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第三章 第四部
庭の木、そしてチャット
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ユーヴィ市の中には至るところに木がある。領主邸の敷地内にも何本もある。その中で一本、庭の端にある高い木に木の精霊のフロレスタは宿るようになった。他の木でもいいけど、高い方が見晴らしが良くていいのだとか。
僕には木の精霊の生態はよく分からないけど、木に宿ることによって、その木の見える風景を見ることができ、幹や枝葉が感じるものを感じ取れるのだとか。それで、この屋敷でも一番高い木を選んだのは……
「あなた様の部屋が見えるからですね」
「そうじゃないかと思ったよ」
僕の執務室からも寝室からもあの木は見えるからね。
「あなた様が私を見ていると思うだけで……あっという間に二人目ができそうです」
「そう簡単にできるものじゃないと思うよ。あれはたまたまだと思うんだけどね」
たまたまだと思うけど、フロレスタの幹にある洞に魔素吸引丸太が入り込み、そこから彼女の放つ魔素を吸い込んでいた。魔素は大気中に存在するけど、体に取り込まれると魔力に変換され、使用後はまた魔素に戻る。そのフロレスタの出した魔素を丸太が吸い込んで、それが異空間で魔力に変換された。それが僕が作った異空間の魔力の影響を受け、そして赤ん坊が生まれた。つまり僕とフロレスタの魔力から生まれた。よく分からないけど、結果だけ見るとおそらくそう。他に説明のしようがない。
フロレスタは木の精霊だけあって、男性を誘惑してその精力を取り込む。精力じゃなくて魔力でもいいらしい。それで生まれた赤ん坊はクリスと一緒に世話をされているけど、どういうわけか二人目が欲しくなったらしくて頑張っている。頑張っているとは言っても、僕と何かをしているわけじゃない。
「それを抱きしめていてもあまり効果はないと思うよ」
「ですが、これのおかげであの子が生まれたかと思うと、可能性はゼロではないでしょう」
フロレスタが抱きしめているのは、あの魔素吸引丸太。あれのおかげでフォレスタができたと思って、そのままあれを持ち帰ってきて抱きしめている。自分から放出される魔素を吸わせるんだそうだ。
「でも、ちょっと見た目がね」
「これはこれで愛らしく思えてまいりましたが」
「でも丸太だよ?」
頭に葉っぱが付いた女性が丸太を抱きしめているのはどうなんだろう。さすがにファッションと言い切るのも難しいと思う。
「魔素さえ吸収されればいいんでしょ? それなら他のを作るよ」
「本当ですか? ぜひお願いします」
木の精霊ならやっぱり木がいいんだろうか。でも木の精霊に木を加工したものを渡すのって……どう?
「木の精霊からすると、木を加工した製品って、不快に思ったりする?」
「いえ、私は何も感じません。木の精霊は木そのものではありませんので。木はあくまで宿るためと栄養を摂るためのものですから、人にとっての家と同じです。家を見て不快になりますか?」
「そう……なのかな?」
大丈夫らしい。それなら北街道や南街道も大丈夫だろう。どれだけ木を切り倒したか分からないからね。
「ところで、フロレスタが宿っていた木の周りって、他の木が倒れてたでしょ。木の精霊が宿ると枯れやすくなるとかあるの?」
「生きていくための栄養は木からも得ますので、どうしても枯死は早くなるようです」
「その木は枯れない?」
「今はあなた様から流れてくる魔力や魔素をいただいていますので、この木から奪うことはないと思います。ここは魔力が濃密ですので」
あまり気にしてなかったけど、僕やカローラがいるからかな。とりあえず枯れないならいいか。フロレスタがいた周りって、上から見たら何十本もの木が倒れた中にポツンと一本だけあったからね。枯れやすいのかなと思ったらやっぱりそうだったか。
「それなら、はい。木でできたブレスレット、アンクレット、チョーカー。全部合わせた吸引量はあの丸太と同じだから」
「ありがとうございます。励みます」
「何をどう励むかは知らないけど、ほどほどにね」
フロレスタはアクセサリーを付けると丸太を抱えたまま木に宿ろうとした。
カコン
宿ろうとしたらフロレスタだけが消えて丸太が落ちた。木の精霊が木に宿る時、身に付けている服やアクセサリーはそのまま木の中に消える。このあたりはリゼッタが人間とリスの姿を切り替えたりする時と同じようだ。何度も試してみたけど、アクセサリーは大丈夫だけど、抱えていた丸太はフロレスタが木の中に入ろうとすると必ず地面に落ちる。
「……これは一緒に中には入れませんか」
少し不満そうにフロレスタは呟いた。
「アクセサリーと呼ぶには大きいからね。どうしても手元に置いておきたいなら、どこかに固定したら?」
この魔素吸引丸太は勝手に転がらないように、その部分だけは解除してある。フロレスタは丸太を幹に固定することにしたようだ。
◆ ◆ ◆
「それで、おばさんとしてはどうなの?」
「おばさんじゃないって、お・ね・え・ちゃ・ん。可愛いわねー。ツタと葉っぱが付いて」
屋敷に戻るとマリーがフォレスタのツタの髪を撫でていた。繭から生まれた時は人間の赤ちゃんのようだったけど、気が付いたら頭からツタが生えていた。それも髪の毛の一部なんだろう。何本か生えていて、そこ小さな葉っぱがいくつか付いている。フロレスタも同じ髪型だから、木の精霊の特徴なんだろう。
「兄としては妹の行く末が心配になるんだけど。一応相手は欲しいんでしょ?」
「今のところはいいの。いずれすっごい相手を見つけるから」
「そうするつもりがあるならまだいいんだけどね」
ステータスで僕の【特徴】には[シスコン]があり、マリーには[ブラコン]が付いていた。でも僕がマリーと会ったのはみんなと結婚した後なので、あまり影響がなかったらしい。でもマリーの方は記憶にある限りは結婚したことがないらしい。パリでも、この世界の一回目でも。
マリーは今の体になる前は墓石に転生したから、[不老]も付いていた。少なくとも年をとって死ぬことはないから、いずれ相手が見つかってくれればと、兄としては心配になる。
もしかして、これが[シスコン]の影響?
◆ ◆ ◆
「旦那様、あの木が夜中にもそもそと動くのですが」
「ちゃんと注意しておくから」
守衛たちが気味悪がった。フロレスタには木の姿でおかしなことをしないように注意をした。人の姿でされても困るけど。
◆ ◆ ◆
先日の話し合いで出た新しい魔道具の機能。さすがにメールを再現するのは無理だった。誰に送るとか、そのような設定まではさすがに作れない。その代わりにメッセンジャーか、むしろチャットのようなものができた。
名前はステータスを参照しているので、僕の場合はデフォルトでこう表示される。
《ケネス> 》
ここに頭の中で文字を思い浮かべるんだけど、意外とこれが難しい。僕の場合は日本語で考えるから表示も日本語になっている。変えることも可能。翻訳機能も付いているから言葉が違っても意思疎通ができる。この国の中でも多少の方言はある。ほとんど言い方の違い程度だけど。それも自動で自分の使っている言葉に変換されるらしい。元が[ヘルプ]だから、誰でも理解できるようになっているらしい。
みんなが見ることのできるオープン・チャットと一対一でやりとりをするクローズド・チャットを作ったけど、とりあえずはオープンな方をチェック中。
《ケネス>テスト入力中。CAB、,.。/\'"¥#$%&*=?!「[『《」]』》》
《リゼッタ>私も問題ありません》
《カロリッタ>こちらも~問題ありませんよ~》
《マイカ>チャットですか。懐かしいですね》
《マリアン>これは斬新じゃな》
《マイカ>斬新?》
《マリアン>これは異世界の文化じゃろ》
《マイカ>こちらの人から異世界という言葉を聞くと不思議です。理屈は分かるんですけど》
《マリー>兄さん、この『>』って何?》
《ケネス>それは気にしなくていいから。区切りだと思って》
《マリー>名前の後半と『>』が一緒になって、矢印みたいになってるんだけど》
《エリー>それは私も同じですね。勢いがありますね》
《ケネス>無理に日本語表示にしなくてもいいよ》
《マリー>でも日本人だったことがあるみたいだから、思い出そうと思って》
《エリー>私は少女漫画で日本語を覚えましたので、問題なく使えるようです》
《マノン>慣れるまでが大変ですねぇ》
《カローラ>マノンさん、少し独特なのでゆっくり慣らしてください》
《マノン>私は昔からあまり勉強は好きではなくて。体を動かす方が好きでしたからねぇ》
《カローラ>そう言えば口よりも先に足が出る武闘派でしたね》
《マノン>足には自信があります。この足のお陰で今の私があるわけですよねぇ》
《ミシェル>むつかしひ》
《エリー>ミシェル、間違ってるわよ》
《ミシェル>本当だ》
《エリー>でも勉強にいいわね》
《ミシェル>うん、がんばる》
《セラフィマ>これで合ってるです?》
《キラ>大丈夫》
《セラフィマ>先生、名前は短くはできないです? セラでいいですよ?》
《ケネス>問題があるようなら変更もできるようにするけど、今はこれでいいでしょ》
《マイカ>ものすごく長い名前の人ならどうなりますか? 寿限無とか》
《ケネス>寿限無はさすがに考えるけど、いないでしょ》
《ジェナ>これで私もケネス隊の仲間入りですね!》
《エルケ>仲間入りで~す!》
《シーラ>え? 私もですか?》
《ケネス>シーラ、そういうわけじゃないから。それにしても、その名前は久しぶりに聞いたね》
《エリー>旦那様、可能性のある人には声をかけていますので》
《ケネス>ちょっと待って。可能性のある人?》
《カローラ>私の方も声をかけていますよ? 彼女ならおそらく喜んで加わるでしょう》
《ケネス>ちょっと待って。誰?》
《フロレスタ>結局のところ、私は妻なのでしょうか? それとも愛人なのでしょうか?》
《ケネス>フロレスタ、愛人は作らないから妻でいいよ》
《フロレスタ>何となくですが、投げやりな感じがするのですが》
《ケネス>妻か愛人かに関係なく、いきなりだったからね》
《エルケ>次々と割り込まれているのが~かなり気になるんですけど~》
《リゼッタ>エルケ、あなたはもう売約済みです。ケネスのものです。割り込まれるとか、そのようはレベルではありません。確定しています。その時を待ちなさい》
《エルケ>は~い》
収拾が付かなくなってきたけど、とりあえず今のところはおかしな点はない。
この機能は異空間にサーバとアンテナの働きをする魔道具を置いて、指輪に通信機能を持たせた、でいいんだろうか。そして指輪の持つ魔力パターンはあの異空間の魔力パターンと同じにしてあるから、僕と同じようにいつでも側に異空間があるのと同じことになる。つまりアンテナと受信機がすぐ隣同士なので絶対に繋がる。悪用されないように認証機能を付けているし、そのせいで今のところは名前を変えることができなくなっている。
問題があるとすれば、あくまで文字でのやりとりだから、文字が読めないとどうしようもない。このチャットを広めるつもりはないし、あくまで家族の連絡用としてだけ使うつもりだから問題にはならないけどね。
そもそもこの国の識字率は低い。低くても問題がないというのが基本的な考えだった。生まれた町から生涯一歩も出ない人も多い。出ても近くには何もないから。二〇〇キロ歩かないと隣町に着かないなら、よほどの用事がなければ誰も出かけない。必要な情報は読み上げてくれるから、読み書きできなくても最低限の生活は送れる。でもそれだと何も変わらない。
服飾美容店で読み書き計算を教えたけど、それができるだけでギルドで正職員としての仕事が得られるくらいだからね。要するに下級役人になれる。一部はキヴィオ子爵領に移籍してそれなりの地位に就いた職員もいる。
この国は戦争は起きていなかったけど、ユーヴィ市から西は大森林の暴走が起きていたから、紛争地域に近いものがある。地球でも発展途上国で紛争、貧困、学校がない、そのような理由で教育が受けられない子供をたくさん見た。
ただ、そこまでの悲壮感がないのが発展途上国との違いと言えば違いかな。豊かでなくても生きていけるというのんびりした部分が当時のナルヴァ村にはあった。ある意味では高望みをせず、別の意味では諦めている、とも言える。でも子供たちにはできれば違う生活をさせたいと親たちは考えていたことは、僕が領主になって説明に行ったときに感じた。
まだ学校はできていないけど、ギルド職員が子供たちに私塾のような形で読み書きを教えていることもあるらしい。学校ができたら分校みたいなものを作った方がいいかな。
僕には木の精霊の生態はよく分からないけど、木に宿ることによって、その木の見える風景を見ることができ、幹や枝葉が感じるものを感じ取れるのだとか。それで、この屋敷でも一番高い木を選んだのは……
「あなた様の部屋が見えるからですね」
「そうじゃないかと思ったよ」
僕の執務室からも寝室からもあの木は見えるからね。
「あなた様が私を見ていると思うだけで……あっという間に二人目ができそうです」
「そう簡単にできるものじゃないと思うよ。あれはたまたまだと思うんだけどね」
たまたまだと思うけど、フロレスタの幹にある洞に魔素吸引丸太が入り込み、そこから彼女の放つ魔素を吸い込んでいた。魔素は大気中に存在するけど、体に取り込まれると魔力に変換され、使用後はまた魔素に戻る。そのフロレスタの出した魔素を丸太が吸い込んで、それが異空間で魔力に変換された。それが僕が作った異空間の魔力の影響を受け、そして赤ん坊が生まれた。つまり僕とフロレスタの魔力から生まれた。よく分からないけど、結果だけ見るとおそらくそう。他に説明のしようがない。
フロレスタは木の精霊だけあって、男性を誘惑してその精力を取り込む。精力じゃなくて魔力でもいいらしい。それで生まれた赤ん坊はクリスと一緒に世話をされているけど、どういうわけか二人目が欲しくなったらしくて頑張っている。頑張っているとは言っても、僕と何かをしているわけじゃない。
「それを抱きしめていてもあまり効果はないと思うよ」
「ですが、これのおかげであの子が生まれたかと思うと、可能性はゼロではないでしょう」
フロレスタが抱きしめているのは、あの魔素吸引丸太。あれのおかげでフォレスタができたと思って、そのままあれを持ち帰ってきて抱きしめている。自分から放出される魔素を吸わせるんだそうだ。
「でも、ちょっと見た目がね」
「これはこれで愛らしく思えてまいりましたが」
「でも丸太だよ?」
頭に葉っぱが付いた女性が丸太を抱きしめているのはどうなんだろう。さすがにファッションと言い切るのも難しいと思う。
「魔素さえ吸収されればいいんでしょ? それなら他のを作るよ」
「本当ですか? ぜひお願いします」
木の精霊ならやっぱり木がいいんだろうか。でも木の精霊に木を加工したものを渡すのって……どう?
「木の精霊からすると、木を加工した製品って、不快に思ったりする?」
「いえ、私は何も感じません。木の精霊は木そのものではありませんので。木はあくまで宿るためと栄養を摂るためのものですから、人にとっての家と同じです。家を見て不快になりますか?」
「そう……なのかな?」
大丈夫らしい。それなら北街道や南街道も大丈夫だろう。どれだけ木を切り倒したか分からないからね。
「ところで、フロレスタが宿っていた木の周りって、他の木が倒れてたでしょ。木の精霊が宿ると枯れやすくなるとかあるの?」
「生きていくための栄養は木からも得ますので、どうしても枯死は早くなるようです」
「その木は枯れない?」
「今はあなた様から流れてくる魔力や魔素をいただいていますので、この木から奪うことはないと思います。ここは魔力が濃密ですので」
あまり気にしてなかったけど、僕やカローラがいるからかな。とりあえず枯れないならいいか。フロレスタがいた周りって、上から見たら何十本もの木が倒れた中にポツンと一本だけあったからね。枯れやすいのかなと思ったらやっぱりそうだったか。
「それなら、はい。木でできたブレスレット、アンクレット、チョーカー。全部合わせた吸引量はあの丸太と同じだから」
「ありがとうございます。励みます」
「何をどう励むかは知らないけど、ほどほどにね」
フロレスタはアクセサリーを付けると丸太を抱えたまま木に宿ろうとした。
カコン
宿ろうとしたらフロレスタだけが消えて丸太が落ちた。木の精霊が木に宿る時、身に付けている服やアクセサリーはそのまま木の中に消える。このあたりはリゼッタが人間とリスの姿を切り替えたりする時と同じようだ。何度も試してみたけど、アクセサリーは大丈夫だけど、抱えていた丸太はフロレスタが木の中に入ろうとすると必ず地面に落ちる。
「……これは一緒に中には入れませんか」
少し不満そうにフロレスタは呟いた。
「アクセサリーと呼ぶには大きいからね。どうしても手元に置いておきたいなら、どこかに固定したら?」
この魔素吸引丸太は勝手に転がらないように、その部分だけは解除してある。フロレスタは丸太を幹に固定することにしたようだ。
◆ ◆ ◆
「それで、おばさんとしてはどうなの?」
「おばさんじゃないって、お・ね・え・ちゃ・ん。可愛いわねー。ツタと葉っぱが付いて」
屋敷に戻るとマリーがフォレスタのツタの髪を撫でていた。繭から生まれた時は人間の赤ちゃんのようだったけど、気が付いたら頭からツタが生えていた。それも髪の毛の一部なんだろう。何本か生えていて、そこ小さな葉っぱがいくつか付いている。フロレスタも同じ髪型だから、木の精霊の特徴なんだろう。
「兄としては妹の行く末が心配になるんだけど。一応相手は欲しいんでしょ?」
「今のところはいいの。いずれすっごい相手を見つけるから」
「そうするつもりがあるならまだいいんだけどね」
ステータスで僕の【特徴】には[シスコン]があり、マリーには[ブラコン]が付いていた。でも僕がマリーと会ったのはみんなと結婚した後なので、あまり影響がなかったらしい。でもマリーの方は記憶にある限りは結婚したことがないらしい。パリでも、この世界の一回目でも。
マリーは今の体になる前は墓石に転生したから、[不老]も付いていた。少なくとも年をとって死ぬことはないから、いずれ相手が見つかってくれればと、兄としては心配になる。
もしかして、これが[シスコン]の影響?
◆ ◆ ◆
「旦那様、あの木が夜中にもそもそと動くのですが」
「ちゃんと注意しておくから」
守衛たちが気味悪がった。フロレスタには木の姿でおかしなことをしないように注意をした。人の姿でされても困るけど。
◆ ◆ ◆
先日の話し合いで出た新しい魔道具の機能。さすがにメールを再現するのは無理だった。誰に送るとか、そのような設定まではさすがに作れない。その代わりにメッセンジャーか、むしろチャットのようなものができた。
名前はステータスを参照しているので、僕の場合はデフォルトでこう表示される。
《ケネス> 》
ここに頭の中で文字を思い浮かべるんだけど、意外とこれが難しい。僕の場合は日本語で考えるから表示も日本語になっている。変えることも可能。翻訳機能も付いているから言葉が違っても意思疎通ができる。この国の中でも多少の方言はある。ほとんど言い方の違い程度だけど。それも自動で自分の使っている言葉に変換されるらしい。元が[ヘルプ]だから、誰でも理解できるようになっているらしい。
みんなが見ることのできるオープン・チャットと一対一でやりとりをするクローズド・チャットを作ったけど、とりあえずはオープンな方をチェック中。
《ケネス>テスト入力中。CAB、,.。/\'"¥#$%&*=?!「[『《」]』》》
《リゼッタ>私も問題ありません》
《カロリッタ>こちらも~問題ありませんよ~》
《マイカ>チャットですか。懐かしいですね》
《マリアン>これは斬新じゃな》
《マイカ>斬新?》
《マリアン>これは異世界の文化じゃろ》
《マイカ>こちらの人から異世界という言葉を聞くと不思議です。理屈は分かるんですけど》
《マリー>兄さん、この『>』って何?》
《ケネス>それは気にしなくていいから。区切りだと思って》
《マリー>名前の後半と『>』が一緒になって、矢印みたいになってるんだけど》
《エリー>それは私も同じですね。勢いがありますね》
《ケネス>無理に日本語表示にしなくてもいいよ》
《マリー>でも日本人だったことがあるみたいだから、思い出そうと思って》
《エリー>私は少女漫画で日本語を覚えましたので、問題なく使えるようです》
《マノン>慣れるまでが大変ですねぇ》
《カローラ>マノンさん、少し独特なのでゆっくり慣らしてください》
《マノン>私は昔からあまり勉強は好きではなくて。体を動かす方が好きでしたからねぇ》
《カローラ>そう言えば口よりも先に足が出る武闘派でしたね》
《マノン>足には自信があります。この足のお陰で今の私があるわけですよねぇ》
《ミシェル>むつかしひ》
《エリー>ミシェル、間違ってるわよ》
《ミシェル>本当だ》
《エリー>でも勉強にいいわね》
《ミシェル>うん、がんばる》
《セラフィマ>これで合ってるです?》
《キラ>大丈夫》
《セラフィマ>先生、名前は短くはできないです? セラでいいですよ?》
《ケネス>問題があるようなら変更もできるようにするけど、今はこれでいいでしょ》
《マイカ>ものすごく長い名前の人ならどうなりますか? 寿限無とか》
《ケネス>寿限無はさすがに考えるけど、いないでしょ》
《ジェナ>これで私もケネス隊の仲間入りですね!》
《エルケ>仲間入りで~す!》
《シーラ>え? 私もですか?》
《ケネス>シーラ、そういうわけじゃないから。それにしても、その名前は久しぶりに聞いたね》
《エリー>旦那様、可能性のある人には声をかけていますので》
《ケネス>ちょっと待って。可能性のある人?》
《カローラ>私の方も声をかけていますよ? 彼女ならおそらく喜んで加わるでしょう》
《ケネス>ちょっと待って。誰?》
《フロレスタ>結局のところ、私は妻なのでしょうか? それとも愛人なのでしょうか?》
《ケネス>フロレスタ、愛人は作らないから妻でいいよ》
《フロレスタ>何となくですが、投げやりな感じがするのですが》
《ケネス>妻か愛人かに関係なく、いきなりだったからね》
《エルケ>次々と割り込まれているのが~かなり気になるんですけど~》
《リゼッタ>エルケ、あなたはもう売約済みです。ケネスのものです。割り込まれるとか、そのようはレベルではありません。確定しています。その時を待ちなさい》
《エルケ>は~い》
収拾が付かなくなってきたけど、とりあえず今のところはおかしな点はない。
この機能は異空間にサーバとアンテナの働きをする魔道具を置いて、指輪に通信機能を持たせた、でいいんだろうか。そして指輪の持つ魔力パターンはあの異空間の魔力パターンと同じにしてあるから、僕と同じようにいつでも側に異空間があるのと同じことになる。つまりアンテナと受信機がすぐ隣同士なので絶対に繋がる。悪用されないように認証機能を付けているし、そのせいで今のところは名前を変えることができなくなっている。
問題があるとすれば、あくまで文字でのやりとりだから、文字が読めないとどうしようもない。このチャットを広めるつもりはないし、あくまで家族の連絡用としてだけ使うつもりだから問題にはならないけどね。
そもそもこの国の識字率は低い。低くても問題がないというのが基本的な考えだった。生まれた町から生涯一歩も出ない人も多い。出ても近くには何もないから。二〇〇キロ歩かないと隣町に着かないなら、よほどの用事がなければ誰も出かけない。必要な情報は読み上げてくれるから、読み書きできなくても最低限の生活は送れる。でもそれだと何も変わらない。
服飾美容店で読み書き計算を教えたけど、それができるだけでギルドで正職員としての仕事が得られるくらいだからね。要するに下級役人になれる。一部はキヴィオ子爵領に移籍してそれなりの地位に就いた職員もいる。
この国は戦争は起きていなかったけど、ユーヴィ市から西は大森林の暴走が起きていたから、紛争地域に近いものがある。地球でも発展途上国で紛争、貧困、学校がない、そのような理由で教育が受けられない子供をたくさん見た。
ただ、そこまでの悲壮感がないのが発展途上国との違いと言えば違いかな。豊かでなくても生きていけるというのんびりした部分が当時のナルヴァ村にはあった。ある意味では高望みをせず、別の意味では諦めている、とも言える。でも子供たちにはできれば違う生活をさせたいと親たちは考えていたことは、僕が領主になって説明に行ったときに感じた。
まだ学校はできていないけど、ギルド職員が子供たちに私塾のような形で読み書きを教えていることもあるらしい。学校ができたら分校みたいなものを作った方がいいかな。
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