愛してると言いたかった

アタラン

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いつもの場所へ

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 タクシーを降りてビジネスバックのみで店の前についた。

「変わらないな。」

知人の兄が始めた店は、少しだけ修繕したような箇所があるが何も変わっていない。昔ながらの引き戸が昭和感を感じさせるが引き戸を開けると世界は一変する。

扉の向こうは、別世界をイメージしたという店内はお洒落な内装になっている。
今はよくある外装と内装のギャップだが当時は画期的だった店だった。

店の名前も「俺の」ってどうなんだよと俺達は笑った記憶が蘇る。

知人の兄は俺達にとっても兄貴となり「マスター」と呼んで親しい仲だった。

知人の兄は一人の女の為に生き方を変えた男だった、遊び人で自由な人だった兄貴がこの店を作ると言い出したときは俺達を初め彼を知る人は皆驚いたものだ。

まず、料理も素人でサービス業も的屋のバイトくらいでまともに働いていないような男だったから誰もが止めたし無謀だと思った。

内装のセンスが良いのは、当時遊んでいたからだろう勉強する意識は無くても遊びに行った店がこうだったら面白いのにと考えた事をこの店に集約したようだった。

次は、料理だがこれもまた最悪な状態で咲が簡単に作れるメニューを考えて毎月教えていた事を思い出す。

俺達は、いつも毒見のような状態で試作品を食べさせられ悶絶することも多かった。

ここは、色々な思い出の詰まる俺達の歴史でもありマスターは俺達の兄貴で色んな意味で何もかもを見て知っている。

何かあればいつもここで集合だった・・今日もここで集合。

一人足りない集合。

俺は大きく息を吐いてから引き戸に手をかけるここを開けて「うそだよーん。」

って咲がいる事を期待している。

もし悪戯で咲がそこにいたら「お前飛行機代だせよ!」って言ってやる。


でも本気でその「うそだよーん。」という咲の声を聴きたくて引き戸を開けた。
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