226 / 278
第四章 第一部
二年目が始まる
しおりを挟む
年が明けた。そして領主として二年目が始まる。この一年数か月この町にいて、まあ色々とやってきた。基本的にはこの国の経済を壊さない程度にこの領地を豊かにして領民を増やす。そのための公共事業を今年も続ける。
公共事業って、日本では税金の無駄遣いと思われているけど、意外に重要だよ。身近なところだと、横断歩道の白線を引いたりとか。税金が使われるからやり玉に挙げられることも多いけど、税金が投入されなければ潰れる会社は多いからね。そうなると失業者が増える。何事もほどほどが重要。
とりあえず年末年始の休みが終われば南街道の工事に入る。去年のうちに街道を通す場所には杭を打っておいたから、職員と作業員たちに任せておけば大丈夫。街道工事は三か所目だから勝手も分かっているだろう。転移ドアやチェーンソー、料理、お酒などもあらかじめ用意してある。
街道の工事をしながら、もう一つ進めなければならないのが新しい町の建設。それも複数。北街道が長すぎるので、何かあった時が大変。だから宿場町を二つ作りたい。南街道はまだ着工していないけど、中間点に一つ作る。ここまではほぼ決まっている。
そしてユーヴィ市とキヴィオ市の間にも、やはり町が一つ必要ではないかという話が出ている。五日から一週間くらいだけど、何もないというのを不安に思う人は多いらしい。安全面じゃなくて、もし食料や水が尽きたらとか、補給の面で。巡回兵の詰所はあるけど、それだけでは心細いらしい。
他に作る予定なのがナルヴァ町とソルディ町の間、ナルヴァ町とシラマエ町の間、そしてナルヴァ町とユーヴィ市の間、そしてユーヴィ市と旧キヴィオ市の間。ナルヴァ町の北東と南東と東に作ることになるけど、これは物流のため。初期のユーヴィ男爵領を、少し歪んでいるけど八角形にして真ん中に物流拠点を作りたい。ユーヴィ市には領都として頑張ってもらわなければいけないけど、機能が集中しすぎなんだよね。もう少し分散させたい。
とりあえず街道の途中に作るのは決まっている。ユーヴィ市よりも西の三か所はその後かな。急ぐ必要はないから、街道と宿場町が完成してからでいい。あまり一気に町の数を増やしても人口との兼ね合いがね。これまで八つだったのがさらに七つ増えることになる。さすがに倍近くになると町あたりの人口が減るから、色々と無理が出て来る。
領地の経営方針に関してはギルドがしっかりしているから、ほとんど任せっぱなしになると思う。新しいことを始める場合には指示を出すけど、基本的には任せるつもり。とりあえず最初の細工が上手く行くかどうかだけかな。
◆ ◆ ◆
「パパ、おはよう。今年もよろしくお願いします」
「おはよう、ミシェル。今年もよろしくね」
部屋を出たところにミシェルが僕に日本風の新年の挨拶をした。僕が教えたからね。この国で一般的なのは「今年はいい年にしたいですね」という挨拶。「Happy New Year!」を日本語にしたような挨拶だ。
ミシェルは今年も初日から元気がいい。ずいぶんとお姉さんらしくなった。元々かなり元気な子だったけど、どちらかと言えば物分かりが良すぎる子供だった。母子家庭だったから、わがままを言わずに育ってしまったから。それがカリンとリーセと遊ぶようになってからは明るくなった。そしてクリスが生まれ、フォレスタがやって来てからは、姉としての自覚が出たのか、口調も子供っぽさが抜けてきたね……おっと……と思った瞬間に飛び付いてきた。
「今年初めてパパに抱きついたのは私」
「お姉さんになったんじゃなかったの?」
「ここにはいないからいいの」
見られていなければいいらしい。
今年の目標としては、もっと町を離れるというのがある。年明け早々いきなり領主の仕事を放棄するわけじゃないよ。この領地についての責任は当然僕にあるし、ここを捨てて別の場所に行こうなんて思わない。でもずっと同じ場所にいると疲れない? 僕はそういう傾向があった。仕事をして貯めたお金でたまに休みを取って遠いところに出かける。もちろん一週間も二週間も取れたわけじゃないから、たまに週末に有休を付けてせいぜい四日くらい。それで国内の山を歩いたり、海外に出かけて現地の文化に触れたり、せいぜいそれくらいだけど、それがあるから頑張れた。だから今年はある程度は気を抜く。
そうは言っても妻も子供もたくさんいるわけで、ぶっ通しで帰ってこないなんてことは考えていないから、せいぜい一泊か二泊。それからまたユーヴィ市に戻って仕事を片付けたら、またその先へ進む。とりあえずは交互でやっていく感じかな。
リゼッタは僕の性格をよく分かっているから、このことについては何も言わない。むしろ「ケネスは自由に動いた方が人助けをすることも増えるでしょうし、妻になる女性も現れるでしょう。むしろユーヴィ市にずっといれば増える相手も増えません。どんどん外に出てどんどん連れて帰ってくるのがいいと思います」と言ってフェナが首を痛めるんじゃないかと思うほど頭を縦に振っていた。
それで今年はクルディ王国に向かうことになった。当初の予定ではヴァリガ市からさらに東へ進むつもりだった。でも言い方は悪いけど、東には行く必要がない。それなら南に何があるかと言えば、ジェナの実家がある。
これまで家族がいる場合は挨拶に行っている。マイカ、セラ、キラ、マノン、エリー、そしてまだ妻じゃないけどエルケ。セラは両親はいないけど、ゲンナジー司祭に挨拶をしている。リゼッタとカローラは管理者になった時点で一度生まれ変わっているし、カロリッタは作られた存在だし、マリアンはどうやって誕生したのかさえ分かっていないので親に会うのは無理だね。
結婚というのは当人同士がしようと思えば特に何も必要ない。領主や教会などの公的な場所に届け出ればそれでOK。冒険者の場合は届け出さえしない人がほとんど。それで特に問題ないからね。
早い話が相続などで揉めたりしないようにということなので、届け出は義務ではない。そもそも戸籍がきちんと管理されているわけでもないから。妻や夫がいるのに他の町へ行って偽名で別の相手と結婚することも可能なんだよ。
離婚だって同じ。別に形式の決まった離婚届があるわけではなく、こうこうこういう理由で離婚しますという内容の書類にサインを入れて出すだけ。文字が書けなければ代筆でもかまわない。これだって無理して出す必要はない。言ってしまえば区切りとして提出するだけ。
貴族だって領主が正妻を迎え入れる時くらいは結婚式をするけど、側室は何もないことがほとんど。それに僕は領主になる前に結婚したことになっているから、式らしい式はしていない。そもそもなし崩し的に恋人になって、いつの間にか妻になっていたからね。
この国は町から町への移動が大変。だから町を出たら二度と戻らないことも多く、家を出た子供がどうなっているかを知らないまま亡くなることが多い。でも僕としては報告をするべき人がいるなら報告するのが筋だと思うので、ジェナの実家に向かうことになる。
それにクルディ王国にはうちがお世話になっているサトウキビ、バナナ、パイナップル、カカオ、ココナッツ、パラ(ゴムの木)、コーヒーなど、気になる植物は多い。亜熱帯から熱帯というイメージがあり、一度現地を見ておきたいと思っている。
「ケネス、後ろの髪が浮いていますよ」
「おっと」
「あなた様もそういう時があるのですね」
「年中気を張っているわけじゃないからね」
食堂に入ったところには、クリスを抱いたリゼッタとフォレスタを抱いたフロレスタがいた。
「そろそろみんなが集まってくるかな?」
「でしょうね。飲んでいた人はほとんどいませんので、時間になればきちんと起きるでしょう」
「あ、旦那様、おはようございます」
エリーが三つ子を……両脇に一人ずつ抱え、もう一人を頭にしがみ付かせながらやって来た。頭に乗っているのはケヴィンか。男の子だからか元気なんだよね。
「相変わらず元気だね。とりあえずケヴィンだけでも受け取ろうか」
「ありがとうございます。もう元気すぎて」
エリーの頭にしがみ付いたケヴィンを剥がして抱く。クリスもそうだったけど、僕のステータスをある程度引き継いでいるためか、すぐに首がすわったし、しがみ付く力も強い。
「ああ、マノン。おはよう」
「あら~、みなさん、おはようございます。どの子供も元気ですねぇ」
マノンも抱き上げるのではなく小脇に抱えた感じでカレルとマルレインを連れていた。
「みんながいないと屋敷が広すぎる感じがするね」
年末の年越祭の間、使用人たちには、もし行きたい場所があるなら連れて行くと言った。多くはユーヴィ市か周辺の生まれだけど、フェナは子供も孫もひ孫も旧キヴィオ市にいるそうなので、そちらに連れて行き、シーラはコトカ男爵領にあるロックスという町へ連れて行った。
マノンとエリーはそれぞれ子供と一緒に実家に一泊することになった。ご両親も孫の顔を見たいだろうからね。ついでにヴァリガ市ではアレイダと久しぶりに会ったけど、かなりお腹が大きくなっていた。二月頭くらいの予定らしい。カローラやセラと同じくらいかも。
とりあえず年末年始は使用人たちはお休み。だから僕も遠慮なく子供たちの面倒が見られる。今日は使用人棟の方にいると思うけど、明日になればまたみんなここで揃うことになるし、そうすると子供の世話は乳母たちの仕事になるからね。そうすると乳母たちが食事を取っている間くらいしか僕は抱き上げてあやすことができない。今のうちにしっかりとスキンシップを取っておこう。
「ケネス、クリスが肩に乗りたがっていますが、いいですか?」
「いいよ。落とさないでね」
クリスは僕の肩に跨がって僕の頭を抱え込むのが好きらしい。そうすると前が見づらいんだけど、飽きるまではそのようにさせている。
「旦那様、ケヴィンもそうですが、どうして頭にしがみ付こうとするのでしょうか?」
「頭ねえ。何か特徴にでもあるのかな……ああ、あるね」
「何か見えましたか?」
「サランと同じのがあるよ」
《小官と同じでありますか?》
「そう。[頭がいい]が付いてる。これって元々頭の回転が速いって意味だと思うんだけど、絶対にダブルミーニングになってるよね」
「どうして[頭が好き]ではいけなかったのでしょうか?」
「さあ、そこまでは」
スキルや特徴には疑問も多いけど、誰か管理しているわけでもなさそうなので、直してもらうわけにもいかない。もし命名担当の人と会えるようなら一度聞いてみたいね。
公共事業って、日本では税金の無駄遣いと思われているけど、意外に重要だよ。身近なところだと、横断歩道の白線を引いたりとか。税金が使われるからやり玉に挙げられることも多いけど、税金が投入されなければ潰れる会社は多いからね。そうなると失業者が増える。何事もほどほどが重要。
とりあえず年末年始の休みが終われば南街道の工事に入る。去年のうちに街道を通す場所には杭を打っておいたから、職員と作業員たちに任せておけば大丈夫。街道工事は三か所目だから勝手も分かっているだろう。転移ドアやチェーンソー、料理、お酒などもあらかじめ用意してある。
街道の工事をしながら、もう一つ進めなければならないのが新しい町の建設。それも複数。北街道が長すぎるので、何かあった時が大変。だから宿場町を二つ作りたい。南街道はまだ着工していないけど、中間点に一つ作る。ここまではほぼ決まっている。
そしてユーヴィ市とキヴィオ市の間にも、やはり町が一つ必要ではないかという話が出ている。五日から一週間くらいだけど、何もないというのを不安に思う人は多いらしい。安全面じゃなくて、もし食料や水が尽きたらとか、補給の面で。巡回兵の詰所はあるけど、それだけでは心細いらしい。
他に作る予定なのがナルヴァ町とソルディ町の間、ナルヴァ町とシラマエ町の間、そしてナルヴァ町とユーヴィ市の間、そしてユーヴィ市と旧キヴィオ市の間。ナルヴァ町の北東と南東と東に作ることになるけど、これは物流のため。初期のユーヴィ男爵領を、少し歪んでいるけど八角形にして真ん中に物流拠点を作りたい。ユーヴィ市には領都として頑張ってもらわなければいけないけど、機能が集中しすぎなんだよね。もう少し分散させたい。
とりあえず街道の途中に作るのは決まっている。ユーヴィ市よりも西の三か所はその後かな。急ぐ必要はないから、街道と宿場町が完成してからでいい。あまり一気に町の数を増やしても人口との兼ね合いがね。これまで八つだったのがさらに七つ増えることになる。さすがに倍近くになると町あたりの人口が減るから、色々と無理が出て来る。
領地の経営方針に関してはギルドがしっかりしているから、ほとんど任せっぱなしになると思う。新しいことを始める場合には指示を出すけど、基本的には任せるつもり。とりあえず最初の細工が上手く行くかどうかだけかな。
◆ ◆ ◆
「パパ、おはよう。今年もよろしくお願いします」
「おはよう、ミシェル。今年もよろしくね」
部屋を出たところにミシェルが僕に日本風の新年の挨拶をした。僕が教えたからね。この国で一般的なのは「今年はいい年にしたいですね」という挨拶。「Happy New Year!」を日本語にしたような挨拶だ。
ミシェルは今年も初日から元気がいい。ずいぶんとお姉さんらしくなった。元々かなり元気な子だったけど、どちらかと言えば物分かりが良すぎる子供だった。母子家庭だったから、わがままを言わずに育ってしまったから。それがカリンとリーセと遊ぶようになってからは明るくなった。そしてクリスが生まれ、フォレスタがやって来てからは、姉としての自覚が出たのか、口調も子供っぽさが抜けてきたね……おっと……と思った瞬間に飛び付いてきた。
「今年初めてパパに抱きついたのは私」
「お姉さんになったんじゃなかったの?」
「ここにはいないからいいの」
見られていなければいいらしい。
今年の目標としては、もっと町を離れるというのがある。年明け早々いきなり領主の仕事を放棄するわけじゃないよ。この領地についての責任は当然僕にあるし、ここを捨てて別の場所に行こうなんて思わない。でもずっと同じ場所にいると疲れない? 僕はそういう傾向があった。仕事をして貯めたお金でたまに休みを取って遠いところに出かける。もちろん一週間も二週間も取れたわけじゃないから、たまに週末に有休を付けてせいぜい四日くらい。それで国内の山を歩いたり、海外に出かけて現地の文化に触れたり、せいぜいそれくらいだけど、それがあるから頑張れた。だから今年はある程度は気を抜く。
そうは言っても妻も子供もたくさんいるわけで、ぶっ通しで帰ってこないなんてことは考えていないから、せいぜい一泊か二泊。それからまたユーヴィ市に戻って仕事を片付けたら、またその先へ進む。とりあえずは交互でやっていく感じかな。
リゼッタは僕の性格をよく分かっているから、このことについては何も言わない。むしろ「ケネスは自由に動いた方が人助けをすることも増えるでしょうし、妻になる女性も現れるでしょう。むしろユーヴィ市にずっといれば増える相手も増えません。どんどん外に出てどんどん連れて帰ってくるのがいいと思います」と言ってフェナが首を痛めるんじゃないかと思うほど頭を縦に振っていた。
それで今年はクルディ王国に向かうことになった。当初の予定ではヴァリガ市からさらに東へ進むつもりだった。でも言い方は悪いけど、東には行く必要がない。それなら南に何があるかと言えば、ジェナの実家がある。
これまで家族がいる場合は挨拶に行っている。マイカ、セラ、キラ、マノン、エリー、そしてまだ妻じゃないけどエルケ。セラは両親はいないけど、ゲンナジー司祭に挨拶をしている。リゼッタとカローラは管理者になった時点で一度生まれ変わっているし、カロリッタは作られた存在だし、マリアンはどうやって誕生したのかさえ分かっていないので親に会うのは無理だね。
結婚というのは当人同士がしようと思えば特に何も必要ない。領主や教会などの公的な場所に届け出ればそれでOK。冒険者の場合は届け出さえしない人がほとんど。それで特に問題ないからね。
早い話が相続などで揉めたりしないようにということなので、届け出は義務ではない。そもそも戸籍がきちんと管理されているわけでもないから。妻や夫がいるのに他の町へ行って偽名で別の相手と結婚することも可能なんだよ。
離婚だって同じ。別に形式の決まった離婚届があるわけではなく、こうこうこういう理由で離婚しますという内容の書類にサインを入れて出すだけ。文字が書けなければ代筆でもかまわない。これだって無理して出す必要はない。言ってしまえば区切りとして提出するだけ。
貴族だって領主が正妻を迎え入れる時くらいは結婚式をするけど、側室は何もないことがほとんど。それに僕は領主になる前に結婚したことになっているから、式らしい式はしていない。そもそもなし崩し的に恋人になって、いつの間にか妻になっていたからね。
この国は町から町への移動が大変。だから町を出たら二度と戻らないことも多く、家を出た子供がどうなっているかを知らないまま亡くなることが多い。でも僕としては報告をするべき人がいるなら報告するのが筋だと思うので、ジェナの実家に向かうことになる。
それにクルディ王国にはうちがお世話になっているサトウキビ、バナナ、パイナップル、カカオ、ココナッツ、パラ(ゴムの木)、コーヒーなど、気になる植物は多い。亜熱帯から熱帯というイメージがあり、一度現地を見ておきたいと思っている。
「ケネス、後ろの髪が浮いていますよ」
「おっと」
「あなた様もそういう時があるのですね」
「年中気を張っているわけじゃないからね」
食堂に入ったところには、クリスを抱いたリゼッタとフォレスタを抱いたフロレスタがいた。
「そろそろみんなが集まってくるかな?」
「でしょうね。飲んでいた人はほとんどいませんので、時間になればきちんと起きるでしょう」
「あ、旦那様、おはようございます」
エリーが三つ子を……両脇に一人ずつ抱え、もう一人を頭にしがみ付かせながらやって来た。頭に乗っているのはケヴィンか。男の子だからか元気なんだよね。
「相変わらず元気だね。とりあえずケヴィンだけでも受け取ろうか」
「ありがとうございます。もう元気すぎて」
エリーの頭にしがみ付いたケヴィンを剥がして抱く。クリスもそうだったけど、僕のステータスをある程度引き継いでいるためか、すぐに首がすわったし、しがみ付く力も強い。
「ああ、マノン。おはよう」
「あら~、みなさん、おはようございます。どの子供も元気ですねぇ」
マノンも抱き上げるのではなく小脇に抱えた感じでカレルとマルレインを連れていた。
「みんながいないと屋敷が広すぎる感じがするね」
年末の年越祭の間、使用人たちには、もし行きたい場所があるなら連れて行くと言った。多くはユーヴィ市か周辺の生まれだけど、フェナは子供も孫もひ孫も旧キヴィオ市にいるそうなので、そちらに連れて行き、シーラはコトカ男爵領にあるロックスという町へ連れて行った。
マノンとエリーはそれぞれ子供と一緒に実家に一泊することになった。ご両親も孫の顔を見たいだろうからね。ついでにヴァリガ市ではアレイダと久しぶりに会ったけど、かなりお腹が大きくなっていた。二月頭くらいの予定らしい。カローラやセラと同じくらいかも。
とりあえず年末年始は使用人たちはお休み。だから僕も遠慮なく子供たちの面倒が見られる。今日は使用人棟の方にいると思うけど、明日になればまたみんなここで揃うことになるし、そうすると子供の世話は乳母たちの仕事になるからね。そうすると乳母たちが食事を取っている間くらいしか僕は抱き上げてあやすことができない。今のうちにしっかりとスキンシップを取っておこう。
「ケネス、クリスが肩に乗りたがっていますが、いいですか?」
「いいよ。落とさないでね」
クリスは僕の肩に跨がって僕の頭を抱え込むのが好きらしい。そうすると前が見づらいんだけど、飽きるまではそのようにさせている。
「旦那様、ケヴィンもそうですが、どうして頭にしがみ付こうとするのでしょうか?」
「頭ねえ。何か特徴にでもあるのかな……ああ、あるね」
「何か見えましたか?」
「サランと同じのがあるよ」
《小官と同じでありますか?》
「そう。[頭がいい]が付いてる。これって元々頭の回転が速いって意味だと思うんだけど、絶対にダブルミーニングになってるよね」
「どうして[頭が好き]ではいけなかったのでしょうか?」
「さあ、そこまでは」
スキルや特徴には疑問も多いけど、誰か管理しているわけでもなさそうなので、直してもらうわけにもいかない。もし命名担当の人と会えるようなら一度聞いてみたいね。
1
あなたにおすすめの小説
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
