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特別な人
特別な人 第13話
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「な、なんで怒るの?」
「葵は『茂斗がべったりなのに?』って言いたいんだよ」
睨む茂斗に後ずされば、虎君にぶつかってしまう。虎君は僕を受け止めると足りなかった僕の言葉を補足してくれる。
そしたら、茂斗はまだ怒りが治まらないながらも舌打ちして話を進めてくれる。
「凪だったら、クビの前に俺がぶっ殺してる」
「だろうな」
もしもの話でも胸糞悪い。って吐き捨てる茂斗に僕と凪ちゃんはビクッとする。怖くて。でも、そんな中虎君だけは「ブレないな」って笑ってて。
(そういえば虎君も言ってたっけ……。自分も独占欲強いって……)
前に父さんや茂斗の独占欲を茶化した時に虎君は二人の気持ちは分かるって言ってた。むしろ自分も二人に負けず劣らずだ。って。
(でも虎君、彼女いないよね……?)
虎君がモテることは姉さんが言ってたから知ってる。でも、彼女がいたって情報は聞いたことがない。
(なのになんで独占欲が強いってわかるんだろう?)
もしかして、好きな人はいるのかな……?
そう考えて、何故か胸がモヤモヤして苦しくなる。
(なんだろう……。この感じ……)
いうなれば、違和感。そう形容するのが一番しっくりくる感覚だ。
「でも、樹里斗さんでも桔梗でもめのうちゃんでもなくて、凪ちゃんも違うとなると、残り誰だ?」
「! そうそう! もう誰も居ないよね?」
心当たりが居ないって言う虎君に僕も同意。西さんが好きな人って誰なの? って。
そう。お手伝いの西さんが突然『クビ』になった理由は、僕の家族を好きになってしまったから。
そして、お手伝いさんが僕の家族を好きになってしまうことは昔から繰り返しあったことで、西さんが初めてじゃなかった。
「居なくはねぇだろ」
「えぇ? 居ないよ?」
「親父、俺、葵。ほら、まだ居るだろ?」
居ないって言う僕に、茂斗はため息交じりに指を三本立てて見せる。でも、父さんも茂斗も僕も、全員男なわけで……。
「何言ってんの茂斗、西さんは男の人だ――――」
「相手誰だ? 茂斗」
いつもみたいに僕の事からかってる? って笑う僕の声に被るのは虎君の声。
(何……?)
その声から感情が感じられなかった僕は、思わず虎君を振り返る。でも、虎君は笑顔で……。
(あれ……? 僕の気のせい?)
おかしいなぁ……ってちょっと納得できない。絶対、声は笑顔の時に出る時の音じゃなかったから。
でも、虎君の事ばっかりは気にしてられないのは、茂斗が答えた名前のせい。
「葵」
「! 何?」
呼ばれたと思って茂斗に視線を戻したら、「そうじゃない」って言われた。
「西の相手、葵だったんだよ」
「!? 嘘?」
予想外に出てきた自分の名前に心臓が飛び跳ねた。
びっくりしすぎて茂斗の言葉を否定するんだけど、茂斗は「マジで」と肯定の言葉で僕の言葉を否定した。
「『クビ』ってことは西さんが自分で辞めたわけじゃないんだよな?」
「当たり前だろ。自分から辞めた奴を『クビ』なんて言わねぇよ。……つーか、これ以上は聞かない方がいいぞ」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味」
呆然とする僕を他所に、虎君と茂斗は話を続けて進めてしまう。
でも茂斗は西さんが『クビ』になった理由を知ってるけど言いたくないって凪ちゃんに視線を戻してしまった。
そしたら、動いたのは虎君だった。
「待てよ茂斗、話は終わってないぞ」
「虎、いてぇよ」
肩を掴んで無理矢理茂斗を振り向かせる虎君。あの茂斗が顔を歪めながら力加減してくれって言うところから見て、虎君が結構な力で肩を掴んでることが分かった。
「葵は『茂斗がべったりなのに?』って言いたいんだよ」
睨む茂斗に後ずされば、虎君にぶつかってしまう。虎君は僕を受け止めると足りなかった僕の言葉を補足してくれる。
そしたら、茂斗はまだ怒りが治まらないながらも舌打ちして話を進めてくれる。
「凪だったら、クビの前に俺がぶっ殺してる」
「だろうな」
もしもの話でも胸糞悪い。って吐き捨てる茂斗に僕と凪ちゃんはビクッとする。怖くて。でも、そんな中虎君だけは「ブレないな」って笑ってて。
(そういえば虎君も言ってたっけ……。自分も独占欲強いって……)
前に父さんや茂斗の独占欲を茶化した時に虎君は二人の気持ちは分かるって言ってた。むしろ自分も二人に負けず劣らずだ。って。
(でも虎君、彼女いないよね……?)
虎君がモテることは姉さんが言ってたから知ってる。でも、彼女がいたって情報は聞いたことがない。
(なのになんで独占欲が強いってわかるんだろう?)
もしかして、好きな人はいるのかな……?
そう考えて、何故か胸がモヤモヤして苦しくなる。
(なんだろう……。この感じ……)
いうなれば、違和感。そう形容するのが一番しっくりくる感覚だ。
「でも、樹里斗さんでも桔梗でもめのうちゃんでもなくて、凪ちゃんも違うとなると、残り誰だ?」
「! そうそう! もう誰も居ないよね?」
心当たりが居ないって言う虎君に僕も同意。西さんが好きな人って誰なの? って。
そう。お手伝いの西さんが突然『クビ』になった理由は、僕の家族を好きになってしまったから。
そして、お手伝いさんが僕の家族を好きになってしまうことは昔から繰り返しあったことで、西さんが初めてじゃなかった。
「居なくはねぇだろ」
「えぇ? 居ないよ?」
「親父、俺、葵。ほら、まだ居るだろ?」
居ないって言う僕に、茂斗はため息交じりに指を三本立てて見せる。でも、父さんも茂斗も僕も、全員男なわけで……。
「何言ってんの茂斗、西さんは男の人だ――――」
「相手誰だ? 茂斗」
いつもみたいに僕の事からかってる? って笑う僕の声に被るのは虎君の声。
(何……?)
その声から感情が感じられなかった僕は、思わず虎君を振り返る。でも、虎君は笑顔で……。
(あれ……? 僕の気のせい?)
おかしいなぁ……ってちょっと納得できない。絶対、声は笑顔の時に出る時の音じゃなかったから。
でも、虎君の事ばっかりは気にしてられないのは、茂斗が答えた名前のせい。
「葵」
「! 何?」
呼ばれたと思って茂斗に視線を戻したら、「そうじゃない」って言われた。
「西の相手、葵だったんだよ」
「!? 嘘?」
予想外に出てきた自分の名前に心臓が飛び跳ねた。
びっくりしすぎて茂斗の言葉を否定するんだけど、茂斗は「マジで」と肯定の言葉で僕の言葉を否定した。
「『クビ』ってことは西さんが自分で辞めたわけじゃないんだよな?」
「当たり前だろ。自分から辞めた奴を『クビ』なんて言わねぇよ。……つーか、これ以上は聞かない方がいいぞ」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味」
呆然とする僕を他所に、虎君と茂斗は話を続けて進めてしまう。
でも茂斗は西さんが『クビ』になった理由を知ってるけど言いたくないって凪ちゃんに視線を戻してしまった。
そしたら、動いたのは虎君だった。
「待てよ茂斗、話は終わってないぞ」
「虎、いてぇよ」
肩を掴んで無理矢理茂斗を振り向かせる虎君。あの茂斗が顔を歪めながら力加減してくれって言うところから見て、虎君が結構な力で肩を掴んでることが分かった。
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