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3話
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夕方、葵はキッチンで夕食の準備をしていた。今日の夕食はベーコンとマッシュルームのトマトパスタだ。
皮を湯むきしたトマトを小さ目のざく切りにして、玉ねぎとマッシュルームは薄切りにスライス、ベーコンは1cmの幅に切る。
オリーブオイルを熱したフライパンに鷹の爪、ニンニクを入れ、香りがたったらベーコンを入れて炒める。ベーコンがカリッとしたら玉ねぎとマッシュルームをフライパンの中に加えて炒める。
マッシュルームと玉ねぎがしんなりしたら、ざく切りにしたトマトを入れ、粉末のコンソメで味を調節する。フライパンでしばらく炒め、トマトの水分がある程度飛んだら塩こしょうで味を整えてソースの完成だ。
茹で上がったパスタにソースをかけて、モッツァレラチーズとドライパセリをかければ出来上がりである。
新が帰ってきたのは、19時頃だった。ちょうどソースを煮込んでいる最中に帰ってきて、「ただいま~」と気怠けそうにいいながら、葵の背部に寄りかかる。新はちゃっかりと葵のウエストに腕を巻く。葵の肩口からひょっこりと顔を出し、煮込んでいるソースを見る。
相変わらず距離感が近い。新から漂ういい香りに葵はドキッとした。
「今日パスタ?」
「うん」
「美味しそう」
「もう少し待っててよ。できたら呼ぶから」
「ここで見てていい?」
「邪魔だから向こう行っててよ。あと抱きつかれると動きづらい」
葵は軽く新の手を叩く。すると新はウエストに巻いていた腕をするすると外す。
「ちぇ」
「向こうでテレビ見ててよ」
「うん」
新は葵の嫌がることなど一切しない。抱きついてくるが、それ以上のことは一切しようとしない。やろうと思えばキスだって、セックスだってできるのに、強引に迫ってきたりしない。意外と紳士である。
それをいいことに新の気持ちを知りながらも葵は新を引き離そうとしている。我ながら、酷なことをしているなと実感している。
10分後、出来立てのベーコンとマッシュルームのトマトパスタとトーストしたフランスパン、野菜たっぷりのポトフがテーブルに並べられた。
新は料理を見るなり目を輝かせる。いただきますをした後、クルクルとフォークにパスタを巻きつける。程よく溶けたモッツァレラチーズがとろーりと伸び、湯気が立つ。湯気からトマトとチーズの酸味がふわりと広がる。新はフーフーと覚ましたあと一口でパクリと食べる。
「ん~~‼︎ おいしい~~‼︎」
幸せように食べる顔を見ながら、葵もつられて表情筋が緩む。
「大袈裟だな」
「大袈裟じゃないよ。葵の作ったご飯は世界一美味しいよ」
「ありがとう」
「いつでも僕のお嫁さんに来れるね」
「はいはい」
「また適当にはぐらかして‼︎ 僕は本気なんだからね‼︎」
こんな日常もお金が貯まるまでの期間限定だ。あと何年こんな日常が過ごせるのだろう。
本物の家族とはこんな感じなのだろうか。
物心ついた頃から親はおらず、育ての親である祖父が他界してから家族のいない葵にとって、新と過ごす当たり前の日常は楽しいことばかりだ。
あと何年、あと何回、こうして笑ってご飯を食べれるのだろう。
そう考えたらつらくなった。
葵は今だけは目一杯笑って過ごそうと思った。
皮を湯むきしたトマトを小さ目のざく切りにして、玉ねぎとマッシュルームは薄切りにスライス、ベーコンは1cmの幅に切る。
オリーブオイルを熱したフライパンに鷹の爪、ニンニクを入れ、香りがたったらベーコンを入れて炒める。ベーコンがカリッとしたら玉ねぎとマッシュルームをフライパンの中に加えて炒める。
マッシュルームと玉ねぎがしんなりしたら、ざく切りにしたトマトを入れ、粉末のコンソメで味を調節する。フライパンでしばらく炒め、トマトの水分がある程度飛んだら塩こしょうで味を整えてソースの完成だ。
茹で上がったパスタにソースをかけて、モッツァレラチーズとドライパセリをかければ出来上がりである。
新が帰ってきたのは、19時頃だった。ちょうどソースを煮込んでいる最中に帰ってきて、「ただいま~」と気怠けそうにいいながら、葵の背部に寄りかかる。新はちゃっかりと葵のウエストに腕を巻く。葵の肩口からひょっこりと顔を出し、煮込んでいるソースを見る。
相変わらず距離感が近い。新から漂ういい香りに葵はドキッとした。
「今日パスタ?」
「うん」
「美味しそう」
「もう少し待っててよ。できたら呼ぶから」
「ここで見てていい?」
「邪魔だから向こう行っててよ。あと抱きつかれると動きづらい」
葵は軽く新の手を叩く。すると新はウエストに巻いていた腕をするすると外す。
「ちぇ」
「向こうでテレビ見ててよ」
「うん」
新は葵の嫌がることなど一切しない。抱きついてくるが、それ以上のことは一切しようとしない。やろうと思えばキスだって、セックスだってできるのに、強引に迫ってきたりしない。意外と紳士である。
それをいいことに新の気持ちを知りながらも葵は新を引き離そうとしている。我ながら、酷なことをしているなと実感している。
10分後、出来立てのベーコンとマッシュルームのトマトパスタとトーストしたフランスパン、野菜たっぷりのポトフがテーブルに並べられた。
新は料理を見るなり目を輝かせる。いただきますをした後、クルクルとフォークにパスタを巻きつける。程よく溶けたモッツァレラチーズがとろーりと伸び、湯気が立つ。湯気からトマトとチーズの酸味がふわりと広がる。新はフーフーと覚ましたあと一口でパクリと食べる。
「ん~~‼︎ おいしい~~‼︎」
幸せように食べる顔を見ながら、葵もつられて表情筋が緩む。
「大袈裟だな」
「大袈裟じゃないよ。葵の作ったご飯は世界一美味しいよ」
「ありがとう」
「いつでも僕のお嫁さんに来れるね」
「はいはい」
「また適当にはぐらかして‼︎ 僕は本気なんだからね‼︎」
こんな日常もお金が貯まるまでの期間限定だ。あと何年こんな日常が過ごせるのだろう。
本物の家族とはこんな感じなのだろうか。
物心ついた頃から親はおらず、育ての親である祖父が他界してから家族のいない葵にとって、新と過ごす当たり前の日常は楽しいことばかりだ。
あと何年、あと何回、こうして笑ってご飯を食べれるのだろう。
そう考えたらつらくなった。
葵は今だけは目一杯笑って過ごそうと思った。
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