新米エルフとぶらり旅

椎井瑛弥

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余談

座談会(魔法と魔道具編)

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 この話はストーリーの進行とはまったく関係ありません。

 ただ単にメタな視点で設定や裏話を座談会のようにダラダラ続けるという内容です。

 ほぼ登場人物たちの会話で成り立っています。

 それでもよろしければどうぞ。

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「では、次は……っていくつあるのでしょうか? とりあえず魔法について、閣下、お願いします」
「まずこの世界の魔法は、属性魔法と無属性魔法、そして精霊魔法があるとされている。でも属性魔法と無属性魔法は本来同じカテゴリーのもので、使う人たちが勝手に属性があると思い込んで分けているだけ」
「兄さん、属性魔法と無属性魔法って、比率としてはどれくらい?」
「属性一に対して無属性九九以上かな」
「属性魔法ってそれだけしかないの?」
「そうだよ」

 属性魔法の方が有名だからね。

「例えば、[火弾][火玉][火球][火矢][火壁]って火魔法の中では一番有名な五つだけど、実は全部同じ」
「形とか全然違う気がするんだけど」
「そう、形だけの問題。小さくするか、大きくするか、丸くするか、細くするか、平たくするか、ただそれだけ」
「うーん」
「焚き火をするとするでしょ?」
「うん」
「縦に広くするか、横に広くするか、それとの縦に積むか、その違いだけ」
「どうして魔法として違いがあるの?」
「それはね、魔法はまずはイメージ、それから言霊の詠唱、最後に魔法名を口にするって流れになるけど、必要なのはイメージだけ。それ以外は安定して魔法を発動するための補助。それで、確実に魔法を使おうと思ったら、イメージを固めるために言霊を詠唱して、最後にさあ発動しますよと自分に言い聞かせるために魔法名を口にする」
「みんなはそれをやってるってこと?」
「全員じゃないけど、初心者はまずそこから入る。裁縫をする時に、覚えたこと何一つ違えることなくその通りにするのがこの世界での一般的な魔法の使いのやり方。自分なりに手順を省略したり材料を変えたりして自分なりにアレンジしつつ同じようなものを作るのが上級者」
「それなら分かるわ」
「魔法を使える人はそれほど多くないから、結局そこにみんな弟子入りして、そしてその通りに覚えるから、多少違いはあっても同じようなやり方になる」
「それなら突き詰めれば四種類ってこと?」
「なかなかそうはならないのが難しいところでね。例えば僕がよく使う[氷矢]は水魔法の上級魔法と考えられているけど、水を集めて温度を下げて凍らせるから、やっているのは水魔法と温度変化。火魔法って実は温度変化の産物だから、つまり[氷矢]は水魔法と火魔法を使っている。だから上級でも何でもない」
「やっているのは物理とか化学ってこと?」
「そうそう。魔法は物理現象。魔素という謎物質と魔力という謎パワーがあるけど、結局行き着く先は原子と分子、さらには素粒子に辿り着く。だから理学とか自然科学とか、そういう知識があれば、魔法に限らず色々と便利になるよ」
「それならもっと知識が広まっていてもいいんじゃないの?」
「それがね、アシルさんやフランシスさんの件でも分かったと思うけど、あまりにも異なった知識は怪しまれるだけでありがたがられない。詐欺師と一緒だと思われる。そうなるとスポンサーが得られない。だから結局は何もできない」
「何をするにも後ろ盾が必要なのね」
「そう。転生者や転移者が知識を使って大成功するかと言えば必ずしもそうはならないのがこの世界。だから二人には、今は好きなことを好きなだけやってもらってるんだよね」

「マスターに~魔法のことを最初に説明したのは私ですが~あんまり使いませんね~」
「魔法が中途半端だからね。穴を掘ったり壁を作ったりするには便利だけど」
「さっきの話とも被りますが~中途半端に物理法則が強いですからね~」
「そうなんだよ。普通の人が[火弾]や[火球]を飛ばして魔獣に当てても、表面が焦げるだけなんだよね。あくまで火だから。可燃物がないと燃えない。火の中に一瞬手を通しても焼けないのと同じ。じっとしていればそのうち火傷するけど」
「[火爆]を使うと周囲が吹き飛びますからね~」
「あれはダイナマイトに近いからね。[火爆]という名前で知られているけど、ひたすら水素と酸素を集めて着火しているだけだから。あれは風魔法と火魔法と考えてもいいのかな」
「そう考えると~攻撃には~水系統や土系統が有利でしょうか~」
「物理的にダメージが入るからね。だから僕は[氷矢]を使って魔獣の眉間や目を狙う。あれは氷を尖らせて魔力でぶん投げるだけだから、素材が傷みにくいし」
「[風刃]もそれなりに便利ですね~。ノコギリに活用されいますし~」
「生活に使う魔道具は便利なんだけどね。カローラ、そのあたりについてはこの世界は少しおかしい?」
「おかしいわけではありませんが、少々使い方を分かっていないところがありますね」
「あ、やっぱり」
「はい。魔法と言っても何でもできるわけではありません。ご主人様が言ったように、[火弾]や[火球]、実はイメージの違いでどちらも同じ魔法ですが、これをぶつけても敵は死にません。当たった部分が焦げるだけです」
「水に沈めた方が早いよね」
「そうですね。もし魔獣や魔物を[火球]で殺そうと思えば、家一軒分くらいの大きさにして周囲ごと焼き払うしかありません。熱を吸い込ませることで肺を焼くことができますので、窒息死させることができます」
「結局は火そのものでは死ななくて窒息するってこと?」
「はい。魔獣と言えども生物です。呼吸しないわけにはいきません。そして地上ならまだしもダンジョンで火魔法なんて以ての外です」
「一酸化炭素中毒には注意が必要だね。それと話は変わるけど、やっぱり精霊魔法は性に合わない」
「えー? 使わへんの?」
「そもそも何が使えるの? 風属性だと思うけど」
「人の魔法なら[風刃][風弾][風壁]あたりやろか」
「あまり戦い向きじゃないよね」
「ゆうても風やしなあ。台風かハリケーンくらいの出力があれば吹っ飛ばせるけど。普段するのはスカートめくりとか」
「もう一度やったら強制送還してほしいって保育士さんたちに頼まれたから」
「分かってるって」

「それでは一五分ほど休憩の時間となります。一五分経ちましたらお戻りください」



◆ ◆ ◆



「それでは休憩も終わったようですので、閣下、次は魔道具の解説をお願いします」
「魔道具は得意だからね」
「マスターの魔道具は~かな~り片寄っていますけどね~」
「料理方面にね。さて、魔道具は魔法が使える道具全般を指す言葉。だから敵に切りつけた時に火が出る魔剣や、魔力を増強する杖なども魔道具になる」
「戦闘関係の魔道具って~一つも作りませんでしたよね~」
「作ったらかなり売れないか?」
「魔法使い用の杖は売れるかもしれませんね。魔剣は杖としてなら意味があるかもしれませんね」
「よく切れる剣とか作れないのか?」
「剣はどれだけよく切れても所詮は剣ですよ。肉の塊に剣を叩き付けて切れますか?」
「無理だな。潰れるだけだ」
「もし魔獣を一撃で切断できるような剣を作るとすれば、めちゃくちゃ大きくて重くて鋭い日本刀くらいでしょうね。それをガンダムくらい体重のある人が刃筋を立てて引き気味に振れば切断できるかもしれません。でもこの国で使われている西洋の剣では無理ですね。あれは鈍器です。あの刃は形だけですからね」
「それなら頑丈な鎧や兜や盾はどうだ?」
「絶対に壊れないくらい頑丈にしても、魔獣の突進を食らったらどうなると思います?」
「……衝撃で死ぬか?」
「はい。鎧を着て時速一〇〇キロを超える荷物満載の二トントラックに正面からぶつかられれば、吹っ飛びます。鎧下にクッション性の高いものを身に付けていたとしても、中の人が無事かどうかは分かりません。絶対に壊れない兜を付けていても、衝撃は伝わるでしょうから、脳も危険ですね。それに首がまずやられます」
「それなら胴体から頭まで一体化した頑丈な鎧を用意して、衝撃が伝わらないように鎧下に極めてクッション性の高いものを着れば……」
「そのまま金属製の棺桶になりますね。どうやっても衝撃は殺せません」
「……」

「それで魔道具の話に戻るけど、魔道具を作るには専門の術式を書き込む。それが非常にややこしいので大変。魔法はイメージだけど、そのイメージを文字にするというのはものすごく大変な作業になる。しかもその術式を書き込んでから、最後にその魔法を封入しないといけない。だからその魔法が使えることが前提になる」
「旦那様、ハンドミキサーのように[回転]を内蔵するなら[回転]が使えることがまず必要ということですね」
「そういうこと。実は別人が魔法を使ってもいいけど、魔法使いには一匹狼が多いから、他人が魔法を入れるという発想があまりないんだよね。だから自分でやるのが基本形になってる」
「私やアニエッタたちは王宮で魔道具を作る仕事をしていました。教えることも多かったですが」
「どういうものを作ってたの?」
「攻撃のためのものではなく、補助系がほとんどでした。俊敏性や攻撃力が上がるものとか、あるいは魔石の充填をするものや、魔獣が近付いたら知らせてくれるものなどです」
「やっぱり野営用が多いね」
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