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第三章 第三部
犯人特定
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カローラ経由で調査を依頼していた結果が戻ってきた。この国の様々な場所に管理者が手を加えた件についてだ。
「詳細な調査は終わっていないようですが、第一弾の報告書を見る限りでは、やっぱり限りなく黒に近い黒でしたね」
「それはもう黒じゃないの?」
「色として完全な黒というのは存在しませんが、とりあえずブラックなんとかという塗料よりは黒いです」
カローラが自分の代行を任せているコンラートさんは、彼女が一番信用し信頼している人らしい。
信用と信頼って似ているけど微妙に違う。信用は信じて用いる。つまり過去の実績を元に重用すること。信頼は信じて頼る。つまりこの人は大丈夫だろうと人柄などを基準に頼ること。コンラートさんはその両方だそうだ。
コンラートさんは働き盛りバリバリといった風貌の壮年の男性だらしい。普通は生まれ変わって管理者になるから、若い外見を選ぶ人が多いそうだけど、「後進を育てるのが我が職務」と言って、優しくも厳しい上司らしい年齢を選んだんだそうだ。
「この惑星を研究対象として調査していたのは、私が中級管理者をしていた時の上司です。しばらく見ないと思っていましたが、少し前に処分されていたそうです」
「処分って?」
「いわゆる懲戒処分です。問題を起こした者は、軽度なものなら一定期間の職務停止、あるいは降格などで済みます。ですが倫理的にまずい問題を起こしたり、何かしらの問題行動を繰り返すようなら、強制的に転生させられます」
「強制的に転生ってことなら、もうどこかで別人に生まれ変わっているってこと?」
「はい。調書をチェックしてもらったところ、すでに二〇〇年ほど前に転生を済ませています。管理者としての記憶は残りません。【特徴】に何かしらの記録が残るはずですから、二度と管理者にはなれないと思います」
リゼッタのようなうっかりミスは仕方ないけど、意図的に何かをした場合は人や動物ではなく、虫や植物などに転生させられるらしい。
「人の成長を調べるという理由で、いくつかの惑星に手を加えていたそうです。ここもその一つですね」
「人の成長って、あの男性が生まれにくくなる地域とか?」
四つの村の全員がすべてこっちに移住して、とりあえず落ち着いて暮らしている。女性たちはまだ男性が苦手な人が多いけど、一部は無事にお相手を見つけて結婚したそうだ。
「それもそうですが、動物に知恵を与えれば獣人になれるのか、というのもあったようです」
「動物に知恵ねえ。それじゃ、パルニ公爵領の牧場にあったのもやっぱりそう?」
「おそらくそうでしょう。人間と獣人という非常に似通った種族がどのようにして誕生したのか、人間が獣の特徴を得るようになったのか、それとも獣が人間としての特徴を得るようになったのか、誕生の瞬間を自分の目で確認したかった、とあります」
マッドサイエンティスト系かな。できればお近付きになりたくないような。
「そういうのって禁忌じゃないの?」
「もちろん禁忌です。そもそも獣人は人間と獣から生まれたわけではなく、最初からそのような種族です。ソプラノたちがどれだけ頭が良くなっても、馬であることには変わりがありません。喉や口の構造上、喋ることはできませんからね」
「仮にソプラノが二本足で立って歩き始めて、もし言葉を喋ったとしたら扱いはどうなるの?」
「亜人でしょうね。手足と顔、そこが基準ですから」
境目がよく分からない。境目について気にするのは、前にも言われたように他の世界を知っているからなんだけどね。仮に顔は人間と同じで、手足が馬だったら扱いはどちらになるのか……。まあいいか。
「それなら、パルニ公爵領の馬の頭が良くなったり、大森林の魔獣の数が異常だったり、ナルヴァ町のあたりの麦がよく育ったりするのは、その人が原因? まだ見ていないけど、移民たちの元集落とか」
「その可能性が高いです。ちょうど現地にいるわけですから、どこをどう弄ったのかが分かるところは少しずつ直しましょう」
「麦がよく育つのも直した方がいい?」
「いえ、害になりそうなものだけでかまいません。程度にもよりますが、人の生活の向上に役立つものならそのままでもいいと思います」
「了解」
元々がその土地特有のものなら下手に触らない方がいい。でも勝手に手を加えられたものなら、適度に修正をする。それも管理者の仕事。害にならないものならそのままでもOK。処分された管理者に悪意があったのかどうかは分からな——ん?
「管理者って、性格重視で選ばれるんじゃなかったっけ?」
「もちろんそうです。ただひたすら世界の管理のために生きるわけですし、最初から『ヒャッハー!』ではどれだけ有能でも採用されません」
「じゃあ、後からそうなったってこと?」
「そうですね。少なくとも最初は普通だったと思いますよ。新人の頃は上司が見ていていますから。指導の意味もありますが、多少は監視の意味合いもありますね」
「変なことをするつもりはないけど、睨まれないように注意するよ」
◆ ◆ ◆
さて、あの移民たちが住んでいた集落に来ている。集落の入り口だったところには『ユーヴィ市に引っ越しました』と書かれている。今はもぬけの殻になっているので見るからに寒々しい。
ふんふん。ステータスを調べるのと同じ要領で村の中を調べていくと、村の敷地のほぼ全体に手を加えた形跡があり、あからさまに悪意のある空間になっていた。簡単に言うと、子供ができる確率がほぼゼロになっている。十面ダイスを二つ振って、どちらも〇が出れば当たり。外れると一年間は絶対に子供ができない……って腹が立ったからすぐに消した。
他には男性の精力が落ちて女性の精力が上がる、その逆になる、もしくは両方がが上がる、その逆に両方が下がる、これらがランダムになっていたようだ。
本当にろくでもない設定をしたなあ。どうせ環境を弄るのなら、ナルヴァ町のように、麦が異様にたくさん収穫できるようにしたらいいのに。とりあえずこの空間は通常に戻しておく。ここに住んでいた人たちが戻ってくることはないと思うけどね。でも、もしまたこの土地に誰かが村を作る可能性がないとは言えないから、余計なものは消すに限る。ここ以外にも三つの村があるから、同じように空間を整えていく。
正直なところ、この世界にやって来て知ったろくでもないことをする人間って、盗賊たちを除けば前のパルツィ子爵くらいしかいなかったけど、もう一人いたか。もう転生しているから二度と会うこともなさそうだけど。
しかし、僕は準管理者という立場だから、こうやってちまちまと一つずつ直していくしかないけど、立場が上になればもう少し作業も楽になるのかな? ぱぱっと村一つ分くらいまとめて直せれば楽になるんだけど、そうすると弄りすぎて危険なことになる可能性もあるのか。
あれはリゼッタが言ったのかカロリッタが言ったのか忘れたけど、下級管理者は人手が足りないから、隠れてこっそり悪いことをすることもできる。でも必ずバレることになると。ただ、そのいずれがあまりにも長い気がする。
カローラがどれだけ管理者をしているのかは聞いたことがないけど、今回の犯人は少し前に処分されていたと。悪いことをしたのはそれよりも前なわけだし、かなり前から男が生まれにくくなったそうだから、水玉を徐々に増やしたのかな? もしかしたら最初に手を出したのは二〇〇年前どころじゃないんだろうね。
馬の頭が良くなる件はそのままにしておいた。パルニ公爵領の件ね。公爵領のすべての農場にあったわけじゃないけど、馬に知識を与える場所がそこかしこにあった。先日馬を買った牧場もそうだけど、一定時間そこにずっと立ち続けているとステータスに影響するというものだった。ほとんどが一分。つまり一分その場に立ち続けていると知恵や知識が向上する、あるいは[言語理解]が付く。
知恵と知識はステータス上は別になっている。知恵は根本的な頭の良さ、知識は知っている情報を表す。ソクラテスは古代ギリシアの哲学者だけど、どれだけ頭が良くてもテレビの存在は知らなかったはず。
よし、これで終わり。ついでだから、他の町や村にもおかしなところがないかどうかをチェックしてから戻ろうかな。
「詳細な調査は終わっていないようですが、第一弾の報告書を見る限りでは、やっぱり限りなく黒に近い黒でしたね」
「それはもう黒じゃないの?」
「色として完全な黒というのは存在しませんが、とりあえずブラックなんとかという塗料よりは黒いです」
カローラが自分の代行を任せているコンラートさんは、彼女が一番信用し信頼している人らしい。
信用と信頼って似ているけど微妙に違う。信用は信じて用いる。つまり過去の実績を元に重用すること。信頼は信じて頼る。つまりこの人は大丈夫だろうと人柄などを基準に頼ること。コンラートさんはその両方だそうだ。
コンラートさんは働き盛りバリバリといった風貌の壮年の男性だらしい。普通は生まれ変わって管理者になるから、若い外見を選ぶ人が多いそうだけど、「後進を育てるのが我が職務」と言って、優しくも厳しい上司らしい年齢を選んだんだそうだ。
「この惑星を研究対象として調査していたのは、私が中級管理者をしていた時の上司です。しばらく見ないと思っていましたが、少し前に処分されていたそうです」
「処分って?」
「いわゆる懲戒処分です。問題を起こした者は、軽度なものなら一定期間の職務停止、あるいは降格などで済みます。ですが倫理的にまずい問題を起こしたり、何かしらの問題行動を繰り返すようなら、強制的に転生させられます」
「強制的に転生ってことなら、もうどこかで別人に生まれ変わっているってこと?」
「はい。調書をチェックしてもらったところ、すでに二〇〇年ほど前に転生を済ませています。管理者としての記憶は残りません。【特徴】に何かしらの記録が残るはずですから、二度と管理者にはなれないと思います」
リゼッタのようなうっかりミスは仕方ないけど、意図的に何かをした場合は人や動物ではなく、虫や植物などに転生させられるらしい。
「人の成長を調べるという理由で、いくつかの惑星に手を加えていたそうです。ここもその一つですね」
「人の成長って、あの男性が生まれにくくなる地域とか?」
四つの村の全員がすべてこっちに移住して、とりあえず落ち着いて暮らしている。女性たちはまだ男性が苦手な人が多いけど、一部は無事にお相手を見つけて結婚したそうだ。
「それもそうですが、動物に知恵を与えれば獣人になれるのか、というのもあったようです」
「動物に知恵ねえ。それじゃ、パルニ公爵領の牧場にあったのもやっぱりそう?」
「おそらくそうでしょう。人間と獣人という非常に似通った種族がどのようにして誕生したのか、人間が獣の特徴を得るようになったのか、それとも獣が人間としての特徴を得るようになったのか、誕生の瞬間を自分の目で確認したかった、とあります」
マッドサイエンティスト系かな。できればお近付きになりたくないような。
「そういうのって禁忌じゃないの?」
「もちろん禁忌です。そもそも獣人は人間と獣から生まれたわけではなく、最初からそのような種族です。ソプラノたちがどれだけ頭が良くなっても、馬であることには変わりがありません。喉や口の構造上、喋ることはできませんからね」
「仮にソプラノが二本足で立って歩き始めて、もし言葉を喋ったとしたら扱いはどうなるの?」
「亜人でしょうね。手足と顔、そこが基準ですから」
境目がよく分からない。境目について気にするのは、前にも言われたように他の世界を知っているからなんだけどね。仮に顔は人間と同じで、手足が馬だったら扱いはどちらになるのか……。まあいいか。
「それなら、パルニ公爵領の馬の頭が良くなったり、大森林の魔獣の数が異常だったり、ナルヴァ町のあたりの麦がよく育ったりするのは、その人が原因? まだ見ていないけど、移民たちの元集落とか」
「その可能性が高いです。ちょうど現地にいるわけですから、どこをどう弄ったのかが分かるところは少しずつ直しましょう」
「麦がよく育つのも直した方がいい?」
「いえ、害になりそうなものだけでかまいません。程度にもよりますが、人の生活の向上に役立つものならそのままでもいいと思います」
「了解」
元々がその土地特有のものなら下手に触らない方がいい。でも勝手に手を加えられたものなら、適度に修正をする。それも管理者の仕事。害にならないものならそのままでもOK。処分された管理者に悪意があったのかどうかは分からな——ん?
「管理者って、性格重視で選ばれるんじゃなかったっけ?」
「もちろんそうです。ただひたすら世界の管理のために生きるわけですし、最初から『ヒャッハー!』ではどれだけ有能でも採用されません」
「じゃあ、後からそうなったってこと?」
「そうですね。少なくとも最初は普通だったと思いますよ。新人の頃は上司が見ていていますから。指導の意味もありますが、多少は監視の意味合いもありますね」
「変なことをするつもりはないけど、睨まれないように注意するよ」
◆ ◆ ◆
さて、あの移民たちが住んでいた集落に来ている。集落の入り口だったところには『ユーヴィ市に引っ越しました』と書かれている。今はもぬけの殻になっているので見るからに寒々しい。
ふんふん。ステータスを調べるのと同じ要領で村の中を調べていくと、村の敷地のほぼ全体に手を加えた形跡があり、あからさまに悪意のある空間になっていた。簡単に言うと、子供ができる確率がほぼゼロになっている。十面ダイスを二つ振って、どちらも〇が出れば当たり。外れると一年間は絶対に子供ができない……って腹が立ったからすぐに消した。
他には男性の精力が落ちて女性の精力が上がる、その逆になる、もしくは両方がが上がる、その逆に両方が下がる、これらがランダムになっていたようだ。
本当にろくでもない設定をしたなあ。どうせ環境を弄るのなら、ナルヴァ町のように、麦が異様にたくさん収穫できるようにしたらいいのに。とりあえずこの空間は通常に戻しておく。ここに住んでいた人たちが戻ってくることはないと思うけどね。でも、もしまたこの土地に誰かが村を作る可能性がないとは言えないから、余計なものは消すに限る。ここ以外にも三つの村があるから、同じように空間を整えていく。
正直なところ、この世界にやって来て知ったろくでもないことをする人間って、盗賊たちを除けば前のパルツィ子爵くらいしかいなかったけど、もう一人いたか。もう転生しているから二度と会うこともなさそうだけど。
しかし、僕は準管理者という立場だから、こうやってちまちまと一つずつ直していくしかないけど、立場が上になればもう少し作業も楽になるのかな? ぱぱっと村一つ分くらいまとめて直せれば楽になるんだけど、そうすると弄りすぎて危険なことになる可能性もあるのか。
あれはリゼッタが言ったのかカロリッタが言ったのか忘れたけど、下級管理者は人手が足りないから、隠れてこっそり悪いことをすることもできる。でも必ずバレることになると。ただ、そのいずれがあまりにも長い気がする。
カローラがどれだけ管理者をしているのかは聞いたことがないけど、今回の犯人は少し前に処分されていたと。悪いことをしたのはそれよりも前なわけだし、かなり前から男が生まれにくくなったそうだから、水玉を徐々に増やしたのかな? もしかしたら最初に手を出したのは二〇〇年前どころじゃないんだろうね。
馬の頭が良くなる件はそのままにしておいた。パルニ公爵領の件ね。公爵領のすべての農場にあったわけじゃないけど、馬に知識を与える場所がそこかしこにあった。先日馬を買った牧場もそうだけど、一定時間そこにずっと立ち続けているとステータスに影響するというものだった。ほとんどが一分。つまり一分その場に立ち続けていると知恵や知識が向上する、あるいは[言語理解]が付く。
知恵と知識はステータス上は別になっている。知恵は根本的な頭の良さ、知識は知っている情報を表す。ソクラテスは古代ギリシアの哲学者だけど、どれだけ頭が良くてもテレビの存在は知らなかったはず。
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