつけか、と」
「前から話を聞いている限りは、けっこう面白い人だったんだね」
「面白いというか何というか、内容は真っ当なはずじゃが、マリーが言うとズレて聞こえるのが面白かったのう」
《ねえ、あまりの言い方じゃない?》
「「⁉」」
《なんで驚くのよ。聞こえてて言ってたんじゃないの?》
「いえ、普通に思い出話をしていただけですが……。マリーさんですよね?」
《そうよ。なぜかここに引っ張り戻されたみたいだけど》
「おそらくですが、今は墓石に宿っている感じなんでしょうね」
《え? これ墓石なの? 真下以外は見えるんだけど、体が動かないのよ。ここは山の上? 眺めはいいわね》
「なるほど。ちょっと調べてみますね」
【名前:[マリー]】
【種族:[石]】
【年齢:[〇]】
「種族が[石]になってますね。石って種族なんだ……」
《石?》
「とりあえず今はこの墓石が本体というか、体になっているようです」
《あっ、ちょっと。あまり撫で回さないでよ……》
「あ、すみません。感覚があるんですか……。ところで、どうします? ここから移動しますか?」
《そうねえ、ここに取り残されてもねえ……。持って行けるなら持って行ってもらえる?》
「じゃあそうしましょう。今後どうするかは後で考えるとして。ところで、マリアンも話したら?」
「お、おお、そうじゃ。固まっておったわ。マ、マリー、久しぶりじゃ。元気にしとった……わけではないのう。それにしても、どうしたのじゃ?」
《よく分からないんだけどね。ついさっき、目が覚めたというか覚まされたというか。あなたたちの声が聞こえたと思ったら、視界が開けた感じね》
「まあ、また話ができるようになって嬉しぞ。お前様、とりあえず連れて帰るかのう」
「じゃあ、まずはマリーさんを引っこ抜かないとね。よっ……」
《ひゃっ! 何これ?》
「[魔力手]というものです。魔力を手のようにして物を掴みます」
《くすぐったいくすぐったい》
「少し我慢してください。よっ……。あれ、引っかかってる?」
見た目は僕の膝くらいまでの墓石だったけど、抜けないように土台部分があったので抜くのに手間がかかった。見た目はアルファベットのTをひっくり返した形だ。
「置くだけでは転がり落ちる可能性もあったから、簡単には抜けぬようにしておいたのじゃ」
「それでこんな形なのか」
《あー、くすぐったかった。拷問かと思ったわ》
「そう言えば、気が狂うまでくすぐり続けるという拷問がありましたね」
《こんな時に思い出さないでよ》
「拷問って口にしたのはマリーさんでしょ」
「気が合うようじゃのう」
◆ ◆ ◆
「おはか?」
「立派な石です。なかなか見たことがないですよ?」
「いい大理石」
「これがマリアンの親友のマリーさんだよ」
《初めまして。マリアンの友人のマリーです》
「「「「⁉」」」」
「ビックリするじゃろうが、みな、よろしく頼む」
いきなり墓石から[念話]で話しかけられたら誰だってビックリする。使用人たちに伝えるのはどうしようかな。マリーさんは念話でしかこちらに言葉を伝えられないから、使用人たちは理解できないんだよね。墓石を見せられても困るだろうし。
高さ一メートルちょっとの墓石を置いてみんなに紹介する。日本の墓石ような四角柱じゃなくて、アメリカやヨーロッパでよく見るような幅があって薄い墓石。それに土台が付いているので、昔ながらの喫茶店にある卓上メニューのような形をしている。
「先輩、それでマリーさんはアントワネットさんですか? それとも母親のマリア・テレジアさんの方ですか?」
「気になるのはそこ? どうなんですか、マリーさん?」
《えーっと、アントワネット……って、あの王妃様? ひょっとしてマリー・アントワネットかその母親かってこと?》
「はい。もしくは娘のマリー・テレーズか」
《そんなわけないでしょ。パリ生まれだけど、王妃様を遠目に見たことがあるくらいよ。その頃から仕立てをしてたのよ》
「そうなんですか……」
《そこでしょげられても。あたしが悪いみたいじゃない》
「それで、マリーさんにはこの屋敷にいてもらうつもりなんだけど、このままでは動けないんだよね。それでどうしようかと思ってるんだけど、何かいい案はない?」
「やはりゴーレムでは? ケネスも作りたそうですし」
「ホムンクルスはどうでしょうか~」
「いや、ゴーレムは細かな作業は無理だろうし、ホムンクルスは作り方をしらないって」
「旦那様が自由に動ける台車を作るのはどうでしょうか?」
「あなたの住んでいた世界になら便利なものがありそうですけど」
「電動車椅子のようなものか。[念話]で操作できるようにできるかなあ」
[念話]はあくまで意思疎通だからね。[魔力糸][魔力紐][魔力手]あたりが使えるなら自分で動かせるんだけど。うーん……。
「ご主人様、私がマリーさんの体を作りましょうか?」
「ええ? 作れるの?」
「はい。上級管理者の力ですので、ご主人様にはまだ無理だと思います。私がカロリッタを作ったのと同じ要領ですね」
「あっそうか。その時は一から作ったんだっけ?」
「はい。普通と少し違うのは、体を作って記憶を移し替えるのではなく、作った体に意識を持った物を埋め込む形になることです」
「でもこのサイズは無理じゃない?」
「そのままでは無理ですので、削って小さくする必要はありますね」
《え? あたし削られるの?》
「これ全部は必要ないでしょう。意識があるのは……このあたりですね。ではここだけにしましょう。えいっ」
ボリッ!
《ぎゃあーーーー! 折れた折れた! 痛……くはないけどなんか変! 何この感覚?》
「はい、もう少し力を抜いてくださいね。すぐに終わりますからね」
《うひゃっ! 痒い! くすぐったい! 早く終わらせてーーー!》
「体内で動かないように、少し縦長にしましょうか」
《……》
反応がなくなったけど大丈夫?
「何か用事でもできた?」
「まあ、あそこまで上がってくる者は滅多にいないとは思うのじゃが、一応見回りと、後はマリーへの挨拶じゃな。人の妻になったからのう。よければ一緒に来てはくれぬか?」
「いいよ。久しぶりに行こうか。あの時以来だね」
「うむ。頼む」
マリアンが以前住んでいた山はシムーナ子爵領の北にある山。三〇〇〇メートルを超えるこの山のかなり上の方に彼女の家がある。
以前は前まで行って、入り口の近くにあるマリーさんのお墓にお参りをして戻って来ただけだった。今日は初めてマリアンの家に入る。
「久しぶりじゃな」
「ここまで隠蔽されればさすがに分からないね」
「誰かが中に入っても何もないから問題にはならぬが、まあ気分の問題じゃな」
マリアンは古代竜という種類の竜で、人の姿はあくまで仮のもの。これまで竜の姿は見たことがなかった。
僕の[念話]が漏れていて、それにマリアンが気付いて会いに来たとか、マイカの少女漫画に衝撃を受けて引っ越したとか、これまでのことを話しながら奥の方へ向かった。
「お前様、頼みがあるのじゃが」
「いいよ。朝からそれが言いたかったんでしょ?」
「なんじゃ、お見通しじゃったか」
「いつもと感じが違ったからね」
「そうか……。実は、子をなす前に、お前様には本当の姿を見てほしいのじゃ」
「見せたくなかったんじゃないの?」
「まあ、お前様に惹かれるようになってからは、竜の姿を見せて嫌がられないかどうか気になってのう。今さらとも思うのじゃが……前もって知ってもらいたいと思ったのじゃ。後から見て嫌悪感でも抱かれれば、どうやって生きていけばいいか分からぬ。もし嫌がられれば諦めもつくし、お前様の前にはもう姿を見せぬつもりじゃ……」
自分で言いながら気落ちしてしまったのでやさしく抱き寄せる。僕はマリアンが竜だろうが何だろうがまったく気にしていないんだけど。
「マリアンが竜でも人でも関係ないよ。魔法の先生でもあり、みんなが言いにくいことを言ってくれる頼りになる人だからね」
「そ、そうか? なら、今から戻る。少しホコリが舞うかもしれぬ」
そう言って少し離れたところでこちらを向くと、マリアンの輪郭がぶれた。ぶれたというか滲んだ感じだろうか。すると黒曜石のような黒い鱗を持つ竜の姿があった。日本の龍ではなく、西洋のドラゴン。人の姿よりも圧倒的に強い魔力を感じる。
《ど、どうじゃ?》
「うん、綺麗な鱗だよ」
《そ、そうか? 本当か?》
「こんなこと、嘘を言っても仕方ないでしょ?」
《それならいいのじゃが………》
「綺麗だし、興味もあるし」
《興味? ワシ解体される?》
「いやいや、しないって。鱗の手触りの確認くらいだって」
《そ、そうか。よいぞ》
「では遠慮なく」
ほう……。竜の鱗ってもっと硬いのかと思ったら、少し押したら凹む。硬いゴムというか、ソフトキャンディくらいか。ほー。へえ。さすがに引っ張っても伸びないか。
《うひゃひゃっ! おおお、お前様っ、ちょっとくすぐったいぞ》
「あ、ごめん。こっちに来てからは触ったことのない手触りだったから」
我を忘れかけた。
「思ったよりも柔らかくて滑らかでビックリした。もっと硬いのかと思ったけど」
《剥がれた鱗は硬くなるのじゃが、生えている間はそんなものじゃ。第一硬ければジャラジャラとうるさいじゃろう》
「へえ、硬くなるんだ」
《その端のあたりに積んであるのがそうじゃ。わざわざ持っていくこともないと思うとったから、置いといたんじゃが、欲しいなら持って帰ればどうじゃ?》
「いいの? じゃあ貰っていくよ」
山積みされている鱗をマジックバッグに入れていく。プラスチックのような手触り。
《それでは人の姿に戻るかの》
そう言うとマリアンはいつもの姿に戻った。
「竜の姿もかっこよかったけど、こっちの方が見慣れている分、マリアンらしいかな」
「そうか。格好よかったか。まあこの山にいる間も人の姿が多かったからのう。竜の姿では何をするにも効率が悪すぎるのじゃ」
「それに竜のままだとドレスは着れそうにないしね」
「布の無駄じゃろうな。それに引っかかって破れそうじゃ」
どうでもいい話をしつつ外に向かい、マリーさんのお墓に向かう。花を供えて手を合わせる。
「あなたの親友のマリアンを妻にもらいました」
「とうとう人の妻になった。これからはこの人とともに生きる」
マリーさんが生きていたのは何百年も前のことらしいけど、もし生きていたらどういう顔をしたのかな。
「む?」
「どうかした?」
「あ、いや。生きているはずはないし、残留思念もないはずじゃが、マリーの声が聞こえた気がしての」
「何を言ってたの?」
「生涯独身だった私への当てつけか、と」
「前から話を聞いている限りは、けっこう面白い人だったんだね」
「面白いというか何というか、内容は真っ当なはずじゃが、マリーが言うとズレて聞こえるのが面白かったのう」
《ねえ、あまりの言い方じゃない?》
「「⁉」」
《なんで驚くのよ。聞こえてて言ってたんじゃないの?》
「いえ、普通に思い出話をしていただけですが……。マリーさんですよね?」
《そうよ。なぜかここに引っ張り戻されたみたいだけど》
「おそらくですが、今は墓石に宿っている感じなんでしょうね」
《え? これ墓石なの? 真下以外は見えるんだけど、体が動かないのよ。ここは山の上? 眺めはいいわね》
「なるほど。ちょっと調べてみますね」
【名前:[マリー]】
【種族:[石]】
【年齢:[〇]】
「種族が[石]になってますね。石って種族なんだ……」
《石?》
「とりあえず今はこの墓石が本体というか、体になっているようです」
《あっ、ちょっと。あまり撫で回さないでよ……》
「あ、すみません。感覚があるんですか……。ところで、どうします? ここから移動しますか?」
《そうねえ、ここに取り残されてもねえ……。持って行けるなら持って行ってもらえる?》
「じゃあそうしましょう。今後どうするかは後で考えるとして。ところで、マリアンも話したら?」
「お、おお、そうじゃ。固まっておったわ。マ、マリー、久しぶりじゃ。元気にしとった……わけではないのう。それにしても、どうしたのじゃ?」
《よく分からないんだけどね。ついさっき、目が覚めたというか覚まされたというか。あなたたちの声が聞こえたと思ったら、視界が開けた感じね》
「まあ、また話ができるようになって嬉しぞ。お前様、とりあえず連れて帰るかのう」
「じゃあ、まずはマリーさんを引っこ抜かないとね。よっ……」
《ひゃっ! 何これ?》
「[魔力手]というものです。魔力を手のようにして物を掴みます」
《くすぐったいくすぐったい》
「少し我慢してください。よっ……。あれ、引っかかってる?」
見た目は僕の膝くらいまでの墓石だったけど、抜けないように土台部分があったので抜くのに手間がかかった。見た目はアルファベットのTをひっくり返した形だ。
「置くだけでは転がり落ちる可能性もあったから、簡単には抜けぬようにしておいたのじゃ」
「それでこんな形なのか」
《あー、くすぐったかった。拷問かと思ったわ》
「そう言えば、気が狂うまでくすぐり続けるという拷問がありましたね」
《こんな時に思い出さないでよ》
「拷問って口にしたのはマリーさんでしょ」
「気が合うようじゃのう」
◆ ◆ ◆
「おはか?」
「立派な石です。なかなか見たことがないですよ?」
「いい大理石」
「これがマリアンの親友のマリーさんだよ」
《初めまして。マリアンの友人のマリーです》
「「「「⁉」」」」
「ビックリするじゃろうが、みな、よろしく頼む」
いきなり墓石から[念話]で話しかけられたら誰だってビックリする。使用人たちに伝えるのはどうしようかな。マリーさんは念話でしかこちらに言葉を伝えられないから、使用人たちは理解できないんだよね。墓石を見せられても困るだろうし。
高さ一メートルちょっとの墓石を置いてみんなに紹介する。日本の墓石ような四角柱じゃなくて、アメリカやヨーロッパでよく見るような幅があって薄い墓石。それに土台が付いているので、昔ながらの喫茶店にある卓上メニューのような形をしている。
「先輩、それでマリーさんはアントワネットさんですか? それとも母親のマリア・テレジアさんの方ですか?」
「気になるのはそこ? どうなんですか、マリーさん?」
《えーっと、アントワネット……って、あの王妃様? ひょっとしてマリー・アントワネットかその母親かってこと?》
「はい。もしくは娘のマリー・テレーズか」
《そんなわけないでしょ。パリ生まれだけど、王妃様を遠目に見たことがあるくらいよ。その頃から仕立てをしてたのよ》
「そうなんですか……」
《そこでしょげられても。あたしが悪いみたいじゃない》
「それで、マリーさんにはこの屋敷にいてもらうつもりなんだけど、このままでは動けないんだよね。それでどうしようかと思ってるんだけど、何かいい案はない?」
「やはりゴーレムでは? ケネスも作りたそうですし」
「ホムンクルスはどうでしょうか~」
「いや、ゴーレムは細かな作業は無理だろうし、ホムンクルスは作り方をしらないって」
「旦那様が自由に動ける台車を作るのはどうでしょうか?」
「あなたの住んでいた世界になら便利なものがありそうですけど」
「電動車椅子のようなものか。[念話]で操作できるようにできるかなあ」
[念話]はあくまで意思疎通だからね。[魔力糸][魔力紐][魔力手]あたりが使えるなら自分で動かせるんだけど。うーん……。
「ご主人様、私がマリーさんの体を作りましょうか?」
「ええ? 作れるの?」
「はい。上級管理者の力ですので、ご主人様にはまだ無理だと思います。私がカロリッタを作ったのと同じ要領ですね」
「あっそうか。その時は一から作ったんだっけ?」
「はい。普通と少し違うのは、体を作って記憶を移し替えるのではなく、作った体に意識を持った物を埋め込む形になることです」
「でもこのサイズは無理じゃない?」
「そのままでは無理ですので、削って小さくする必要はありますね」
《え? あたし削られるの?》
「これ全部は必要ないでしょう。意識があるのは……このあたりですね。ではここだけにしましょう。えいっ」
ボリッ!
《ぎゃあーーーー! 折れた折れた! 痛……くはないけどなんか変! 何この感覚?》
「はい、もう少し力を抜いてくださいね。すぐに終わりますからね」
《うひゃっ! 痒い! くすぐったい! 早く終わらせてーーー!》
「体内で動かないように、少し縦長にしましょうか」
《……》
反応がなくなったけど大丈夫?
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