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第七章【死に至る呪い】
第三十六節 何が“正義”であるのか
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「我々、“リベリア解放軍は”そのために反旗を翻すのです!!」
まるで演説台の上に立つ演者のように、ホムラは声を大きく上げ己の思想を語る。
「全ては……、正義のために――っ!!!」
ホムラが力強く断言の言葉を口にした瞬間だった――。
ホムラは突として、目を見開きその場から弾かれたように身を引いた。
それと同時に何の前触れもなくホムラの左肩に――、飛んできた矢が突き刺さっていたのだった。
「く――っ!!」
不意打ちの痛みにホムラが小さく苦悶の声を零す。
そんなホムラの様子に、矢が飛んできた方向から「ちっ!」――っと、舌打ちをする声が聞こえてきた。
「何者だ……っ!!」
矢の飛んできた方向へ目を向け、ホムラは声を荒げる。そうして、腰に携えていた剣を鞘から引き抜いた。
――まさか、ウェーバー将軍が来たというのか……?!
一瞬ホムラの頭に、不測の考えが過る。
しかし、昨日の今日でのビアンカ誘拐事件騒ぎで、その可能性はないはずだと。改めて考え至る。
ホムラからの問いかけに、黒い影が坑道の通路から静かに姿を現した。
その姿を現した人物を目にしたホムラは、驚きから驚愕の表情を浮かべ、言葉を失っていた。
「――ハル……っ?!」
拓けた洞穴に姿を現した人物を見て、ビアンカが驚いたように声を上げる。
その場に現れた人物は黒い外套を身に纏った赤茶色の髪と瞳を持つ見知った少年――ハルであった。
ハルの手には、先ほどホムラの左肩を射抜くのに使用した弓が握られていた。
本来であればホムラの左胸――心臓を狙っていたハルの弓の一撃は、寸でのところでホムラに勘づかれ躱されてしまったのだった。
「――ほぼ無関係のビアンカを攫って、そして人質にとるあんたが“正義”を語るとかさ。おかしいと思わないのか?」
ハルは冷静な眼差しをホムラに向け、静かに言葉を投げかける。
ハルは先ほどまで、ホムラがビアンカに語っていた内容を、坑道の物陰に隠れて身を潜め――、ホムラを弓につがえた矢で射抜く機会を窺いながら静観していたのだ。
「まさか、ただのビアンカお嬢様の腰巾着だと思っていた貴方が来るとは――、予想外でしたよ……」
ホムラはハルによって射抜かれた左肩を押さえながら、苦々しげな顔つきで言う。
「――しかも、気配を消して話を聞いているとはね……」
ホムラは、忌々しさを表情から隠そうともせずに言うのだが、そのホムラの声音にはハルの行動に対し――、どこか感心した感情を窺わせた。
「――ビアンカを返してもらいに来た」
ホムラの言葉を意に介さず、ハルは異様なほど静かに――、そして涼しげに言葉を発した。
「ミハイル将軍が戻って来るのを待っていたら、お前らがビアンカに何をするか。わかったもんじゃないからな……」
ハルが静かな声で言葉を紡ぐ中、ホムラの胸中に微かな焦りが湧いてきていた。
まさか、ビアンカの護衛役――“腰巾着”と称して、ホムラ自身が馬鹿にしていた存在であるハルが単身乗り込んでくるとは考え及ばなかったのである。
焦りで歯噛みをするホムラは、はたと――、あることに気が付いた。
「――見張り役たちは、どうしたのですか。同胞たちが交代で見張っていたはず……っ!」
「全員邪魔だったから殺らせてもらったよ。悪いな――」
ホムラの問いに、ハルは悪びれた様子を微塵も見せずに、口の端を上げて微かに笑みを浮かべた。
そうして、親指を立てた手で自分自身の首を横に切る仕草を見せる。それは“殺した”――と、意思表示のための仕草であった。
そんなハルの言動にホムラは顔色を変える。
「――『扱い慣れた武器を使った方が、いざとなった時に守るべき者を守ることができる可能性を持っている――』って。前にあんたが言っていた言葉は本当だな……」
ハルは、顔色を変えたホムラを見据えて、自らの持つ弓を前に差し出して示す。
ハルが扱いを得意とする、数多の戦や争いごとに巻き込まれる度に手にしてきた――弓という武器。その武器は今の局面でも大いに役立っていた。
「ふ、ふふ……、そういえば、そんなことも言いましたね。我が剣術流儀の心得の一つだと……」
ホムラは苦笑混じりに言うと――、不意に自らの左肩に刺さった矢の箆の部分を手にしていた剣で切り落とした。
ホムラのその行為は、刺さった矢尻の部分を引き抜くことで余計な出血を起こし、体力を奪われることを避けるための――、戦いに身をやつしたことのある者たちが取る処置である。
「――だが……、たった一人で来て、何ができるというのですかっ?!」
ホムラは鋭い眼差しをハルに向けると、一際大きく声を張り上げた。
ホムラは声を張り上げると同時に、傍らの地面に座り込んでいたビアンカの長い髪を無造作に掴み――、強く引き上げ、彼女を無理矢理立たせたのだ。
「痛い――っ!!」
突如、髪を強引に引かれ、無理矢理立ち上がらされたビアンカが痛みで顔を顰め、声を上げる。
ホムラは立たせたビアンカの首に左腕を回し、ビアンカを自分自身の前で拘束する。そして、ビアンカに対して――、その手に持っていた剣の刀身を向けた。
「――こちらには人質がいるというのに……。腰巾着一人が、無謀すぎやしませんかね?」
ホムラはしたり顔を見せ、ハルに得意然として声を掛ける。
だがしかし、そんな状況になってもハルは冷静さを感じさせる表情を一切崩さず、焦りの顔色を全く見せなかった。それどころか、面倒くさげに溜息を一つ零す。
「そう来るとは思っていたけどさ。実際にやられると、結構腹が立つもんなんだぜ……」
ハルは至極冷静な声音で言いながら、頭を掻く仕草を見せる。
「――そうしたら、面白いことをあんたに教えてやるよ……」
ハルは呟くと、自らが羽織っている外套のポケットに手を入れ、そのポケットの中から一つの小瓶を取り出した。
ハルは取り出した小瓶をホムラに見せつけるように差し向け、勝ち誇った表情を見せるのだった――。
まるで演説台の上に立つ演者のように、ホムラは声を大きく上げ己の思想を語る。
「全ては……、正義のために――っ!!!」
ホムラが力強く断言の言葉を口にした瞬間だった――。
ホムラは突として、目を見開きその場から弾かれたように身を引いた。
それと同時に何の前触れもなくホムラの左肩に――、飛んできた矢が突き刺さっていたのだった。
「く――っ!!」
不意打ちの痛みにホムラが小さく苦悶の声を零す。
そんなホムラの様子に、矢が飛んできた方向から「ちっ!」――っと、舌打ちをする声が聞こえてきた。
「何者だ……っ!!」
矢の飛んできた方向へ目を向け、ホムラは声を荒げる。そうして、腰に携えていた剣を鞘から引き抜いた。
――まさか、ウェーバー将軍が来たというのか……?!
一瞬ホムラの頭に、不測の考えが過る。
しかし、昨日の今日でのビアンカ誘拐事件騒ぎで、その可能性はないはずだと。改めて考え至る。
ホムラからの問いかけに、黒い影が坑道の通路から静かに姿を現した。
その姿を現した人物を目にしたホムラは、驚きから驚愕の表情を浮かべ、言葉を失っていた。
「――ハル……っ?!」
拓けた洞穴に姿を現した人物を見て、ビアンカが驚いたように声を上げる。
その場に現れた人物は黒い外套を身に纏った赤茶色の髪と瞳を持つ見知った少年――ハルであった。
ハルの手には、先ほどホムラの左肩を射抜くのに使用した弓が握られていた。
本来であればホムラの左胸――心臓を狙っていたハルの弓の一撃は、寸でのところでホムラに勘づかれ躱されてしまったのだった。
「――ほぼ無関係のビアンカを攫って、そして人質にとるあんたが“正義”を語るとかさ。おかしいと思わないのか?」
ハルは冷静な眼差しをホムラに向け、静かに言葉を投げかける。
ハルは先ほどまで、ホムラがビアンカに語っていた内容を、坑道の物陰に隠れて身を潜め――、ホムラを弓につがえた矢で射抜く機会を窺いながら静観していたのだ。
「まさか、ただのビアンカお嬢様の腰巾着だと思っていた貴方が来るとは――、予想外でしたよ……」
ホムラはハルによって射抜かれた左肩を押さえながら、苦々しげな顔つきで言う。
「――しかも、気配を消して話を聞いているとはね……」
ホムラは、忌々しさを表情から隠そうともせずに言うのだが、そのホムラの声音にはハルの行動に対し――、どこか感心した感情を窺わせた。
「――ビアンカを返してもらいに来た」
ホムラの言葉を意に介さず、ハルは異様なほど静かに――、そして涼しげに言葉を発した。
「ミハイル将軍が戻って来るのを待っていたら、お前らがビアンカに何をするか。わかったもんじゃないからな……」
ハルが静かな声で言葉を紡ぐ中、ホムラの胸中に微かな焦りが湧いてきていた。
まさか、ビアンカの護衛役――“腰巾着”と称して、ホムラ自身が馬鹿にしていた存在であるハルが単身乗り込んでくるとは考え及ばなかったのである。
焦りで歯噛みをするホムラは、はたと――、あることに気が付いた。
「――見張り役たちは、どうしたのですか。同胞たちが交代で見張っていたはず……っ!」
「全員邪魔だったから殺らせてもらったよ。悪いな――」
ホムラの問いに、ハルは悪びれた様子を微塵も見せずに、口の端を上げて微かに笑みを浮かべた。
そうして、親指を立てた手で自分自身の首を横に切る仕草を見せる。それは“殺した”――と、意思表示のための仕草であった。
そんなハルの言動にホムラは顔色を変える。
「――『扱い慣れた武器を使った方が、いざとなった時に守るべき者を守ることができる可能性を持っている――』って。前にあんたが言っていた言葉は本当だな……」
ハルは、顔色を変えたホムラを見据えて、自らの持つ弓を前に差し出して示す。
ハルが扱いを得意とする、数多の戦や争いごとに巻き込まれる度に手にしてきた――弓という武器。その武器は今の局面でも大いに役立っていた。
「ふ、ふふ……、そういえば、そんなことも言いましたね。我が剣術流儀の心得の一つだと……」
ホムラは苦笑混じりに言うと――、不意に自らの左肩に刺さった矢の箆の部分を手にしていた剣で切り落とした。
ホムラのその行為は、刺さった矢尻の部分を引き抜くことで余計な出血を起こし、体力を奪われることを避けるための――、戦いに身をやつしたことのある者たちが取る処置である。
「――だが……、たった一人で来て、何ができるというのですかっ?!」
ホムラは鋭い眼差しをハルに向けると、一際大きく声を張り上げた。
ホムラは声を張り上げると同時に、傍らの地面に座り込んでいたビアンカの長い髪を無造作に掴み――、強く引き上げ、彼女を無理矢理立たせたのだ。
「痛い――っ!!」
突如、髪を強引に引かれ、無理矢理立ち上がらされたビアンカが痛みで顔を顰め、声を上げる。
ホムラは立たせたビアンカの首に左腕を回し、ビアンカを自分自身の前で拘束する。そして、ビアンカに対して――、その手に持っていた剣の刀身を向けた。
「――こちらには人質がいるというのに……。腰巾着一人が、無謀すぎやしませんかね?」
ホムラはしたり顔を見せ、ハルに得意然として声を掛ける。
だがしかし、そんな状況になってもハルは冷静さを感じさせる表情を一切崩さず、焦りの顔色を全く見せなかった。それどころか、面倒くさげに溜息を一つ零す。
「そう来るとは思っていたけどさ。実際にやられると、結構腹が立つもんなんだぜ……」
ハルは至極冷静な声音で言いながら、頭を掻く仕草を見せる。
「――そうしたら、面白いことをあんたに教えてやるよ……」
ハルは呟くと、自らが羽織っている外套のポケットに手を入れ、そのポケットの中から一つの小瓶を取り出した。
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