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第四章 第二部
訓練開始
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昨日アリソンはユーヴィ男爵領に来ていきなり恐怖のどん底に叩き落とされた。他人事のように言ったけど、僕も原因の一部ではある。でもあれで性格の矯正ができそうなので、結果としてはよしとしよう。やる気がなくなった訳ではなさそうだからね。
そのアリソンは屋敷で居候をすることになった。そして一晩経って今日、訓練初日からひどい状態になっている。ひどい状態、つまりボロボロになって大の字で倒れている。
「リゼッタ、もう少し手加減してあげたら?」
「少しやりすぎたでしょうか。次からはもう少し控えめにしましょう。では少し休憩しましょう。呼吸を整えてください」
「あ、あひがほうございまふ……」
リゼッタは前言通り、アリソンの腕や脚を折ることはなかったけど、文字通りボコボコにしていた。文字通り全身。顔はバスケットボールみたいになってる。結局攻撃だけじゃなくて防御も全然駄目だった。
フェリン王国の剣もクルディ王国の剣も、基本は両刃の両手剣。片手でも扱えるけど、両手で使うことが多い。これを叩きつけるわけだから、腕力が同じだとすれば背が高い方が振り下ろす威力は強くなる。確かにリゼッタは小柄でアリソンとは頭一つとは言わないけど頭三分の二くらいは背が低い。でも腕力は圧倒的にリゼッタの方が強い。
自分よりも力が強い相手の剣を受け止めるというのは危険がある。そもそも受け止めるのが難しいこと。そして押されれば反撃のしようがないこと。剣を合わせたまま押される一方になる。そこから押されれば頭や肩相手の剣が当たることだってある。だから受けてはダメ。
じゃあどうすればいいかという話だけど、圧倒的に力の差があるんだから、剣を横に弾くか斜めに逸らすしかない。絶対に受けたらダメ。それを受けたものだからどうしようもなくなって、じりじり後退し、腕の力がなくなってきたところで足で蹴られて吹っ飛んで、起き上がっては転がされ、と地面を転がされ続けた。
アリソンは剣の練習はしていたようだけど、けっして上手くはない。それに剣だけじゃなくて体術もまだまだ。体力もない。根性はそれなりかな。だから途中からリゼッタ教官によるブートキャンプに切り替わった。
ボロボロにされたまま腹筋一〇〇回、背筋一〇〇回、スクワット一〇〇回、腕立て伏せ一〇〇回。順番がおかしい気がするけど、あえて意図的にそうしたらしい。
「ケネス、[治療]と[回復]をかけてあげてください。さあアリソン、呼吸が整ったら次に進みましょう」
「え?」
「何が『え?』ですか? まだ三〇分も経っていませんよ。壊れては治し壊れては治し、そのようにして人の体は強くなります。ケネスも一晩中死にかけるほどの経験をして今の力を得ました。あなたも強くなりたいのではないのですか?」
「も、もちろん強くなりたいです。よろしくお願いします」
「ではもう一度体術の手合わせをしましょう。まずはその全然なっていない体の使い方を徹底的に叩き直します」
リゼッタは僕が死にかけるほどの経験をしたって言ったけど、実際は死んでから生き返る前の話だからね。一応心臓は動いていたのかな? 意識は戻っていなかったけど。
でもその間にカローラとのあれこれがあってステータスが文字化けするくらいに鍛えられたから間違ってはいないのか。
◆ ◆ ◆
アリソンはそれからも何度かボロボロになってその度に僕が[治療]で治して[回復]で体力を回復させた。最後はゾンビのようになっていたけど、それでも起き上がっていたから根性はあるんだろうね。さすがはジェナの妹。
お昼になって屋敷に戻ると食事と入力を済ませてリフレッシュ。午後はリゼッタによる魔法に関する座学が始まった。
リゼッタってカローラやカロリッタほどは魔法は得意じゃないけど、それでも地上で彼女以上に魔法が得意な人っていないんじゃないかな。僕やカローラの魔法は一歩間違えば地形が変わるくらいの威力があるけど、リゼッタの場合はそこまでにはなっていない。常識の範囲内。
魔力量に関しては僕の影響でステータスの表示は振り切れているけど、使える魔法の種類そのもそはそこまで増えていない。夜のことは得意不得意にまでは影響しないみたいだね。そこまで影響するならとんでもない集団ができあがってしまう。
リゼッタは時空間魔法は元から得意じゃなかったから、今でも自力ではほとんど使えない。カロリッタでさえそのあたりは同じ。カロリッタはあくまで僕のために作られた守護妖精だから、そもそも一人でふらふらと出歩くことは想定していなかったのかもしれない。だから二人とも僕が渡した[転移]を使える指輪を付けている。
「それにしても、カローラさんも言っていましたが、魔法のことを難しく考えすぎですね」
「難しく考えすぎですか?」
「ええ、子供でさえ木の棒を振り回して相手を攻撃できます。魔法でも同じように何も考えずに使えば問題ありません。属性だの何だの、難しく考えるからです」
それは確かにそう。結局は物理現象に属性を当てはめているだけだと分かってきた。火魔法は温度の上げ下げ、そして[火球]ならさらにそれを風魔法で飛ばしているようだ。
火魔法に[火爆]という魔法があって、それは実際に爆発するけど、風魔法で水素と酸素を集めた上で温度を上げて着火しているだけだった。
だから当たり前だけど空の上では土魔法は使えない。土がないから。でも空気中に水分はあるから水魔法は使える。魔法では物理的に可能なことしかできない。
でも中途半端に魔法がある世界なので、物理法則がやや疎かになっている。知識がないから、誰もがそれまでの蓄積の中だけで魔法を使っている。
その中で手っ取り早いのが詠唱して魔法名を口にする、いわゆる典型的な魔法使いのやり方。物理法則が分からないなら、確実に手順を追って使う。
これなら決まったことしかできないけど、素質があるなら誰でも使える。実際には訓練すれば大半の人は使えるはずだけど、そこまで時間もお金もかけられないのが現実。
そしてこの世界にはスキルがあるけど、これは身につけたものがステータスに表示されるだけで、与えられたから使えるものではないというややこしいところ。
しかも普通の人にはスキルを始めとした各種ステータスを見るための方法はない。そもそもステータスやスキルという概念が存在しない。この世界でステータスを見ることができるのは、今のところカローラと僕だけになる。
リゼッタは準管理者補佐になってからはステータスを見ることができなくなった。カロリッタはカローラの分身ではあるけど、ステータスを見ることはできない。いつもいる訳ではないけど、ヴァウラさんは下級管理者だから見ることができる。
そういう訳で、次は主に座学を中心とした魔法の訓練が始まった。
◆ ◆ ◆
アリソンがやっぱり大の字になって頭から煙を出している。本当に出るんだね。
昨日も今日も思ったけど、この子はやることなすこと全てが漫画になる。しかもギャグ漫画。潰れたカエルのように気絶したり、顔がバスケットボールのように腫れたり、そして今は頭の使い過ぎで煙が出たり。
今朝エリーが「アリソンさんは面白い方ですね」と言っていた。その時は何が面白いんだろうと思っていたら、やることなすこと全てが面白かった。
「うーーあーー」
「大丈夫?」
目が虚ろになっているので、さすがにこれ以上は無理そうだと判断して部屋に連れていくことになった。
そのアリソンは屋敷で居候をすることになった。そして一晩経って今日、訓練初日からひどい状態になっている。ひどい状態、つまりボロボロになって大の字で倒れている。
「リゼッタ、もう少し手加減してあげたら?」
「少しやりすぎたでしょうか。次からはもう少し控えめにしましょう。では少し休憩しましょう。呼吸を整えてください」
「あ、あひがほうございまふ……」
リゼッタは前言通り、アリソンの腕や脚を折ることはなかったけど、文字通りボコボコにしていた。文字通り全身。顔はバスケットボールみたいになってる。結局攻撃だけじゃなくて防御も全然駄目だった。
フェリン王国の剣もクルディ王国の剣も、基本は両刃の両手剣。片手でも扱えるけど、両手で使うことが多い。これを叩きつけるわけだから、腕力が同じだとすれば背が高い方が振り下ろす威力は強くなる。確かにリゼッタは小柄でアリソンとは頭一つとは言わないけど頭三分の二くらいは背が低い。でも腕力は圧倒的にリゼッタの方が強い。
自分よりも力が強い相手の剣を受け止めるというのは危険がある。そもそも受け止めるのが難しいこと。そして押されれば反撃のしようがないこと。剣を合わせたまま押される一方になる。そこから押されれば頭や肩相手の剣が当たることだってある。だから受けてはダメ。
じゃあどうすればいいかという話だけど、圧倒的に力の差があるんだから、剣を横に弾くか斜めに逸らすしかない。絶対に受けたらダメ。それを受けたものだからどうしようもなくなって、じりじり後退し、腕の力がなくなってきたところで足で蹴られて吹っ飛んで、起き上がっては転がされ、と地面を転がされ続けた。
アリソンは剣の練習はしていたようだけど、けっして上手くはない。それに剣だけじゃなくて体術もまだまだ。体力もない。根性はそれなりかな。だから途中からリゼッタ教官によるブートキャンプに切り替わった。
ボロボロにされたまま腹筋一〇〇回、背筋一〇〇回、スクワット一〇〇回、腕立て伏せ一〇〇回。順番がおかしい気がするけど、あえて意図的にそうしたらしい。
「ケネス、[治療]と[回復]をかけてあげてください。さあアリソン、呼吸が整ったら次に進みましょう」
「え?」
「何が『え?』ですか? まだ三〇分も経っていませんよ。壊れては治し壊れては治し、そのようにして人の体は強くなります。ケネスも一晩中死にかけるほどの経験をして今の力を得ました。あなたも強くなりたいのではないのですか?」
「も、もちろん強くなりたいです。よろしくお願いします」
「ではもう一度体術の手合わせをしましょう。まずはその全然なっていない体の使い方を徹底的に叩き直します」
リゼッタは僕が死にかけるほどの経験をしたって言ったけど、実際は死んでから生き返る前の話だからね。一応心臓は動いていたのかな? 意識は戻っていなかったけど。
でもその間にカローラとのあれこれがあってステータスが文字化けするくらいに鍛えられたから間違ってはいないのか。
◆ ◆ ◆
アリソンはそれからも何度かボロボロになってその度に僕が[治療]で治して[回復]で体力を回復させた。最後はゾンビのようになっていたけど、それでも起き上がっていたから根性はあるんだろうね。さすがはジェナの妹。
お昼になって屋敷に戻ると食事と入力を済ませてリフレッシュ。午後はリゼッタによる魔法に関する座学が始まった。
リゼッタってカローラやカロリッタほどは魔法は得意じゃないけど、それでも地上で彼女以上に魔法が得意な人っていないんじゃないかな。僕やカローラの魔法は一歩間違えば地形が変わるくらいの威力があるけど、リゼッタの場合はそこまでにはなっていない。常識の範囲内。
魔力量に関しては僕の影響でステータスの表示は振り切れているけど、使える魔法の種類そのもそはそこまで増えていない。夜のことは得意不得意にまでは影響しないみたいだね。そこまで影響するならとんでもない集団ができあがってしまう。
リゼッタは時空間魔法は元から得意じゃなかったから、今でも自力ではほとんど使えない。カロリッタでさえそのあたりは同じ。カロリッタはあくまで僕のために作られた守護妖精だから、そもそも一人でふらふらと出歩くことは想定していなかったのかもしれない。だから二人とも僕が渡した[転移]を使える指輪を付けている。
「それにしても、カローラさんも言っていましたが、魔法のことを難しく考えすぎですね」
「難しく考えすぎですか?」
「ええ、子供でさえ木の棒を振り回して相手を攻撃できます。魔法でも同じように何も考えずに使えば問題ありません。属性だの何だの、難しく考えるからです」
それは確かにそう。結局は物理現象に属性を当てはめているだけだと分かってきた。火魔法は温度の上げ下げ、そして[火球]ならさらにそれを風魔法で飛ばしているようだ。
火魔法に[火爆]という魔法があって、それは実際に爆発するけど、風魔法で水素と酸素を集めた上で温度を上げて着火しているだけだった。
だから当たり前だけど空の上では土魔法は使えない。土がないから。でも空気中に水分はあるから水魔法は使える。魔法では物理的に可能なことしかできない。
でも中途半端に魔法がある世界なので、物理法則がやや疎かになっている。知識がないから、誰もがそれまでの蓄積の中だけで魔法を使っている。
その中で手っ取り早いのが詠唱して魔法名を口にする、いわゆる典型的な魔法使いのやり方。物理法則が分からないなら、確実に手順を追って使う。
これなら決まったことしかできないけど、素質があるなら誰でも使える。実際には訓練すれば大半の人は使えるはずだけど、そこまで時間もお金もかけられないのが現実。
そしてこの世界にはスキルがあるけど、これは身につけたものがステータスに表示されるだけで、与えられたから使えるものではないというややこしいところ。
しかも普通の人にはスキルを始めとした各種ステータスを見るための方法はない。そもそもステータスやスキルという概念が存在しない。この世界でステータスを見ることができるのは、今のところカローラと僕だけになる。
リゼッタは準管理者補佐になってからはステータスを見ることができなくなった。カロリッタはカローラの分身ではあるけど、ステータスを見ることはできない。いつもいる訳ではないけど、ヴァウラさんは下級管理者だから見ることができる。
そういう訳で、次は主に座学を中心とした魔法の訓練が始まった。
◆ ◆ ◆
アリソンがやっぱり大の字になって頭から煙を出している。本当に出るんだね。
昨日も今日も思ったけど、この子はやることなすこと全てが漫画になる。しかもギャグ漫画。潰れたカエルのように気絶したり、顔がバスケットボールのように腫れたり、そして今は頭の使い過ぎで煙が出たり。
今朝エリーが「アリソンさんは面白い方ですね」と言っていた。その時は何が面白いんだろうと思っていたら、やることなすこと全てが面白かった。
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目が虚ろになっているので、さすがにこれ以上は無理そうだと判断して部屋に連れていくことになった。
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