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第三章 第三部
閑話:ある下級管理者の雑務
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みなさん、私のことを覚えていますか? 下級管理者のヴァウラです。はい、そうです。マイカさんの魂をカローラ様の元へと連れて帰った、あの時の管理者です。あれからは巡回担当者を外れ、主にカローラ様とコンラート様の専属となっています。
巡回担当者というのは、各惑星を回っておかしいところがないかをチェックする、ごく普通の下級管理者です。通常は一惑星あたり数名いますが、状況によっては自分一人と言うこともあります。先日リゼッタさんが問題行動を起こしましたが、あの時はたまたま地球という惑星には彼女しかいなく、誰もサポートできなかったのが原因です。
私はリゼッタさんの後に地球の担当をするようになりました。あれからすぐでしたが、先日マイカさんの魂をカローラ様のところに持っていったことが評価され、巡回担当者ではなく、カローラ様とコンラート様の直属の部下としてしばらくは待機することになりました。ちょっとだけ昇進したということになります。立場的には下級管理者のままですけど。
待機とは言え仕事はあります。何をしているのかと言えば、まずは地球に少女漫画を買いにいってマジックバッグに入れること。次に地球に海産物などを買いにいってマジックバッグに入れること。
はい、主に買い出し担当です。
別に嫌なわけではありません。むしろ誇りに思っています。個人的な用事を頼まれるということは、それだけ信用されているわけですから。寝ているのに起こされて「ビールとおつまみを買ってきてくれます?」と言われるのとはまったく違います。いましたねえ、そういう上司。管理者になる前の話ですけど。
公私混同と思われるかもしれませんが、そこまで逸脱したものでもないでしょう。買い出しは休みの日や帰りに済ませますから。それに場合によっては有休の消化もできますからね。なかなか使うことがないんですよね、年次有給休暇。年次って何だろうって思います。マイカさんのいた日本と違って、溜まり続けるんですよ、延々と。
それで最近は少女漫画だけでなく、それ以外のジャンルの漫画を買うことも増えました。半分は私の趣味です。いえ、趣味になったと言えばいいでしょうか。大きな会場にたくさんの人が集まるイベントで薄い本を買うこともあります。勉強になりますね。うほっ。
そしてカローラ様は溜まりに溜まった有休、それに産休と育休を合わせて、全部で一八〇〇年ほど休みを取って地上に降りました。手法は問題ありですが、書類は出ているので大丈夫でしょう。それにしても一八〇〇年って、どれだけの期間拗らせていたのか……。コンラート様が頑張って隠そうとしていましたが、すべて隠せるものではありませんからね。リゼッタさんのようにカローラ様を盲信する人も多いですが、ある程度一緒に仕事をすると分かります。あの人はダメです、色々と。
それにしても産休と育休って、男の影がまったくないと言われていたカローラ様にそんなことがあるはずがないと思っていたら、そのまさかですね。あっという間に妊娠されました。あの男性はすごいですね……って、あのマイカさんが会いたいと言っていた人と同じですね。ああ、妊娠薬を元にしたお酒があの国にはあるのですね。それでも相手がいないとどうにもなりませんが。
昼間からする話でもありませんが、妊娠薬とは男女それぞれを強制的に妊娠可能な状態にする薬で、一〇歳くらいになっていれば確実に子供ができます。エルフなどの長命種は一〇〇歳くらいにならないとなかなか妊娠しませんからね。そのような時によく使われます。それ以外にも、この人たちが使う必要はないでしょうが、絶対に妊娠しなくなる薬もあります。
私は現在コンラート様の直属の部下として、カローラ様がこの世界にいる間はこの惑星をチェックしているわけなのですが、たまに気になることがあります。
カローラ様のお相手というケネス様ですが、地上では準管理者という下っ端の立場で旅をしているようです。その彼がたまに空を見上げて口に出すのですよ。「管理者に睨まれないように注意するよ」と。それを聞いた瞬間、背筋が凍ります。最初のころはどれだけ意識を失って派手に漏らしたことか。一応言いますと、お聖水だけですよ。今でもうっかり気を抜くと股間が冷たくなります。
あの人が危険な人でないのは行動を見ていれば分かりますが、ステータス的には……あれは何ですか? 絶対にエルフではないですよね? ステータスの数字が完全に文字化けして、もう何が何やら分かりません。たくさんいる奥様たちも人外ですね。そもそも人以外もいるようですが。
我々の知っている限りでは、ステータスは項目ごとに数字四桁で表示されます。小数点以下もありますが、そこは非表示にしています。
表示できるのは〇〇〇〇から九九九九ですが、通常は〇〇〇一から〇三〇〇がほとんどで、〇五〇〇を超えるのは一握りの達人でしょうか。リゼッタさんは以前は下級管理者でしたので、素早さに八三八三という並外れた数字が出ています。運動が苦手なマイカさんも〇八〇二、小さなミシェルちゃんは一三一四となっています。マリアンさんは****、ケネス様は%■#$ですね。****は九九九九を超えたことを示していますが、%■#$はデータがおかしくなっていますね。下手にこの方に手を出したら惑星が割れそうです。パカッと。日本でそういうアニメがありましたね。場合によっては超危険人物と思われそうな人たちが和気藹々としているのを見ると、地上はよく分からないなと思います。
コンラート様から聞いたところではケネス様はカローラ様の初めてのお相手らしく、「あの方を逃せばもう二度とカローラ様には相手は現れないかもしれないからできるだけ希望は聞くようにする。死にたくなければお前も従え、いいな」と言っていました。この前もカローラ様から調査の依頼が来ていましたが、他の仕事を放ったらかしにして調べていたようですね。
その話を聞いた瞬間、「優しい暴君」というフレーズが頭に浮かびましたが、その直後にケネス様が私を見たような気がしまして、三日ぶりに股間が冷えました。もうおむつが必要でしょうか。なかなか地上に降りる機会はありませんが、もし降りることになれば、どのような顔をして挨拶をすればいいのか。「いつも(カローラ様が/おむつの)お世話になっています」とか?
巡回担当者というのは、各惑星を回っておかしいところがないかをチェックする、ごく普通の下級管理者です。通常は一惑星あたり数名いますが、状況によっては自分一人と言うこともあります。先日リゼッタさんが問題行動を起こしましたが、あの時はたまたま地球という惑星には彼女しかいなく、誰もサポートできなかったのが原因です。
私はリゼッタさんの後に地球の担当をするようになりました。あれからすぐでしたが、先日マイカさんの魂をカローラ様のところに持っていったことが評価され、巡回担当者ではなく、カローラ様とコンラート様の直属の部下としてしばらくは待機することになりました。ちょっとだけ昇進したということになります。立場的には下級管理者のままですけど。
待機とは言え仕事はあります。何をしているのかと言えば、まずは地球に少女漫画を買いにいってマジックバッグに入れること。次に地球に海産物などを買いにいってマジックバッグに入れること。
はい、主に買い出し担当です。
別に嫌なわけではありません。むしろ誇りに思っています。個人的な用事を頼まれるということは、それだけ信用されているわけですから。寝ているのに起こされて「ビールとおつまみを買ってきてくれます?」と言われるのとはまったく違います。いましたねえ、そういう上司。管理者になる前の話ですけど。
公私混同と思われるかもしれませんが、そこまで逸脱したものでもないでしょう。買い出しは休みの日や帰りに済ませますから。それに場合によっては有休の消化もできますからね。なかなか使うことがないんですよね、年次有給休暇。年次って何だろうって思います。マイカさんのいた日本と違って、溜まり続けるんですよ、延々と。
それで最近は少女漫画だけでなく、それ以外のジャンルの漫画を買うことも増えました。半分は私の趣味です。いえ、趣味になったと言えばいいでしょうか。大きな会場にたくさんの人が集まるイベントで薄い本を買うこともあります。勉強になりますね。うほっ。
そしてカローラ様は溜まりに溜まった有休、それに産休と育休を合わせて、全部で一八〇〇年ほど休みを取って地上に降りました。手法は問題ありですが、書類は出ているので大丈夫でしょう。それにしても一八〇〇年って、どれだけの期間拗らせていたのか……。コンラート様が頑張って隠そうとしていましたが、すべて隠せるものではありませんからね。リゼッタさんのようにカローラ様を盲信する人も多いですが、ある程度一緒に仕事をすると分かります。あの人はダメです、色々と。
それにしても産休と育休って、男の影がまったくないと言われていたカローラ様にそんなことがあるはずがないと思っていたら、そのまさかですね。あっという間に妊娠されました。あの男性はすごいですね……って、あのマイカさんが会いたいと言っていた人と同じですね。ああ、妊娠薬を元にしたお酒があの国にはあるのですね。それでも相手がいないとどうにもなりませんが。
昼間からする話でもありませんが、妊娠薬とは男女それぞれを強制的に妊娠可能な状態にする薬で、一〇歳くらいになっていれば確実に子供ができます。エルフなどの長命種は一〇〇歳くらいにならないとなかなか妊娠しませんからね。そのような時によく使われます。それ以外にも、この人たちが使う必要はないでしょうが、絶対に妊娠しなくなる薬もあります。
私は現在コンラート様の直属の部下として、カローラ様がこの世界にいる間はこの惑星をチェックしているわけなのですが、たまに気になることがあります。
カローラ様のお相手というケネス様ですが、地上では準管理者という下っ端の立場で旅をしているようです。その彼がたまに空を見上げて口に出すのですよ。「管理者に睨まれないように注意するよ」と。それを聞いた瞬間、背筋が凍ります。最初のころはどれだけ意識を失って派手に漏らしたことか。一応言いますと、お聖水だけですよ。今でもうっかり気を抜くと股間が冷たくなります。
あの人が危険な人でないのは行動を見ていれば分かりますが、ステータス的には……あれは何ですか? 絶対にエルフではないですよね? ステータスの数字が完全に文字化けして、もう何が何やら分かりません。たくさんいる奥様たちも人外ですね。そもそも人以外もいるようですが。
我々の知っている限りでは、ステータスは項目ごとに数字四桁で表示されます。小数点以下もありますが、そこは非表示にしています。
表示できるのは〇〇〇〇から九九九九ですが、通常は〇〇〇一から〇三〇〇がほとんどで、〇五〇〇を超えるのは一握りの達人でしょうか。リゼッタさんは以前は下級管理者でしたので、素早さに八三八三という並外れた数字が出ています。運動が苦手なマイカさんも〇八〇二、小さなミシェルちゃんは一三一四となっています。マリアンさんは****、ケネス様は%■#$ですね。****は九九九九を超えたことを示していますが、%■#$はデータがおかしくなっていますね。下手にこの方に手を出したら惑星が割れそうです。パカッと。日本でそういうアニメがありましたね。場合によっては超危険人物と思われそうな人たちが和気藹々としているのを見ると、地上はよく分からないなと思います。
コンラート様から聞いたところではケネス様はカローラ様の初めてのお相手らしく、「あの方を逃せばもう二度とカローラ様には相手は現れないかもしれないからできるだけ希望は聞くようにする。死にたくなければお前も従え、いいな」と言っていました。この前もカローラ様から調査の依頼が来ていましたが、他の仕事を放ったらかしにして調べていたようですね。
その話を聞いた瞬間、「優しい暴君」というフレーズが頭に浮かびましたが、その直後にケネス様が私を見たような気がしまして、三日ぶりに股間が冷えました。もうおむつが必要でしょうか。なかなか地上に降りる機会はありませんが、もし降りることになれば、どのような顔をして挨拶をすればいいのか。「いつも(カローラ様が/おむつの)お世話になっています」とか?
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